(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利蘭 毛利小五郎 服部平次 遠山和葉 大滝警部 虎田直信(61) 虎田達栄(58) 虎田義郎 虎田由衣(29) 虎田繁次(31) 龍尾為史(56) 龍尾康司 龍尾景(32) 龍尾綾華(27) 龍尾盛代(78) 甲斐玄人 大和敢助(35) 刑事 男 男 男 男 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 西の高校生探偵、新一のライヴァル 平次の幼なじみ 大阪府警警部 虎田家当主 虎田直信の妻 虎田直信の長男、第1の事件の被害者 虎田義郎の妻、旧姓上原 虎田直信の次男 龍尾家当主、大滝警部の高校時代の野球部仲間 龍尾為史の息子、第2の事件の被害者 龍尾為史の息子、流鏑馬の村一番の使い手 龍尾景の妻 龍尾為史の母 6年前に亡くなった村の巡査、流鏑馬の射手 長野県警刑事、虎田由衣の幼なじみ 長野県警刑事 大和敢助の部下 ならず者 ならず者 ならず者 ならず者 |
高山みなみ 山口勝平 山崎和佳奈 神谷明 堀川りょう 宮村優子 声の出演なし 藤本譲 滝沢ロコ 声の出演なし 小清水亜美 田中一成 丸山詠二 声の出演なし 中原茂 本間ゆかり 巴菁子 山野井仁 高田裕司 沼田祐介 伝坂勉 酒井敬幸 後藤淳一 澤田将考 |
全身を強く打ち頭を割り…出血多量で死亡…そんな酷い殺され方をされた自分の唯一の跡取り息子の死の真相を突き止めて欲しいと依頼された小五郎。
その日小五郎が蘭とコナンを連れて訪れていたのは、虎田家の当主である虎田直信の屋敷でした。直信が言うには息子の義郎は竜巻に遭い中空に吸い上げられ、岩場に落ちて亡くなったらしいのですが、その舞い上がる様を何人もの人が見ていたらしいのです。
ところがそれから丸一日経って見つかった義郎の亡骸のそば、頭から流れ出た血だまりの上には、一旦踏まれた後、血が乾く前に置かれたらしいムカデの死骸が置かれていたというのです。そのような有様を見つけたにもかかわらず助けを呼ぶどころか、まるでいい気味だと言わんばかりに…。
義郎に恨みを持つ犯人の心当たりはないのか…その話を聞いたそうコナンが訊ねると、直信の傍らにいた彼の妻の達栄はまるで確信しているかのようにある一族の名前を挙げたのです。
その一族の名は龍尾家…虎田家とは長年いがみあってきた家柄らしく、実は小五郎が今回呼ばれたのは、その龍尾家でも最近当主の息子が亡くなり、しかもそれを虎田家の仕業と決めつけ、その死の真相を突き止めるために腕利きの探偵を呼んだことに対する対抗措置だったというのですが……!?
体を縛った上に土に埋めて…頭を鈍器で何度も殴って撲殺…さらにその血が乾く前に額の上に置かれたムカデの死骸……一方その龍尾家の屋敷に腕利きの探偵として招かれていたのは、誰であろうコナン(新一)のよきライバルで高校生探偵の服部平次でした。
平次が幼なじみの遠山和葉とともに龍尾家の当主・龍尾為史に招かれたのは、彼が大阪府警の大滝警部と同じ高校の野球部のOBで、平次の活躍ぶりを大滝からよく聞かされていたためでした。長野県警ではまだ彼の息子・康司が誰になぜあんな殺され方をしたのか皆目見当がついていないらしく、「捜査中」と同じ答えを繰り返すばかりだったため、業を煮やして大滝に頼んだというのです。
ところが龍尾家でも虎田家とまったく同じように、為史の傍らにいた彼の母である龍尾盛代はまるで確信しているかのように虎田家の名前を挙げます。康司が殺されたのは腹いせ…自分の所の息子が死んだのは龍尾家のせいだと逆恨みし虎田家の誰かが康司を殺したのだと言い切ったのです。
