名探偵コナンOva.9「10年後の異邦人」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
Ova.9 10年後の異邦人(ストレンジャー)
英題
The Stranger from Ten Years Later
放映日
全員サービスビデオ
小学館週刊少年サンデー2009年第20号より応募開始(28号まで)
原題
DVDオリジナル
ジャンル
サスペンス
事件現場
10年後の米花市内各所
管轄
 
登場人物
江戸川コナン
工藤新一
毛利蘭
毛利小五郎
灰原哀
吉田歩美
小嶋元太
円谷光彦
鈴木園子
服部平次
遠山和葉
沖野ヨーコ
新出智明
女性リポーター
岸田
ジン
ウオッカ
トロッピー
本編の主人公、正体は工藤新一
本編の主人公、高校生探偵
本編のヒロイン、新一の幼なじみ
蘭の父親で私立探偵
黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保
帝丹小学校に通うコナンのクラスメート
帝丹小学校に通うコナンのクラスメート
帝丹小学校に通うコナンのクラスメート
鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友
西の高校生探偵、新一のライヴァル
平次の幼なじみ
人気アイドル
青年医師、新出医院の跡取り息子
平次にインタビューする女性リポーター
帝丹高校体育教師
黒の組織の男、新一に毒薬を飲ませた人物
黒の組織の男、ジンの手下
トロピカルランドのマスコットキャラクター
高山みなみ
山口勝平
山崎和佳奈
神谷明
林原めぐみ
岩居由希子
高木渉
大谷育江
松井菜桜子
堀川りょう
宮村優子
声の出演なし
堀秀行
荒井静香
声の出演なし
声の出演なし
声の出演なし
声の出演なし
あらすじ
「オメーら…もしかしてオレたち……高校2年生か?」

 その日風邪を引いてしまったコナンは、学校を休んで毛利探偵事務所の3階の部屋で一日しっかり休んで休養を取ることになります。朝の忙しい時間の中で看病してくれていた蘭も園子が迎えに来ると心配そうにしながらも高校へと向かい…その姿を窓から眺めて、もうこのまま元の姿に戻れないのではと突如不安になるコナン。体調が悪いせいかネガティブ思考になっている、早いところ風邪を治さないと、と思い直し布団に入るのでした。それからいつの間にかコナンは眠りに落ち…

 11時半が過ぎた頃、枕元に置いておいた携帯電話の音でコナンは目を覚まします。携帯をチェックすると電話の主は灰原哀で、まだ熱っぽいコナンに灰原は驚くべき事を言うでした。ちょうど例の薬─新一の体を薬で小さくしたアポトキシン4869の解毒剤の新しい試作品ができたから試してみないかというのです。それを聞いたコナンはもちろん試すと二つ返事でパジャマから服に着替え、階段を降りて外へ飛び出していったのです。入れ違いでコナンの面倒を見るために小五郎が2階の事務所から3階へ上がっていこうとしている事も知らずに…。

 灰原哀の待つ阿笠博士の家に到着すると、博士は用事で外に出ているようでさっそくコナンは灰原に薬を催促します。コナンが手にしているのは帝丹高校の制服で、途中工藤邸に立ち寄った際に取ってきた服でしたが、その服にしたのは帝丹高校に行って彼のクラスメートたちを驚かしてやろうという魂胆からでした。

 ところが待ち切れない様子のコナンに灰原哀はまず熱を計らせます。すると38度7分でかなり高い熱を心配する灰原でしたが、コナンは走ってきて体が温まったからで大丈夫だと言い薬をねだるのでした。そんなコナンに灰原は薬の効力はこれまで同様に24時間、即効性で飲んだ直後から効き出すと言ってカプセルを手渡し、トイレに入ったコナンは早速カプセルを口にしたのです。すると元の体に戻る時に決まって起きる例の発作がはじまり……

 気がつくとコナンは新一の姿に戻り、さっそく着替えを済ませた新一はリビングに戻ります。ところがさっきまでいたはずの灰原の姿がなく……しかし時刻が12時半で今ならまだ昼休みに間に合うと考えた新一は、博士の家を飛び出していってしまうのでした。

 外に出た新一はまず工藤邸の前を通りますが、その時庭に植えてある木の高さに違和感を覚えます。コナンでいる時とは見る角度が違うせいかな…とさほど気にもとめずに今度は米花駅へ。駅前にはMARUHANAという百貨店が新たにオープンしていて、米花町初出店を記念したオープニングセールを開催していました。他にもCYCLE SHOP BEIKA、カラオケハウス777……こんなビルあったっけ…このマンションいつ建ったんだ…やはりガキの目線だと気づかないものがいろいろと見えるのでしょうか……!?

