(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 黒岩辰次(56) 川島英夫(56) 清水正人(49) 平田和明(31) 浅井成実(26) 黒岩令子(27) 西本健(55) 村沢周一(27) 亀山勇 麻生圭二 主任 係員 警官 選挙カー ケン太 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 村長選立候補者、現月影島村長 村長選立候補者、村一番の資産家 村長選立候補者、漁民代表 村長秘書 月影島診療所医師 村長の一人娘 無職 令子の婚約者 前村長、2年前に心臓発作で死去 12年前に焼身自殺した村出身のピアニスト 月影島村役場の主任 月影島村役場の係員 月影島村駐在所勤務の巡査 清水候補の選挙カーの女性 月影島診療所の客 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 飯塚昭三 笹岡繁蔵 沢木郁也 伊井篤史 折笠愛 速水圭 中村秀利 天田益男 声の出演なし 声の出演なし 名取幸政 高戸靖広 長島雄一 岩井由希子 ??? |
「次の満月の夜 月影島で再び影が消え始める 調査されたし 麻生圭二」─依頼料50万円とともに送られてきたその手紙に導かれて小五郎、コナン、蘭の三人がやって来たのは伊豆沖の小島・月影島。島に向かう連絡線の中で小五郎は花見の季節にこんな依頼をしてきたことに大いに不満そうでしたが、旅行気分の蘭とコナンはこれからの島での生活に期待に胸を膨らませていました。
島に着くと早速小五郎たちは村役場へと足を運び、手紙の主である麻生圭二について調べ始めます。ところが応対に出た役場の主任は麻生圭二の名前を聞いた途端に驚愕の表情に…顔色を真っ青にして、麻生圭二が10年以上も前にすでに亡くなっていることを小五郎たちに話して聞かせてくれます。
彼の話によると、麻生圭二は月影島出身の有名なピアニストでしたが、12年前のある満月の夜久しぶりの帰省をした際に、突然自分の妻と娘を刃物で殺害。自らも家に火を放ち炎に飲まれて焼け死んだのだというのです。そして彼は燃え盛る炎の中で何かに取り憑かれたかのようにベートーベンのピアノソナタ『月光』を弾き続けていたというのです……
死者からの手紙…タチの悪いいたずらにも思えましたが、依頼料も振り込まれているため、もう少しよく調べてみようと小五郎たちは公民館にいるという村の村長の所に行き話を聞いてみることにします。
公民館に向かう途中、小五郎たちは道を教えてもらおうと、村の診療所に立ち寄ります。そこには長い髪を後ろでまとめ白衣に身をまとった浅井成実というドクターの姿がありました。成実はどうやら小五郎たちと同じ東京の出身らしく、話好きなのかすぐに小五郎たちとも打ち解け丁寧に公民館への道を教えてくれます。
どうやら村は今村長選挙の真っ最中らしく、一票でも多く獲得しようと選挙カーも忙しそうに走り回っていました。成実の話では選挙には漁民代表の清水正人、最近評判の芳しくない現村長の黒岩辰次、そして島一番の資産家だという川島英夫の三人が立候補をして凌ぎを削っているというのです。
そんな中その日は前村長の亀山の三回忌が行われるらしく、この三人もそれに出席するため、小五郎はぜひ話を聞いていくようにと勧められて診療所を後にします。
公民館に着くと、建物の前では現村長の政策に反対する村民の反対デモが繰り広げられていました。そしてそれを苦々そうに見つめている現村長の黒岩とその娘の令子。他にも前村長の三回忌の準備のため多くの関係者が公民館には集まってくるようでした。
中に通された三人は村長に面会を求めますが、しばらく待つように言われてしまいます。そこでコナンは待っている間に公民館の中を探検。すると奥の部屋にピアノが置いてあるのを発見します。
コナンを探してやってきた小五郎と蘭も交え、三人がずい分と汚れたそのピアノを不思議そうに眺めていると、そこへ黒岩村長の秘書の平田和明が血相を変えて飛んできました。
彼の話によるとそのピアノは例の麻生圭二が12年前、亡くなる直前に演奏会で弾いていたピアノらしく、しかも今日法事が行われる前村長の亀山も2年前ピアノに倒れかかるようにして亡くなっていたというのです。そして亀山が亡くなる直前にも麻生圭二の時と同じようにベートーベンの『月光』が…まさしくそれは呪われたピアノと呼ぶにふさわしい代物のようでした。
法事が始まると小五郎たちが行きがけに出会った成実医師や村長選立候補者の清水正人や川島英夫。黒岩令子の娘婿の村沢周一なども姿を見せ、しめやかに三回忌の法要が進められていきます。
経を読む声が公民館の中に響き渡る中、突然それをかき消すかのようにピアノを奏でる音が鳴り響いてきます。そしてそのピアノが奏でていたのは、何とあのベートーベンのピアノソナタ『月光』だったのです…!!
