名探偵コナン379-380「秘湯雪闇振袖事件」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
File379-380 秘湯雪闇振袖事件
英題
Secret Hot Spring, the Snow Dark, and Long-Sleeved Kimonos Case
放映日
2004/11/22・11/29(前編・後編)
原題
TVオリジナル
ジャンル
本格
事件現場
琴屋旅館
管轄
山形県警(真先実警部補)
登場人物
江戸川コナン
毛利蘭
毛利小五郎
高木刑事
坂東京一(48)
保田頼子(37)
明智恵理(34)
柴崎明日香(26)
安西絵麻(26)
深津はるみ(25)
鈴鹿桜子
琴屋旅館 女将
琴屋旅館 番頭
学生
子供
アナウンサー
愛内里菜
真先実(59)
田村刑事
小倉巡査
本編の主人公、正体は工藤新一
本編のヒロイン、新一の幼なじみ
蘭の父親で私立探偵
巡査部長、目暮の部下
日売テレビ プロデューサー
大学館出版社 編集員、王道大学OG
恋愛小説家
ファッションモデル、柴崎代議士の娘
新進油絵画家、安西グローバル社長令嬢
シンガーソングライター、王道大学OG
5年前に自殺した王道大学の女子学生
琴屋旅館 女将
琴屋旅館 番頭
王道大学の学生
第6回子供ソリ大会の参加者
TVのニュースキャスター
歌手
山形県警 警部補
山形県警 刑事
村の駐在
高山みなみ
山崎和佳奈
神谷明
声の出演なし
西村知道
堀越真己
伊藤美紀
幸田夏穂
池澤春菜
白鳥由里
声の出演なし
峰あつ子
巻島直樹
浦和めぐみ
吉田小百合
津本陽日
愛内里菜
中博史
千葉一伸
青森伸
あらすじ
「私だって『明智先生』なんて呼ばれるのは、何だか探偵みたいで…」

 ここ最近肩凝りに悩まされていた小五郎は、その日蘭とコナンを伴って肩凝りにもよく効く温泉の出るという山奥の温泉宿・琴屋旅館を訪れていました。そしてそこで偶然来春放映予定という新作のTVドラマの打ち合わせをしているグループと出会います。

 そのドラマというのは日売テレビと大学館出版社の共同で作成されるらしく、二社を代表して日売テレビからはプロデューサーの坂東京一が、そして大学館出版社からは編集員の保田頼子が出席。そしてドラマの脚本の執筆は人気恋愛小説家の明智恵理が担当することになっているというのでした。

 そしてその内容はというと三人の若い女性が夢を叶えていく姿を描くというもので、そのためロビーには保田頼子の母校である王道大学を卒業し各方面で活躍している女性三人が招待されていたのです。

 その三人の女性─柴崎明日香はパリやニューヨークで活躍しているファッションモデルで、安西絵麻は東都芸術展で新人賞を受賞した新進の油絵画家。そしてもう一人は蘭も大ファンだという今大人気のシンガーソングライターの深津はるみで、三人とも個性的な魅力を持ち、ドラマのモデルにはうってつけと言える女性たちだったのです。

 しかしこの三人の女性、柴崎明日香と安西絵麻の二人と深津はるみの間にはどうやら因縁のようなものがあるらしく…明日香と絵麻ははるみに対して「すぐに消えてしまうミュージシャンも多い」と皮肉たっぷりに話し、不快そうな表情を隠そうともしなかったのです。一体彼女たちの間にはどんな因縁があるのでしょうか…!?