 そんな思いで道を歩いていると、ほどなくして帝丹高校に到着します。下駄箱の前に着くと「ゴリラ」の愛称で生徒たちから親しまれている岸田先生が廊下を歩いていきますが、新一は少し見ない間に妙に老けた印象を受けるのでした。更に自分の下駄箱の扉を開けてみると、そこには見たことない靴が…。仕方なく来客用のスリッパを借りて、2年B組の教室へ向かったのですが…。

 みんなビックリするだろう…そう思って2年B組の教室の前に到着した新一は「オッス!」と元気よく扉を開けて中に入ろうとしますが、教室にいた生徒たちは新一の姿を見ても特に大きな反応も見せずにまた友達同士のおしゃべりを再開してしまったのでした。そしてよくよく見てみると誰ひとり新一の知らない人間ばかりで…

 教室も確認したが間違っておらず、とにかく蘭を探そうと新一は今度は空手部の部室へ向かいます。ところが空手部の部室の扉は施錠されていて、さらに左隣を見てみるとそこには見覚えのない「探偵クラブ」の文字が。気になって何気なしに扉を開けてみたのですが…

 「おう、やっと来たか」─そう言って新一を出迎えたのは男子生徒2人女子生徒1人の3人組。毎週火曜木曜は部室で弁当を食べるらしく待っていたというのですが、新一には何が何やら訳が分かりませんでした。ところが早弁を我慢したという太った男子生徒にもう一人のそばかすの痩せた男子生徒が「元太君のうな重の匂い」と話しかけているのを聞き、その三人が歩美、元太、光彦だと分かったのです。

 何でこいつらがここに、というより何で高校生の姿をしているのか…戸惑いを隠せないでいるコナンでしたが、その一方で歩美が「コナン君、何か変」と、新一の胸ポケットにあったメガネに目を向けると…どうやら三人は新一のことをコナンと思っているようなのです。

 もしかして自分たちは高校生2年生か、そう新一が尋ねると当たり前だと笑い出す探偵団の三人。これはきっと悪い夢だと新一は頬をつねりますが、痛みを感じどうやら夢ではなさそうでした。しかしいったいこれはどういう事なのでしょうか!?

 そして茫然とする新一の後ろのドアから中に入ってきたのは、コナンに解毒剤のカプセルを渡したはずの灰原哀でした。彼女もやはり高校の制服姿で食事も摂らず雑誌を読もうとしていたのですが、新一は聞きたい事があるからと彼女を部室の外に連れ出し問い詰めるのです。いったいどうなっているのか…工藤新一のはずなのになぜコナンのままなのか…そしてなぜ自分も灰原哀も高校2年生なのか…!? ところが灰原哀は新一の言っている事の意味は分からないが、この10年の事なら教えてあげると言い、次のような話をはじめたのです。

 何と例の黒の組織とは決着がつかないまま、コナンも灰原も中学校、高校と進み、その間コナンは灰原の作ったアポトキシン4869の解毒剤で何度か元の姿に戻ったもののいつしか耐性ができてしまい、この5年ほどはまったく新一に戻れないでいるというのです。ショックを隠し切れないでいる新一に、昼休みの間に記憶喪失にでもなったのではないか、午後の授業が始まるが一度帰って休んだ方がいいのではないかと言い残して灰原哀は新一の元を立ち去っていくのでした。

