(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 虎倉大介(50) 田所俊哉(26) 虎倉悦子(30) 土井文男(48) 羽村秀一(33) 女性の声 中島由彦 田所香織 富良野健三 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 人気ホラー作家、小五郎の依頼人 虎倉大介の書生 虎倉大介の妻 月刊ホラータイムズ編集長 北関東大学民俗学研究室勤務 ドラキュラ映画に登場した女性 投稿小説「暗闇の呼び声」の著者 田所俊哉の妹 工学博士、フランケン荘の主 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 筈見純 遊佐浩二 寺内よりえ 村松康雄 速水奨 岩井由希子 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし |
発表する小説の大半が吸血鬼を主人公にしていることから「Mr.ドラキュラ」と呼ばれているホラー小説界の第一人者、虎倉大介からの依頼を受け、小五郎、蘭、コナンの三人は、小五郎の運転で彼の住む豪奢な洋館〈ドラキュラ荘〉を訪問することになります。
ドラキュラ荘に到着すると、三人はまず高枝鋏を使い庭の手入れをしていた虎倉の書生を務める田所の応対を受け、その後彼の案内で庭で油絵に打ち込んでいた虎倉の美貌の妻・悦子、屋敷の中では二人で何やら話し込んでいた大学館出版社刊行の雑誌〈月間ホラータイムズ〉編集長・土井文男と、吸血鬼伝説を研究し虎倉の所蔵するドラキュラ文献目当てによく屋敷を訪れるという北関東大学民俗学研究室に勤務する羽村秀一と、屋敷に滞在する人々を紹介されたのです。
ところが肝心の虎倉大介の姿が見えず…小五郎が書生の田所に訊ねると、虎倉は自分の書斎で執筆中だというのです。そこで小五郎は蘭とコナンを残し、田所の案内で虎倉の書斎へ案内されますが、部屋に入るなりいきなり耳をつんざくような女の悲鳴が聞えてきて…
虎倉の書斎はリビングなどのある建物とは別に建てられた塔のてっぺんに作られ、八角形を模った間取りに十字架や蝙蝠の剥製などのドラキュラのコレクションの数々が一面に飾られた、まさにドラキュラ荘と呼ぶにふさわしいといえる不気味な作りになっていました。
そして虎倉自身もドラキュラの衣装に身を包み、ドラキュラ映画を映写機にかけることで創作イメージを湧き立たせて執筆に打ち込む、のというのが習慣になっているというのです。そんな異様な雰囲気にただ圧倒されるばかりの小五郎だったのです…。
それからいよいよ本題に入り、虎倉は小五郎に今回の依頼内容について話し始めたのですが、何と彼が依頼してきたのは彼の美貌の妻・悦子の素行についての調査依頼だったのです。どうも悦子は虎倉に隠れて陰で浮気をしているらしく、小五郎の手でその浮気相手と浮気の決定的な証拠を見つけ出して欲しいというのでした。虎倉の主張が事実だとすると、その相手とは一体…!?
小五郎が虎倉と依頼についての相談が終わった頃には、外は少し前に舞い始めた雪がいつの間にか吹雪へと変わり、日も暮れて辺りを闇が覆い尽していました。そんな悪天候もあって小五郎たち三人は、虎倉の客人としてドラキュラ荘に泊まっていくこととなり、羽村や土井たちとともに書生の田所の作った豪華な晩餐や自家製のローズマリー・ティーを楽しむなど、すっかりくつろいだひと時を過ごしていたのです。
時刻が8時半を回ると、虎倉は〈月刊ホラータイムズ〉に掲載される今月分の原稿を仕上げるために書斎に戻ることとなり、書生の田所に映画とワインを書斎まで持ってくるように命じた上で一人リビングを後にしていきます。
虎倉が姿を消すと、田所は蘭とコナンを誘い、吸血鬼映画の小道具などが収められたドラキュラコレクションのあるコレクションルームに向かいます。
コレクションルームには世界中の吸血鬼映画や、十字架や手首、白木の杭などの数多くのドラキュラコレクションが収められているらしく、それらをお化け嫌いの蘭は怖そうにしながら、コナンは興味深そうにしながら眺めていました。
その一方虎倉の命を受けた田所は、1930年製作の「鮮血の宴」というイギリスの古い映画を選択しますが、この映画は虎倉が最も好きな映画らしく、またコレクションルームにも飾られた白木の杭がラストシーンで使われ、ドラキュラの胸を突き刺したというエピソードも残っているという古典的名作だというのです。
田所が虎倉のもとへ映画とワインを届け9時過ぎに戻ってきた後は、書斎で執筆中の虎倉と、田所が戻ってきた後しばらくして先に休むと言い残して去っていった虎倉の妻の悦子、更には地下にある書庫で調べものをすると言って去っていった羽村の三人を除き、その他の滞在者たちはリビングでトランプをしたり、酒を片手に談笑したりして、くつろいだ時間を過ごしていました。そしてその頃には外の吹雪もいつの間にか治まり…