 やがて旅館の客室に案内された蘭たちは、部屋という部屋に飾られている夥しい数の美しい振袖や帯に興味を惹かれますが、宿の女将の話によれば、この辺りでは〈振袖様〉という神様を祀る習慣があるらしく、どの家庭でも同じようにしてごく普通に部屋の中に振袖や帯を飾り付けているというのです。

 そんな風変りな村の習慣に興味を憶える蘭たちでしたが、三人はほどなく執筆のためよく琴屋旅館に籠もることがあるという恋愛小説家の明智恵理の口から、村に伝わるその習慣の由来に関する、とても恐ろしい話を聞かされることとなったのです…。

 明智恵理の話では、この地方一帯に祀られている〈振袖様〉という神様には「振袖般若」という昔からの恐ろしい言い伝えも残されているというのでした。

 昔々のこと─村にはお花という働き者で心優しい若い娘がいたのですが、そのお花がある日足を滑らせて怪我をした侍を助け、そのお礼に美しい振袖や帯をたくさん貰ったというのです。
 ところがそれを妬んだ庄屋の娘二人は、お花に在らぬ濡れ衣を着せて役人に引渡し、着物を奪ってしまったのでした。

 やがてお花は処刑され無残な最期を遂げてしまうのですが……しかし庄屋の姉妹の方も無事には済まなかったのです。

 お花が処刑された夜のこと、庄屋の娘二人は奪った着物や帯を広げて喜びに浸っていたのですが、しばらくすると突然フッと部屋の明かりが消え、何と目の前にお花の亡霊が現われたというのです…!!!

 二人の凄まじい悲鳴を聞き驚いた家の者たちが駆けつけてみると…何と床一面に広がった振袖の上で妹が息絶え、姉の方はというと、庭の池で何本もの帯に絡みつかれて溺れていたというのです……!!

 そしてお花の怨念の深さを知った村人たちはその後彼女の霊を鎮めるために祠を建て、村の守り神として到る所で〈振袖様〉として祀っているというのでした。

 またその一方で〈振袖様〉は復讐の神でもあるらしく…深夜振袖を被ってお参りすると、自分の力では晴らせない恨みを代わって晴らしてくれるという言い伝えも残っているというのです。
 そしてそんな〈振袖様〉に願をかけるために、村には「振袖参りの祠」というものも建てられているというのですが…

 蘭たちと明智恵理がそのような話をしながら樹齢500年という振袖桜のそばまでやって来ると、木のそばにはその振袖参りの祠がひっそりとたたずんでいました。
 そして何となく気になって一行が祠の中を覗いて見ると…何とそこには最近になって奉納したと思われる真新しい千代紙人形が2つも残されていたのです…!

 誰かが最近になって振袖参りの願をかけた…!? とすればその人物は恨みを晴らしたい人間が二人いることになる……小五郎は誰かのイタズラだと皆を元気づけようとしますが、蘭やコナンは何とも言いようのない不安な気持ちを隠せずにいたのです。

 もっとも琴屋旅館自慢の露天風呂にじっくりと浸かり、坂東たちドラマ作成班の一行とカニ鍋を囲んで楽しい晩餐を過ごすうちに、三人はすっかりくつろいだ気持ちに変わり、千代紙人形のことはすっかり忘れかけていました。

 ところが夜になり再び露天風呂に入ろうとした蘭が、小五郎とコナンと別れて深津はるみと女湯に向かってみると…そこには「本日貸切 22時から23時まで」の札がかかっており、止む無く二人は露天風呂のすぐ上にある遊技場まで引き返し、そこで卓球を楽しむこととなります。

 やがて小五郎とコナンも露天風呂から上がり、遊技場で蘭たちに合流。そこで4人はしばらく卓球に興じ、23時半頃になって再び露天風呂へと向かったのですが……

 ところが未だに女湯の入り口の扉には貸切の札がかかっており、その扉のすぐ下の床の上には何と振袖般若の人形が…そしてそれに驚いたコナンたちがドアを強引に外して中に入ってみると……

 温泉の中でコナンたちを待ち受けていたのは、「振袖般若」の伝説さながらに帯に絡みつかれた状態で息絶えている柴崎明日香の無残な姿だったのです…

 そして「振袖般若」の言い伝えを思い出したコナンは、すぐさま旅館のロビーへと引き返しますが、嫌な予感は的中…。安西絵麻が一時間ほど前に離れの祠へ一人で向かったことを知らされたのです。

 慌ててコナンが外に出ようと旅館の扉を開けてみると…雪はすでに止んでいて、地面にはまっ白な雪が一面に積もる中で安西絵麻のブーツと思われる足跡が祠の方に向かって点々と続いているだけ…一方その祠の中では、コナンの想像どおり、床一面に広げられた振袖の上で安西絵麻が胸を刃物で刺されて息絶えており……

 まさしく「振袖般若」の言い伝えになぞらえて殺害された柴崎明日香と安西絵麻の二人。しかし明日香を殺害した露天風呂に向かうには、小五郎たちがいた遊技場を通らなければならず…一方絵麻を殺害した祠へと続く地面には絵麻自身のブーツの足跡しか残っていない…

 この状況で一体犯人はどうやって二人もの人間を殺害したというのでしょうか?

