名探偵コナン385-387「ストラディバリウスの不協和音」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
File385-387 ストラディバリウスの不協和音
英題
Dissonance of the Stradivarius Violin
放映日
2005/1/24・1/31・2/7(前奏曲・間奏曲・後奏曲)
原題
第46巻
File2「前奏曲(プレリュード)」
File3「狂想曲(カフリッチョ)」
File4「鎮魂曲(レクイエム)」
File5「即興曲(アンプロンプテュ)」
File6「幻想曲(ファンタジア)」
ジャンル
本格
事件現場
設楽調一朗邸
管轄
東京警視庁捜査一課(目暮警部)
登場人物
江戸川コナン
毛利蘭
毛利小五郎
阿笠博士
灰原哀
工藤有希子
目暮警部
高木刑事
山村刑事
設楽調一朗(72)
設楽絢音(68)
設楽降人
設楽蓮希(23)
設楽弾二朗
設楽千波
羽賀響輔(32)
設楽弦三朗(60)
設楽詠美
津曲紅生(54)
救急隊員
消防士
消防士
鑑識A
鑑識B
消防士
鑑識
原田
ジン
ウォッカ
ベルモット
あの方
本編の主人公、正体は工藤新一
本編のヒロイン、新一の幼なじみ
蘭の父親で私立探偵
新一の家の近所に住む自称天才科学者
黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保
新一の母親で元人気女優藤峰有希子
警視庁捜査一課警部
巡査部長、目暮の部下
群馬県警のヘッポコ刑事
設楽家当主
調一朗の妻
調一朗の息子、蓮希の父、1年前事故死
調一朗の孫娘
調一朗の弟、響輔の父、30年前死去
弾二朗の妻、響輔の母、30年前病死
調一朗の甥、絶対音感を持つ作曲家
調一朗の弟、有名な指揮者
弦三朗の妻、2年前事故死
設楽家 執事
救急隊員
消防隊員
消防隊員
鑑識員
鑑識員
消防隊員
鑑識員
2連覇を達成した騎手
黒の組織の男、新一に毒薬を飲ませた人物
黒の組織の男、ジンの手下
黒の組織の女、映画女優クリス・ヴィンヤード
黒の組織のボス
高山みなみ
山崎和佳奈
神谷明
緒方賢一
声の出演なし
島本須美
茶風林
高木渉
声の出演なし
大塚周夫
中谷ゆみ
声の出演なし
茂呂田かおる
声の出演なし
声の出演なし
山寺宏一
土師孝也
きのしたゆうこ
横尾まり
千葉一伸
遊佐浩二
千葉一伸
遊佐浩二
大西健晴
千葉一伸
大西健晴
声の出演なし
声の出演なし
声の出演なし
声の出演なし
???
あらすじ
「確か数億円するっていう、伝説の銘器…」

 ベルモットが満月の夜の事件で打っていた携帯電話のプッシュ音…その事が最近ずっと気になっていて、頭から離れずにコナンを悩まし続けていたのですが、そんなコナンのもとへ、日頃はとても真面目に仕事をしているとは思えない小五郎から、驚くべき、そして願ってもない誘いがかかります。

 その誘いというのは、代々著名な音楽家を数多く生み出しているという設楽一族の住む屋敷への訪問に、コナンを一緒に連れて行ってやるというものでした。

 設楽一族の中には音が音階で聞こえてくるという、いわゆる”絶対音感”を持つ者もいるらしく、その人物に聞けば例のプッシュ音が何を意味するかが分かり、黒の組織についての何かしらの手掛りが得られるかもしれない…そうコナンは考えたのでした。

 一方小五郎の方はというと、今回は設楽家当主・設楽調一朗の孫娘・設楽蓮希の依頼で設楽家の屋敷を訪れたのですが、彼女の依頼というのは次のようなものだったのです。

 不気味なことに設楽家ではここ数年、当主である調一朗の誕生会の日に、相次いで人が亡くなっているというのでした。

 一昨年は当主・調一朗の下の弟で弦三朗の妻である詠美が階段を踏み外して頭を打ちつけて亡くなり…昨年はというと、当主・調一朗の長男で蓮希の父親である降人が、腐ったベランダの手摺りに寄りかかった拍子に鉄柵が崩れて転落死してしまったというのです。

 しかも亡くなった二人は、ともに当主・調一朗の誕生会の際、調一朗の面前でヴァイオリンの銘器として名高く、設楽家の家宝ともいえるストラディバリウスを演奏する役を務めていたというのです。そう、二人はまるでそのストラディバリウスの呪いにでも取り憑かれたかのように次々と……

 そして今年の今日、再びやってきた調一朗の誕生会で、そのストラディバリウスを演奏する役を務めるのが、他ならぬ蓮希自身だったのです…
 そこで連続して起きた二人の死の真相を突き止めることで、彼女が弾く前にヴァイオリンにかけられた呪いを解いて欲しい…彼女はそう小五郎に依頼してきたという訳だったのです。

