(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 妃英理 服部平次 本山正治 能勢利三 寺西 木暮 渡嘉敷警部 伊良部刑事 アナウンサー 鑑識 プロデューサー ベルモット |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 蘭の母親、腕利きの弁護士 西の高校生探偵、新一のライヴァル スポーツタレント、能勢の親友 プロ野球選手、ジャガーズのセーブ王 沖縄日売テレビ職員 ファルコンズの4番打者、スイッチヒッター 沖縄県警那覇中央署 警部 沖縄県警那覇中央署 刑事 スポーツニュースのキャスター 沖縄県警 鑑識員 TV局プロデューサー 黒の組織の女、映画女優クリス・ヴィンヤード |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 声の出演なし 声の出演なし 坂東直樹 石井康嗣 千葉一伸 声の出演なし 岡和男 河相智哉 水内清光 高戸靖広 大西健晴 声の出演なし |
年が開け、新しいペナントレースに向けて2月からのキャンプインを前にプロ野球選手たちが自主トレに励む1月の半ば、その温暖な気候からトレーニングの場所として選手たちの間でも人気の高い沖縄県の那覇市では、昨年の優勝チームのファルコンズ打倒を目指してトレーニングに励む昨年度のセーブ王・能勢利三の姿がありました。
能勢はジャガーズの守護神として長年チームに君臨してきたベテランピッチャーで、今年は通算セーブ数の日本記録の更新もかかっており、冷たい雨が降りしきる中でも下半身強化を図るべくロードワークに余念がなかったのです。
ところがそんな能勢の活躍を快く思わない一人の男が、今まさに能勢を亡き者にせんと、雨の中で待ち伏せを図っていたのでした…。男の名前は本山正治といい、元々は能勢と同期入団の投手で、引退の後現在はスポーツタレントとしてTVにもちらほらと登場することのある有名人でした。
その本山が自分を本能寺の変の際の羽柴秀吉に、そして能勢を明智光秀に見立てて殺害する計画を実行に移し始めたのですが、殺人を犯せば警察に追われることになるのは自明の理…。そんな中で彼は一体どうするつもりなのでしょうか?
彼の自信たっぷりな表情からすれば、余程綿密な殺人計画が練られていることは間違いなさそうなのですが……
一方事件の前日─毛利探偵事務所には、翌日他でもないその能勢と本山の二人と沖縄日売テレビの企画したテレビ番組の中で三者対談をすることになっていた小五郎の姿がありました。
沖縄の綺麗な姉ちゃんと酒池肉林─せっかくわざわざ沖縄まで行くのだから少しは羽目を外したいと考えていた小五郎でしたが、結局蘭とコナンも同行することになってその計画は敢え無く頓挫…。しかも東京から沖縄に向かう飛行機はビジネスクラスに格下げとなり…どこか不満げな様子で沖縄那覇空港に降り立ったのです。
やがて空港ロビーで沖縄日売テレビの寺西と、取材先の宮崎から到着したばかりという本山と落ち合った小五郎たちは、寺西の運転するワゴンで能勢の滞在先のホテルに先回りし、まだ雨の降りしきる中、ホテル近辺の道のどこかで自主トレのロードワークに精を出しているであろう能勢が戻るのを待つことに決めたのです。
ところがホテルに向かう道の途中、小五郎たちは道端に一人のレインコートをまとった人物が倒れているのを発見し、車を止めて様子を窺ってみます。
すると…何とその人物は他でもない、小五郎たちがホテルで会うことになっていた、セーブ王の能勢利三だったのです…!!!
能勢は腹部を鋭利な刃物のようなもので刺されて既に亡くなっており、すぐに沖縄県警が駆けつけて殺人事件として捜査が始まります。
そして捜査が始まると、空港で出会ってからの本山数々の不審な態度から彼が犯人であると直感したコナンは、巧みな誘導で小五郎や沖縄県警の渡嘉敷警部にも本山が疑わしいことを知らせたのです。
ところが小五郎たちから問い詰められた本山は、そこではじめて自らの切り札を持ち出してきたのでした。
何と彼には決定的とも言えるアリバイがあったのです…!! 前日の10日本山が取材を行なっていた滞在先の宮崎から沖縄へ向かう飛行機はたった一本しかなく、しかもその到着は翌11日の朝9時50分。
ところが能勢の死亡時刻は11日の朝9時30分前後…とすればどうやっても本山には犯行は無理ということになり、アリバイが成立するという訳なのです…
もし本山が犯人だとすると、本能寺の変で主君織田信長が自刃した後、わずか3日間で岡山から京都に引き返して明智光秀を討った、いわゆる秀吉の「中国大返し」を彷彿とさせる神業にも思えたのですが、一体彼はどうやって沖縄にいた能勢を殺害したのでしょうか……!?
今回はプロ野球選手が登場したということで、以前一度だけ登場したファルコンズの4番打者・木暮選手が再び登場しています。
といってもまたしてもアップの顔はなく、テレビ画面に小さく登場しました。未だにどんな顔をしているのかは不明です(笑)
実は前作72「三つ子別荘殺人事件」では、彼は何気に事件解決に非常に大きな役割を果たしたのですが、今回はどうだったでしょうか?
今回の話のモデルになった羽柴秀吉の中国大返しは戦国時代の1582年、本能寺の変で織田信長が明智光秀の謀叛により自刃した際、中国の毛利氏を攻略するため岡山(備中高松城)に滞在していた秀吉軍がわずか三日間で京都まで引き返し、山崎の戦いで明智軍を打ち破ったという神業的な行動力を見せたエピソードです。
現在の感覚からすれば3日で岡山から京都というのは時間がかかっているように思えますが、当時毛利軍と対峙している最中であったにも関わらず即座に毛利軍と和睦し、しかも軍勢ごと引き返すというのは並大抵のことではありませんでした。さぞ京都にいた明智軍も意表を突かれたことと思われます。
そしてこれをきっかけとして秀吉は信長の後継者としての地位を固め、やがて豊臣姓を朝廷から賜り、1590年に相模の北条氏を倒して天下を統一したのでした。詳しくはフリー百科事典ウィキペディアの本能寺の変のページをご覧下さい。
それから余談ですが、今回の主要登場人物である本山正治、能勢利三、寺西の三人の頭文字を取ると「本能寺」となります。これは明らかに狙って付けた名前だと思います。