(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 目暮警部 小嶋元太 円谷光彦 吉田歩美 田中知史 田中和由 浩樹 アキラ 警官 仮面ヤイバー |
本編の主人公、正体は工藤新一 警視庁捜査一課警部 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 和由の弟、証券会社勤務 知史の兄、文学新人賞を受賞した物書き 少年探偵団に事件を依頼してきた小学生 浩樹の… 目暮の部下 子供達に大人気の特撮ヒーロー |
高山みなみ 茶風林 高木渉 大谷育江 岩井由希子 あずさ欣平 岸野一彦 高乃麗 ??? 藤原啓治 声の出演なし |
ある日の帝丹小学校─探偵団を結成してみたもののなかなか依頼人が来ず、その日も元太たち少年探偵団は、教室の中で徒然な午後の一時を憂いていました。
一方コナンはというと、サッカーボールと戯れながら、そう簡単に依頼人が来るなら探偵も苦労はしないと…世間の厳しさを一人心の中で呟いていたのです。
ところが…そんな彼らのもとに、突如依頼を頼みたいという奇特な少年が現われたのでした…!!
その少年の名前は浩樹といい、昨日から姿が見えない”アキラ”を探して欲しいというのでした。失踪事件…?それとも誘拐事件…? 色めき立つ探偵団たちでしたが、浩樹からその”アキラ”の写真を見せられて…
結局超レアものの仮面ヤイバーのハイパーゴールデンカードに魅せられて”アキラ”の捜索を引き受けた探偵団たちは、浩樹を伴って近くの公園や交番などを捜して回りますが、捜査の甲斐もなくそれらしいネコは見つかりませんでした。
ところが途方に暮れて元太たちが住宅街をさまよっていると、何とそこへ”アキラ”のものと思われる鳴き声が聞こえてきたのです。そこで元太たちが喜び勇んで鳴き声のする一軒家の窓の方を見ると……
何と”アキラ”は体を全身血まみれにして窓から飛び出し、元太たちのもとへとやってきたのです…!!!
ところが手当てしてやらなければ…と”アキラ”の状態を調べてみると、幸なことに全くの無傷のようでした。しかしとすればこの血は一体誰のものなのか…!? 当然のようにそんな疑問が湧いてきたのです。
それが気になったコナンたちはその家の門を飛び越えて庭の中へ入り、”アキラ”が飛び出してきた窓から部屋の中の様子を覗ってみます。すると…
そこはバスルームでしたが、何とそこには…全身を血まみれにして浴槽に倒れかかり、頭を湯船につけて身動き一つしない紺色のスーツ姿の男が……
すぐさまコナンたちはその家を飛び出し、近くの公衆電話から警察に通報。ほどなく目暮警部が到着して、コナンたちとともに死体が見つかったという家へ急ぎます。
「田中」というその家のベルを鳴らすと、中からは鋭い目つきに眼鏡をかけ口ひげを生やしたバスローブ姿の中年の男が応対に出てきました。目暮警部が子供たちが死体をバスルームで発見したことを伝えると、男はうろたえた様子もなく目暮たちを中に招き入れ、問題のバスルームへと案内します。すると…
何と先ほどまでそこに横たわっていたはずの血まみれの死体は、忽然と姿を消していたのでした…!!
