名探偵コナン413「完全半分犯罪の謎」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
File413 完全半分犯罪の謎
英題
The Mystery of the Perfect Half-Crime
放映日
2005/9/5
原題
TVオリジナル
ジャンル
本格
事件現場
日売テレビ局 A会議室
管轄
東京警視庁捜査一課(目暮警部)
登場人物
江戸川コナン
工藤新一
毛利小五郎
目暮警部
広田刑事
八神譲二(50)
佐久間晃(45)
香田杜夫(29)
井上涼子(40)
社員
社員
受付係
警部
間暮倫太郎(マグレ)
本編の主人公、正体は工藤新一
本編の主人公、高校生探偵
蘭の父親で私立探偵
警視庁捜査一課警部
捜査一課刑事、目暮の部下
脚本家
脚本家
脚本家
日売テレビ制作部 プロデューサー
日売テレビ 局員
日売テレビ 局員
日売テレビ 受付係
名探偵マグレに登場する警部
名探偵
高山みなみ
声の出演なし
神谷明
茶風林
千葉一伸
仲木隆司
木下浩之
福島潤
神田和佳
井上隆之
中村千絵
岡田佐知恵
???
梅津秀行
あらすじ
「だが…、この間暮倫太郎の目だけはごまかせないんだ…」

 日売テレビが放映するミステリードラマ〈名探偵マグレ〉は、毎週3人の脚本家たちが交替で物語を書き、5年もの間お茶の間で親しまれている人気シリーズでした。

 しかし5年も本格的な謎解きミステリーを発表し続けてくれば、やはりネタやトリックを考えるのも段々と辛くなってくるのは致し方のない所…

 そこで番組のプロデューサーである井上涼子は、これまでに数々の難事件を解決してきた名探偵である毛利小五郎に、番組作りの参考になればということで体験談を聞かせてもらうべく、その日毛利探偵事務所を訪ねてきたという訳なのです。

 名探偵マグレ─小五郎はたまに見る程度のようでしたが、ミステリーが三度の飯よりも好きなコナン(新一)は、もちろん放映当初から毎週欠かさず見ているらしく、毎週とはいかないものの何週かに一回凄い作品があると、このシリーズには高い評価を与えているようでした。

 一体どのような人物が番組の脚本を書いているのだろう…─自分が毎週見ているシリーズだけあって俄然興味を惹かれたコナンは、自分も一緒に行きたいとプロデューサーの井上涼子に頼み込み、小五郎にくっついてマグレを放映している日売テレビ局に向かうこととなったのです。

 そして当日─日売テレビに到着した小五郎とコナンが待ち合わせの時間まで屋上の喫茶室で過ごしている間、局のA会議室では、今後のマグレの展開について話し合うための会議が始まろうとしている所でした。

 部屋の中に集まったのはプロデューサーの井上涼子と3人の脚本家たち─脂ぎって傲慢な態度が目立つ八神譲二、八神とは対照的に穏和な表情をした長髪の佐久間晃、そしてまだ新人のせいなのかどことなく落ち着きのない香田杜夫─の計4人で、4人が揃うと早速打ち合わせが始まります。
 ところが八神の「何か飲み物を」という言葉を聞いた香田が「自分が準備してくる」と行って部屋を出て行ってしまったため、会議は始まったばかりにもかかわらずいったん中断を余儀なくされたのです。そして…

 「まるでウエイター…」「脚本家としての心構えが足りない…」─井上、八神、佐久間の3人が揃ってホットコーヒーを頼み、その注文を聞いて香田が部屋を出て行くと、脚本家の一人の八神が、香田のことをそうこき下ろし始めたのです。

 もう一人の脚本家の佐久間が「いいものを書くじゃないですか」とフォローしても、まったくその言葉には耳を貸さず、ついにはプロデューサーの涼子に「あいつなんか降ろてしまえ」と迫る始末…。
 誰の目から見ても八神はまだ若く駆け出しの香田のことを快く思っていないのは明らかでした。