為史との面会を終えた平次は、和葉とともに康司の遺体を最初に発見したという為史のもう一人の息子・龍尾景に話を聞いた後、虎田直信のもう一人の息子で、虎田義郎の遺体を発見したという虎田繁次に話を聞きに向かいます。
一方小五郎たちの方はまるでそれと行き違うかのように、虎田繁次に話を聞いた後、龍尾景に話を聞きに行きますが、やがて両者が行き着いたのは、虎田義郎の妻の由衣…。実はこの一帯では6年前にも変な事故で人が亡くなったらしいのですが、その時の遺体の発見者が彼女だったというのです。
6年前の変死事件で亡くなったのは村の祭りでその年の流鏑馬の射手を任されていた甲斐玄人という男性で、その練習中に崖から落ちて亡くなったというのですが、その話を聞こうと平次が由衣がいるという虎田家の馬屋に向かってみると、そこで待ち受けていたのは肌が黒く碧眼で人相の悪い男で……
ほどなく小五郎やコナンたちと合流した平次は屋敷の中で由衣に6年前の甲斐玄人の変死事件について話を聞きますが、甲斐玄人は村の巡査で正義感が強く親切で優しく、村で彼のことを悪く言う人間は一人もいないほど慕われていたらしく、事故があった時も村人総出で探し回ったというのでした。
しかし落下した衝撃で腰の骨が折れて身動きが取れなかった上、運悪く落ち葉の季節だったため、落ち葉に埋もれていて見つからないでいるうちに、餓死してしまったというのでした。
もっとも遺体のそばには今回の2つの事件同様にムカデの死骸が落ちていなかったことから、とりあえず小五郎も平次も甲斐巡査の事故死と今回の殺人事件とは無関係であると考えているようでした。ところが由衣はさらに気になることを口にしたのです…亡くなった虎田義郎と龍尾康司の二人が警察に行く行かないで密談をしていたと……
そしてその日の晩のこと、由衣の話を聞き小五郎と平次、それにコナンが龍尾家を再訪している頃、虎田家で二人で先に休んでいた蘭と和葉は妙な音で目を覚まします。
雨と雷の音がする中、それに混ざるようにして聞こえるのは床の軋むような音。そして次の瞬間、雷鳴がピカッと光ったその刹那、二人の目の前に現れたのは……。
その翌日、龍尾家に向かっていた小五郎たちは龍尾景の妻の綾華の道案内で虎田家に向かっていました。何でもこの村には馬小屋は虎田家にしかなく、流鏑馬の名手である景の馬も虎田家の馬小屋から馬を借りているらしく、その日も景の馬を借りに行くついでに小五郎たちの道案内も買って出たのです。
虎田家に着いた一行が屋敷の中に入ってみると、奥から聞こえて来たのは、蘭と和葉の声。二人は虎田家の人間に何かを必死で訴えているらしいのですが、どうやらそれは彼女たちが昨晩雷鳴の中で見たあるものの話のようでした。
ところがその話を横で聞いていた綾華が突然叫び声を挙げ、怯えたような表情でトイレに駆け込んでしまい……
長野県内にある名家・虎田家と龍尾家にそれぞれ招かれた小五郎たち一行と平次&和葉。彼らはそれぞれの当主の息子の死の真相を探るように依頼されたのですが、捜査を開始してみるとそこに見えたのは虎田家と龍尾家の代々に渡る根深い確執だったのでした。
そして6年前にも村の巡査として村民から慕われていた甲斐玄人が変死した事件が発生していた事を知ったコナンと平次は不可解な行動をする長野県警の大和敢助を尻目に更に捜査を進めていきますが、そんな中虎田家で留守番をしていた蘭と和葉が雷鳴の轟く真夜中に妙な影を見るという事件が発生。そしてそれをきっかけに新たな殺人事件が発生し……
武田信玄縁の地で発生した連続殺人事件を追う平次とコナンは無事解決できるのでしょうか。そして突然蘭と和葉を襲った「恋の風林火山」の行方は?
