名探偵コナン303「戻って来た被害者」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
File303 戻って来た被害者
英題
The Victim Who Came Back
放映日
2002/12/9
原題
TVオリジナル
ジャンル
本格、ジュヴナイル
事件現場
曙町3丁目1番地付近のマンション402号室(細野早苗宅)
管轄
東京警視庁捜査一課(目暮警部)
登場人物
江戸川コナン
目暮警部
高木刑事
吉田歩美
小嶋元太
円谷光彦
細野早苗(28)
徳永和弘(39)
日野正照(40)
広瀬利通(50)
牧村寿史
主婦A
主婦B
本編の主人公、正体は工藤新一
警視庁捜査一課警部
巡査部長、目暮の部下
帝丹小学校に通うコナンのクラスメート
帝丹小学校に通うコナンのクラスメート
帝丹小学校に通うコナンのクラスメート
遺体の第一発見者、マンション402号室
マンションの住人、401号室、居酒屋経営
リサイクルショップ〈HINO〉店長
リサイクルショップの配達係
リサイクルショップの配達係?
曙町3丁目付近に住む主婦
曙町3丁目付近に住む主婦
高山みなみ
茶風林
高木渉
岩居由希子
高木渉
大谷育江
潘恵子
清川元夢
塩谷浩三
佐藤正治
鳥海勝美
中島千里
百々麻子
あらすじ
「まだまだ使えるのに見捨てちゃ、物が可哀相で…」

  連続空き巣事件の犯人を捕まえるため、少年探偵団の3人に付き合って閑静な住宅街である曙町に出かけたコナンは、曙町3丁目1番地付近を通りかかった時マンションの一室から悲鳴が上がるのを耳にします。

 急いでその部屋にコナンたちが駆けつけると、中には驚いて青い顔をしている女性の姿が…。そして彼女が凝視していたソファに近づいて見ると、その座席部分のクッションを外した中に年老いた女性の亡骸が詰め込まれていたのでした…。

 警察の調べでは死因は後頭部を鈍器で殴られたことによる脳挫傷で、死亡推定時刻は昨日の午後2時から3時までの間。被害者は身元不明だといいます。

 その402号室の住人である女性・細野早苗の話によると、そのソファは昨日の夕方に米花町のリサイクルショップで購入したものらしく、シートがずれていたのを直そうとして遺体を発見し、悲鳴を上げたのだということでした。被害者は知らない人間で、昨日の昼頃は独りで映画を見に行っていたと言います。

 どうも彼女が怪しいと睨んでいる感じの目暮警部でしたが、少年探偵団の3人は彼女は本当に驚いていた様子だったと主張します。そうしていると、今度は警察官に連れ添われて一人の男性が目暮の下にやって来ます。

 その男性は徳永和弘といい、事件のあった402号室の隣・401号室に住んでいるといいます。彼の話によると、昨日の2時から3時までの間は家にいたといい、その間何か言い争いをしている声がしたと言うのです。
 少年探偵団は彼の証言は信憑性に欠けると考え、目暮警部は細野早苗の映画に行っていたという証言の信憑性を疑いますが…。

 また、少年探偵団の話で気になったというリサイクルショップ〈HINO〉に聞き込みに行った高木刑事は、そこで店長の日野正照から次のような証言を得ます。

 問題のソファが昨日買い取って来てすぐに店頭に並べたもので、それを細野早苗が購入。ところが2、3日はかかるという手入れもしないでいいからすぐに配達して欲しいと言われ、その翌日に店の配達員・広瀬利通の手で配達を済ませた。そしてその間倉庫にも鍵を掛けておいた。だから誰もソファに近づけたはずがない…というのです。

 細野、徳永、日野の3人の証言が正しいとすると、ソファの持ち主が犯人ということになりそうですが…。誰か嘘をついている人間がいるのでしょうか……?