 ほどなく飲み物のホットコーヒーを準備して香田が給湯室から戻ってきたため、その話はそれっきりとなり、そんなやり取りがあったとは露とも知らない香田は笑顔を振りまきながら早速コーヒーを皆に配ろうとします。

 ところが最初のコーヒーを涼子に渡した所で、涼子がいつもコーヒーにミルクを入れていることを思い出した香田は、ミルクと取ってくると言い残して再び会議室を後にし、会議はまたもや中断を余儀なくされたのです。そして…

 そんなバタバタと落ち着きのない香田に八神は再び苦言を呈しますが、やがてトレーの上に置きっ放しになっていた残りの2つのコーヒーのうちの一つを佐久間から受け取り、ミルクを取りに向かった香田が戻ってくるよりひと足先に、佐久間と2人でコーヒーを飲み始めたのです。

 その直後でした。コーヒーを口ににした八神が突然苦しみ始め、喉のあたりを手で押えて数秒間もがき苦しんだ後、床に倒れこんで…そのまま身動き一つしなくなったのでした…
 そして後に残されたのは、こぼれて床の上に散乱したコーヒーと、すでに帰らぬ人となった八神の無惨な亡き骸だったのです…

 テレビ局内で起きた殺人事件に現場は騒然としますが、その知らせはすぐに屋上の喫茶室にいた小五郎の元にも届けられ、小五郎の簡単な検死によってその結果青酸系の薬物による毒殺であることが判明します。
 それから間もなく警視庁捜査一課から目暮警部も到着し、殺人事件として本格的な捜査が開始されたのです。

 警察の捜査の結果、毒物は八神の飲んだコーヒーにのみ混入され、残りの2つのコーヒーと香田の日本茶の3つには何の異常もなかったことが判明。そして当然のように飲み物を準備した香田にまず疑いの目が向けられます。

 しかも捜査が進むにつて、現場の状況から香田以外の人物に飲み物に毒物を混入できたとは考えられなくなり…加えて悪いことに香田は佐久間からは高く評価されていた反面、被害者である八神からはひどく嫌われ番組から降ろされそうになっていた事実も表面化したのです。

 動機も機会もある…香田の嫌疑は一段と濃厚になり小五郎は彼の犯行を確信しますが、香田を容疑者とするためには一つの大きな壁があることに小五郎はまだ気づいていないのでした……

今回の見どころ
日売テレビ局内で起きた毒殺事件の真相に小五郎&コナンが迫る…

 5年も続いているという日売テレビの人気ドラマシリーズ〈名探偵マグレ〉にトリックや話のネタを提供するアドバイザーとして番組に協力することになった小五郎。

 ところがテレビ局にやってきたその日、ドラマ関係者の間で凄惨な殺人事件が発生します。

 殺されたのは3人いるマグレの脚本家のうちの一人で、現場にいたのは番組プロデューサーと残りの脚本家2人の計3人。死因は毒物によるもので、被害者が飲んだコーヒーにのみ混入されていました。
 そして容疑は当然現場にいた人間に向けられ、まずコーヒーを運んできた脚本家の一人が当然のように疑われることになったのですが…

 意外な着想が事件解決の鍵となる、一風変わった謎解きミステリーです。

豆知識
名探偵マグレ

 日売テレビが放映する人気ミステリードラマで、5年もの間お茶の間を楽しませてきました。

  プロデューサーを務めるのは井上涼子で、物語の脚本は開始当初は八神譲二、佐久間晃の二人の脚本家が担当。その後このドラマの大ファンだったという香田杜夫が自分で書いた作品のプロットを持ち込み、その才能を見抜いたプロデューサーによって3人目の脚本家として参加するようになります。

 コナン(新一)によれば傑作として高い評価を得ている作品は、2年以上前に放映された99「52番目の密室」や「脇役クラブ」「悪井戸殺し」、143「緑の扉が開くとき」など。

 その他に「新井薬師の怪人」「奇怪島の悪夢」、98「恋人は夏の幻」、100「満月のミステリー」、141「追いつめられた探偵」、145「危険なトラヴァース」、160「出逢いのワイン」「鳥居の暗号」などの作品が放映されています。

