(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 潮文造(40) 平井健一(22) 高梨亘(50) 能勢新吾(35) 三枝恭子(25) 河辺晃(28) 岩田重吉(60) 田中巌(60) アナウンサー ラジオニュース フォックス 潮千里(5) |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 不動産会社 東京支社長、事件の依頼人 東都大学 山岳部 会社役員 小説家、代表作「謎の美女記憶喪失事件」 ハイカー ハイカー 山小屋〈山岳荘〉の管理人 無色、丹原村住人、一億円強奪事件の被害者 フォックスの事件を報道 丹原村の強盗殺人事件を報道 ”狐”とあだ名される正体不明の殺し屋 高木幼稚園園児、潮文造の娘、半年前事故死 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 阪修 小形満 小島敏彦 田中正彦 山像かおり 星野充昭 塚田正昭 声の出演なし 千葉一伸 千葉一伸 ??? 声の出演なし |
ある日の毛利探偵事務所、その日小五郎のもとにやってきた男の依頼というのは実に奇妙なものでした。
その日探偵事務所を訪れたのは関西に本社を置く不動産会社の東京支社長だという潮文造という男で、関西訛りのある言葉で、小五郎に殺し屋を探し出した上で、その殺し屋が自分を殺すのを止めさせて欲しいと依頼してきたのです。
何でも5日前に会社の健康診断を受けた際、医師と看護婦が密かに会話しているのを立ち聞きし、その話から自分がただの胃潰瘍であるにもかかわらず癌に侵されていると早とちりしてしまい、悲観した彼は殺し屋に自分を殺すように依頼してしまったというのでした。そしてその殺し屋というのが、何と最近世間を騒がせている”狐”の異名を取るフォックスだというのです…!!
フォックスとはナイフ投げを得意とする冷酷無比なプロの殺し屋で、その正体は警察も未だに手がかりらしい手がかりは掴めておらず、名前も性別も不詳。ただ左利きで、その左手から投げ出されるナイフで標的を仕留めるということだけはよく知られていました。そして半年前にも、サラ金会社社長殺害事件で世間を賑わしたばかりだったのです。
潮文造はフォックスとのやり取りは全てインターネットや電子メールなどで行っていたらしく、連絡先もその都度変わるため既にキャンセルの連絡も取れない状態だというのです。ただフォックスが潮を狙うのは彼の趣味であるトラヴァース(山の尾根を歩く縦走)の最中にという取り決めとなっていることから、そこにフォックスをおびき出して小五郎の手で捕える…というのが潮の考え出した作戦だったのです。
そのような訳で翌日、小五郎たちは潮とともに丹原山系をトラヴァースすることとなったのですが…
丹原山は美しい新緑に囲まれ、普通の旅行客を装うために小五郎について来た蘭とコナンも、しばらくは周囲の山々の美しい風景に見とれていました。しばらくすると三人はふもとの管理事務所で上級者コースの入山手続きを済ませ、あとは参加者たちが集まり次第、途中で一泊する予定の山頂の山小屋〈山岳荘〉へ向けて出発するばかりとなったのです。
小五郎たち三人とともにトラヴァースすることとなったのは、潮文造の他に毎年丹原山をトラヴァースしているという東都大学山岳部の平井健一、ミーハー蘭もよく知っているという「謎の美女記憶喪失事件」で有名な小説家の能勢新吾、それから二人連れのハイカー三枝恭子と河辺晃でした。他にも高梨亘という初老の男がいましたが、この男は潮の顔を見た途端急に顔色を変え、先に一人で縦走を始めてしまっていたのです。
フォックスが潮を狙うとすれば山の中にゲリラのように潜むか、登山者の中に紛れ込むか…とすれば登山者の中にフォックスがいる可能性も充分に考えられるため、小五郎たちは否が上にも極度の緊張感を持ってトラヴァースを開始せざるを得なかったのです。
トラヴァースが始まると、参加者の誰もがフォックスらしく見えてきて…小五郎たちは縦走のあいだ中、フォックスの不気味な影に悩まされるのでした。更には先に一人山小屋へ向かっていたはずの高梨という初老の男もいつの間にか一行に合流していたのです…
それからトラヴァースは何事もなく進んでいき、そのまま何とか無事に一日目が終わるとと思われたのですが…やはりやはりタダでは済まなかったのです。
最終目的地である山小屋〈山岳荘〉までの最後の休息地点に差しかかった時、突如として事件は起こります。ところが意外にもその犠牲となったのは…
初老の男・高梨の叫び声を耳にして集まってきた一行が崖下に発見したのは、何と後頭部を岩壁に打ちつけて大の字になって死んでいる、大学山岳部の平井健一の姿だったのです…!
なぜ平井健一が…!? 小五郎たちも潮も戸惑うばかりでしたが、とにかく小五郎とコナンは崖下に下りて遺体を検分し始めたのです。すると平井の遺体のそばには、血のついたナイフが転がっていて…。
そのことから平井の死は、自ら過って転落した「事故」ではなく、フォックスの投げたナイフを避けようとして足を踏み外して転落した「殺人事件」であるという線が濃厚となったのです…!
そこで警察が来るまで一行は山小屋〈山岳荘〉の中で待機することとなったのですが、まるでそれを見計らったかのように突然天候が悪化し、辺りは激しい雷雨に包まれ、一行は慌てて山小屋〈山岳荘〉へと駆け込んで行きます。
山小屋〈山岳荘〉に到着すると、小屋の中には山小屋の管理人の岩田重吉という老人が一行の到着を待っていたらしく、待ちかねたように食事の準備を始めます。
そんな中小五郎は警察に連絡を取るため電話を借りたのですが…雷雨の影響で線が切れたらしく電話は不通。山頂には他に小屋はなく、夜に山を下るのも危険であり…結局フォックスがいるかもしれない状況の中で、一行は小屋の中で共に一夜を明かすことになったのです。
そして更に一行を震え上がらせるような出来事が…食事を終えた小五郎は天候が気になりラジオをつけますが、すると小五郎たちの耳に入ってきたのは、ふもとの丹原村の一人の男性が刺殺され、その容疑者が丹原山中に逃げ込んだ可能性があるというニュースだったのです…。殺し屋フォックスに加えて、別の殺人犯が山の中に潜んでいるかもしれない……ますます重苦しい雰囲気が山小屋の中を漂い始めたのでした。
そしてその夜─小五郎の豪快ないびきでなかなか寝付けないでいたコナンは、ふと部屋の中を忍び足でこちらに近づいてくる怪しげな人影があることに気がつきます。そしてその人影はコナンの隣りで眠っていた小五郎のすぐそばで立ち止まり、持っていたナイフを小五郎に向かって振り下ろして……