 一方、その日誕生会の開催される設楽邸に集まっていたのは次の人々でした。まず当主である設楽調一朗… そしてその調一朗の妻で、彼女の息子である長男の降人が昨年亡くなったてからというもの、その死が信じられずにすっかり精神をおかしくしてしまった設楽絢音…

 更に調一朗の長男・降人の娘で今回の小五郎の依頼人である設楽蓮希…30年前に起きた強盗事件の際に調一朗の上の弟・弾二朗が他界した際に母方の羽賀家に引き取られて育ったという、絶対音感の持ち主の弾二朗の息子・羽賀響輔…そして有名な指揮者だという調一朗の下の弟の弦三朗…
 それに加えて設楽家の執事を30年にわたって務めているという津曲紅生…

 誕生会が始まるまではまだしばらく時間がありました。そしてその間は、誕生会の準備に勤しむ者もあれば、部屋に帰って休む者もいるなど、小五郎たちと蓮希が呪われたストラディバリウスについて話し合っている一方で、各自が好きなように時間を過ごしていたはずだったのです。ところが……

 小五郎たちがストラディバリウスの呪いの話に区切りがつきかけた頃、再び悲劇が設楽家を襲ったのでした。何と小五郎たちのいる本館のすぐ横に建てられた別館が猛烈な勢いで炎を吹き上げ、燃え上がっていたのです…!!!

 その頃別館には、当主・調一朗の下の弟・弦三朗が仮眠を取るといって二階の自分の部屋で休んでおり、また調一朗の妻・絢音も亡くなった長男・降人の演奏する録音テープを聴きに別館三階のオーディオ・ルームに籠もっていたのです……

 何とか別館にいる人々を助けようと、小五郎たちは別館へと駆け足で向かったのですが…

今回の見どころ
音楽家一族の秘められた過去…

 音楽一家として名高い設楽家で起きた二つの怪死事件の捜査を依頼されて設楽邸を訪れた小五郎、蘭、コナンの三人

 ところが、その設楽家でまたしても別館が炎上し、中にいた一族の一人が犠牲になってしまったのでした。

 これらの事件が起きたのはいずれも当主・設楽調一朗の誕生会の日であり、今回の事件もまさにその当日に発生…一体そこにはどんな関連性があるのでしょうか…!?

 伝説の名器ストラディバリウスを中心に、音楽家一族の秘められた過去と誕生会で起きる怪死事件の真相究明に、コナンが挑戦していく本格謎解きミステリーです。

原作との相違点

 今回の作品はかなり原作に忠実に作られていました。細かなセリフは若干違いはありましたが、大幅にカットされているシーンなどはなかったと思います。

 唯一目についたのは、蓮希が次に狙われるのではと皆が推理して風呂に入っているはずの彼女の部屋に駆けつけた直後の小五郎の浅ましい(笑)妄想シーンの部分がカットされていたぐらいでしょうか

 追加されているシーンの方は冒頭の小五郎が競馬中継を聴いているシーンで原田という騎手が2連覇を達成したという部分ぐらいかと(笑)

 それ以外ではやはりアニメでは音が使えるということで、冒頭の蓮希がヴァイオリンの稽古をしている際に弾いていた曲がL・ボッケリーニのメヌエットでになっている所と、解決編直前のコナンによる有希子のピアノ演奏シーンで弾いていた曲が「大きな栗の木の下で」になっている所が、オリジナルといえばオリジナルです。ちなみにこのシーンは原作よりかなり長いシーンになっていますね。

豆知識
絶対音感 (音楽)

 一般的にある音を聴いた時に、他の音と比べることなく音を音名(イタリアの音名であるドレミが多い)で感じ取ることができる能力のことをこう呼んでいます。

 絶対音感を持つ者には、風の音や鳥のさえずり、パトカーや救急車のサイレンの音までもが音階(ドレミ)で聴こえてくるのだとか。

 この能力を持っていれば、一度その曲やメロディを耳にしただけで楽器で演奏したり、譜面に残すことができるそうで、モーツァルトやベートーベンなどの天才音楽家たちはこの能力を持っていたといわれているそうです。

ストラディバリウス (楽器)

 イタリアの名弦楽器製作者アントニオ・ストラディバリ(1644-1737)の名前にちなんでつけられたヴァイオリンの名前。ヴァイオリンは16世紀後半に原型となる楽器が作られたそうですが、そのヴァイオリンを今の形に完成させたのがこのストラディバリだといわれています。

 ストラディバリはその生涯で1000本を超える作品を世に送り出したそうですが、その製作法の秘密に関しては弟子たちにも生涯伝えられることはなく、その美しい神秘的な音色は、ずっと謎に包まれていたそうです。