 またこの事件が解決した後、小五郎が読んでいた新聞によればDVD-BOXの発売も決定したようです。

 この点コナンがタイトルの書かれた紙を見るシーンで141~160話ぐらいまではかなりはっきり映っているのですが、管理人の録画したものは残念ながら不鮮明で大部分は読み取ることができませんでした。その他に読み取れたという方がいればお教え下さると嬉しく思います。

日売テレビ

 コナンでもっともよく登場するテレビ局で、モデルになっているのは当然名探偵コナンも放映されている日本テレビだと思います。

 原作・オリジナルに関係なく何度も登場し

  31「テレビ局殺人事件
  123「お天気お姉さん誘拐事件

 でも事件の舞台になっており今回が3度目。
 それ以外にも

  21「TVドラマロケ殺人事件
  51「ゴルフ練習場殺人事件
  130-131「競技場無差別脅迫事件
  316-317「汚れた覆面ヒーロー
  356「怪盗キッドの驚異空中歩行
  379-380「秘湯雪闇振袖事件

 などで番組の撮影があったり、局の関係者などが登場したりしています。

 主な制作番組は「朝生7」「思いっきりサンデー」「日本まる見え探偵局」「ニュースシティー」「闇に笑う脅迫者(火曜サスペンスドラマ)」など

NEXTコナンズヒント
醤油
コント
コナン「来週は青い鳥」
目暮「何、阿波踊り?」
コナン「違うよ、モグレ警部」
目暮「ワシは、目暮!」
OP
星のかがやきよ」(ZARD)
ED
世界 止めて」(竹井詩織里)
監督
佐藤真人
脚本
扇澤延男
絵コンテ
青木雄三
演出
戸澤稔
作画監督
村中ひろび/サブキャラクターデザイン 佐々木恵子
ビデオ
PART14-5
DVD
PART14-5
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★★

 今回は2人の人間がいて2つのカップのうち一つに毒薬が入っており、それを狙った相手にどうやって飲ませるかを考える謎解きミステリーということでしたが、結論から申し上げると、本格ミステリーとしては論理が完全に破綻してしまっているので、評価としては最低ランクということにせざるを得ません。これだけであれば星は一つだけでもやむを得ないでしょう。

 ただ〈名探偵マグレ〉というミステリードラマを題材に、ミステリー好きにはたまらない設定やドラマ制作の裏側、脚本家の方のご苦労なども裏話を聞くことができて、それはそれで有意義な30分だったと思いますし、マグレの作品タイトルがコナンの作品タイトルのもじりがかなり使われていて、それを探したりするというのも楽しい作業でした。

 またテレビを食い入るように見る新一のミステリーマニアぶりがオリジナルストーリーでも見れたのが何よりも一番嬉しかったですね。そういった様々な楽しい要素が盛り込まれていた点を評価して星を一つ加えて二つ星にさせて頂きました。

 ちなみに今回の作品で一番的を得た発言をしたのは誰だと思いますか? 実は「運を信じることです」と言った小五郎なんですよ(苦笑) 私が辿り着いたゴールも小五郎と同じだったからです(笑)

 今回の事件をざっとおさらいしておくと、八神氏が毒を飲んで亡くなり、その八神氏に対し犯人の香田は番組から降ろされそうになるなど快く思われていなかった一方で、佐久間氏には何の恨みはありませんでした。

 そうするともし佐久間氏が毒入りのカップを取った場合には何としても飲むのを止めようとしなくてはおかしいはずで、にもかかわらず香田はミルクを取りに行くといって席を立ちその場にはおらず…そのような状態でどうやって八神氏に確実にカップを取らせたか…その一点が最大の焦点となった訳です。

 そしてコナンが最後に推理した通り、実は動機というのは自分が脚本家として名を上げるため、マグレの脚本を一本でも多く書きたい…そしてそのためならどちらかがいなくなってもらえればそれで充分であり、結局八神氏でも佐久間氏でもどちらがカップをとっても彼にとっては何の不都合もなかったというのが真相でした。

