(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利蘭 毛利小五郎 服部平次 遠山和葉 高木刑事 沖野ヨーコ 水無怜奈 本堂瑛祐 白馬探(17) 傳久(18) 文久 林久 釈蓮(57) 槌尾広生(41) 甲谷廉三(58) 越水七規(18) 時津潤哉(18) 水口香奈 刑事 ジン ウオッカ ベルモット 怪盗キッド |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 西の高校生探偵、新一のライヴァル 平次の幼なじみ 巡査部長、目暮の部下 人気アイドル 日売テレビ アナウンサー 蘭のクラスに来た水無怜奈似の転校生 東の高校生探偵、白馬警視総監の息子 昇岳寺修行僧 昇岳寺の元修行僧 昇岳寺の元修行僧 昇岳寺住職 日売TVディレクター 世話係 南の高校生探偵 北の高校生探偵 メイド ラベンダー殺人事件担当の刑事 黒の組織の男、新一に毒薬を飲ませた人物 黒の組織の男、ジンの手下 黒の組織の女、映画女優クリス・ヴィンヤード 神出鬼没の大怪盗、通称怪盗1412号 |
高山みなみ 声の出演なし 山崎和佳奈 神谷明 堀川りょう 宮村優子 声の出演なし 長沢美樹 声の出演なし 野田順子 石田彰 石井真 声の出演なし 声の出演なし 岡和男 宝亀克寿 田口昂 早水リサ 三木眞一郎 岡本奈美 川津泰彦 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし |
急に花見に行こうと言い出して大阪から出て来た高校生を朝から車を飛ばして小五郎が連れてきたのは、桜祭りで賑やかな春の山。目的地に到着した一行はさっそく桜見物に繰り出しますが、蘭と和葉はきれいな桜と祭の賑やかな雰囲気に大興奮の様子でいました。ところがその和葉を花見に誘ったはずの大阪の高校生探偵・服部平次はコナンと二人で団子に舌鼓を打ち、文字通り花より団子状態だったのです…。
ところがその服部平次を東京に呼んだのは実はコナンの方らしく、二人はそのようにして蘭たちから離れることに成功するとさっそく内密に話を始めたのです。その内容というのが…
消えたんですよ本当に!!! まるで神隠しにあったかのように!!─
二人がまさに内緒話を終えようとしていた頃、突然背後からそのように叫ぶ男の声が聞こえてきたのでした。振り返るとそこには一人の若い修行僧がいて、小五郎に向かってしきりに何かを訴えていたのです。どうやらその若い修行僧、こんな所で名探偵の毛利小五郎に出会えたのも何かの縁と、小五郎に何かの謎解きを頼もうとしていたのです。
その若い男は名前を傳久といい、桜祭りの会場のそばにある昇岳寺という寺に奉公している修行僧でした。そしてその傳久が言うのには、先日傳久が奉公する昇岳寺の和尚を訪ねてきた客が部屋から急にいなくなってしまったというのです…!
その客というのは髪の長い女でその日寺の離れに泊まったらしいのですが、最初傳久が朝食の支度ができたことを伝えにいくと、何と腹に刃物を刺した無惨な姿で息絶えていたというのでした。ところがそのことをすぐに寺で休んでいた和尚に伝え、それから警察にも通報したらしいのですが、警察がその離れに到着してみるとそこには和尚が一人いるだけで、女の死体はおろか、畳に流れていたはずの血さえも影も形もなくなっていたというのです…。
傳久がそのことについて和尚に訊ねると、和尚は「客人は朝早く帰った…きっと夢でも見たのだろう」と傳久の言うことにまったく取り合う様子もないらしく…しかし傳久のあまりに真剣な訴えに心を動かされた服部平次は、とりあえずまず自分たちが和尚に話を聞いてみるからと、傳久の案内で昇岳寺に向かうこととなったのでした。
平次たちが昇岳寺に着くと住職の釈蓮が出迎えますが、平次はもし傳久の言っていることが事実だったとすればこの住職が警察が来る前に死体をどこかに片付けた事になると考えていたのです。そこでその事をはっきりと釈蓮に伝えると、住職はそれなら問題の離れに平次たちを案内すると言い出したのです。
その離れというのはお寺から相当離れた位置にあり、今から50年も前に当時の住職が客人をもてなすために建てたもので、建物からは海が一望することができました。一部屋8畳の部屋が4つあり、それぞれの部屋には寺に代々伝わるという四天王の仏像が1つずつ、ガラスケースに入れて置かれていたのです。
問題の部屋に通された平次たちは傳久の証言に基づいて女性の死体があったとされる辺りの畳を調べますが、陽もすっかり暮れていたために少し調べた所でその日は切り上げることとなったのです。
寺の前に停めておいたレンタカーに戻ると蘭と和葉は早く帰りたがっている様子でしたが、平次とコナンはじっと押し黙ったまま何事かを考えていました。するとそこへ再び傳久が現われ、先日と同じ部屋でその時とまったく同じように腹に刃物を刺した女が倒れているのを見たと平次たちに訴えてきたのです!
