(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 妃英理 横溝警部 風見良輝(28) 波原霞(26) 南雲暁(60) 南雲伸晴(31) 雨城瑠璃 監督 助監督 カメラマン 刑事 スタッフ1 スタッフ2 鑑識 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 蘭の母親、腕利きの弁護士 静岡県警警部 探偵役 娘役 執事役、南雲伸晴の父親 娘の夫役 女主人役、小五郎の幼なじみ土井垣瑠璃 ドラマの監督 ドラマの助監督 カメラマン 横溝警部の部下 ドラマ収録スタッフ ドラマ収録スタッフ 鑑識員 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 高島雅羅 大塚明夫 森功至 池澤春菜 嶋俊介 成田剣 島津冴子 城山堅 菅原淳一 桜井敏治 長嶝高士 桜井敏治 菅原淳一 千葉一伸 |
「皆さん今晩は。探偵の毛利小五郎です─舞台は人里離れた洋館、愛情と憎悪が絡むミステリー、事件のポイントは色。人は買物をする時無意識のうちに自分の好きな色を選んでしまうものです。そして殺人現場でも…では番組の最後でまたお会いしましょう。毛利小五郎でした」─風邪をこじらせた大物俳優の代わりに番組の前説を任された小五郎は、見事な演技でスタッフを安心させます。
「何ならドラマにスペシャルゲストとして出演しても」と調子に乗る小五郎の前に現われたのは、ドラマに出演するという出演者たち─探偵役の風見良輝、派手好きな未亡人の娘役の波原霞、執事役南雲暁、被害者で娘の旦那役の南雲暁の息子・南雲伸晴の4人の役者たち。
監督の話ではもう一人未亡人の女主人役の雨城瑠璃を加えた計5人の出演者たちでドラマは演じられることになっているものの、当の雨城瑠璃は未だ到着していないとのことでした。
元癒やし系女優ナンバー1の雨城瑠璃に会えると聞いて喜ぶ小五郎と蘭でしたが、監督の話によると何と前説に小五郎を指名したのは彼女だというのです。驚く小五郎でしたが、到着した彼女に言われて彼女が小五郎の幼馴染じみで牛乳瓶の底みたいな眼鏡をかけていた土井垣瑠璃、通称瑠璃っぺであることを知ります。
中学卒業以来の再会を果たした二人でしたが、雨城瑠璃は懐かしさも手伝ってか幼稚園から中学までの昔話をしながら同じく幼馴染じみだった妃英理と小五郎の面白いエピソードをいろいろ蘭に話して聞かせます。
その後しばらくしてドラマはシーン134から撮影が始まりますが、撮影前から共演者の4人に対しやたらと汚い言葉を吐き周囲を困惑させていた探偵役の風見はここでもまた周囲を困惑させる言動をとります。現場の状況からドラマの犯人が誰かを小五郎に推理しろというのです。突然の出来事に戸惑う小五郎は言葉を失いますが、コナンが麻酔銃で眠らせ推理することによってその場は収まります。
見事に小五郎の推理が的中して面白くない風見はまた共演者の触れられたくない秘密を暴露しはじめ、撮影現場は再び険悪なムードに…それから風見は奥の部屋で休むと言い残し撮影現場を後にします。
気分を取り直すため30分休憩することになり、撮影現場を後にしたコナン、小五郎、蘭は、歩きながら雨城瑠璃の口から小五郎と妃の幼い頃の面白い話を再び聞かされますが、その時奥の扉が開き、撮影が再開されるのかスタッフたちが顔を見せます。合流した一行は少し位遅れてもという雨城瑠璃の一声で初雪を楽しもうと外に出ることになったのですが…。
外に出てしばらく雪を楽しんでいた小五郎たちはそこに雨城瑠璃の姿がないことに気がつきます。不審に思っていたその時、洋館の中から女の悲鳴が…雨城瑠璃のものと思われるその悲鳴がした部屋へと急ぐ小五郎とコナンが辿り着いた先で見たものは…床の上で血まみれになって事切れている探偵役・風見と、その傍で両手を血まみれにしたまま呆然としている雨城瑠璃の姿でした……
