(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 千葉刑事 妃英理 葉坂皆代(29) 永作司朗(28) 永作の婚約者 警官 TVアナウンサー 野次馬 野次馬 野次馬 店長 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 捜査一課刑事、目暮の部下 蘭の母親、腕利きの弁護士 美容師 格闘家 美人タレント 目暮の部下 ニュース番組のアナウンサー 事件現場近くにいた野次馬 事件現場近くにいた野次馬 事件現場近くにいた野次馬 コンビニ《サンデーマート》の店長 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 高木渉 千葉一伸 高島雅羅 高田由美 遊佐浩二 声の出演なし 佐藤美一 神田和佳 星野健一 萩沢俊彦 角田紗里 川津泰彦 |
いつものようにカラーとカットとパーマ、カットは毛先を整える程度で…
その日夜8時頃、普段から通っている顔なじみのヘアーサロン〈HASAKA〉を訪れた弁護士の妃英理は、いつものようにまず髪を洗ってもらい、それからカラーリングを済ませると、店を経営する女性美容師の葉坂皆代とカラーが定着するまでの約10分の間、彼女とおしゃべりをするのを楽しみにしていました。
妃が担当した裁判の裏話や彼女の夫であり名探偵でもある毛利小五郎氏の話…ところがその日は葉坂皆代の母親が入院中だったこともあり、葉坂皆代はゴミ出しやコンビニへの買出しのため、その10分間を無駄にすることなく忙しない様子で美容室を後にしてしまったのです。
ところが妃が店を訪れる少し前のこと…葉坂皆代の美容室にはもう一人の客が来ていたのでした。
客の名前は永作司朗といい、今人気を集めている格闘家で、近々美人タレントの女性と結婚を控えているという幸せの絶頂期にいる人物でした。
そして葉坂皆代とは以前交際していたらしく、その時からずっと彼女に髪を切ってもらっている関係で現在でも彼女の美容室にやって来るのでしたが、そのことを週刊誌にスクープされて困った事を知った葉坂皆代が今回で彼の髪を切るのは最後にしたいと言い出し、その最後のカットがまさに今始まろうとしていたのです。それが彼にとって最期のカットになるとはついぞ知らずに……
一方そのヘアーサロン〈HASAKA〉に向かって夜道に車を走らせていたのは、誰であろう妃の夫で名探偵でもある毛利小五郎その人でした。
その日小五郎は娘の蘭と居候のコナンを連れ、カフェで妃と久しぶりに会い食事をする約束をしていたのですが、妃が8時に美容室の予約を入れている事を知った蘭に、迎えに言って驚かせてやろうとそそのかされ、二人を連れてそのヘアーサロンへと向かっていたのです。
いつものように蘭に愚痴を言いつつも仲の良い親子ぶりをコナンに見せつつ、車はヘアーサロンのある坂の上の所までやって来ます。そして久しぶりに会うのだから優しい言葉で頼むと蘭に言われ、今日こそあのオバサンにガツンと…と小五郎が蘭に切り返そうとしたその時でした。
車の後方から突然ガツンと何かがぶつかったような音がしたかと思うと、ドサッと何かが落ちたような大きな音が聞こえてきて、驚いた三人は車を降りて辺りの様子を伺いますが、車の外に出ても彼らの周りには何もありませんでした。ところが腕時計型ライトでコナンがガードレールの下を照らしてみると……!?
大量のゴミが捨てられたそのゴミ置場の上には、身動き一つせずに仰向けに倒れている人の姿が…そしてそれは何を隠そう、先ほどまで葉坂皆代のヘアーサロンを訪れていたはずの、あの永作司朗だったのです!!
慌てて救急車と警察を呼ぶ小五郎でしたが、その時コナンは事件現場のそばで聞こえてきた「カラ、カラ、カラ」という奇妙な音が気になったらしく…
そして同じ頃…ヘアーサロンではカットを終えた葉坂と彼女の見事な腕前で仕上がったヘアースタイルに満足そうにしている妃の姿が。
ところがヘアーサロンの外は少し前からかなり騒がしくなってきており、パトカーの音も聞こえていたらしく、何か事件でも発生しているかのような雰囲気。気になった二人は外の様子を一緒に見に行ってみようとします。
事件であれば自分ではなく夫であり探偵である小五郎の担当…とまだ事件の詳細を知る由もない妃は冗談めかして言うのでしたが、葉坂皆代は心の中でこう呟いたのです。自分の弁護をするのはそう、妃弁護士…あなただと…!?
久しぶりに妃英理と一緒に食事をすることになった小五郎と蘭、それにコナンの三人は、妃が贔屓にし、その日も髪を切ってもらいに行っているヘアーサロン〈HASAKA〉に妃を迎えに行く途中、何かがぶつかり落ちる大きな音を聞き、坂道の下にあるゴミ置き場に若い男性の遺体があるのを発見します。
遺体はすぐに人気格闘家だと分かりますが、実は彼を殺したのは犯行時刻とほぼ同じ頃、他でもない妃の髪を切っていた美容師の葉坂という女性だったのです。そして彼女は自らのアリバイを証明する証人として、妃弁護士を利用しようとしているらしく……果たして彼女の目論見どおりに事件は展開していくのでしょうか?