 何だかキツネにつままれたような表情で街を歩いていたコナンこと新一。ところがそこへ今度は数々の難事件を解決し、今や国民的ヒーローとなり通天閣の向かいに探偵事務所を開いたという「浪花の名探偵」こと服部平次がインタビューを受けている姿がSTUDIO AQUAのオーロラビジョンに映し出されます。そして大人っぽい女性に成長した助手兼女房役という遠山和葉の姿も見え、二人の口ゲンカは10年経っても変わっていない様子で…。

 それから新一が向かった先は毛利探偵事務所でした。事務所の建物はどことなく古くなったような印象がありましたが、二階の事務所に入ってみると小五郎だけは変わらない様子で酒を飲んでおり新一は少しホッとしますが、事務所のソファに座っていた園子はお気楽なOL生活を送っているらしく、「ガキンチョ」と相変わらず口は悪いもののかなり大人びた女性になっていました。そして小五郎が愛してやまなかった人気アイドルの沖野ヨーコもついに結婚・引退らしく、事務所の壁には「涙の未練酒」のポスターが哀しげに飾られていたのです。

 小五郎も園子も新一姿のコナンにはまったく違和感を感じていないらしく、一方10年間居候をしていたのにその事をまったく覚えていないことにショックを受ける新一ことコナン。

 ところがそんな新一に更に衝撃の事実が伝えられたのです。何と園子の話では蘭が新出先生と結婚を決めたというのです。何でも新出先生が2年前から蘭にプロポーズしていたといい、でも蘭は戻って来ない新一をずっと待ち続けていたらしく……そんな思いに決着をつけるため、蘭はその日「新一との思い出の場所」に行くと言っていたというのですが…。

 園子の話を聞き、慌てて「新一との思い出の場所」を探して駆けまわる新一。蘭の言うその場所とはいったいどこなのでしょうか!?

今回の見どころ
元の姿に戻ったはずの新一は、なぜか10年後の高校生姿のコナンと勘違いされ…

 風邪で寝込んでしまったコナンは、一人毛利探偵事務所3階で布団にくるまり寝ていましたが、昼頃にかかってきた灰原哀の電話で事務所を飛び出し阿笠博士の家へと向かいます。何でも新一の体を小さくしたアポトキシン4869の解毒剤の試作品ができたとのことで、喜び勇んで向かったコナンでしたが、いざ薬を飲んでみると…

 元の姿に戻りトイレを出て高校の制服に着替えて帝丹高校に向かおうとした新一は、自分の家の庭の木や米花駅前の街並みなどが妙にいつもと違うことに違和感を覚え、更に帝丹高校に到着するも2年B組の教室の中は知らない生徒ばかり…そして蘭がいるはずと空手部の部室に向かうと、その隣の部室で弁当を食べようとしていた高校生姿の少年探偵団に出会ったのです。

 これは夢…それとも……すると今度は高校生になった灰原哀から10年の月日が経過し、この5年は薬の耐性のため新一の姿に戻れていないことも判明。更に探偵事務所を構えるようになった平次と和葉や、沖野ヨーコの結婚・引退でヤケ酒の小五郎、OL姿の園子など、見るものすべてに衝撃を受けたのです。ところが更に蘭が新出先生と結婚することになったという話を聞き…

少年探偵団からのお願い

 すっかりお馴染みの「部屋を明るくしてテレビから離れて見て下さい」というお願いですが、今回は少年探偵団からのお願いという形になっていました。ここ最近ずっとセリフはありませんでしたが、今回は探偵団の三人のセリフがちゃんとついています。

 それから全員サービス作品ではこれまではレギュラーシリーズのように扉が開いてタイトルコールでしたが、今回の作品はタイトルコールが映画っぽく歯車を使ったCGで作られていてかなり凝った演出になっています。

豆知識
エルエール

 風邪を引いたコナンが使っていたティッシュの名前。エリエールのもじりだと思います。

STUDIO AQUA

 10年経ち、今やすっかり国民的名探偵になったという服部平次が和葉と夫婦ゲンカをしていたのはここで中継されていた番組の中でのことでした。モデルは間違いなく東京の新宿にあるスタジオ・アルタだと思います。ちなみにまだ二人は結婚していないそうです(苦笑)