今回は本格推理も楽しめますが、それとともに小五郎と妃弁護士の幼い頃のエピソードを知ることができたり、ラストで小五郎がハードボイルドのようなカッコいいセリフを吐いたりと、小五郎の魅力が前面に出た傑作です。珍しく解決編では…これは見てのお楽しみということでしょうか。
あとは横溝刑事がとにかく元気があって(笑)、見ていてやはり楽しいキャラだなと思わずにはいられなかったです。それに今まで横溝刑事は「刑事」としか言われていなかったはずですが、弟が神奈川県警の警部であることが分かったせいでしょう、兄の方も「警部」ということがはっきりと確認できました。おそらく前から警部だったのではないかと私は思うのですが、ひょっとしたら昇進したばかりなのかもしれません。
本格ものとしては小中高年の子供に読者が多いコナンとしてはちょっと分かりにくいトリックや、TV・舞台をよく知らないと分からない部分もあったりして少し当てるのは難しいのかなとも思います。かなり大人向けの作品ではないでしょうか。
それでもプロットは結構面白い構成を取っていますし、犯人あて以外にも消えた凶器の行方など、推理する部分はたくさんあって充分楽しめる作品だと思います。ラストの小五郎と妃のエピソード話にオチがついているのも楽しかったです。
また前編の絵についてですが、これはあまり言いたくはないのですが…確かに思い入れのある作品だったので最初見たときはかなり抵抗もありました。いろいろ周囲の声もあるようですし私の気持ちとしてもできれば原作とオリジナルで上手くローテーションを組めないものかなという思いがないわけではありません。
以下ネタバレありですが、前半はとにかく小五郎と妃弁護士の夫婦の面白いエピソードが中心ですが、これがラストにきちんとオチがついていたり、物語冒頭で眠りの小五郎が早々と登場したことが、後々になって影響を及ぼすという実に無駄のない物語構成をとっています。この作品のポイントは犯人あては勿論のこと、それ以外にも隠された動機を当てたり、消えた凶器の行方とそれが何かということを当てるという3点ですが、真犯人を庇い立てする第三者の存在があることで、より複雑な様相を呈しています。これを論理的に当てるのはかなり難しいと思いますが、伏線もきっちり張ってあるので、充分当てるチャンスはあると思います。
また凶器とその隠し場所についてですが、凶器とそれを隠す方法については非常に面白いと思います。ただそれだけに隠し場所がタバコを吸わない人間にも分かる場所だったら…というのが残念であり、この作品の勿体無い部分だったと思います。これが唯一の減点材料ですね。
ファン層を考えると大半の視聴者はタバコを吸わない方だと思いますので、そういった方はまずこういった発想は浮かんでこないでしょうね。ちなみに私もタバコは吸いませんので(というより嫌煙家です・笑)、これはさすがに思いつきませんでした。それよりも未成年者のコナン(新一)なぜこんなことまで知っているのでしょうか(苦笑)
犯人あてをする時に犯人に直接言わず、庇い立てしている人間に推理を披露するという変わった構成をとっていて、少し普段と違い興味深かったですし、更に27・28話「小五郎の同窓会殺人事件」以来久しぶりに小五郎に見せ場のシーンがあったことが小五郎ファンの私としては非常に嬉しかったです。
普段はいい加減でふざけた言動が多く、どちらかといえばお笑いキャラですが、こういったハードボイルド探偵のような渋い部分もあるからこそ私は小五郎というキャラがすごく好きなのです。
本格ものとしては隠し場所があまりにも分かりにくく、そのせいか他の推理も難易度が高めになっているような気がしますが、ハードボイルド作品として見ても面白い部分があるので、充分楽しめると思います。