今回の見どころ
雪の温泉宿を舞台にした不可能犯罪、密室トリック

▼総括
 久しぶりにコナンと蘭と小五郎の三人の話で、雪の温泉宿を舞台に典型的な不可能犯罪、密室トリックを題材にした本格ミステリーです。

 ポイントはあらすじにもある通り、絵麻の殺害された祠へ向かう地面には降り積もった雪の上に彼女自身の足跡しか残されていなかったことと、明日香の殺害された露天風呂へ向かうには小五郎たちが卓球に興じていた遊技場を通らなくてはいけないこと、この二つの不可能を可能にするために犯人は一体どんなトリックを用いたのか?

 普段はあまり推理されない方もじっくりして頂きたい、不可能犯罪を題材とした純粋な本格ミステリーです。

▼個人的には
 今回の話は小五郎と蘭とコナンの三人の話であり、なおかつ非常に本格色の濃い作品だったこともあって、文句のつけようのない大満足の前編です。久しぶりに四度も見直してしまった程ですね(笑)

 キャラ的には小五郎の酒浸りシーンが相変わらず大いに笑いを誘ってくれます。それにしてもあのカニは(笑) それから酒の徳利に対し「あれれ~、はじめから空だったんじゃないのかな~?」というセリフにも大受けしました(笑) この二つのせいで笑い過ぎて、しばらくは普通に作品を見られませんでしたが(苦笑)

 蘭も久々にミーハーぶりを発揮していましたし、酒のお代わりを欲しがる小五郎には「ダーメ!」としっかりダメ出し(笑)、また浴衣姿で卓球のラケットを身構えた真剣な表情の蘭は何かとても格好良かったです。

 コナンも冒頭のシュークリームを羨ましがるシーンや温泉に浸かって「極楽、極楽」と満足そうにしているシーンなど、今回はキャラクターが何かこう活き活きとしていた印象があって、この点に関しては個人的には百点満点です。

 また舞台設定も非常に魅力的でした。横溝正史の金田一耕助シリーズを彷彿とさせるような振袖や人形などの小道具に、山奥の雪の温泉宿。そして村に伝わる恐ろしい言い伝えの通りに殺人が行われるという、いわゆる〈見立て殺人〉が行なわれ、なおかつそれが〈雪の上の足跡〉という個人的にもっとも好きな不可能犯罪とそれに加えて露天風呂での殺人という二重の不可能犯罪の構造になっているという贅沢さ。

 久しぶりにミステリを見ていて本当に良かったと思える、ゾクゾクするような楽しいお話だったと思います。

 あとはトリックですが…何度か見ているうちにちょっと閃いたことがあるのですが、長くなりそうなので下の方に書いておきます。すでに自分で推理しているという方やネタバレOKという方で興味のある方はスクロールして下の方の文章も読んでみて下さい。

あれれ~?

 と言えばコナンの口癖の一つですが、今回は何と小五郎が使っています。しかも頭に鉢巻きをしてカニの足を差して(笑)

 高山みなみさんの「あれれ~?」もいいですが、神谷明さんの「あれれ~?」なかなかGOODでしたね(笑)

START

 コナンと蘭が何気なく見ていたTV画面にはとある女性歌手が歌を歌っている姿が映っていましたが、その歌手とは一体…?