今回の作品は90分構成で本来なら3部作となるはずの作品ですが、アニメ7の影響でまず1時間SPで放映され、解決編のみ30分で放映という何とも奇妙な形での放映となっています。
そして何よりも問題なのが、今回の解決編から1時間SPでなく通常放送になって気づいたことですが、7時からの放送に変わったコナンの本編が終わってからCMを挟んでエンディング、そして次回予告とネクストコナンズヒントは何と次のヤッターマンが終わってからの30分後という形になったことです。
これは申し訳ないですけれども抱き合せ商法みたいなもので、各作品それぞれを単独で楽しみたい人にとっては迷惑千万なだけで、まあ昨今は録画環境も進歩して編集も可能ではあるとはいえ、はた迷惑な構成は早急に改善してもらいたい…とこの放映当時は感じましたね。
まず冒頭OPに入る直前、虎田達栄が長男の義郎は龍尾家の誰かに殺されたのだと言った後にOPに入るのですが、原作でその後にある龍尾家の息子もこの間死んだから龍尾家も探偵を呼んだという半ページ分がカットされ、OP後いきなり龍尾家の平次のシーンからスタートします。
次に龍尾家で平次が当主の為史に事情聴取している際に大滝警部が原作では姿が見られるのですが、アニメではそれがカットされ、しかも大滝と為史が高校時代の野球部のOBだという部分もカット(ただ「旧友」とだけ)されてしまっています。
その他にも未だ正体不明(笑)の和葉のオカンが信州味噌を買って欲しいと和葉に頼んでいた事に平次が触れる発言(蘭と和葉に留守番していろと言う部分)、雷鳴で映し出された光景に蘭と和葉が驚いてから平次たちが龍尾綾華を伴い虎田家にやって来るまでのシーン半ページ分(馬小屋の話)、恋の駆け引きも風林火山だと蘭と和葉がブツブツ言う部分など、全体的に細かいセリフのカットが目立ちました。
そして本編の最後にコナンと平次が事件について整理して事件の問題の所在などを整理するシーンが追加で挿入されて、ここだけが大幅な追加になっています。
本事件の解決編であるこの回についても、原作の最終話で龍尾家に舞台が切り替わった直後(表紙含めて4ページ目)が全てカットされている他、全体的にセリフのカットが目立ちますが、アニメだけ見ても充分理解できるように上手く編集されていると思います。
疾走する馬上から的に鏑矢(かぶらや)を射る、平安時代から存在する日本の伝統的な儀式で、江戸時代には将軍家の厄除け・誕生祈願の際に行われ、現在は神社の神事として日本の各地で盛んに行われ、観光の目玉にもなっています。
トンボはただ前に進むのみで後にさがる事が出来ない昆虫であることから「勝虫」とも呼ばれ、戦国時代の武将たちの間では不退転の決意(後退しない、逃げないという意気込み)を示す為、好んでその武具や着物の柄に使われたそうです。
兜の前立てにトンボを使っていた武将として有名なのは、”槍の又佐”と称される槍捌きで織田信長の下で活躍し、天下人・豊臣秀吉の親友として豊臣政権を支えた加賀百万石の祖・前田利家や、今回メインで登場する戦国最強と言われた武田騎馬軍団を作り上げた武田信玄の幼少の頃の守り役・板垣信方などがいます。
「甲斐の虎」と称される甲斐(現在の山梨県)を本拠とする戦国大名で、1573年に上洛途中で病没するまでに信濃(現在の長野県)・駿河(現在の静岡県)や上野など他国の一部を領有する大大名になっています。彼が作り上げた騎馬軍団は戦国最強と恐れられ、あの戦国の風雲児・織田信長や江戸幕府を開いた徳川家康も恐れていたといいます。
また「風林火山」の旗を掲げ駿河の今川氏や相模の北条氏としのぎを削り、終生のライバルとなる「越後の龍」と称された上杉謙信とは川中島の戦いで5度に渡って対決したエピソードは小説や映像作品でも数多く採り上げられ、現代においても地元のみならず全国的な知名度と人気を誇る戦国大名です。
「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」
「その疾(はや)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵略すること火の如く、動かざること山の如し」というのは、中国の春秋時代に孫武という人物が著した古今東西の兵法書のうち最も有名な兵法書「孫子」にある一文で、武田信玄がこれを自らの軍旗として掲げて戦ったことで有名です。
