(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 沖野ヨーコ 青島美菜(24) 青島全代(26) 賢二 鑑識 安斎明日香 TWO-MIX 星野輝美 レックス |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 人気アイドル、武道館でライブ 杯戸デパート店員 米花銀行勤務、美菜の姉 美菜の婚約者 鑑識員 人気アイドル 人気アーティスト 人気アイドル、元アース・レディースの一員 解散した人気バンド |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 高木渉 天野由梨 田村ゆかり 久川綾 安井邦彦 千葉一伸 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし |
11月2日、ファミリーレストラン〈Royal Sunday〉の一席にはコナン、蘭、小五郎のお馴染みの三人の姿がありました。そして三人の様子をよく見ると、何やら小五郎がやたらとご機嫌な様子…
それもそのはず、その日の夜6時からは、小五郎が熱烈に応援するアイドル沖野ヨーコの武道館でのライブコンサートがあるからでした。そしてコンサートを前にした小五郎はスーツに身を固め、手には真っ赤なバラの花束を持ち、いつにも増して饒舌でやたらとはしゃいでいたのです。一方で蘭とコナンはそんな馬鹿騒ぎに呆れながら、仕方なさそうに小五郎の相手をしていたのですが…
そんな中コンサートの開演時間の15時も近づき、そろそろ店を出た方がいいと蘭から促される小五郎でしたが、係員にサイン入りのチケットを見せれば裏口から入れる手筈になっているから大丈夫だと、呑気な様子で構えていたのです。
ところが小五郎が上着の内ポケットを探ってみるとポケットの中は見事なまでに穴が開いており、そこにあったはずの肝心のチケットも……
慌てて小五郎はテーブルの周りからトイレの中まで、方々を探し回りますが、ついにチケットは見つからず…
小五郎はひどく落ち込みますが、事情を説明すれば入れてもらえるかもしれないと蘭とコナンは何とか小五郎を慰めようとします。しかしそんなみっともないことは出来ないと、小五郎はあくまでチケットを見せて堂々と中に入りたいとダダをこねるのでした。
小五郎がそんな情けない姿で蘭とコナンとやり合っていると、そこへ突然、三人の席のすぐそばにあった公衆電話の受話器を手にした女性が、電話の相手に抗議している大きな声が聞えてきたのです。
彼女の会話の内容から察するに、どうやら電話の相手と2人でライブに行く予定になっていたはずが、その相手の賢二という人物が風邪を引いたらしく、一緒に行くことができなくなったということのようでした。
それを聞いた小五郎は、チケット欲しい一心でチケットが余っていれば譲って欲しいと電話の女性に思わず訊ねてみたのです。するとその女性─青島全代(まさよ)が言うには、タダで譲ってもいいが、一緒に車で家にいるはずの自分の妹を迎えにいって欲しいと返事を返してきたのです。
そこで小五郎は全代を車に乗せ、彼女の妹に美菜を車で迎えに行くことになります。そしてその途中、自然と全代の妹の美菜についての話題が出ますが、全代の話ではその日妹の美菜はコンサートに行くのを楽しみにしていたにもかかわらず結局待ち合わせ場所にも現われず、家に電話しても全然出ないというのでした。
しかも最近結婚が決まったにもかかわらず妙に落ち込んだそぶりを見せることもあるらしく、全代はそれをひどく心配している様子だったのです。
しばらくして小五郎たちが全代の妹・美菜の住む一軒家に着くと、家の中には妹の美菜の結婚のために家を出て行くことになった姉・全代の荷造りのためなのか、折りたたまれたダンボールやガムテープが至る所に放置してありました。それから奥の美菜と全代の部屋の中に入っていったのですが…
美菜と全代の部屋の中にはアイドルのポスターが壁や天井一面に飾られていて、棚や引き出しの中にはCDやグッズが山のように入れられており、三人はそのコレクションの数々に驚かされます。そしてそれらをよく見てみると、なぜか皆同じものが二つあり…どうやら姉妹それぞれが一つずつ購入するという熱の入れようだったのです。
それから小五郎たち三人は、部屋の中一面に飾られたポスターを興味深そうに眺めながら、妹を呼びに行くと行って奥の方へ入っていった全代を待っていました。するとそこへ突然、家の奥の方から何かを叩くような大きな音が…。
