(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 小嶋元太 円谷光彦 吉田歩美 皆川克彦 若松俊秀 直道 渡辺好美 鈴木園子 関谷かおり 克彦の母 進 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 米花大学テニス部キャプテン 米花大学テニス部部員 米花大学テニス部部員 米花大学テニス部部員、克彦の幼なじみ 鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友 米花大学テニス部部員 克彦の母 克彦の弟 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 高木渉 声の出演なし 岩井由希子 堀川亮 檀臣幸 飛田展男 玉川紗己子 松井菜桜子 伊倉一恵 川島千代子 森田千明 |
「体の芯までとろけるようなチョコで男心をガッチリ捕まえなきゃ!!!」─年に一度のバレンタインを目前に控え、男GETを目指しやけにテンションの高い蘭の同級生・鈴木園子。一方蘭の方はというと、行方不明になった新一のことが気がかりでそれ所ではなかったはずなのですが…
新一との仲を冷やかす園子の口車についつい乗ってしまい、勢い余って…先日の日曜日に二人を喫茶店でナンパしてきた米花大学医学部の二人組のうちの一人、皆川克彦の主催する米花大学テニス部のバレンタイン・パーティに一緒に出席するはめになってしまいます。
園子の狙いはそのパーティの主催者である二枚目な顔立ちの皆川克彦ただ一人。「私のチョコで骨の髄までとろけさせて見せる」とメラメラと闘志の炎を燃やします。
そしてどうやらもう一方のゴリラのような大男・若松俊秀の方は蘭に気があるようで、その日もわざわざ今度のパーティの招待にと二人の前に姿を現わしたのでした…。その強引な誘い方に思わずため息が出る蘭……
一方そんなことを知る由もないコナン(新一)はというと…何という偶然か、実はそのすぐ近くで元太たちの少年探偵団のビラ配りに付き合わされていたのでした。
自分は高校生探偵工藤新一、ガキの遊びには付き合っていられない…と電柱にもたれかかって一人ふて腐れていたコナンでしたが、何気なく別の方に顔を向けると、何とそこには蘭と園子が若松たちと話をしている姿が─。そして二人が若松たちのパーティに出席することを耳にして…
探偵事務所に戻ってみると、蘭は明日のバレンタインに備えてチョコ作りの真っ最中。コナンが誰にあげるのかと訊ねても、蘭はごまかして教えてはくれませんでした。もしや明日のパーティで誰かに…こうなったらその行方ととことん突き止めてやると、コナンは翌日二人を迎えに来た若松の車のトランクにこっそりと忍び込み、一人極秘捜査に闘志を燃やすのでした。
皆川邸にやってきた蘭と園子は米花大学テニス部の面々の自己紹介を受け、パーティは楽しい雰囲気の中始まります。極秘捜査のためそれを遠くから恨めしそうに見つめるコナンでしたが、寒さのためくしゃみをし、大きな音を立ててしまいます。
慌てて隠れようとしますが…時すでに遅く、蘭たちに見つかってしまったのでした。
楽しく始まったパーティでしたが、皆川和彦が悪酔いして周囲に当り散らすようになると場の雰囲気は一気に暗くなります…直道は和彦の我がままで大きな態度に我慢がならず、かおりは和彦にチョコを渡そうとしますが友達でいたいと断られしまい、そして若松はといえば蘭にしつこく言い寄ろうとしていることに対して「脳みそまで筋肉みたいな男」とひどい言われよう…特に若松とは一触即発の状況でしたが…
その時現われた和彦の母親のとりなしで、何とかその場はおさまり、食後の手作りケーキをコーヒーで酔いを覚まして気分転換するようにと促されます。
しばらくすると悪酔いが原因で頭痛がするのか、和彦は外で風に当たってくると言い残して席を立ちます。そしてそれを追いかけるようにして和彦の幼なじみの好美も外に出て行き、その場で和彦にチョコを手渡します。
直道からもらったタバコを吸いながら外の風に当たっていた和彦も幼なじみからのプレゼントは断りきれなかったのか、受け取ったチョコをその場で食べたのですが…
記念すべきTVオリジナル作品第1作目は、バレンタインを素材とした意欲的な本格作品となりました。ただし出来栄えはというと…
もっとも鈴木園子が初登場を果たしたり、腕時計型麻酔銃が初登場したりするため、コナンの歴史からすれば非常に重要な作品と位置づけられます。
個人的には、ミステリの面からもストーリーの面からも評価はちょっと辛めです。
まず一番のマイナス面は、個人的にコナン史上最も好ましくないと感じているキャラクター、ゴリラ男の若松俊秀(皆川克彦曰く、「脳みそまで筋肉のような男」)が登場しているためです。
