(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利小五郎 目暮警部 佐藤刑事 堀田刑事 小沢文枝(24) 相川悦子(58) 清水良太(30) 井上 木下巡査 監察医 店員 |
本編の主人公、正体は工藤新一 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 警部補、目暮の部下 警視庁捜査一課 刑事 消費者金融会社OL、105号室の住人 和菓子屋〈夕月〉女将 消費者金融会社 貸付課主任、小沢の上司 製氷店の主人 現場付近に駐在する警察官 監察医 スーパーの女性店員 |
高山みなみ 神谷明 茶風林 湯屋敦子 川口博 声の出演なし 岡本茉利 中村大樹 巻島直樹 柳沢栄治 鈴木琢磨 浅田葉子 |
あれだけ練習して昨日も早く寝たんだから大丈夫に決まっている…蘭の空手の試合の行方を心配するコナンは、小五郎のそんな言葉にも気が気でない様子で小五郎と二人、米花町の町中を歩いていました。ところがそんなコナンの心配を吹き飛ばしてしまうような厄介な難事件が、二人が通り過ぎようとしているマンションの中で発生していたのです。
小五郎たちが事件を知るきっかけとなったのは、事件現場となったマンションの前で初老の女性が制服を着た警察官に激しい口調で話しかけているのを目撃したからでした。警察官の方は小五郎もよく知っているらしい木下という名前の巡査で、一方女性の方はコナンもよく知っているという相川悦子という名前の和菓子屋〈夕月〉の女将。
どうやら二人の話し合いは結論が出ず平行線を辿るばかりだったらしく…名探偵である小五郎の姿を見るなり、二人はすぐさま小五郎に助けを求めてきたのです。
二人の話を整理すると、そのマンションの中で起きた事件というのは次のようなものでした。女将の相川が今から2時間ほど前の朝9時過ぎ、マンションの前を通りかかると、1階の105号室から逃げるように出てくる男を目撃。不審に思った女将が警察に通報し、ほどなく木下巡査が現場に駆けつけると、105号室の中でその部屋の住人である小沢文枝が亡くなっているのを発見したというのです。
遺書もあり部屋も荒らされた形跡がない、加えて女将が目撃したという怪しい男について他にまったく目撃情報がない…
念のために監察医による検死も行なわれたらしいのですが、その結果死後硬直の度合いから被害者の死亡推定時刻が昨夜の6時から8時頃であることも判明。とするともし女将が目撃したその怪しい男が殺害したとすれば犯行を行なってから13時間も現場にいたことになり、とても常識では考えられないことでした。
そんな現場の状況や監察医の診断から木下巡査は自殺だと判断したのですが、それを聞いても女将は納得がいかないらしく、小沢文枝は何者かによって殺害された、もっと徹底的に捜査をするべきだと言って聞かないというのです…。
そこで自殺か他殺かの判断を名探偵である小五郎に委ねることになったのですが…
被害者の小沢文枝は消費者金融会社に勤務するOLで、パソコンに残っていた会社の上司に送られた遺書代わりのメールの送信記録によると、彼女は会社の金を3000万円以上使い込んでいたらしく、死んでお詫びしたいということのようでした。
そして浴室にあるシャワー・ノズルのフックに針金をかけ、首を吊って自殺したというのです。
ところが小五郎が現場を調べ始めると、カレンダーには今日の日付で歯科医の予約が入っていたり、玄関の鍵が施錠されていなかったりと、自殺と判断するには不自然な要素も見られたのです。
更にそれに加えて部屋の中に飾られていた写真から、女将が目撃したという不審な男というのが、何と被害者の会社の上司である清水良太であることが判明。しかも清水は被害者とは親しい間柄であったことも突き止められたのでした。
清水はまたギャンブル好きで多額の金をつぎ込んでいたことも分かり…事件を担当することになった目暮と小五郎も、自然と清水に疑いの眼を向け始めます。
ところが…何と清水は昨日は広島で小学校のクラス会に出席していたらしく、また女将が彼を目撃したという朝9時には、羽田行きの飛行機に乗るために空港に滞在していたというのです…
清水には確固としたアリバイがあり、その一方で女将は彼を朝9時に目撃したと言い張って聞かない…もし清水の主張しているアリバイが立証されるとすれば、当然女将が嘘を言っていることになるのですが…
今回は小五郎とコナンがメインで目暮と佐藤刑事も登場しているにも関わらず、なぜか高木刑事が登場しませんでした。これがなぜなのかは私にははっきり分かりかねますが、作中に登場した清水良太が色黒でスーツも灰色、髪型にしても何となく高木刑事と雰囲気が似ていたからかもしれないですね。
ちなみにNEXTコナンズヒント後のコントでもこの点については触れられているのですが、これもまた会話の意味が全然分かりませんでした(苦笑)
高木刑事の代わりにといっては失礼ですが、今回は堀田刑事という刑事が登場しています。
小五郎とコナンが事件解決後に木下巡査と訪れたお店。てっきり〈夕月〉なのかと思いきや暖簾には「月見」という文字が…
ぜんざい480円、白玉あんみつ540円、抹茶セット360円など美味しそうなメニューが目白押しです。
今回の作品は30分作品としてはかなり面白かったと思います。個人的にはすごく楽しめましたし、前後編ではないためきちんと推理する時間がないせいもあったのでしょうが、二人しか容疑者がいないにも関わらず最後までどちらが犯人か分かりませんでした。
女将が何とか犯人を逮捕させるためにいろいろと細工したことが結局捜査をややこしくしてしまった訳ですが、そのせいで容疑が二人の間を二転三転するというのはミステリとして面白い展開だったと思います。
トリックに関しては殺害方法は氷を使ったいたって初歩的なもので、もう一つのアリバイ工作であるメールも携帯電話のバイブレーター機能を使ったいたってシンプルなものですが、今回はトリック云々よりも容疑が二人の間を二転三転する所に面白さがあるので、トリックについては複雑なものよりもこういったシンプルなものの方が分かり易くて良かったのではないでしょうか。
全般的には細かい点まで本当によく考えられたミステリだと思います。ただ、女将の行為というのは真犯人を逮捕して欲しいという気持ちからとはいえ、明らかに警察の捜査を妨害しているので、これに対して何のお咎めもないというのはちょっとおかしい気がしましたが。