ちなみにこの「風林火山」は南北朝時代にも南朝の将軍として室町幕府を開いた足利尊氏と戦った北畠顕家も旗印として戦っていたのですが、武田信玄の方があまりにもインパクトがあったためか、今では武田家をイメージする軍旗として定着しています。
今回の作品が少年サンデーで連載されていた2007年当時に放送されていたNHKの大河ドラマで、武田信玄の懐刀として活躍した隻眼の軍師・山本勘助を主人公に描いた井上靖原作の「風林火山」をドラマ化した作品。主演・内野聖陽、脚本・大森寿美男。
一般的な知名度よりも演技力を重要視した配役とホームドラマ的な要素は極力排除した骨太の時代劇として評価の高い作品である一方、この作品オリジナルの設定として信玄の側室となる諏訪頼重の娘・由布姫に思慕の情を抱き、尽くそうとする勘助の姿を軸にストーリーが展開していきます。
今回のコナンは明らかにこの大河ドラマを意識して作られており、勘助をイメージさせる長野県警の大和敢助と、由布姫をイメージさせる彼の元部下の虎田由衣の恋模様も事件と同時に描かれていますよね。
ちなみに虎田由衣の旧姓上原というのは、由布姫の父・諏訪頼重の居城であった上原城が由来だと思われます。また他の登場人物もこの武田信玄と上杉謙信に縁のある名前(武田信玄の弟信繁とか、謙信の最初の名前長尾景虎とか)が多数つけられていますね。
武田信玄のトレードマークとも言える兜で、この兜を被ると戦に負けなかったとも伝えられる武田家の神器。由布姫の父親である諏訪頼重が諏訪大社大祝を務めていた諏訪大明神より授けられたと伝えられています。
武田家の中で百足(むかで)の旗差しを背負い戦場で伝令役を務めたのがこの百足衆でした。また武田軍の重要な軍資金の一つである金山の開発に携わった人々も百足衆と言われたそうです。
戦国時代に具足、旗差物などのあらゆる武具を朱塗りにした部隊の事で、当時の原料で赤色は高級だったため、それを任されるというのはそれだけで精鋭部隊の証であり、武士の誉れだったといいます。
武田信玄に仕え、信玄の長男の義信の守役でもあった飯富虎昌がその最初とされ、彼が信玄と義信の対立に巻き込まれて自害すると、弟で馬場信春・内藤昌豊・高坂昌信とともに武田四天王の一人として称えられた山県昌景が兄の跡を継ぎ武名を轟かせました。
武田家以外で有名なものとしては、ゆるキャラで大人気のひこにゃんの故郷・彦根藩の初代藩主で本多忠勝・酒井忠次・榊原康政とともに徳川四天王と呼ばれた井伊直政の”井伊の赤備え”や、大阪夏の陣で大活躍した真田幸村がよく知られています。
正確には「人は城、人は石垣、人は堀。情けは味方、仇は敵なり」で、これはどれだけ城を堅固にしても、人の心が離れてしまったら世を治めることはできない。また情けは人を繋ぎ止め結果として国を栄えさせるが、仇を増やせば国は滅びるという意味で、人の心を大切にすること、人心掌握が何よりも大事だということを表したものです。
ちなみに信玄はその生涯で一度も甲斐国内に新たな城は普請せず、堀が一重あるだけの躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)に住んでいました。
戦国時代好きにはたまらない今回のお話、かく言う私も戦国マニアの一人のため、実に楽しめました。私も毎年大河ドラマはほぼ欠かさず見ているので今回の作品のモチーフとなっている「風林火山」は見ていましたし、風林火山の意味も知ってはいたのですが、風林火山の後にまだ陰と雷があったというのは知りませんでしたね。大変勉強になったといいますか、衝撃を受けました。
それにしても今回の犯人は本当に悪い奴らというか、金のためにこんなにたくさんの人間を殺しても屁とも思わないというのには、正直腹が立ちました。それもあってコナンのサッカーボールが犯人に命中した時は大歓喜でしたが、おそらく原作者の青山先生も描いていて思わず感情移入してしまったのでしょうか、今回の犯人は特別悪そうな面構えでしたし、原作で犯人にサッカーボールがぶち当たったシーンの描写も何か凄いめり込み方で力入っているなあと感じましたね(笑)
蘭と和葉の恋の風林火山に関しては大変残念な結果に終わってしまいましたが、まあ作品が続く限り本当に可哀想なんですが、二人の恋に進展はないでしょう(苦笑)
今回の犯人当てで重要な働きをしたのがこの馬の毛色についてでした。ウィキペディイアの参考ページ見て頂ければ分かるとおりで、黒鹿毛(くろかげ)というのは若干茶色・栗色が入った黒で、青鹿毛(あおかげ)というのが純粋な黒に近いんですね。