NEXTコナンズヒント
地図記号
コント
コナン「次回は新春2時間スペシャル!」
元太「1月6日!」
光彦「月曜夜7時!」
歩美「来年も、見てね!」
OP
I can't stop my love for you」(愛内里菜)
ED
Overture」(稲葉浩志)
監督
山本泰一郎
脚本
扇澤延男、突廻匡隆
絵コンテ
菊池一仁
演出
広嶋秀樹
作画監督
工藤柾輝
ビデオ
PART11-2
DVD
PART11-2
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★★

 リサイクルショップを舞台に、物を大切にしましょうというメッセージも少し込められた今回の作品ですが、結論としては残念ながらあまり良い出来だとは思えませんでした。

 何かコナン(新一)がコナン(新一)らしくないといえばいいのでしょうか。あまり推理ミスをするコナン(新一)というのは見たくないというのが正直な感想です。これが例えば優作先生相手だったら分かるのですが、まだ小学生の光彦に一本とられるというのは物語の構成としてどうしても合点がいかないです。

 そもそも今回のお話のテーマというのは一般人(平均人)ならこうするだろうということであっても、そうせずに平均人が考えもつかないような意外な行動を取る人間がいるということもあり得る。だから推理する時には平均人の感覚で決めてかかっては駄目なのだ、というメッセージというか本格推理に対するアンチテーゼが主張されている話なのでしょう。

 確かに曙町3丁目で犯人が捨てたソファがまたリサイクルショップを経て曙町3丁目の細野早苗の部屋に戻ってきたというのは面白い話ですし、犯人の性格によっては平均人では予想もしないような突飛な行動に出ることだってあり得るという主張は言われてみればその通りだと思います。いろいろ偽の手がかりもありますしプロットもしっかりしていて、そういった辺りは30分ものとしてはよく練られているなという印象は受けます。

 しかしよく考えてみると、探偵が犯罪捜査にあたって、事件関係者をじっくりと観察して、「この人物ならこういうことはしないだろう」とか、「この人物ならこの場合にはこういう行動に出るであろう」とか、事件関係者の心理や性格をよく考えて推理するというのは言ってしまえば常識なのではないでしょうか。
 こういった人間観察に優れ、心理・性格研究によって犯人を割り出す探偵というのは推理小説界にも思いつくだけでシャーロック・ホームズをはじめエルキュール・ポアロ、ミス・マープル、ファイロ・ヴァンス、メグレ警視など、挙げればたくさんいます。
 コナンの敬愛するホームズは言ってみればこの人間観察をもっとも得意としていた探偵ですし、また極端な話をすればファイロ・ヴァンスは物的証拠に全く頼らずに犯人の心理・性格研究だけで推理して犯人を割り出したこともある位です。それ位捜査するに当っては人間観察というのは重要なものなのです。

 それを考えるとコナン(新一)ほどの優秀な探偵が、なぜ光彦の推理に対してあのように容疑者の心理・性格も考えずに「犯人がソファを自分の部屋の中にそのまま放置しておけばよいものをわざわざ外に運び出すはずがない」と簡単に決め付けてしまったのかが今もって納得できません。

 この話がもしコナンと光彦の立場が入れ替わっていたとしたら充分納得できる話です。それなら今回のテーマというのも充分理解できたのですが、やはり主人公でホームズ役であるはずのコナンが推理ミスをして、言い方は悪いですがワトソン役の光彦が正解というのは話の構成としてもおかしいです。
 これが例えば優作先生相手ならまだ納得がいくのですが、やはり〈平成のホームズ〉と言われるほどの名探偵が小学一年生相手に推理で負けるのは…(苦笑)。225話の「商売繁盛のヒミツ」のようなパロディのようなくだけたお話なら分かるのですが、今回は真剣に推理して間違っていますからね。
 悪代官を最後に懲らしめることができずに逃げられてしまう黄門様(水戸黄門)を見ているような感じがして、後味が悪いというかすっきりしないというのが私の感想ですね。そんな黄門様は私は見たくありません(苦笑)
 それ以外の部分ではいろいろと丁寧に作られていただけに勿体無いお話でした。

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