(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 江角栄子(25) 福間良介(25) 石飛一也(35) 藤江竹彦(40) 鰐淵耕司(35) 栄子の父 栄子の母 山根刑事 小村刑事 女性 子供 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 旅館〈日の出屋〉 長女 模型展示館職員、栄子の幼なじみ 出雲そば店〈石飛〉経営者 結婚式場経営者、鰐淵の大学の先輩 鰐淵総業経営者 旅館〈日の出屋〉経営、栄子の父 旅館〈日の出屋〉経営、栄子の母 島根県警出雲署 刑事 島根県警出雲署 刑事 旧大社駅のベンチに座っていた女性 松江城で写生をしていた子供 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 中村千絵 森田成一 石野竜三 松本保典 黒田崇矢 楠見尚己 松原雅子 木村雅史 三戸耕三 佐藤しのぶ 天田有希子 |
─高所恐怖症のため飛行機の上では死にそう顔をしていたはずの男は、神話のふるさととして有名な出雲の地へと舞い降りた途端、あっという間にいつもの調子を取り戻し…名所見物して飲み食いしまくると声高に宣言するやいなや、娘の蘭とコナンを引き連れて早速縁結びの神様として名高い出雲大社を訪れ、冒頭の意味不明な願い事を祈祷して、隣りで手を合わせていたコナンを呆れさせたのでした…。
しかしその男─毛利小五郎は、一応世間では”眠りの小五郎”として名声を欲しいままにしている名探偵。今回もその名探偵を一目見て声をかけてきたことから偶然知り合いとなった一人の若い女性が後日巻き込まれた血生臭い殺人事件の解決のため、地元の警察に力を貸すことになったのです。
「あるんだけどね…私にも一応、縁談話…」
─コナンたちが出雲大社が誇る重さ5トンの日本一の締め縄の下で知り合ったその若い女性は、名前を江角栄子といい、実家は参堂の前で旅館を経営しているこの地方では有名な〈日の出屋〉の娘でした。そして今回発生した殺人事件の被害者というのが……何とその彼女に無理矢理結婚を迫っていた男だったのです…!
その男─鰐淵耕司はこの出雲を中心に手広く事業を展開している実業家で、良く言えば「やり手」と言えそうなものの、実際は金と脅しで強引に店や会社を乗っ取るあくどい乗っ取り屋として知られていた存在だったのです。
名前は”鰐(ワニ)”なものの、性格はまさしく蛇のようで、狙った獲物は何でも呑み込む化け物─まさに”オロチ”と呼ぶにふさわしい人物だったのでした。
ところがその鰐淵はコナンたちが出雲を訪れた次の日、お世辞にも観光客が来るような場所とは言い難い猪目洞窟の暗い洞窟の中で、背中に刃物を突き立てられた無残な姿で発見されたのです…!