今回から333話から監督を務めていた佐藤真人氏に代わって於地紘仁氏が監督を務めることになりました。佐藤氏同様に於地氏は本名の越智浩仁の名前で初期の頃からコナン作品に関わってこられた方の一人ですので、非常に期待しています。
前編については、まず冒頭ですが、原作では格闘家の永作司朗が美容室で元恋人の葉坂皆代に髪を切ってもらおうとするシーンからスタートしますが、アニメでは毛利探偵事務所で小五郎が新聞を広げながらテレビを見ているシーンから始まります。
番組では永作司朗が来月チャンピオンとの試合がある旨を報道し、画面上では美人タレントだという婚約者と一緒に登場しインタビューに応えています。その後の蘭とのやり取りからその時の時刻が6時半だということも分かります。小五郎と妃が一緒に食事するということもあって小五郎とコナンにちゃんとお洒落してよと言う蘭の表情は、やはり嬉しそうですね。
その後妃が美容室に到着し、シャンプー台に移動、カラーリング終了、小五郎がレンタカーで美容室まで妃を迎えに行く途中蘭とコナンと話、蘭が「確かこの先の坂を登ったあたりだったよ」と原作では続きますが、アニメではカラーリングと小五郎たちの話の順番が入れ替えられています。
その他に原作1話目ラストに相当する部分でコナンの推理に驚く葉坂が「何、何なのこの子」と心の中で驚くシーンや、蘭が「お父さんの競馬中継よりずっといいじゃない!」と言ったのに対し小五郎が「競馬は男のロマンなんだよ」と言い返す部分(笑)、コナンが葉坂に意地悪だと言った後に小五郎にお前の方が意地悪だろうがと言われた後にウロチョロしないようにちゃんと見張っていろと現場からつまみ出され蘭に引き渡されるシーン(笑)、小五郎が葉坂にも殺害動機があると言った後妃が彼女を弁護する論述を展開しますが、それに対し小五郎がしかしと言うのですが、その後更に付け加えで「しかし何なのよ」と妃が更に反論し、二人が睨み合いになり、蘭とコナンが呆れるシーン、小五郎の運転で葉坂の美容室に向かう際にコナンは助手席の蘭のひざの上に乗せられているのですが、それに対し「まあ、たまにはこういうのもいいか」と顔を赤くしつつも心の中でつぶやくシーンなどが追加されています。
また最後には、これまたオリジナルで事件を整理し謎解き・論点の整理をきちんとして後編に続くという形になっているのですが、全体的には細かいセリフの変更やカットもあるのですが、コナンが急ブレーキで頭をぶつけた際の星が回る演出や、妃が髪を切ってもらっていた時のことを説明する所で時計を出して分かりやすく説明するなど、アニメならではのなかなか効果的なオリジナルシーンや演出も多数追加されていて、話をより一層面白いものにしてくれています。このあたりの編集の上手さは監督交替第一回目ですが、実にいい感じですね。
後編については若干のセリフの追加・変更・削除はあるものの、ほぼ原作どおりです。特筆すべき所があるとすれば、アニメではコナンの蝶ネクタイ型変声機が今回予備のものだったらしいのですが、これはどういう理由なのかイマイチよく分かりませんでした(アニメでは赤い服に白い蝶ネクタイだったからでしょうかね)
妃英理御用達のヘアーサロン。現在は葉坂皆代の店ですが、元は亡くなった彼女の父親の店だったそうです。妃との会話からして普段は彼女以外にも複数の美容師が髪を切っているようですね。
もう今更説明する必要のない、コナンではおなじみのコンビニエンスストア
1. 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2. 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
これは令状なく自分の家をみだりに官憲に捜索されない旨を定めた憲法上の規定です。
1. 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
2. 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
これは憲法35条の令状なしには家の中を捜索できないと妃が最初に言い葉坂を守ろうとした事を踏まえて、今度はゴミ置場に捨てた犯行の証拠は令状がなくても押収できるのだという事を皮肉を込めて言ったのだと思います。
まず今回の作品からアニメでは監督が交代しました。2003年以来およそ5年ぶりでしたが、以前映画の監督が変わった時にもちらっと言ったことがあるのですが、個人的には作品を面白くしてくれるのであれば、交代は歓迎ですし、逆につまらなくしてしまうようであれば、さっさと交代してもらいたい…というのが偽らざる本音です。
その基準のみで客観的に作品を見ていくと、とにかく以前のコナンのように細かい点にまで視聴者に気配りができていると思われる部分が随所に見られましたし、アニメオリジナルのシーンが効果的に挿入されているだけでなく、前編の最後にどんな謎が提示されているのかをきちんと整理するなど演出も非常にテンポがよく、私がもっとも熱中した頃の、あの昔のようないい感じのコナン、古き良きコナンに戻ったのではというのが率直な感想です。この調子でこれからの作品にも期待したい所ですね。
オリジナルで効果的だったのはイスの高さの部分で、これはアニメだけの伏線で原作にはありません。しかしなかなか上手い具合に原作を補ってくれていたと思いますし、視聴者にも謎の提出ということで推理させる要素が一つ増えていて効果的だったと思います。
ただ今回の作品は犯人がちょっとおバカさんとしかいいようがない事件でしたね。そもそも妃英理を出し抜こうという事自体無謀としか言いようがない訳ですが、殺害動機がこれだけあるのに、事件現場近くに居合わせるトリックなんてそもそも危険すぎますし、被害者を重くて持ち運べない=犯人から除外されると考えるのはあまりにも短絡的です。
まあしかし完全無欠の犯罪者などそんなにいる訳でもなく大体がこのようにどこかで大きなミスをやらかしているものでしょうけれども、凶器に鋏を使って細かい髪の毛が遺体に付着していたりと…まあお粗末でしたね。コナンからすると与し易い相手だったのではないでしょうか。
一方今回はまた小五郎と妃の犬も食わないようなケンカがまた始まる訳ですが、こちらは非常に面白かったです。大体いつも小五郎がぶたれて終わりですが、今回も期待に違わずという感じでした(笑)