傳久の話を聞いた平次たちはすぐさま問題の離れへと引き返しますが、しかし先日傳久が見たのとまったく同じように、部屋の中には死体はおろか一滴の血の跡も残っておらず……
昇岳寺の事件を無事解決した翌日、コナンが目覚めたのは朝の9時でした。前日遅くまで事件に関わっていて毛利探偵事務所に戻ったのが夜の10時過ぎだったため、10時間も眠ってしまっていたのです。
小五郎はまだいびきをかいてぐっすり眠っていましたが、コナンの横で寝ていたはずの服部平次の姿はもうそこにはなく、昨夜朝が早いと言っていたことから既に大阪に帰ってしまったのだろう…コナンはそう思いながら歯を磨くために洗面所に向かいます。すると…
ところがその服部平次、まだ大阪に帰るつもりなど毛頭なかったのです。何でも日売テレビの企画でとある無人島に行くらしいのですが、その企画というのが何と…
探偵甲子園─それは全国にいるであろう才能豊かな高校生探偵を集めてその日本一を決めようという趣旨の企画で、平次にも参加を依頼する旨の手紙が届いていたというのです。和葉はそんな企画に参加してもアホ呼ばわりされるだけだからやめておけと反対したらしいのですが、平次は西の代表として参加して欲しいと言われた以上断れないと、小五郎たちを付き添い役として、当然東の高校生探偵として呼ばれるであろうコナン(新一)も引き連れてその無人島に向かうことになります。
平次たちが待ち合わせの場所だというフェリーの前にやって来ると、そこには日売TVの上着を着た小太りの男が立っていて、西の高校生探偵の到着を待っていました。男は名前を槌尾広生といいディレクターらしく、かなり時間を気にしている様子で少し遅れてきた平次に早く船に乗るようにと急かします。
一方付添いで来た小五郎たちはというと、無人島にはロッジがあるだけで大人数が泊まれるような施設はないらしく…結局平次は港近くのホテルに宿泊するようにと促された付添いの小五郎たちとその場で別れると、和葉の応援を背に助手だと言って半ば無理やり連れていくこととなったコナンと二人で、無人島へと向かう船に乗り込んだのです。
船に乗り込むとさっそく平次たちは槌尾から、島に着いたら夕食まで各自自分の部屋から出ないようにすること、何かが起きるのは夕食の後であることなど、その日の予定について説明を受けます。ところがいざ意気込んで船に乗り込んだ平次だったものの目の前にいる二人の参加者を見てどこか拍子抜けの様子…。音楽に携帯ゲームと超がつくほどリラックスした様子で、まるで緊張感を感じなかったからなのです。
しかしそこは東西南北の代表として選ばれた高校生探偵たち、平次もコナンも二人がなかなかの切れ者だとすぐに見抜き、ほどよい緊張感を保ったまま平次とコナンはそのまま島へと無事到着したのでした。
一方付添いとしてやってきた小五郎たちは槌尾から渡された紙にあったホテルに向かいますが、なぜか日売TVや探偵甲子園の名前を出しても受付係りは無反応…どうやら予約があったというのは真っ赤な嘘だったらしく、いったい何がどうなっているのか訳が分からず途方に暮れていたのです。
その頃ようやく島に到着した高校生探偵一行は、彼らを出迎えた世話係の甲谷廉三の案内でさっそくロッジへと向かいます。しかし西の高校生探偵である平次に、船で同席した二人の探偵、 南の高校生探偵の越水七規と北の高校生探偵の時津潤哉と三人の高校生探偵は揃ったものの、気になる東の高校生探偵は未だ姿を見せず…東の高校生探偵といえば工藤新一その人であるだけに当然といえば当然でしたが、そのことを世話係の甲谷に訊ねると、何とも驚くべき答えが返ってきたのです。
何と東の代表はすでに今朝早く到着してロッジでくつろいでいたのです。しかもその人物というのがコナンもよく知っているあの……
