名探偵コナン537-538「怪盗キッドvs最強金庫」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
File537-538 怪盗キッドvs最強金庫
英題
Kid vs the Strongest Vault
放映日
2009/6/13・6/20(前編・後編)
原題
第64巻
File11「鉄狸」
第65巻
File1「潜伏」
File2「解錠」
ジャンル
怪盗
事件現場
鈴木次郎吉邸の大金庫「鉄狸」
管轄
東京警視庁捜査二課(中森警部)
登場人物
江戸川コナン
毛利蘭
毛利小五郎
高木刑事
佐藤刑事
鈴木園子
鈴木次郎吉
ルパン
榎本梓
後藤善悟(38)
秋津益彦(32)
瀬戸瑞紀(23)
記者
記者
記者
機動隊員
機動隊員
三水吉右衛門
中森警部
茶木神太郎
怪盗キッド
灰原哀
吉田歩美
小嶋元太
円谷光彦
目暮警部
松本警視
白鳥警部
千葉刑事
鍋井永貴
本編の主人公、正体は工藤新一
本編のヒロイン、新一の幼なじみ
蘭の父親で私立探偵
巡査部長、目暮の部下
警部補、目暮の部下
鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友
鈴木財閥相談役、鈴木史郎会長のいとこ
鈴木次郎吉の愛犬
毛利探偵事務所下 喫茶店《ポアロ》店員
ボディーガード
使用人(秘書)
メイド
事件記者
事件記者
事件記者
中森の部下
中森の部下
江戸時代に活躍した絡繰人形師
東京警視庁 捜査二課警部
東京警視庁 捜査二課警視
神出鬼没の大怪盗、通称怪盗1412号
黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保
帝丹小学校に通うコナンのクラスメート
帝丹小学校に通うコナンのクラスメート
帝丹小学校に通うコナンのクラスメート
警視庁捜査一課警部
警視庁捜査一課警視、目暮の上司
警視庁捜査一課警部
捜査一課刑事、目暮の部下
鍋井進の息子
高山みなみ
山崎和佳奈
神谷明
高木渉
湯屋敦子
松井菜桜子
永井一郎
???
榎本充希子
楠大典
山田義晴
國府田マリ子
松本大
柳沢栄治
渋谷茂
蓮池龍三
柳沢栄治
声の出演なし
石塚運昇
田中信夫
山口勝平
声の出演なし
岩居由希子
声の出演なし
声の出演なし
声の出演なし
加藤精三
井上和彦
千葉一伸
森功至
あらすじ
「来る…奴は必ずやって来る…あのいまいましい不敵な笑みをひっさげて…」

 決死の捕物劇─松本警視の顔に傷をつけた連続殺人犯の事件を無事解決したコナンは、毛利探偵事務所下の喫茶ポアロで小五郎と蘭、それに高木刑事と事件が掲載された新聞を見ながら話に花を咲かせていました。ところがその話を羨ましそうに聞く一人の男がいたのです。

 それは毎回毎回怪盗キッドに逃げられ事件を解決できないでいる警視庁捜査二課の中森警部。しかも最近その怪盗キッド自体音沙汰がなく張り合いもない…と愚痴をこぼしながら忌々しそうにコーヒーをすするのでしたが…。

 ところが中森警部の知らない所で怪盗キッドが動きを見せていたのです。日売新聞の1面に大々的に掲載されたその記事には「怪盗キッド、今度は宿敵・鈴木次郎吉氏に挑戦状!」の見出しが踊っており…。

 「観念召され鈴木相談役…無駄な抗いは止めて赤子が如く神妙にし、月が闇に呑まれる中当家に伝わる大金庫を我が凌駕するのを待て 怪盗キッド」

 その頃、噂の主・鈴木次郎吉の屋敷には日売テレビをはじめとするマスコミが殺到していて、今回の予告状には上記のように書かれていたと明かすのでした。「大金庫」というのは幕末にその名を轟かせたカラクリ師・三水吉右衛門が亡くなる間際に作ったという難攻不落の「鉄狸」のことで、これまで鈴木家に押し入った名だたる盗賊たちをことごとく返り討ちにした次郎吉自慢の金庫だったのです。

 予告状をカメラマンたちの前に見せながら次郎吉が得意気に話していると、そこへ一人の男が姿を現します。それは毎回毎回怪盗キッドに逃げられ事件を解決できないでいる、先ほど喫茶ポアロでコーヒーをすすっていたはずの中森警部でした。そして中森は警察よりも先に新聞マスコミに予告状が公開されたことに立腹しているようでした。

 ところが次郎吉はそこで思わぬ事を中森警部に告げたのです。予告状に描かれているイラストを見るように促し、予告状はキッドからのものではなく偽物だから警察には知らせなかったというのです。しかし世間が本物と思っている状況で勝てば自分の武勇伝に加えることができるとマスコミには本当の事を言わずに敵を迎え撃つというのでした。