涙の未練酒

 沖野ヨーコの10年後の曲らしく、ついに結婚・引退となったらしくヤケ酒を飲みながら悲しげに歌う小五郎が何とも印象的でした(苦笑)

トロピカルランド

 「新一との思い出の場所」と言われた新一が訪れた場所の一つ。ご存知の通り1「ジェットコースター殺人事件」や映画4「瞳の中の暗殺者」などで登場しました。時刻は夕方でトロッピーの着ぐるみが子供たちに風船を配っていました。

東都タワー

 「新一との思い出の場所」と言われた新一が訪れた場所の一つ。

POPSI

 その東都タワーで新一が蘭に買ってきた名前はペプシのような、見た目はコカコーラのようなコーラ。このエピソードは映画4「瞳の中の暗殺者」で、原作では大都会暗号マップ事件にあたる事件で登場しています。

米花センタービル 展望レストラン

 「新一との思い出の場所」と言われた新一が訪れた場所の一つ。このエピソードは188-193「命がけの復活」の3つ目の事件で登場しました。

ED
Doing all right」(GARNET CROW)
監督
於地紘仁
脚本
古内一成
絵コンテ
金崎貴臣/エンディング絵コンテ 於地紘仁
演出
京極尚彦
作画監督
佐々木恵子/メカ作画監督 水村良男
キャラクターデザイン
須藤昌朋、山中純子
DVD
週刊少年サンデー 全員サービスDVD
シークレットファイル vol.4
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★★★

 今回の作品は何だかとても不思議な、しかしファンにとっては何とも言いようのない複雑な気持ちにさせられるお話でしたね。個人的には疑似最終回といいますか、これを最終回と言われても全然不思議ではないような、そんなストーリーになっています。こういう最終回の漫画って結構ある気がしますしね。

 そんな訳で今回はミステリーといっても謎を解くというものではありませんでした。10年後のレギュラーキャラクターたちの姿が見られるという事で貴重ではありますが、あくまで新一の夢の中での想像なので、これを全部本当の姿と考えるのはちょっと早計です。特に蘭は映画5「天国のカウントダウン」では他のキャラクターたちが10年後の姿を写真で見られる中で敢えて写真が見えないようにされていたはずなので、今回こういう形で10年後の姿を見ることができたのは、嬉しいような、見てはいけないものを見てしまったようなちょっと複雑な気持ちですね。

 いずれは新一の夢の通り探偵団たちも高校生になり、沖野ヨーコも結婚・引退ということになるのかもしれませんが、個人的には園子や和葉の10年後も含めてあまり想像したことがないこともあってかかなり衝撃的でした。しかし現実世界では人間は年齢を重ねていくのが当たり前ですし、このサイトもこの感想を書いている頃はもう8年の月日が経っておりまして、振り返ると嫌でもその年月を感じてしまいます。しかしまだまだこれからもこの作品を楽しく応援し続けていきたいとも改めて思いましたね。

 それから何といってもこのDVDがリリースして間もなく、小五郎の声の交替がありました。今思うと結果論ですがこの作品はこの交代劇があるまでの総決算だったのかなと、そんな思いすら抱いてしまいます。この作品をもって一区切りといいますか、声の交替がある前にこの作品を作っておいてくれて本当に良かったと個人的には思います。まあ本当の最終回については全然別物のお話でしょうし、それがいつになるかもこの時点ではまだ分かりませんが、まだまだこの愛すべきキャラクターたちのストーリーが末永く続いていくことをファンの皆さんともども願わずにはいられません。

 ちなみに最後のエンディングの絵ですが、これはそれぞれ472-473「工藤新一少年の冒険」、490「服部平次vs工藤新一 ゲレンデの推理対決」、162「空飛ぶ密室 工藤新一最初の事件」、286-288「工藤新一NYの事件」、映画4「瞳の中の暗殺者」での回想シーン、1「ジェットコースター殺人事件」と時系列に沿って回想されています。作品の年代はかなりバラバラなので、全部読んでいる人はそれだけでコナン通といってもいいのではないでしょうか。

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