すぐに島根県警による捜査が始まり、まず被害者の死亡推定時刻が彼が倒れた拍子に壊れたと思われる腕時計から午後1時5分頃と推定されます。
次に肝心の犯人はというと…鰐淵はその日午後12時頃に市内の骨董品店から借金の担保として時価一千万円相当の刀を受け取り、昼の1時少し前に猪目洞窟のすぐ近くの道路で刀を手に立っている所を目撃されていたらしく、その刀がその後犯行現場から失くなっていたため、警察はその刀を狙った単純な強盗殺人だと推理。
名探偵の小五郎の力を借りるほどの事件ではなさそうだと、当初は楽観的な態度でいたのですが……
しかし…結局その刀の紛失は怨恨目的を隠すためのカムフラージュだったことが分かり、直ちに捜査陣は鰐淵に恨みを持つ容疑者リストの作成を開始。結果、4人の男女が鰐淵殺しの容疑者としてリストアップされたのです。
そしてその中には、小五郎たちが前日知り合いになった、あの江角栄子と、彼女の幼なじみで彼女が思いを寄せている男性─福間良介の名前もあり……
翌日警察に呼ばれたのは次の4人でした。一人目は石飛一也という男性で、この地方では老舗として知られる創業200年の出雲そば店〈石飛〉を経営しているのですが、最近になって金の力を背景に、鰐淵から強引に共同経営の話を持ちかけられていたというのでした。しかし共同経営とは名ばかりで、実際は金と脅しによる「乗っ取り」に他ならず……
二人目は藤江竹彦という結婚式場を経営している男性で、こちらは鰐淵とはともに東京にある帝都経済大学を卒業した大学の先輩後輩の間柄ではあるものの、そんなことは一切お構いなしで、石飛と同じように、共同経営を口実に「乗っ取り」を仕掛けられているというのでした…
次に江角栄子はというと…彼女の実家の老舗旅館〈日の出屋〉の建物の老朽化が激しく、改築の必要に迫られていた所に言葉巧みに鰐淵が近づき、鰐淵はいったんは改築の費用を出したものの、改築が終わった途端に態度を一変させ、改築の資金の代わりに栄子を自分の嫁によこすこと、もし断るなら改築資金を即座に全額返すようにと脅してきたというのです……
最後にそんな江角栄子の幼なじみだという福間良介は、子供の頃から古代史が好きだったらしく、現在はそれが昂じて古代出雲大社の模型展示館の職員を務めていました。
そして幼なじみの栄子とは、どうやらお互い意識し合う仲らしく…鰐淵から脅されている栄子を守ろうと、鰐淵に栄子から手を引くように何度も頼み込んでいたというのです…
それぞれが鰐淵を殺害する充分な動機を持っていることが分かると、次に警察当局は事件当日の4人のアリバイを確認するための事情聴取を始めます。すると4人それぞれが観光名所として名高い地名を自分がいた場所として挙げたのですが…
彼らが本当のことを言っているとすれば、係員や売店の販売員など、各所で各人を見かけたという目撃情報もたくさん出るに違いないはずなのですが…それが出ないとなると、その人物は嘘の証言をしているとしか思えず……
数多くの神話のふるさととして、そして縁結びの神様が祀られている出雲大社があることで有名な島根県の出雲を訪れた小五郎、蘭、コナンの三人は、偶然大社で知り合った女性・江角栄子の結婚相手である実業家・鰐淵耕司の殺害事件に遭遇し、小五郎は警察の捜査に協力することになります。
警察の懸命の捜査の結果、4人の容疑者が浮かび上がり、彼らは事件当時にいた場所を証言しますが、実際に彼らを見たという目撃情報はまったくなく、その証言の信憑性には大きな疑問が残されたのでした。
4人は本当のことを話しているのか? そんな中、事件は新たな目撃情報が確認されたことを発端として、思わぬ展開を見せ始めて…
諸般の事情により中止となってしまったものの、南紀白浜、松江玉造、関門海峡、長崎ハウステンボス、倉敷吉備路と続いたミステリーツアーの第6弾になる予定だった本格謎解きミステリー。ミステリーツアーとしては参加することができなかった分、作品の中で出雲の国の雰囲気を存分に味わって頂ければと思います。
蜆(シジミ)で有名な宍道湖の西岸に位置する空港。宍道湖はコナンでは255-256「松江玉造連句14番勝負」で一度登場したことがあります。
