(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 諏訪雄二(46) 阿久津誠(48) 波多野幾也(37) 丸伝次郎(51) 丸稲子(34) 沙織 久美 警官 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 諏訪道場師範 彫刻家 米花病院勤務、丸伝次郎の主治医 丸グループ会長、小五郎に調査を依頼 丸伝次郎の妻 丸家の家政婦 丸家の家政婦 目暮の部下 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 小林清志 仲木隆司 牛山茂 亀井三郎 幸田奈穂子 水原リン 岩井由希子 高木渉 |
珍しく食事に連れて行ってもらえると思い、喜んで小五郎についてきたコナンと蘭。ところが小五郎はその途中寄り道をしていくと言って、依頼人である丸伝次郎の住む屋敷にやって来ます。そして小五郎が丸伝次郎と話し込んでいる間、コナンと蘭の二人は庭の池の鯉を眺めたりしながら、退屈な時間を過ごしていたのでした。
一方丸伝次郎の部屋では、小五郎が伝次郎に彼の妻・稲子の浮気調査の報告をしている最中でした。決定的とも思える妻・稲子の目元の泣きぼくろを見て怒りを露わにする伝次郎…。
しかしその時来客があり、話はそこで一時中断。伝次郎は小五郎との面会の間の時間暇を出した家政婦たちの代わりに、自らその来客を出迎えに離れへと向かったのです。
そして時間が過ぎていき…何度も家の電話のコール音が鳴り響く中、伝次郎は一向に戻って来ず…ついに二時間が経過していました。我慢の限界に達した小五郎は、とうとう自分で伝次郎がいるはずの離れに出向こうとしますが、そこへようやくこの家の家政婦の女性二人と伝次郎の妻・稲子が戻ってきたのです。
小五郎が探偵と知って浮気のことを上手くごまかして欲しいと稲子が頼み込んでいると、その時突然離れから女性の叫び声がします。それは伝次郎を呼びに行った家政婦たちのもののようでした。それを耳にして、慌てて小五郎とコナンは離れへと駆けつけたのですが…
二人が離れへと駆けつけてみると、部屋の中はまるで果し合いでもしたかのように刀傷が部屋中至る所につけられ、部屋に飾られていた骨董品なども原型を止めないほど派手に壊され、その破片が床に散乱しているという有様でした。
そしてその部屋の奥では、居合いの構えをしたまま胸に日本刀を突き立てられ、全身傷だらけで立ったまま息絶えている丸伝次郎の姿があったのです…!!
すぐに目暮警部たちが到着し、警察の捜査が開始されます。そして警察が調べを進めていくと、その日─5月20日月曜日に丸伝次郎は、浮気調査を依頼した小五郎の他に、計三人の客に会うことになっていたことが分かったのです。
伝次郎の居合いの師匠である諏訪雄二、彫刻家の阿久津誠、伝次郎の主治医の波多野幾也…三人の犯行当時アリバイを確かめるため、目暮と小五郎は彼らのアリバイを詳細に検討し始めたのですが…
浮気調査を依頼されて丸グループ会長の邸宅を訪れた小五郎と蘭、コナンの三人は、屋敷の離れで無残な惨殺死体となっている丸伝次郎会長を発見します。
容疑者は犯行時刻前後に被害者の丸会長を面会の約束をしていた四人のうち、小五郎を除いた三人の人物。剣道場師範に彫刻家、そして会長の主治医…
犯行場所には派手に争った形跡があり、無数の刀傷が部屋一面に残され、家の留守番電話には被害者に向けて残されたメッセージが…この中に犯人を特定するための重大な証拠が隠されているのか? それとも他に何か見落としている点はないか?
小五郎や刑事たちから子供扱いされ、苦労しながら事件捜査に奔走するコナンの姿が印象的な、謎解き中心の本格ミステリーです。
今回の作品は原作とは大きな相違点はないのですが、全編にわたって細かい相違点は数多くあります。一つ一つ取り上げるとキリがありませんので、面白そうな変更点のみここに記録しておきます。それ以外にも多数ありますので、コミックスを手にしながらアニメをご覧になることをオススメします。
まず丸家の電話のコール音が何度もしているのに誰も出ないため、見かねた小五郎が電話に出ようと電話のある所まで向かおうとするのですが、電話が切れてしまうシーン。
これは原作では結構離れた所でコール音が切れるのですが、アニメではまさに受話器を取ろうとした瞬間に切れます。アニメの方が悔しさ百倍ですよね(笑)
次に被害者の手帳に書かれていた四人の訪問者のうち、諏訪雄二だけが現場にいないことを知った小五郎が、彼を犯人と断定しようとした際、アニメでは日の丸の刻印のある扇子を振りかざしながら「一件落着」の文字を背景に小五郎が得意満面な表情をするのですが、この部分は原作にはありません。このシーン結構笑えますので、是非アニメでチェックして頂きたい所です。
それから蘭が被害者・丸伝次郎の刀の握りが逆であることに気づいた際、原作では空手の稽古の隣りで行なわれている剣道の稽古を見て気づくのですが、アニメではただ単に逆であることに気づくだけになっています。
このシーン、原作では空手着を身にまとった蘭の貴重な姿が見られますし、珍しいことに髪をまとめてポニーテールにしていますが、これが結構GOODです。それだけに、アニメでも見たかったシーンですね。