4人の高校生探偵が揃うとそれぞれが簡単に自己紹介を済ませ、その後夕食までの時間を各自の部屋で過ごすことになります。ほどなく夕食の支度を済ませた甲谷が皆を呼んで回りダイニングに集めますが、そこにはディレクターの槌尾の姿がありませんでした。
そこで一行は槌尾を呼ぶために彼の部屋へと向かったのですが、入口のドアをノックをしても中からは全然返事がなく……
異常な事態を感じ取った平次はすぐ様ドアに体当たりをし、ドアをぶち破って中に入ります。すると部屋の中では手足をロープで縛られた状態で槌尾が床の上に倒れていたのでした。
ところが今回のこの騒動、実は探偵甲子園の主催者によって仕組まれた高校生探偵への第1問目だったのです。そしてこの密室の謎を解いた者だけが2回戦に進出し、島から脱出できるというのですが…
そして1回戦の開始からまだ間もないその時でした。北の高校生探偵の時津潤哉が今回の密室トリックが解けたと宣言、しかも彼は2階の自分の部屋にまったく同じ仕掛けを再現してみせると豪語し…
日売テレビのアナウンサー水無怜奈の件を調べて欲しいからと平次を東京にまで呼び寄せたコナン。小五郎、蘭、和葉と一緒にやって来た桜祭りを楽しむ最中にそのことを平次に頼んでいたのですが、とそこに名探偵毛利小五郎の姿を見た近くの寺に奉公する一人の修行僧が、小五郎にある謎解きをして欲しいと頼んできます。
それは3日前のことで、住職の客人という女性が突然建物から消え失せたという何とも奇妙な話。しかも最初自分が見た時は刃物が刺さり血まみれの状態で倒れていたものが、警察を伴って再び訪れると死体はおろか血の跡すらなくなっていたというのです。
寺の住職はその修行僧が幻覚を見たのだと相手にしようとしないのですが、果たしてその真相は一体?
その翌日、平次は今度は日売テレビの企画だという探偵甲子園に出るべく無人島へと向かいます。東西南北の高校生探偵の中から日本一を決めようという趣旨で、4人の高校生探偵が揃うとさっそく密室トリックが第一問目として出題されますが、何とその密室トリックをいち早く解いたのは、コナンでも平次でもなく……
この週の放送から4週にわたって実施されたクイズ。クイズに答えてPCか携帯電話で応募すると抽選で豪華賞品が当たるというものでした。
プレゼントは
[1] 任天堂Wii本体とゲームソフト「追憶の幻想」+コナンのマックカード(500円)
[2] 任天堂DS本体とゲームソフト「探偵力トレーナー」+コナンのマックカード(500円)
のいずれかでした。そして問題はというと、
「無人島に集められた探偵たち。服部が和葉に自分の居場所を教えるために残したものは何?」
というものでしたが、この点犯人当てには直結しませんが物語のネタバレになるため、一応伏せ字にしておきます。
まず冒頭前半戦に突入する前に後半の話のプロローグのようなシーンが追加されています。そしてオープニングテーマも今回は2時間スペシャルということでいつもとまったく違い、ラベンダーの花畑の映像が背後に挿入され、探偵甲子園のメンバーが出てきたり平次と和葉のシーンが多めになっているなどのアレンジになっています。キャラクターの映像自体も「涙のイエスタデー」のものもあれば、その前のオープニングだった「雲に乗って」の映像もあったりでした。
次に本編が始まって桜祭りでコナンと平次が水無怜奈のことで密かに話をしますが、その際にともにセリフはありませんが高木刑事とジン、ウオッカ、ベルモットが出てきます。
それ以外の部分はほぼ原作そのままといっていいぐらいですが、解決編の謎解き部分がトリックについてかなり映像を使って丁寧に説明されていたり、セリフが若干変わっていたりしていますね。
後半の探偵甲子園に関しては細かいセリフの言い回しの変更や若干のカットはあったものの、ほとんど原作そのままでした。
ただ最後の所でただ単に「五本」という所が、それに加えて「いや六本です」とセリフの追加が入っている所がおかしかったですね(笑)