気になって音のした方へと小五郎とコナンが向かうと、奥のバスルームのドアの前には、妹・美菜の名前を叫びながら懸命にドアを叩く全代の姿があったのです。
全代の話では、バスルームの扉が内側からガムテープのようなもので目貼りされているらしく、中に入れないというのです。そしてガラス張りになったドアには、同じくガムテープで「サヨナラ」の文字が逆さまに写し出されていて……
それを見た小五郎たちが、小五郎の掛け声に合わせてドアに体当たりして押し破り、中に入ってみると…
何とバスルームの中には、湯船に寄りかかるようにしてうつ伏せの状態で倒れ、手にしたカミソリで手首を切って息絶えている、妹・美菜の変わり果てた姿が…。
現場の状況は、ドアも窓もガムテープで完全に目貼りされていて完全な密室状態。一見すると誰も外部からは侵入することは不可能なように思えました。
その状況を見た小五郎は美菜の衝動的な自殺と考えますが、コナンは現場に残された不可解な痕跡から他殺の疑いもあるとみて捜査を始めます。
しかし他殺だとすると、一体犯人はどうやってバスルームの外に出たのか?謎はますます深まるばかりだったのです……
今回の作品で沖野ヨーコ以外に名前が登場したアイドルやアーティストたちの名前。
まず安斎明日香は青山先生がコナン連載以前に発表した短編作品「夏のサンタクロース」に登場するアイドルの名前。詳しくは16「骨董品コレクター殺人事件」を参照下さい。
次にTWO-MIXはご存知高山みなみさんのユニットで、81・82「人気アーティスト誘拐事件」にも登場しました。
そしてレックスは木村達也がボーカルを務める人気バンドでしたが、42「カラオケボックス殺人事件」で木村達也が毒殺されてしまい、そのまま解散となってしまいました。
それからもう一人、星野輝美ですが、これはずっと先の249・250「アイドル達の秘密」で沖野ヨーコの所属したアース・レディース(地球的淑女隊)の一員として再登場しています。後で見るとこんな所に名前が登場していたのかと、意外な発見でした。
32「コーヒーショップ殺人事件」と並んで、私が原作の中では特にお気に入りに挙げている作品です。
とにかくまず冒頭の小五郎とコナンのやりとりが最高に面白かったです。詳しくは下をご覧になってください、とにかく笑えます(笑)。この話を読むとやはり小五郎のコナンに占める役割の大きさを思い知らされますね。本当に欠かせないキャラクターです。
本格推理ものとしても密室殺人を扱ったもので、トリックは心理的盲点を突いた見事なものでした。あまり糸とか氷を使った物理的トリックというのはどんなに見事でも「ああ、そうか」で終ってしまいがちなのですが、こういう人間の視覚・心理の盲点を突いたトリックというのはいつも唸らされますね。
犯人当てについてはまあ分からない方はいらっしゃらないでしょう、というより半分倒叙形式(コロンボや古畑のように、初めから犯人が分かっている形の小説のことをいいます)の作品ですから、この作品の焦点ではないのですが、犯人である決定的証拠を当てるという楽しみはあります。
そしてまた上手い具合に伏線が張ってあります。こちらもなかなか見事でした。
管理人としては密室トリックについては実は当てることはできず、犯人である決定的証拠についてはバッチリ分かりました。ですから痛み分けということにしておきましょう(笑)。
またラストは悲しい終り方でしたが、こういう悲しいすれ違いが生まれないためにも普段から率直でありたいと感じずにはいられませんでした。
ああ麗しのヨーコ嬢…、あなたの美しさは犯罪だ…御覧なさいあなたに捧げるこのバラを…どれもこれもあなたに見とれて真っ赤に染まってしまっているじゃないですか… | |
ぬわんちってぇー、ナハハハ |
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(蘭に向かって) あのおじさんのバカ面の方が犯罪だよね? |
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(ニカッと笑って)ガキにはこの洒落た大人のセリフは理解できねぇってかー?(と言いつつコナンの頭を強く撫で回す) |
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洒落たセリフねえ… |