もう一つ、原作では波多野医師は犯行時刻にどこにいたかを問い質されて、コナンに諭されて銀座で「夏のサンタクロース」という映画を観に行っていたと弁解するのですが、アニメではここはカットされています。「夏のサンタクロース」については豆知識を参照下さい
最後にインスタントカメラ(原作ではポラロイドカメラ)でとある物体を撮影し、得意満面になっているコナンを、原作では小五郎がゲンコツでぶつのですが、アニメでは両手をゲンコツにして、コナンのこめかみをグリグリと挟んでねじ込みます。アニメの方がかなり痛そうです(苦笑)
原作で波多野医師が事件発生時刻のアリバイを尋ねられた時に、コナンに諭されて観に行っていたと証言した映画の名前。
ちなみにこの「夏のサンタクロース」というのは青山作品の一つで、「青山剛昌短編集」に収録され、オリジナルアニメーションも作られています。あらすじは大体次のような感じです。
恋に破れ失意の中、夜の街をさまよう千川高校2年B組、原桂祐青年は、ひょんなことから手に入れたカードをテレカと勘違い。
そしてそのカードを使って電話ボックスから電話をかけてみると…何とそのカードは核兵器・EC4システムを作動させるための認証カードだったのでした…!!! ところが肝心の桂祐青年は、ほどなく心因性の記憶喪失にかかってしまいまい…。
地球を破壊し、人類を滅亡に導くEC4システムの発動を食い止めるためには、ただ一人制御番号を知っている原桂祐青年の記憶を回復させるしかない…
そこで原桂祐青年の記憶を回復させるため、大統領グレイの指揮の下、国を挙げて「ありとあらゆる手段」が講じられるのですが…
ちなみにこの作品、アニメでは主人公の原桂祐青年役を高木渉氏が、ヒロインのアイドル・安斎明日香役を山崎和佳奈さんが、そして大統領グレイ役を神谷明氏が声を担当されています。そしてサービスカットとして、途中毛利小五郎もフラッと街中に姿を見せるので、コナンファンも要チェックです。
それからこの作品に登場するアンアンことアイドル・安斎明日香は、コナン20巻所収の121-122「バスルーム密室事件」の際に、高山みなみさんのTWO-MIXや、42「カラオケボックス殺人事件」に登場する木村達也率いるレックス、249-250「アイドル達の秘密」に登場する沖野ヨーコのアース・レディース時代の同僚の星野輝美らとともに名前が登場しているので、チェックしてみると面白いです。
今回の事件の際に小五郎に妻の浮気調査を依頼してきた丸伝次郎が会長を務める企業グループ。ちなみに丸伝次郎というのは青山先生のアシスタントの一人で、特別編のコミックスを担当している方のうちの一人です。
事件の容疑者の一人、波多野幾也医師の勤務する病院の名前。
事件の容疑者の一人、諏訪雄二が師範を務めている居合いの道場の名前。
今回の作品も様々な趣向を凝らした、なかなか面白い本格ミステリだったと思います。容疑者は3人と少なめなのですが、どの人物にも殺害に足りる動機があり、怪しい行動もしているので、容易に犯人を特定できないのですが、この辺りの手腕はさすがですね。
そして犯人を決定付ける証拠というのが実は被害者が残したダイイングメッセージにあり、それを隠すために部屋のあちこちがズタズタに斬り刻まれていた訳ですが…
この「木を隠すには森に隠せ」的な証拠隠滅方法というのはG・K・チェスタトンのブラウン神父もの以来、古今東西のミステリのトリックの基本のようなもので、それを犯人たちの怪しげな動機や行動で更に上手に覆い隠されていて、本格ミステリとしてはなるほどよく出来ているなあと関心してしまいますね。
その前にも留守番電話のメッセージの中の不自然な言葉から犯人を割り出せますし、よくよく検討していくと、この作品かなりしっかりしたプロットを持っていることが分かります。
ラストもただ眠らされているだけにも関わらず、まったく物怖じしないように見える小五郎に犯人が関心して現場を立去る訳ですが、やがて目が覚めた小五郎が大騒ぎするというオチは小五郎のバカ騒ぎ(笑)もあってかなり滑稽で可笑しいですし、潔い犯人もとても気持ちが良くて作品見た後もすっきりした気持ちになれます。
よくラストに自分がいかに不幸な人間で、被害者からどれだけひどいことをされていたことを延々と話し、読者の同情を誘うような犯人も見受けられますが…個人的にはそういう作品というのは見たり読んだりしていてグッタリするといいますか、とても疲れますね(苦笑)
人それぞれにミステリの楽しみ方というのはあるとは思いますが、元々ミステリというのはあくまで「謎解きを楽しむもの」であるというのが私の確固たる信念ですので、こういった潔い犯人や、逆に往生際が悪くて探偵にやっつけられるという終わり方が一番すっきりしていて、私好みかもしれません。ネチネチと言い訳するのはみっともないです。
それからこの作品には小林清志氏が諏訪雄二役で出演なさっていますが、この声優さん個人的にとても好きな方なので、コナンにもこうやって出演して下さったのはとても嬉しいことでした。ルパン三世の次元大介がとても好きなんですよね。
そういえば小林氏はこの後、映画「ベイカー街の亡霊」にも、ホームズの宿敵モリアーティ教授役で登場していますね。
被害者の妻、丸稲子と主治医の波多野医師が密会を繰り返していた場所。