皆が驚く中、異変を感じたコナンがすぐにピアノの音が響いてくる部屋へと駆けつけてみると……そこにはあの呪われたピアノに倒れかかる様にして息絶えている、村長選立候補者の一人、川島英夫の変わり果てた姿が……
調査を依頼する不気味な手紙に誘われて伊豆沖の孤島・月影島へとやって来たコナン、蘭、小五郎の三人が遭遇した殺人事件の真相に迫る本格巨編。またコナンのアニメ史上初の1時間SPでもあります。
原作者の青山剛昌先生が一番のお気に入りだという作品でもあり、ファンの間でも名作として今もなお記憶に残る逸品中の逸品です。
2003年にはコナンの放映枠にて再放映スペシャルも放送されましたが、この際には青山先生が自ら登場し、この作品に対する思い入れなどを語っていらっしゃいます。
その際のインタビューの概要は下記の通り
もう一点、アニメでは今回の事件で初めて登場人物を紹介するテロップが使用され、これ以後はほとんどの作品で使用されるようになりました。名前と年齢と職業や人物関係についての説明などが下の方に出る、あれです。
現在では当たり前のように使われていますが、あの説明があると人間関係などもすぐ整理できますし、分かり易くていいですよね。
今回はほぼ原作に忠実な作りでした。挙げるとすると、原作ではこの事件が発生したのは冒頭の小五郎の発言から「ゴールデンウィーク」だと分かりますが、アニメでは放映日が4月8日だったこともあって「花見」に差し替えられています。
それとラストの船上でコナンが蘭から「ポカ」とやられてコナンが「イテ」と叫ぶやりとりの部分がなく、平和に終わるぐらいですね。
それから原作との相違点ではないのですが、2003年の再放映の際にはOPとEDはともにその時点で使われていた「君と約束した優しいあの場所まで」と「君という光」が使用されています。
そしてその中でコナン役の高山みなみさんがコナンの声でナレーションを担当し、今回の事件や次回の再放映SP(219「集められた名探偵! 工藤新一vs怪盗キッド」)についていろいろと語ってくれています。
今回の事件では、クラシック音楽ではモーツァルトとともに巨匠として知られるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)が作曲した、ピアノソナタ第14番の「月光」が作中何度も登場しました。
ベートーヴェンについてはウィキペディアのベートーヴェンのページを、「月光」についてもウィキペディアの「月光」のページを参照下さい
なおクラシック MIDI ラインムジーク様より配布されているMIDIをこちらで聴けるようにさせて頂きました。この曲を聴くと、今回の事件をつい思い出してしまいますよね(リンクをクリックすると曲を聴くことができます、音量にご注意下さい)
・ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調27-2 「月光」第1楽章
・ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調27-2 「月光」第2楽章
・ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調27-2 「月光」第3楽章
伊豆沖に浮かぶ自然に囲まれた小さな島。漁民という言葉が盛んに使われていることからして、漁業が盛んな島のようです。
麻生圭二はこの島の出身で有名なピアニストとなりました。また現在の村長は黒岩辰次ですが、今回の事件が起きた際には村長選の真っ最中でした。
