(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 塩田平八郎 本木和男 佐々木瞳 大出祥子 中山英子 館岡順一 宇田裕一 平八郎の妻 鑑識 女団員A 女団員B |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 伝説の名探偵、小五郎の師匠 演出家 マネージャー 主演女優 女優 小道具 主演男優、大出祥子の元恋人 塩田平八郎の妻 鑑識員 劇団員 劇団員 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 高木渉 石森達幸 佐藤正治 冬馬由美 内川藍維 松谷彼哉 島香裕 小野健一 くじら 千葉一伸 岩井由希子 柳原みわ |
小五郎の師匠で、小五郎も目暮も全く頭が上がらないという伝説の名探偵─それが塩田平八郎という人物でした。
今は引退して田舎にいるはずのその塩田平八郎が、ある日突然毛利探偵事務所を訪れます。そしてコナンはそんな伝説の名探偵を一目見て興味津々の様子。
「ドジばかり踏んでおったからのう、あやつは…」と事務所にやってきた平八郎は、小五郎や目暮たちと事件を追いかけていた頃を懐かしそうに振り返っていましたが、一方で小五郎の姿が見えないことが気になって仕方がない様子でした。
どうやら最近眠りの小五郎と騒がれ世間でもすっかり有名になった小五郎のことが気になり、はるばる様子を見にやって来たというのです。
そして蘭が小五郎は今有名な劇団の脅迫事件の捜査のために米花芸術劇場へ行っていると話すと…途端に平八郎の目が真剣な表情に変わり、蘭に案内させて劇場へと向かうことになったのです。
一方米花劇場の客席では、その小五郎が演出家の本木和男とともに送られてきた脅迫状を見ながら何やら話をしている所でした。
「公園を中止せよ さもないと恐ろしい惨劇に見まわれる」─ありきたりの便箋に筆跡を悟られないように定規で引かれたような字体で書かれたその脅迫状でしたが、本木によればまったく心当たりがないということでした。そして一応念のためということで小五郎に捜査を依頼したというのですが…
本木が去り小五郎がその脅迫状を一人眺めていると、横ではいつの間にかコナンが興味深そうに脅迫状を一緒に眺めていたのでした。それに気づいた小五郎は飛び上がって驚きますが、蘭から平八郎に案内を頼まれてやって来たと聞いて更に驚いた様子に変わります。
ところがその平八郎は、劇場に着くなり行方知れずになってしまっていて……
次の瞬間、遠くから女の悲鳴にも似た叫び声がこだまします。驚いた小五郎たちが慌てて声の聞えてきた楽屋裏へと向かうと……
そこに待っていたのは舞台の主演女優・大出祥子にスリーパーホールドを見事に決められて落とされる寸前の、老い先短い年寄りの姿だったのです…!?
平八郎のしたことへの報いは当然としても、それ以外にも主演女優の大出祥子は今回の劇にはひどく不満そうでした。
演出家の本木は下らない脚本しか書けないにもかかわらず指図ばかりで偉そうな態度。他方共演するのが別れた昔の男だというのであれば、彼女の言うことも理解できなくはなかったのですが…
一方そういった不満を周囲に当り散らすことで、大出祥子のことを快く思わない人間も数多くいるようでした。
マネージャーの佐々木瞳はそんな祥子のワガママにいつも苦労させられていて、共演者の一人中山英子も満足な演技もできない祥子を大根呼ばわりしてひどく嫌っている様子。更には小道具の館岡は祥子に自分の仕事にケチをつけられたことに反感を感じていて…
どうやら関係者の間の人間関係は最悪で、いつどこで誰が爆発してもおかしくない、そんな一触即発の険悪な雰囲気を漂わせていました。
そしてそれを裏付けるかのように祥子は、芝居の最中に照明が頭上から落ちてきたりと、ここ数日何度も命を落しかねない危険な目に遭っているというのです。
それを聞いたコナンは、例の脅迫状のターゲットが主演女優の大出祥子だと確信するのですが…
そんな中でも芝居の稽古は休むことなく続けられていきます。そしてその時間舞台の中央では、主演の大出祥子と共演者の宇田裕一がテーブルに向かい合って語り合っていました。それから間もなく劇は二人があの世での永遠の愛を誓い合った後、薬を飲んで心中を図るシーンを迎えます。
二人の台詞が終わると、ウエイトレス役の中山英子がテーブルの方に向かっていき、水の一杯入った水差しとグラスを2つテーブルの上に置いて舞台袖へと消えていきます。
それから今度は宇田がスーツの内側のポケットから薬の入った包みを取り出して、それを祥子に手渡し、その後水差しを手にとってグラスに水を注いでいきます。
その様子ををじっと眺めていた祥子はやがて受け取った薬の包みを静かに広げて口に運び、宇田の注いだグラスの水を口に含んで、しばらくするとゆっくりとテーブルの上にその身を横たえます。
そして宇田も同じようにして包みの薬を口に運び、グラスの水を飲んで間もなくテーブルの上にその身を横たえ、同時にゆっくりと照明が消えていき…劇は静かにその幕を閉じていったのでした。
しばらくすると再び照明が点灯し、客席の方から演出家の本木が満足な様子で舞台の方へ向かってきます。どうやら今日の祥子の演技にひどく感動したらしいのです。そして共演者の宇田も起き上がり、迫真の演技に圧倒されたと祥子の演技に感心するのでした。
ところがそんな二人の言葉にもかかわらず、当の祥子からは何の反応もありませんでした。劇が終わったにもかかわらずいつまで経っても起き上がらない祥子に、熱の入れ過ぎだと苦笑いしながら宇田が彼女の肩を動かしてみると……
祥子はそのままの勢いで床の上に崩れ落ち、二度と起き上がることはなかったのです……
今回の主役といってもいいほどの大活躍でした。伝説の名探偵ということでどんな人物かと思えば…本当に名探偵だったのでしょうか?
今回の小五郎は平八郎のペースに巻き込まれて災難続き。2度に渡って大怪我をし、ついには事務所まで…それにしても見所の多い大傑作です。