 どうでしょうか、そもそも今回は機会の面では香田以外に毒を入れられた人間がいない訳で、動機の面でも以上のように振り返ってみると、一見もっともなようにも思えます。

 ところがです、今回問題になった動機というのが、「佐久間氏に恨みがないから、佐久間氏が毒入りを取った場合には止めなくてはおかしい」という点から出発している点に注目すると、あるおかしな疑問が湧いてくるのです。

 それはこの殺人事件の被害者が八神氏ではなく、佐久間氏だった場合です。考えてみて下さい。まず今回の毒入りカップは井上女史に毒の入ってないうちの一つを香田自身が手渡した後は、八神氏と佐久間氏の手に運命が委ねられている訳で、残りの2つのうちどちらが毒入りを取るかは50%の確率というのは小五郎の言うとおりです。

 ということは今回はたまたま八神氏が飲んでしまっただけにすぎず、佐久間氏がそれを取る可能性も八神氏が取る可能性と同じだけある訳で、香田としてはその場合にどうするかも当然考えておかなくてはおかしいはずです。

 そしてもし佐久間氏が取った場合…繰り返しになりますが、機会の面では八神氏の時と同じで香田以外に毒を入れられた人間がいないのは明らかで、同じように動機の面が問題となります。

 ところが佐久間氏に対して香田はどうでしょう、八神氏の時と違って明確な恨みを持っていたとは言えません。とすると警察としては当然事件の裏側にある「隠された動機」というのを血眼になって探すのは目に見えています。

 そうなると八神氏が死んだ時には盲点になって考えつきもしなかったかもしれないことでも、警察はいろいろとこじつけた上で考えるでしょうから、井上女史の証言を聞けば、香田が脚本家として成功を収めるためにマグレに自分の人生をかけていることも知ることとなると思います。だとすれば八神氏が死んだ場合とは違い、簡単にどちらの脚本家が死んでもよかったという結論に辿りつくと私には思えます。

 というより、佐久間氏に対しての動機を考えた場合、それぐらいしか普通思いつかないのではないでしょうか? 佐久間氏だけを狙ったと考えるより「どちらが死んでもいい」という無差別殺人の可能性の方が大きくクローズアップされるのは自然な流れだと思えて仕方がありません。

 そして仮に佐久間氏に対する動機が見つかった場合でも、では八神氏が亡くなった時と同様に考えることはできるでしょうか? これは明らかに不可能ですよね。

 つまり香田は八神氏に対しては明確な恨みを持っていることは間違いないのですから、八神氏が亡くなった場合の時に「佐久間氏が毒入りを取った場合は何としても止めなくてはいけない」と考えたのと同じように、「八神氏が毒入りを取った場合は何としても止めなくてはいけない」とは考えられないのです。

 つまりもし佐久間氏が亡くなっていた場合は、結局のところ結論は「どっちが死んでも良い」ということにしかならず、「亡くなる人間がどちらでも得られる結果は同じ」とは決して言えないのです。

 とすると八神氏が亡くなっていた場合とは違い香田は自分の罪を逃れるような切り札を何一つ持っていない訳で、これでは完全犯罪はもちろんのこと、完全半分犯罪とも言えない事は誰の目から見ても明らかではないでしょうか。

 以上のような理由から、香田が主観的にはどう考えていたにせよ、客観的には八神氏に死んでもらわなければ非常に困ったことになったはずな訳で、だとすると小五郎が言ったように「運を信じた」と言われても仕方がない犯罪行為だと思います。

 ということで今回はミステリーとしては着想は面白いものの残念ながら隙のないミステリーには程遠かった訳ですが、それでも小五郎とコナンのやりとりが多いのでかなり楽しめると思います。

 特に小五郎の迷探偵ぶりには何度も笑わされること必至でしょう。それだけも見る価値は充分にある作品だと思います。まあでも前述の通り今回に限っては結果論とはいえ小五郎こそが名探偵なんですけどね(苦笑)

 またコナンが2年以上も前に放映された99「52番目の密室」を見たことで、井上プロデューサーから「君は何歳なの?」とツッコミが入っり、コナンが答えに窮する場面はなかなかキャラクターの特性が生かされていて面白いシーンでした。

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