 そしてそれから3日後…鈴木次郎吉の屋敷には、次郎吉から予告状は偽物かもしれないと聞かされたにも関わらず女の勘でキッドは来ると予想した園子に呼ばれた小五郎と蘭、それにコナンも姿を見せていました。更に同じようにキッドは来ると考えたのか、金庫の部屋の周りを固めるように入念に指示を送る中森警部の姿もあったのです。

 屋敷に到着した小五郎たちは次郎吉の案内で自慢の「鉄狸」を見せてもらいます。それは蘭曰く壁に埋まっていて金庫というよりは金庫室と言った方が正しい代物で、見るからに開けるのに骨が折れそうな鉄の扉が付けられていたのでした。

 部屋の中は奥行き4m弱、およそ6畳のスペースで、厚さ50cmの鉄板に囲まれていて、戦時中にはまだ子供だった次郎吉が親と一緒に中に入り空襲を凌いだという鋼の部屋だったのです。更に小五郎からおもむろにタバコを一本拝借した次郎吉がそれを部屋の床の上に落とすと……。

 すると部屋の中からはゴゴゴーッという大きな音がしたかと思うと鉄格子が一瞬の間に出てきて、天井・壁・床を囲うようにして部屋全体を覆いつくしたのです…!!!

 重量センサーでタバコ1本にすら反応する…これではさすがのキッドも金庫に近づくことさえできないと、満足そうに笑う次郎吉は、金庫を見せ終わると今夜は何もないから帰っていいと小五郎たちに言い残して部屋を立ち去ろうとします。そして中森警部にも上からの圧力がかかったのか茶木警視からの撤収命令が下り……

 露骨な圧力を苦々しく思いながらも、予告状は偽物からのもので、見るからに凄い防犯装置のついた金庫がある以上大丈夫だろうと中森警部も思い直し、上からの命令に従おうとします。ところが最後に部屋の中をもう一度確認してドアを閉めようとしたその直後でした。中森警部と部下の警察官は部屋の床の真ん中に先ほどは置かれていなかった一枚のカードが残されていることに気がついたのです。

 「予告通り、月が闇から顔を出す前に…狸の腹に入った大切なお宝を…頂きに参りましょう…怪盗キッド」

 それは紛れもない、いつもの怪盗キッドのイラストの描かれた予告状でした。しかしタバコ一本ですら反応する重量センサーが配備されている中、そのカードはどうやって部屋の中に置かれたのでしょうか…!? その一方でそれを知った次郎吉の様子が、どうもいつもと違うことにコナンは違和感を感じ…

今回の見どころ
伝説のカラクリ師・三水吉右衛門が作った大金庫「鉄狸」と怪盗との対決

 鈴木園子の叔父・次郎吉のもとに届いたという怪盗キッドからの予告状─そこには幕末にその名を轟かせたカラクリ師・三水吉右衛門が亡くなる間際に作ったという、これまで鈴木家に押し入った名だたる盗賊たちをことごとく返り討ちにした難攻不落の大金庫「鉄狸」をターゲットにすると書いてありました。

 ところがその予告状、これまでのキッドが送りつけてきた予告状と違い文章は古めかしい文体でしかも縦書き、そして描かれているイラストも違っており、次郎吉もそれが偽物だと考えているようでした。ところが次郎吉は自分が勝てば武勇伝の一つに加えられるからとその予告状をマスコミに公開、事情を知った中森警部は次郎吉の屋敷に押しかけて厳重な警戒態勢を取ります。そして園子に呼ばれてコナンたちも屋敷に姿を見せていました。

 コナンたちはそれから屋敷にある「鉄狸」を見たのですが、重量センサーでタバコ1本にすら反応し鉄格子が素早く部屋を覆いつくす仕掛け…さすがにキッドでもこれでは太刀打ちできないように思えたのですが、部屋の中にはいつの間にかキッドの予告状と思われる一枚のカードが床の中央に置かれていたのです。いったいどうやって金庫の中に!?

原作との相違点
前編

 まず冒頭に535「古き傷跡と刑事の魂」のラストシーンのハイライトが挿入されています。この部分原作では本来ないのですが、この事件の犯人ももろに登場しているので注意が必要です。その影響で本来この回には登場のない灰原、少年探偵団、目暮、松本、白鳥、千葉も作中に登場しています。

 そしてオープニング後の前半はほぼ原作の通りですが、一点小五郎たちが次郎吉に「鉄狸」を見せてもらおうとする直前にコナンが以前三水吉右衛門が作ったカラクリ屋敷でえらい目に遭ったと回想する部分がありますが、これは394-396「奇抜な屋敷の大冒険」のエピソードのことを指しています。

