(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 灰原哀 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 糸川透(32) 浦崎良樹(38) 安田美和(28) 新野豊 |
本編の主人公、正体は工藤新一 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 米花農業大学 助教授、光彦の家の隣人 蜘蛛愛好家 生物雑誌記者 米花農業大学 教授 |
高山みなみ 神谷明 茶風林 高木渉 林原めぐみ 岩居由希子 高木渉 大谷育江 菊池正美 石野竜三 大原さやか 長克巳 |
新しく入った本を読もうと市立図書館までやって来た探偵団たち。ところがふとしたことからコナンと灰原哀は、図書館のそばに立つ古びた家屋で何やら怪しげな行動をとっている三人組の男女を発見し、二人して彼らの後を追いかけていきます。
すると三人の男女は家の奥の方にある雑草の生い茂る荒れた庭先にたたずみ、彼らのうちで屈強そうな一人の男が、持っていた黒っぽいトランクを地面に置いて鍵を開けている所でした。
それから今度はストレートヘアーにクリーム色のスーツに身をまとった若い女性が「教授に電話してみたら?」と言い出し、ほどなくピンク色の携帯を取り出して自分で連絡を取り始めたのです。もっとも教授は不在らしく、電話には出なかったのでした。
そうこうしているうちに時刻は正午を過ぎ、近くにある工場のチャイムが昼休みの合図の鐘を鳴らす中、先ほどの屈強そうな男が開けたトランクの中から四角い透明なケースを取り出すことに成功します。
それから持っていたピンセットのようなもので、ケースの中に入れられていた小さな黒い物体を慎重な手つきでつまみ出したのですが…
その透明なケースに入れられていたのは、「セアカゴケグモ」という名前で知られる一匹の蜘蛛。
元々はオーストラリアや中南米など海外に生息していた毒蜘蛛で、数年前に日本でも生息が確認されて一時は大騒ぎになったこともある蜘蛛だけに、コナンの表情も険しいものへと変わっていったのです。一体彼らはここで何をしているのでしょうか…!?
ところが緊張が漲る中で、突然その静寂を破る出来事が発生したのです。コナンたちの上方から「あっ」という悲鳴が上がったかと思うと、今度は木の幹が「バチバチッ」と折れる音がして、それから「ドサッ」という大きな音とともに二つの物体が落ちてきたのです…!!
それは他でもない、突然姿を見せなくなったコナンと灰原を探していた元太と光彦の姿でした。すぐ近くの木の影には歩美もこっそりと姿を隠していて、どうやら三人はコナンたちの行動を密かに探っていたのです…。
そんな探偵団三人の危険な行動にコナンは眉をしかめますが、探偵団たちに詳しく事情を聞く間もなく、今度は大きな音を聞き駆けつけた三人の男女にその姿を捕えられてしまったのです。
そしてほどなく屈強そうな男が大声で「コラッ!何をやっているんだお前ら?」と叫び、探偵団たちを怒鳴りつけ始めたのですが…
ところが三人の男女のうちのもう一人、白衣を身にまとった痩せ型の青年は探偵団たちの姿を認めると、驚いた表情に変わったのです。一方探偵団たちのうち、光彦も三人の男女の姿の中にその青年の姿があったことに驚いている様子。
どうやらその青年と光彦の二人は知り合いらしく、光彦の話によるとその白衣の青年は光彦の家の隣のアパートに住む糸川透という名前の男で、米花農業大学の助教授として蜘蛛の研究をしているということのようでした。
彼らの話によると、三人はその日この古びた家の庭先を借りて、〈ネイチャー・グラフィック〉という雑誌に載せるための「セアカゴケグモ」の写真を撮りにやって来ていたということでした。
先ほどの屈強そうな男は名前を浦崎良樹といって、何匹もの毒蜘蛛を飼っている蜘蛛マニアとして業界では有名らしく、彼が自分の飼っている蜘蛛を提供。
そして一方もう一人の女性は名前を安田美和と言って雑誌記者をしているらしく、浦沢の持ってきた蜘蛛をカメラに収める役目だったというのです。
そして先ほどの「教授」というのは糸川が研究をしている米花農業大学の新野豊教授のことで、糸川と同じく蜘蛛の専門家。新野教授には、蜘蛛の写真撮影が終わった後で雑誌に掲載するインタビュー記事を載せるために取材をすることになっているというのです。
先ほどは電話に出なかった教授でしたが、取材の時刻も近づいてきたため、写真撮影を行っている安田記者に代わり、今度は蜘蛛マニアの浦崎が自分のグレーの携帯を取り出して教授に連絡を取り始めます。すると今度は教授はすぐに電話に出て、それから浦崎と会話を始めたのです。ところが…
電話に出て間もなく、新野教授は突然大きな叫び声を上げたかと思うと、「クロゴケグモに噛まれた!」と騒ぎ出し、やがてプッツリと連絡が途絶えてしまったのでした…
事態を重く受け止めた浦崎、安田、糸川の三人は、直ちに教授がいると思われる米花農業大学の彼の研究室へと直行。
コナンたちも彼らの後を追いかけていきますが、研究室は中から施錠されており、糸川の持っていた唯一の合鍵を使って中に入ったのです。
しかし時すでに遅く…研究室の床の上には、右手で胸の辺りを押えて苦悶の表情を浮かべながら事切れている新野教授の無残な姿が残されていたのでした…。
一方研究室の机の上には、教授の命を奪ったと思われる毒蜘蛛が、すでに亡骸となって転がっており……
数年前に日本でも生息が確認されて一時は大騒ぎとなった「セアカゴケグモ」。今回の作品はこの毒蜘蛛を使った事件ですが、複雑に複数の要素が絡み合い、一風変わったトリックと結末で視聴者を驚かせてくれます。
また登場人物の中に光彦の隣人という青年も登場。彼は事件にどのように関係しているのか注目です。
今回は、コナンが変声機を使って小五郎の声で事件を解決しますが、珍しいことに電話の受話器を通しての事件解決となります。そのため小五郎の姿はまったくありませんでした(苦笑)
詳しくは大阪府立公衆衛生研究所というWEBサイトのセアカゴケグモのページをご覧下さい。きちんとまとまっていてとても分かり易いです。
▼個人的には
30分の事件の割には非常に設定がきめ細かくなされていて、見ごたえのある本格作品で、個人的には非常に高得点ですが、一度見ただけではちょっと分かりにくい作品かもしれません。
そのため探偵団たちは登場するものの、本格ミステリとしての難易度は非常に高く、正直子供向けではないと思います。
その一方でラストに灰原さん「らしい」所が見られますし、コナンの慌てぶりが何だか微笑ましくてとても楽しめますし、目暮警部を思わず押しのけて(苦笑)、事件に熱中する高木刑事の姿もあります。高木刑事に関しては、あとでゲンコツをもらわなければいいんですけどね(苦笑)
▼ミステリとしての評価
かなり複雑に入り組んだ本格作品で、一見しただけでは分かりにくいかもしれません。また珍しく殺人事件ではなく、傷害致死という結末のため、こちらも一見しただけでは何だかよく分からないかもしれません。
しかし伏線も巧妙に張られていますし、トリックも非常に凝っていて面白いです。30分作品としてはかなり良い出来の作品だと思いますので、ビデオやDVDなどで初見の方は是非途中で止めて一度じっくり考えてみることをオススメします。
サラッと見る活劇タイプの作品ではなく、じっくり考える本格ミステリ作品です。
犯人当てに関しては三人の中の一人ということでそんなに難しくはありませんが、トリックの方はなかなか想像するのは難しいと思います。難易度は高めです。