まず小五郎たちはこの空港から降り立った訳ですが、飛行機に乗っているときの小五郎の表情ときたら(笑)
ちなみに冒頭飛んでいた飛行機、多分「LUNA」と表記されていたと思うのですが、これは何のもじりなのでしょうかね。ANA(全日空)でもJAL(日本航空)でもないでしょうし、ちょっと分かりませんでした。
縁結びの神様として名高く、また日本一の大きな締め縄があることでも有名。何と重さは5トンあるそうで、この締め縄にお金を投げ、挟まって落ちてこなければご利益があると伝えられています。小五郎も試しましたが、結果は…
こちらのページで大社の写真を見ることができますので、参考にどうぞ。
コナンが江角栄子に面白い模型があるといって連れて行かれた場所。当時は日本一大きな神殿だったというだけに壮大な建物の模型が飾られていて、まさに神話の世界という言葉がぴったり当てはまります。
そしてこの展示館の職員をしているのが、栄子の幼なじみの福田良介です。
読んで字のごとく人の命を供え物にすることで、言ってみれば生贄(いけにえ)と同じことです。さすがに現代ではあり得ない話ですが、大昔にはこういうものも実在していたんですよね。
詳しく知りたい方はフリー百科事典ウィキペディアのこちらのページをご覧下さい。
簡単に説明すると頭が8つある蛇の妖怪・八岐大蛇(ヤマタノオロチ)に無理矢理さらわれそうになっているかわいそうなお姫様(クシナダヒメ)を助けるため、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治したエピソードで、結果お姫様はスサノオノミコトの妻となります。
またオロチの尾から手に入れた剣は天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)、またの名を草薙の剣(くさなぎのつるぎ)と呼ばれ、これは歴代の天皇が即位する際に継承する三種の神器の一つとしても有名です。
なおもっと詳しく知りたい方は、フリー百科事典ウィキペディアのヤマタノオロチのページとスサノオのページをご覧下さい。
小五郎曰く、年に一度日本中の神様が出雲に集まってくる時に上陸する浜として知られているそうです。この浜で例の時価一千万円の刀は発見されました。
今回の殺人事件を担当する警察。山根刑事と小村刑事の二人が事件を担当し、容疑者の事情聴取もここで行なわれました。
今回の事件の被害者である鰐淵耕司が経営する会社。言うなれば乗っ取り屋ですが、こういった会社のやり方というのは最近世間を騒がせている会社がいくつかありますので、説明は省かせて頂きます。皆さんよくご存知でしょう。
容疑者の一人・石飛一也が経営する出雲そば屋で、何と創業200年を誇る老舗なのだそうです。余計なお世話かもしれませんが、彼が犯人だった場合、歴史あるそば屋は一体どうなってしまうのでしょうか…
こちらも容疑者の一人である藤江竹彦が経営する結構式場。ただし名前の漢字が作中登場しなかったので、ひらがな表記にしてあります。
被害者の鰐淵と容疑者の一人藤江が通っていたという東京の大学。
容疑者の一人、藤江竹彦が事件当時行っていた場所。犯行現場の猪目洞窟のずっと東に位置し、洞窟までは車で40分から1時間かかります。そしてまさに犯行時刻の1時5分頃に天守閣の芳名簿に記帳していることが彼のアリバイとなっています。
ちなみにこの松江城は第2回のミステリーツアーとなった255-256「松江玉造連句14番勝負」でも登場しましたね。
それから芳名簿にあった名前を別にどうでもいいと思えるのですが何となく(笑)、一応ここに列記しておきます。
12:30 岡畑徹(大阪)
12:38 加藤俊一&俊夫(山口)
12:45 金岡慎也(広島)
12:50 駒井徳造(愛知)
01:00 河野隼也(京都)
01:05 藤江竹彦(島根・容疑者の一人)
01:15 宗像千絵(東京)
01:20 岩井伸介(兵庫)
01:25 土肥浄海&愛(香川)
?? :?? 山川剛史(滋賀)
容疑者の一人、福間良介が事件当時昼頃から3時ぐらいまでずっといた主張している場所。仕事が休みだった彼は一体ここで3時間も何をしていたのでしょうか?