そしてこの島は東京都に属するため、今回の殺人事件を捜査するために、わざわざ本土から目暮警部がやって来ることになります。
月影島の役場。麻生圭二を名乗る人物から依頼を受けた小五郎は、蘭とコナンを連れてまず最初にこの役場を訪れました。
今回の殺人事件現場となった場所で、演奏会や前村長の法事など様々なイベントや催しが開かれる島の多目的ホール。一階は法事の部屋、ピアノの部屋、それに倉庫とトイレから構成され、二階には放送室があります。
死んだ麻生圭二が15年前に寄贈し、12年前の死の間際に『月光』を弾いていた呪われたピアノもここに安置されています。すぐ裏は海に面しています。
浅井成実医師が勤務する村の診療所。浅井医師は本土から出張しているアルバイトの医者のようなものらしく、週末には両親のいる東京へと戻ってしまうとか。
明智小五郎はご存じ推理小説家の江戸川乱歩が創造した、金田一耕助、神津恭介と並んで日本の三大名探偵のうちの一人と言われる探偵。〈少年探偵団〉シリーズでも登場し大活躍します。
一方、毛利衛氏は宇宙飛行士としてその名をよく知られた方です。
今でもベートーヴェンの「月光」を耳にすると、この作品のことをどうしても思い出してしまう、まさにピアノソナタ「月光」を抜きにしては語れない作品です。
アニメでは実際に「月光」が使用されているので、たっぷりと臨場感をもって作品が楽しめる訳ですが、コミックスを読む際にも、「月光」を流しながら読むと、より雰囲気が盛り上がること間違いなしですね。
コナン史上もっとも悲劇的な結末を迎えた事件で、コナンが唯一犯人が自殺するのを止められなかった事件としても有名で、また青山先生のお気に入り作品であり、その結末の意外性からファンの間でも非常に高い人気を誇る作品ですが、私も同じように高く評価している作品の一つです。
ただ私は悲劇的な結末の作品よりも、読後感の良い、ほのぼのとして楽しい、読んで幸せになれるような作品の方が好きなため、一番の傑作という訳ではないのですが、それでも読んだ時には上手くダマされて、衝撃を受けたことを今でもよく覚えています
ミステリとしてもアリバイトリックはなかなかのものだと思いますし(ただ今はカセットテープ自体あまり使われなくなってしまったのがちょっと残念ですが)、それが結末の意外性に見事に結びついているので、名作と評されるのも頷けますね。
こういった種類のトリックというのは一人二役などと同じで何度もミステリの世界では使われているものなのですが、上手く読者を欺きアッと言わせることができれば傑作ですが、気づかれたらその時点でゲームオーバーであり、それは失敗作ということになってしまいます。
マンガやアニメだとどうしても視覚がまず優先されるために、小説に比べれば見ている者をダマすことは大変だとは思うのですが、特にアニメでは折笠愛さんの声も手伝ってか、違和感もまったくありませんでした。折笠愛さんといえばコナンでは「ベイカー街の亡霊」でも少年の役で再登場していますし、他のアニメ作品などでも少年役を結構やっていますから、やはり手馴れたものなのでしょう。
それからこの作品は連続して殺人が起こり、関係者もお互いに敵対関係にあったりと、かなり殺伐とした重苦しい雰囲気が全体を支配しているという印象が否めないのですが、それを上手く和らげる働きをしていたのが、小五郎とあのヘッポコ巡査の二人だと思います。
こういう所で上手くバランスを取っている所は、さすがはコナンだとつくづく思わされますね。自分で物語を書きたいと思っている方には、大変参考になるのではないでしょうか。