 それから今回登場する次郎吉が新たに雇ったという3人の使用人に原作ではない年齢の設定がアニメでは付け足されています。

 後半についてもほぼ原作の通りでした。今回は全体を通して非常に原作に忠実な構成になっています。セリフのカットもほとんどありませんでした。

後編

 後半に関してもほぼ原作のままでした。前後編通じてセリフのカットもほとんどなく今回はほぼ原作どおりです。

豆知識
三水吉右衛門

 この人物については394-396「奇抜な屋敷の大冒険」で詳しく語られていますので、そちらをご覧ください。

兵どもが夢の跡

 中森警部以下機動隊員が一斉にキッドを追いかけて次郎吉の屋敷を後にし、屋敷の中がガラガラになった光景を見た小五郎が口にしたセリフ。

 元になっているのは「夏草や兵どもが夢の跡」という俳人・松尾芭蕉の俳句です。有名な「奥の細道」の旅の途中1689年に平泉に立ち寄った際に詠んだ句で、鎌倉時代に兄・源頼朝に追われた源義経が奥州藤原氏と頼って落ちのびますが、頼りにしていた藤原秀衛が病没し、跡を継いだ嫡子泰衛の裏切りにより義経主従は命を落とします。

 そしてその藤原氏も後に頼朝に攻められて滅亡し鎌倉幕府が全国を統一を成し遂げる訳ですが、芭蕉は平泉の夏草がいつの時代も変わりなく元気に生い茂っている光景に比べればそれらの悲劇はまるで夢のようだと人の世の儚さを哀れんだのだと解釈されています。

NEXTコナンズヒント
File537
鈴木次郎吉
File538
スケートボード(放映分は直後に「歩美ちゃん誘拐事件」の再放映のため)
ネットワークカメラ(本来のNEXTヒント)
コント
File537
園子「ああ、キッド様~」
コナン「あ、おじさんがヒントなんだけど…」
園子「ああ、ヒント様…」

File538
「怪盗キッドvs最強金庫」放映分
キッド「今日はルパン・コナンならぬ、ルパン・キッドだったな」
コナン「ハイ、ハイ」

「歩美ちゃん誘拐事件」放映分
元太「なんだそれ?」
コナン「ああ、ネットワークをだな…」
元太「おまえの話は…つまらん!」
OP
Everlasting Luv」(BREAKERZ)
ED
Doing all right」(GARNET CROW)
監督
於地紘仁
構成
影山楙倫
絵コンテ
影山楙倫
演出
File537 古谷田順久
File538 鎌仲史陽
作画監督
File537 山崎正和、熊田亜輝
File538 岩井伸之
ビデオ
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DVD
PART18-4
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★★★★★

 今回はキッドvs次郎吉という最近すっかりおなじみの対決の構図…と思いきや、今回は次郎吉の頼みでキッドが愛犬ルパンを救うというハートフルで心温まる結末でしたね。個人的にはこういう話は大好きです。

 実に複雑なプロットで、料理を二人分という所で誰かが金庫の中にいるということはさすがに私も分かりましたが、それがルパンだという点は完全に盲点でした。それに開け方を書いた紙があってそれがないと次郎吉が開けられないという点も分かってしまえば何てことはないのですが、なるほどと種明かしされた時は唸ってしまいました。こういう単純に思えてアッと言わせる謎解きというのが本来のミステリーの醍醐味ですよね。

 そしてキッドが成り済ましていた人物も「手を貸してくれ」の発言で何となくメイドと当たりはつきましたが、鍵を投げる仕草で次郎吉が怪しいとなり、そこで完全に行き詰まりましたが、まさかどちらにも化けていたとは…これはさすがに分かりませんでしたね。意外性もあって今回は完全に脱帽の展開です。

 そして最後の次郎吉とルパンがじゃれ合っているシーンが何とも言えないいい顔をしていて良かったです。今回は癒されるような結末で心が和みました。

 一方中森警部の冒頭の愚痴をこぼしながらコーヒーを飲むシーンは、何だか哀愁があって考えさせられました。小五郎と中森警部は同じような役回りでドジばかりではありますが、かたや小五郎は「眠りの小五郎」と呼ばれ名探偵としてちやほやされているのに対し、中森警部はいつもキッドに煮え湯を飲まされている訳ですからね。今回ばかりは何だか「中森警部頑張れ」という気持ちになってしまいましたね。

 ただ一点だけ少しお願いしたいのは、冒頭の傷跡シリーズの解決編のダイジェストを流すのは喫茶ポアロでの高木刑事と蘭たちの会話の流れを考えてもいい考えだと思うのですが、犯人の姿をあんなに露骨に出すのはちょっと配慮が足りないかもしれません。ミステリーの世界ではネタバレには慎重になるべきですし、コナンは基本的に一話完結でいてもらいたいですし、毎週見ている人も多いとは思いますが、たまに見る人にも入りやすく敷居を低くしておいてもらいたいので、どこから見ても大体話が分かるように、そして犯人は極力分からないようにしておいてもらいたいです。

 とはいえ昨年監督の交代があってから音楽の使い方・効果音・シナリオの構成とどれを取ってもアニメはすごく完成度が上がっていますし、原作の雰囲気を壊すことなくいろいろと工夫を凝らして丁寧に作っているのが分かるので、個人的にはすごく評価していますし応援しています。

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