基本的にコナンに登場するキャラというのは嫌悪感を感じるということはごく稀なのですが、このキャラだけはどうしてもダメでした(苦笑)この感想を書いている時点で400回近く放映されていますが、未だにダントツの第1位です(苦笑)
このキャラクターの強引さ、図々しさ、そして暑苦しさには正直見ているだけでイライラし不快指数が上がりました。嫌がる蘭に無理矢理襲いかかろうとしたり、子供であるコナンを投げ飛ばしたりするなどひどく暴力的で、はっきり言って女性の敵、最低の人間です。こういうキャラだけは二度と出して欲しくないという典型例です。
その一方で鈴木園子嬢は初登場から大暴走で、期待どおりの活躍を見せてくれているのが救いです。オリジナルとは思えないほど原作に忠実なキャラとして描かれています。
また蘭をその「ゴリラ男」から必死で守ろうとするコナンの姿にも胸を打たれますし、こっそりパーティ会場の様子をうかがうコナンが蘭たちに見つかった時の仕草が何とも言えず可愛らしくてたまらないです。そして極めつけはラストの蘭とのツーショット。とても心が温まり、初期作品の名場面の一つに挙げられるシーンです。
それからアニメで小五郎が腕時計型麻酔銃で最初に眠らされる作品でもあります。現在のように踊りながら眠りにつくのではなくて、2回ほど激しくもがいた後、一瞬にしてぐったりとしてしまいます(笑) ちょっと物足りない気がしますが(笑)、これはこれで必見です。
この話が初のTVオリジナルとなりました。それにしても6話目でオリジナルというのは、その時点で長期作品になるという確信が製作側にもあったからかもしれませんね。
原作では5巻の「山荘包帯男」が初登場ですが、アニメでは早々とこの話で登場。最初から猛烈に飛ばしていました(笑)
新一が好きな蘭をからかったり、男GETに執念を燃やす所は原作そのままです。読んでない方はオリジナルだと思えないような原作のイメージ通りの作品に仕上がっています。
ちなみに記念すべき最初のセリフは、バレンタインを間近に控えて、「で、どーなの?蘭」でした。
TVアニメではこの作品がファースト・コンタクト─初めて麻酔銃の針が小五郎に突き刺さります(笑) この作品が〈眠りの小五郎〉の原点ということになります。
それから今回蝶ネクタイ型変声機で小五郎の声に設定されているのが59番であることが分かります。
ほとんど全ての作品に3人一緒で登場している少年探偵団。今回も3人揃って登場はしているのですが、光彦には声の出演はありませんでした。
ところで今回のお話では探偵団としての活動の一環として、手製のチラシを街中で配っているのですが、そこには「人さがしとかネコさがし なんでもおまかせ」とあります。
実は当初から「ネコ捜し(15「消えた死体殺人事件」を参照のこと)については自ら引き受けていたのです(苦笑)
この話では登場キャラに後に服部平次の声を担当することになる堀川亮(りょう)氏が登場しています。そしてそのキャラの運命は…
今回のゲストキャラたちの通う大学の名前。この大学のテニスサークルの面々が、部員の一人である皆川克彦の家に集まりました。
ちなみに米花大学といえば小五郎の母校でもあります。27-28「小五郎の同窓会殺人事件」では小五郎の大学時代の柔道部員仲間が登場しました。
他にも66「暗闇の道殺人事件」のゲストキャラ、207「見事すぎた名推理」のゲストキャラが米花大学の大学生ないしOB・OGとして登場しています。
意欲的に取り組んだ初のTVオリジナル作品ですが、本格ミステリとして採点するならば少しお粗末な部分が多く、残念ながら厳しい点にならざるを得ません。
確かにトリックの狙おうとしている所は目から鱗で非常に面白いのですが、ただそもそも狙った相手を確実に仕留められるか微妙ですし(致死量など量的な面で)、作品を見ている限りではかなり即効性の毒であるため、下手をしたら関係のない人間が犠牲になる可能性も大いにあり、非常に不確定要素の多いトリックです。(特に初対面の蘭や園子やコナンはコーヒーは飲めてケーキが嫌いかもしれない)
それからどんでん返しとなっている部分(直道が偶然にもタバコのフィルターに毒を仕込んだという点)も証拠物件がしっかりと現場に残ってしまい、警察が調べればすぐに分かることで、いくら衝動的だとしてもこんな危ない方法で殺害を思いつくというのはちょっと考えにくいです。
そして一番問題なのが警察の捜査が入ってから犯人が食器を洗っている点です。こんなこと警察が調べる前の段階で許すはずがありません(苦笑)
警察が来る前にやっているのなら全然不自然ではないのですが、そうではなかったために(しかもそれを見てコナンはトリックに気づいているため本格作品としてはやっぱり厳しい)かなり違和感のあるシーンでした。
トリック自体は面白い発想なだけに、細かい部分がもっと詰めてあればかなりの傑作になったはずで、それだけにとても勿体無い作品です。