アニメでは小五郎がディレクターの槌尾から受け取った紙にはそのようなホテルの名前が書いてありました。ちなみに原作では小さすぎて読み取れないのですが、その後向かった先のホテルには”HOTEL MINAT…”とありました”港”でしょうかね。
今回の作品は2時間スペシャルでしたが、前半の寺での死体消失事件と後半の探偵甲子園は時系列的には続いているものの、内容的にはまったく別物の作品ですから、完全に分けて感想を書きたいと思います。
まず前半の昇岳寺での死体消失事件ですが、これは実によくできた本格謎解きミステリーでしたね。舞台設定だけ見ると懐かしの霧天狗伝説殺人事件を思い出してしまいますが、今回の作品のトリックも2段構えで本当に驚きの連続でした。しかも風車のヒントが実は間違ったトリックをミスリードする役目も果たしているという所が本当に上手かったです。
正直私も最初読んだ時は小五郎同様に部屋が回転したのではないかと思いました。ただそれだとその時はごまかせてもその後すぐに問題の血のついた畳を処理しないと警察も4つの部屋全部を当然捜索する訳でしょうから結局同じな訳で、この推理はやはり違うのだろうという結論には至りました。
しかしそれ以上は分かりませんでしたね(苦笑) それにしてもあのガラスケースを使ったトリックは見事という他ありませんでした。それだけでも正直十分満足だったのですが、更に血のついた畳の数をめぐって矛盾が出るという所にまで言及し、例の風車の推理が最後に来て、もうただただ感心しきりでした。
まあ二度目の和尚が自分で化けた分は正直かなり危険な行為だとは思いましたが(もし傳久が小五郎たちを呼びに行かずに死体に近づいたら一巻の終わりだから)、それを差し引いても実に丁寧に考えて作られた、難易度は確かに高いものの本格ミステリという観点だけで考えると近年の最高傑作といっていい出来栄えだったと思います。
また和尚はただの悪人なのかなとも思っていたのですが、これも傳久を傷つけないための和尚の気配りだったんですね。そして和尚が最後の残した「言葉は刃物」という言葉は人間常に気をつけていけなければいけない含蓄のある言葉でしたね。
一方後半の探偵甲子園の方はというと、こちらも実に見事に伏線がいろいろと張られ、また平次が犯人を上手く心理的に追い詰めて決定的な証拠を発見する所までこの辺りのストーリー展開はただただ脱帽としか言いようのない出来栄えの良さだったと思います。
ただよく考えてみるとあれっ?と思う部分もありました。この密室トリックって金槌で撲殺してしまった時点でそうする必然性がまったくないんです。このトリックを使ったことで犯人は容疑者リストから外れた訳でもなければ、被害者が自殺した事にもなっていません。もし被害者の時津がラベンダーの事件で自殺した令嬢のように首を吊った状態で発見されていれば、自殺と思い込むでしょうからこのトリックがすごく意味を持ってくるのですが、そういう訳でもないですからね。
そして犯人ですが…正直いって最後まで読むのが辛かったです。まあ何と無くではあるのですが今回は犯人が予想つきました。そしてその人物どう見ても悪い人間には見えなかったですし、結構いい感じのキャラクターだなと思っていただけにあと推理するのは結構厳しいものがありました。何かこうあのキャラクターと復讐というのが重ならないというか。しかしまあそこで非情になれないと探偵は務まらないのかもしれませんが、だとしたら私にはこの職業は不向きでしょう(苦笑)
個人的には最後の小五郎が行きに平次たちを乗せていった船の持ち主を背負い投げ五本(アニメでは六本に増えている)でボコボコにしていたのを見られたのでだいぶ気持ちも楽になりましたが(笑)、何ともせつない、やりきれない気持ちにさせられた事件でした。
そういうこともあって前半の昇岳寺の死体消失事件はは文句なく5点満点、後半の探偵甲子園は個人的な好みも入って3点、平均して4点という所でしょうか。