容疑者の一人、石飛一也が事件当時いたという場所。
容疑者の一人、江角栄子が事件当時いたと主張している場所で、世界の灯台100選にも選ばれた有名な灯台です。また近くにはウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されている経島もあります。
島根半島の西端に位置し、ここから南に見える稲佐の浜や北方に広がる日本海を見渡すことができます。
こちらのページで付近の写真を見ることができます。参考にどうぞ。
今回のお話はこの季節にはすっかり恒例となったJR西日本のミステリーツアーで企画された作品ということもあり、なかなかの本格推理ものに仕上がっていますね
ミステリーツアー自体はJR西日本で起きた例の痛ましい事故の影響で中止にせざるを得なかったのでしょうが、こうして製作スタッフが頑張って作った作品自体は放映されて、それが一番何よりなことでした。
作品についてですが、今回は久しぶりに小五郎、蘭、コナンの三人がメインということで、ことある毎に申しておりますが、やっぱりこれが一番楽しくて私は好きですね。こうやって小五郎が元気一杯活躍してくれると、コナンも蘭も本当に生き生きとして見えますし、何よりも三人の掛け合いは見ていて楽しくて、仲のいい家族(?)だなとつくづく思います。
それにしても小五郎は今回も「とうぞひとつ、わたくしめに良縁を…」とアホなことを大真面目に言っていますが(笑)、これと飛行機での「ガクガクガク」という神谷明氏のセリフ回しだけで、もう今回は充分楽しませて頂いた感じですね。最初の3分だけでもう充分に満足で、このシーンだけ10回ぐらい見返しましたので(笑)
ミステリーとしては、今回は犯人当てもトリックもかなり楽しめそうな予感がしますが、まず犯人については前編を見た限りでは、名探偵の小五郎が紹介された時の動揺ぶりといい、芳名簿という堅牢なアリバイを持っていることといい、藤江竹彦が一番有力なのは肥えた目を持つミステリファンなら誰もが想像のつく所だと思います。
しかも次回予告でも芳名簿に前日になって時刻まで記録するようになったというシーンがありましたし、その一方でそば屋の石飛氏はほとんど材料がない上に、残りの幼なじみ同士の二人に至っては展開的に言って犯人だったらとても悲しいというか犯人だったら大ブーイングものですからね、そうなると前編を見た限りでは藤江氏なのかなと思ってしまいますよね。
ところで、被害者は昼の12時に骨董品店で刀を受け取り、発見現場付近の猪目の道路で刀を持って立っているのを1時少し前に発見されていることからこの時刻に現場の猪目洞窟にいたことは動かし難い事実です。
また例の幼なじみ二人については、福間氏が靴に残された砂土と稲佐の浜での目撃情報から洞窟で刀を拾って、浜に埋めたことは決定的でしょうから、そうなるとお互いが罪を庇い合う状況になるためには、まず福間氏が当初は証言どおり旧大社駅にいた所、そこで栄子が何故なのか(真犯人が罪を着せるために呼び出したのか?)は分かりませんが、洞窟に向かう姿を目撃し、そのことで福間氏は彼女の犯行だと思い込んでしまった。
そして今度は福間氏が彼女を庇うために強盗犯の仕業に見せかけようと刀を事件現場から持ち出して稲佐の浜に隠そうとしている姿を今度は栄子が目撃したというのが一番自然なのかなと思います。
それから福間氏が稲佐の浜で目撃されたのは2時過ぎだったそうなので、以上の点からどう考えても被害者は1時頃に猪目で殺害されたのは間違いない事実であり、例えば別の場所で殺害されて猪目で遺棄されたということは考えられなくなりますよね。
そうなってくると、もし藤江氏が犯人だとすれば、当然松江にはその時刻行っておらず、芳名簿が偽装となる訳ですが、ここが前編だけでは材料が足らず、正直よく分からない所です。いつぞやの写真トリックの時のように丁度1年前に書かれたものを使ったのかとも思いましたが、それだと前後にある芳名の人に確認を取れば偽装がバレバレですからね。
ちなみに他の三人の誰かが犯人だった場合、三人とも明確なアリバイがないため、前編だけでは推理しようがないです。その場合後編の前半に見せ場というか仕掛けがまだ残されているということになるのでしょうね。
ということで一応藤江竹彦が臭いとは思いつつも、別の展開にも大いに期待しながら後編を待ちたいと思います。