知り合いの刑事

 に調べてもらったとある事実により犯人の動機が明らかにされましたが、その刑事とは一体…? しかし相変わらずコナンにこき使われますね、この刑事は(苦笑)

NEXTコナンズヒント
File379 帯
File380 4つの積木
コント
File379
コナン「蘭姉ちゃんは帯持ってる?」
蘭「黒帯ならね!」
コナン「あ、それじゃなくって…」

File380
コナン「今週は、ビーフシチュー対中華豚の角煮、蘭姉ちゃんはどっち?」
蘭「牛!」
コナン「牛…?」
(次回のコナンが「どっちの推理ショー」であることに関連して、12月2日(木)放映の「どっちの料理ショー」の対決ついて言っているのだと思います)
OP
START」(愛内里菜)
ED
忘れ咲き」(GARNET CROW)
監督
佐藤真人
脚本
越智浩仁
絵コンテ
三家本泰美
演出
File379 戸澤稔
File380 原田奈奈
作画監督
File379 増永麗/サブキャラクターデザイン 佐々木恵子
File380 川島明子/サブキャラクターデザイン 佐々木恵子
ビデオ
PART13-7
DVD
PART13-7
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★★★★

 今回の事件については、ずっとあの振袖や着物が何らかの形で事件に関わっているんじゃないかなと思っていました。それで犯行現場に振袖や帯がどちらにもあったことを思い出してちょっと閃きました(笑)

 つまりあのたくさんの帯を水で濡らして、凍らせて固くします。そしてそれを橋渡しにして雪の上に足跡をつけずに祠まで行ったんじゃないかなというのが私の思い付いたトリックです。

 ただ帯の長さというのがどれくらいあるかはっきり分かりません。短いとしたら帯を結んで繋ぎ合わせたのか、そのあたりの細かい点までは分からないですが、雪の上の足跡トリックに関してはそんな所だと推定しています。軒下の道を通れば裏口に行けるらしいので、そこから渡したのかなとも思いますが、現場の状況がはっきり見えないので、具体的なことは想像がつかないのが残念ですね。

 以上のように考えれば、露天風呂にあった帯というのは、その祠の際に使用した凍らせた帯をお湯で溶かしてそのトリックを使ったことを分からなくさせるものなのかなと推測できますしね、見立てではなくて実はすごく合理的なトリック隠滅方法だったという訳です。そうすればネクスト・コナンズ・ヒントの「帯」というのも何となく理由が分かる気がします。

 こんな所でどうでしょうか?(笑) ただ殺害の順番だとか、そういった所がどうも
 まだしっくり来ないです。でしっくり来ない時というのは大概外れている(苦笑)ので、自信はありませんが、せっかく事件ファイルをご覧下さった方に感謝の意味も込めてこんな結末だったら面白いだろうなという見地から一応推理してみました。

 ですが犯人については、正直分かりませんね。あのシンガーソングライターの方だとすれば一度卓球やる前にコンタクトを眼鏡に変えていますが、それは実は犯行現場で落としたもので、後で決定的な証拠になるのかなという感じです。

 最初に蘭と一緒に風呂場にいった時に鍵がかかっているかどうかを実際に確かめたのも彼女だけですしね。本当は開いていたのかもしれません

 これについてはもう一つ違和感があります。小五郎がドアを外した時に2枚の扉が同時に取れずに一枚だけ外れたことです。

 普通ああいった障子などのような左右に引いて開け閉めする扉というのは、2つの板の連結部分である真ん中部分に鍵をつけると思うのですが…
 だとすると鍵がかかっていれば一枚だけが外れるということはあり得ないはずだと思います。何かそれが妙に変だったのですが、これはあまりトリックとは関係ないかもしれません

 一方で明智先生の方にも冒頭の車の助手席にあったドライアイスで保冷されたシュークリームが妙に思わせぶりな所があってちょっと怪しいのですが(苦笑) ただあの程度のドライアイスで冷やせるものは知れているので何に使ったのかさっぱり見えてきません。 女湯の前に落ちていた振袖般若の人形も妙にひんやりしていたらしいですが、これも上の帯を凍らせていた冷たさなのかもしれませんしね。

 あとの二人、プロデューサーと編集者に関しては全然材料がありませんから(苦笑)

 あまり時間がなかったのでこの辺りでいったん閉めさせて頂いて、またもう一度推理を組み立て直したいと思います。何か放映までに思いつけば続きを書きたいと思います(2004.11.25)

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