10時半頃になると地下の書庫に行っていた羽村がリビングに戻ってきて、入れ違うようにして少しの間トイレに向かった土井と小五郎の三人で談笑を始めます。そして更に夜は更け、深夜の0時を過ぎた頃…
その時刻になると蘭とコナンは先に休むと言い残しリビングを後にしようとしますが、一方その頃になっても、書斎で執筆をしているはずの虎倉はリビングに姿を見せませんでした。もうとっくに映画は終っているはずだと心配した書生の田所は、書斎に内線電話を入れますが、これまたまったく返事がないというのです。
何かあったのでは…と心配した小五郎たちは、虎倉の書斎まで様子を見に行きます。ところが書斎の扉は内側から鍵がかけられており、大きな音を立ててノックしても一向に応答はありませんでした。
そこで小五郎のアドバイスで一同はベランダから外に出て、窓から虎倉に呼びかけようということになったのですが…
外へと通じるドアを開け、雪の降り積もったベランダを伝って書斎の窓の所まで回り込んでみると、書斎の窓は開いていて、窓の下の床の上に積もった雪だけが踏み荒らされたくさんの足跡がついていました。それから小五郎が書斎の中に入り中の様子を見てみると…
書斎の中には、まるで自らの愛好するイギリスの古典映画「鮮血の宴」のラストシーンになぞらえるかのように、部屋の壁に飾られた大きな十字架に磔にされた上、コレクションルームに飾られていたあの白木の杭で胸を貫かれて息絶えた、無残な虎倉の姿が……
現場の書斎は、入口のドアは中から施錠され、それに加えてドアの下には防音用のゴムパッキンが嵌められているため、糸を通す隙間はありませんでした。
更にベランダにある書斎の窓は、小五郎たちが入ってきたもの以外はすべて嵌め殺しになっており、ただ一つ書斎に出入り可能なのは小五郎たちも出入りした窓だけでした。
ところがその窓についても、ベランダのすぐ下は絶壁であるため外からはよじ登ることはできず、また窓のすぐ下の部分以外は小五郎たちが通る以前は真っ白な雪がまったく踏み荒らされずに降り積もっていたのです…。
この状況で犯人は一体どうやって書斎から外に脱出したというのでしょうか?
ベ ラ ン ダ |
↓足跡← | ← | ↑ | ↑ | ↑ | ↑ | ↑ | |||||||||||||||||
虎倉の書斎 (死体発見現場) |
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→ 渡 り 廊 下 ↑ |
→ → | |||||||||||||||||||||||
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↑ | ↑ | ↑ | リビング (小五郎・蘭・コナン・田所・土井) |
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→ 廊下 → | ||||||||||||||||||||||||
↑ 階 段 ↑ |
↑ | 入口 | ||||||||||||||||||||||
コレクション ルーム (白木の杭が あった部屋) |
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↑ 書庫(地下室) (羽村のいた部屋) |
上の階へ上がる階段(悦子の部屋は 上の階のコレクションルームのすぐ真上) |
イギリス人小説家ブラム・ストーカーが1897年に書いた作品。ちなみに「フランケンシュタイン」はイギリスの女流作家メアリー・シェリーが1831年に発表した作品です。では狼男は…?(笑)
古い西洋館を舞台にしたオカルトじみた事件ですが、こういう雰囲気の作品は結構好きな管理人です(笑)。
いわゆる密室殺人をテーマにした今回のお話ですが、他にも隠された動機を発見したり、杭を持ち出した方法を推理させるなど、いろいろな趣向が凝らされています。また細かく時間・状況設定もなされており、伏線も丁寧に張られていて、非常に本格作品としては完成度の高い出来に仕上がっていると思います。
焦点は犯人が密室状態の部屋からどうやって脱出したのかということと、小五郎たちのいたリビングを通らずに凶器の白木の杭がどうやってコレクションルームから持ち出されたのかということ、それから殺害動機ですが、動機以外は前編部分に上手い具合に伏線が張られているので、難易度は高いですが論理的に解決を導き出すことも可能だと思います。
ミス・ディレクションを誘うかのような怪しそうな動機もいろいろ出てきますし、結構込み入った構成で推理するのは大変だと思います。しかしこれほど本格ものとしてきっちりしている作品はなかなかないでしょうね。まだご覧になっていない方はぜひじっくりと観ていただきたいものです。
密室トリックはそれ程すごいものではないのですが、それを上手くカモフラージュする方法まで考えて抜かれていて、感心させられました。またラストのフランケンの話も結構笑えてよかったです。
ちなみにコナンが7並べのゲームで止めていたのはハートの6です(笑)