通報を受けてから15分…その間コナンが電話ボックスの上に陣取り、田中家には誰も出入りしなかったことを確認していたため、死体があるとすれば当然その家の中に隠されているはずでした。
ところが家の主の中年男はまるで警察を嘲笑うかのように、「そんなものがある訳がない!」と警察を暇人呼ばわりしてさっさと二階へ上がっていってしまったのです。
暇人呼ばわりされた目暮は当然のように憤り、そんな中年の男に目にもの見せてくれようと、家の中を隅から隅まで捜し始めたのです。ところが…
途中帰宅した中年男の弟も捜査に協力して陽が暮れる頃まで捜索は進みますが、結局警察の懸命の捜索にもかかわらず死体は発見されなかったのです…子供たちの見間違いだったに違いないと、目暮警部は憮然とした表情で田中邸から引き上げざるを得なかったのでした…
一体どうしてバスルームにあったはずの死体は家の中から見つからなかったのか? 自分が見間違えるはずがない…コナンは自らの手で再び調べ直すべく、一人夜の田中邸に乗り込んでいったのですが……
隣りのクラスの浩樹という少年から事件調査を依頼された探偵団たちは、その捜査中、ふとしたことからとある家のバスルームに死体が放置されているのを発見。慌てて警察に連絡したものの、目暮警部が到着してみると、いつのまにか死体はどこかに消えてしまっていたのです…
死体が発見されてから警部が到着するまでの間、コナンがずっと人の出入りを見張っていて、運び出された形跡はないにも関わらず、その家の中を捜索しても死体はどこにもなく…
消えてしまった死体の行方を推理する、謎解き本格ミステリーです。
今回の作品は原作ではまず探偵団バッジ(DBバッジ)が初登場を果たすため、そのシーンで物語が始まるのですが、アニメではすでに12「歩美ちゃん誘拐事件」で探偵団バッジは登場済のため、これに関連したシーンは軒並みカットされています。そして阿笠博士も登場しません
原作ではバッジをもらって調子に乗った探偵団たちが、ここで初めて少年探偵団を結成し、学校の校内放送を使って事件調査を引き受ける旨の宣伝をして学校の先生から大目玉を頂戴するのですが、結構面白いエピソードだけにそれがないのがちょっと残念ですね。またその放送を聴いて浩樹という少年が”アキラ”の捜索を依頼してくるという風にちゃんと関連性もありますが、アニメでは探偵団の噂を聞きつけたという形で浩樹は登場してきます。
ちなみにアニメで少年探偵団が結成されたのはもっと早く4「大都会暗号マップ事件」でのことでした。
それからラストにもちょっとしたことですが、違いがあるのですが、これはネタバレ感想で触れておきます。
「DB」とは"Detective Boys(少年探偵団)"の略。超小型のトランシーバーを内臓し、裏についているダイヤルを回して周波数を合わせると受信が可能になる。、半径20キロ以内なら交信可能な優れモノです。
ちなみにアニメでは6巻所収の12「歩美ちゃん誘拐事件」で初登場を果たしています。それに伴って今回の作品では阿笠博士は原作では登場のはずがアニメでは未登場となってしまい、逆に「歩美ちゃん誘拐事件」では原作では阿笠博士は本来未登場のはずが、アニメでは登場シーンが用意されています。
コナンと歩美、元太、光彦の通う小学校。今回探偵団たちは学校の隣りのクラスの生徒の依頼から事件に巻き込まれることになります。
ちびっ子たちに大人気の仮面ヤイバーがカードになりました。その中でもハイパーゴールデンカードは滅多に出ない超レアなカードらしく、少年探偵団たちも喉から手が出るほど欲しいカードのようです。
バスルームにあったはずの死体がいつの間にか忽然と姿を消し、家の中のどこを探しても見つからない…しかし外に運び出された形跡はない以上死体はどこかにあるはずで、今回の作品はそれを見つけ出すという、死体消失トリックを題材にした本格ミステリーでした。
結論から申し上げますと、細かい点で文句若干違和感のようなものはありますが、なかなかに面白い作品に仕上がっていたと思います。
典型的な一人二役の話で、それが死体消失トリックと上手く結びついていて、話としては非常によくできていたと思います。一人二役のトリックは古今東西のミステリで何度となく使われていますが、上手くダマされた時は、本当に嬉しくなってしまうものです。私も大好きなトリックなんですよね。
そして兄がまだ生きているかのように錯覚させるためのテレビと電話を使ったトリックも、一人二役のトリックを補強するトリックとして、探偵たちを欺くためには効果的だったと思います。このあたりの組み立てがなかなかのものでした。
確かにもし警察が強引な捜査をして、あの兄を叩き起こしてしまったらそれでこのトリックはアウトではありますが、そこは大胆な立ち振る舞いで何とか乗り切りましたね。しかしそうは言っても本当に度胸の据わった犯人だったと思いますが。
ストーリーも冒頭の探偵団たちのやり取りは本当に面白いですし、仮面ヤイバーのカードの餌に釣られて依頼を引き受けてしまう所も、浩樹少年の「依頼料は一人10円」という部分も、子供っぽさが出ていて私は好きですね。
ただこの部分がアニメではだいぶカットされてしまっているのが、残念といえば残念ですが、時間の都合上カットするならここしかない訳ですし、致し方なかったのでしょう。
あと一つ、ミステリーファンなら今回の事件でツッコミを入れたくなる部分があるとすれば、冒頭の死体が血まみれであった点です。あれだけ血がバスルームに飛び散っていたら、ルミノール反応でたとえ死体そのものが発見されなかったとしても、死体があった可能性は否定できなくなってしまうからです。そこが若干違和感があったという部分です。
ただ別に死体が血まみれでなければ今回のトリックが成立しない訳でもありませんし、話に変化をもたらす訳でもありませんから、これをもってこの話がつまらない作品だというのは少し乱暴な議論だと思います。話を面白くするため、盛り上げるための脚色だと思ってみれば、それほど変でもないでしょう。