(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 阿笠博士 灰原哀 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 山村刑事 天土陵司(34) 野々宮悦子(28) 二川肇(35) 御上平八(43) 河埜麻雄 本山正治 小森 ベルモット ゴメラ |
本編の主人公、正体は工藤新一 新一の家の近所に住む自称天才科学者 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 群馬県警のヘッポコ刑事 ペンション天土 オーナー 宿泊客、天土の大学の後輩 宿泊客、〈スペース・サンデー〉編集員 宿泊客、〈スペース・サンデー〉編集長 野々宮の婚約者、天土の大学の後輩 スポーツタレント、能勢利三の親友 本山と能瀬と同期入団の元野球選手 黒の組織の女、映画女優クリス・ヴィンヤード 大怪獣 |
高山みなみ 緒方賢一 林原めぐみ 岩居由希子 高木渉 大谷育江 古川登志夫 坂口賢一 柚木涼香 志賀克也 筈見純 坪井智浩 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし |
星に名前が付けられる…!? ある冬の日、阿笠博士のビートルで望遠鏡の貸し出しサービスをやっているという群馬の山奥のペンションへ向かっていた少年探偵団たちは、阿笠博士からそんな話を聞かされて俄然やる気になっている所でした。
季節は冬で空気も澄んでいて、おまけにその日は新月。天体観測には絶好の機会だけに、もしかしたら本当に新しい彗星を発見できるかもしれない…そしてもし発見したあかつきにはその彗星の名前は…
光彦をはじめ探偵団たちはそんな夢物語を頭に思い浮かべていましたが、その一方で、コナンだけはノートパソコンを手に何やら調べ物をしている様子。そしてその内容というのが、先日沖縄で起きた殺人事件に関係するものだったのです。あの時からコナンの頭の中には何かがひっかかっているらしいのですが……
探偵団たち一行が目的地のペンション天土に到着すると、ペンションの中にはすでに何人かの客が滞在していました。ところがその客たち、奇妙なことに皆同じような内容の文章の書かれた一枚の招待状を受け取っていることが判明したのです。
─一年間の観測の結果、天文学を揺るがす大発見をしてしまいました…色々意見を聞きたいので、ペンション天土に来てくれませんか? もちろん宿泊代はこちら持ちです…来られない都合が何かあるなら仕方ありませんが是非…河埜麻雄
河埜麻雄というのは、ペンション天土のオーナー天土陵司の大学の後輩で、同じ後輩の野々宮悦子とは婚約者という間柄でした。二人は以前はよくペンション天土に一緒にやって来ていたらしいのですが、一年前にペンションで大ゲンカをして以来、それっきり彼はパッタリと姿を消してしまったというのです。
そして先週、その河埜麻雄から婚約者の野々宮悦子のもとにペンション天土に来るようにと招待状が届いたらしく…彼のことを諦めきれなかった悦子は、3日前からペンションに滞在して彼を待ち続けているというのです。
更にペンションにはもう二人、御上平八と二川肇という名前の客が滞在していましたが、彼らはいずれも〈スペース・サンデー〉という天文雑誌の編集に携わっている人間で、一年前のその日に河埜麻雄と会ったらしく、そのためか大して親しくもないものの、二人にも彼からの招待状が届いていたというのです。
しかしその日になっても当の河埜麻雄は一向に彼らの前に姿を現わさず…御上と二川はたちの悪いイタズラであろうとと苦笑いを浮かべながら、すでに帰り支度の算段をつけている様子でした。
一方河埜麻雄のことが忘れられない悦子はというと、昼間から酒をあおって悲しみを紛らわせながらも、彼の帰りをひたすら待ち望んでいる様子でしたのです…
そんな彼らと一通り対面を果たした探偵団たちは、荷物を部屋に運び終えるとすぐにお目当ての天体観測をするために、オーナーの天土お薦めのペンションの裏の道を登った先の丘へと向かいます。
ところが探偵団たちは、そこでとんでもない物を発見することとなったのです…!
それは何と白骨化した人間の骨…しかもコナンの推理によってその白骨化した遺体の主は何者かによって殺害され、その場に遺棄されたことが分かり…
更に遺体のそばには、被害者のものと思われる遺留品がいくつか残されていました。そしてその中でも特にコナンが関心を持ったのが、箱に入った6本のタバコ…
コナンはその6本のタバコが、被害者が残した犯人を示すダイイング・メッセージだと確信したらしく……
何気に元太が発言したセリフにこんなものがありました(笑) ゴメラの星ってどんな星なんでしょうかね。
ともに天文分野で未発見の星を見つければ、名前が付けられるそうです。
小惑星には好きな名前が付けられるものの、何度も観測して軌道を確認しないと発見が認められないそうで、難易度は高いようです。
他方彗星の方はというと、見つけるだけでいいそうですが、ただし好きな名前は付けることができず、最初に発見を申請した3人の名字が組み合わされて名付けられるそうです。
ただこれらを発見するためにはどこにどの星があるかなどのそれ相応の天文知識が必要ですから、なかなかそういった知識がなければ見つけることは容易ではありませんよね。
▼総括
まさしくタイトルにある通り、6本のタバコに秘められたダイイング・メッセージを推理する本格作品です。コナンたちが発見したこの6本のタバコが、更に思わぬ事態を引き起こしていく点、またラストでの灰原哀の活躍も必見です。
その一方で、371-372「物言わぬ航路」からの続きになっており、黒の組織の話の伏線的も織り交ぜられています。その意味でも読み飛ばすことのできない作品ですね。
▼個人的には
個人的に暗号ものというのは苦手というか、あまり好きではないのですが、容疑者の数が少ないため、暗号を解けなくても登場人物たちの相関図を作って詳細に検討していけば、案外容易に犯人は分かるのではないでしょうか。
実は私もこの話を読み犯人と動機については推理できました。しかしそれでもダイイング・メッセージの意味はよく分からなかったんですね(苦笑) それぐらい「なるほど」という感じの解答になっています。
ジャンル的には本格に位置づけられると思いますが、展開が早く、サスペンスというか若干ホラー的な要素もあり、読んでいてハラハラドキドキさせられることと思います。
更に人里離れた山奥のペンションと、寒い冬の夜という舞台設定がサスペンス度をより一層濃いものに仕立て上げてくれています。この設定というのはミステリーの王道みたいなものですからね(笑)
あとはやはり何気に元太のセリフの中で「ゴメラ」が登場しているのは新しい発見でした。ゴメラは最近なかなか登場機会がありませんので、名前を聞くだけで嬉しくなってしまいます。
▼ミステリとしての評価
ダイイング・メッセージはちょっと難しいかもしれませんが、分からなくても何となく犯人は推理できるように伏線が張ってあります。
このダイイング・メッセージの出来については、賛否両論あるかもしれませんね。6本のタバコがバラバラに置かれていた状態ですから、いろいろな文字や図形を作ることが可能でしょうし、その中からあの答だけを導き出す(というか被害者があのメッセージを残す)というのは、強引といえば少し強引です。
事件は複雑に糸が絡まったような感じで、また事件も目まぐるしく展開していくため、お子さんが一回見ただけでは意味がよく分からないかもしれません。
そんな中で糸を一つ一つ解きほぐすのは難しいですが、詳細に検討してみるとやはり相変わらずよく出来たミステリに仕上がっているなと感心させられます。