 彼の作ったヴァイオリンを超えるものは300年を経た今日でも未だに出ていないともいわれ、その一方でストラディバリが製作したヴァイオリンは500ないし600しか現存していないということもあってか、ストラディバリウスの中にはオークションで数億円の値段がつくなどしているものもあり、楽器コレクターや音楽家の間ではまさしく羨望の的となっている楽器です。

メヌエット (音楽)

 原作でははっきりしなかった、冒頭で設楽蓮希が演奏していた曲ですが、アニメではイタリアの作曲家ルイージ・ボッケリーニ(1743~1805)作曲の「メヌエット」が使用されていました。たまにCMの挿入曲などにも使われていて、結構有名な曲です。

 ちなみにHome Sweet Homeというサイト様のこちらのページでMIDIですが曲を聴くことができます。

レクイエム(葬送曲) (音楽)

 物語中盤で羽賀響輔が弾いていた曲で、あのオーストリアの有名な作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)が晩年に作った曲です。

 とはいえ実際にはモーツァルトはこの曲の作曲途中に逝去しており、曲自体は未完のまま残されました。

 それを後輩弟子のジュースマイヤーが補筆し完成させたのですが、後年になってジュースマイヤー版の欠陥を改め、モーツァルトの実際の楽曲に近づけようと、様々な人物によって復元版の作成が試みられているそうです。

 なおモーツァルトについては上で張られているフリー百科事典ウィキペディアへのリンクを参照下さい。

大きな栗の木の下で (音楽)

 ドドレミミソミミレレドで始まる有名な曲ですが、実はイギリス民謡なのだそうです。コナンによる有希子のピアノ演奏シーンで曲に合わせて小さな新一が歌っていました。

 この曲についてはクラシック MIDI ラインムジーク様より配布されているMIDIを聴けるようにしましたので、こちらからどうぞ。

古希 (お祝い)

 70歳のお祝いのこと。長寿のお祝いには他に還暦(60)、喜寿(77)、傘寿(80)、米寿(88)、卒寿(90)、白寿(99)などが有名ですよね。

 なおこれらがそう呼ばれる理由については、フリー百科事典ウィキペディアの誕生日のページを参照下さい。

 ちなみにこの長寿のお祝いの話は、そういえば映画第5弾「天国へのカウントダウン」の阿笠博士のクイズでも登場しました。

NEXTコナンズヒント
File385 イニシャル
File386 絶対音感
File387 こだわりの酒造り
コント
File385
蘭「コナン君、犯人は母親よ!」
コナン「何で?」
蘭「絶対、おかん!!」
コナン「え…!?」

File386
コナン「次回は…」
蘭「見ないと、絶対あーかんよ」
コナン「それダジャレなの?」
蘭「うん、まあ…」

File387
小五郎「次回は鹿児島!!」
コナン「おっちゃんが飲む!食う!酔う!」
蘭「何しに行くの…」
OP
START」(愛内里菜)
ED
忘れ咲き」(GARNET CROW)
監督
佐藤真人
構成
青木雄三
絵コンテ
青木雄三
演出
File385 原田奈奈
File386 荻原露光
File387 山崎茂
作画監督
File385 青野厚司/サブキャラクターデザイン 佐々木恵子
File386 渡辺章/サブキャラクターデザイン 佐々木恵子
File387 杉藤さゆり/サブキャラクターデザイン 佐々木恵子
ビデオ
PART13-10
DVD
PART13-10
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★★★

 今回のお話は音楽を題材に扱ったお話で、どこか11「ピアノソナタ『月光』殺人事件」を思わせる所が数多くありました。前回はピアノでしたが、今回はヴァイオリンと違いはありますが、犯人の悲しい過去という点では共通していますし、ただラストでは以前の教訓が生かされていたという感じでしたね。用意周到に消防士さんが待機していて、事なきを得ましたので何よりでした。

 犯人当てについては、第二の事件が発生した時点で私にも確信が持てました。これは伏線でというよりは、あの展開から推理小説的な展開を想像すると、一番不可能な状況にいた人物が犯人なのだろうな…という長年の読書経験のようなものからです。

 犯人については、何となく雰囲気を持った方で、そうであって欲しくないなと、おそらく皆さんも思ったのではないでしょうか。しかしヴァイオリンを蓮希に譲ろうとした点、心の底まで腐っていた訳ではなかったので、爽やかというか潔い終わり方であったのが救いでしたね。

 ただ個人的には犯人はもっと憎たらしい人物で、探偵にコテンパンにやられるというパターンの方がスッキリしていて好きです。アメリカの方が好きないわゆる”勧善懲悪”という奴です。その方が分かり易いですし、気持ちの整理が簡単にできるんですよね。

 次にトリックの点では、第一の事件についてはあまり申し上げる点はなさそうですが、第二の事件のタクトとヴァイオリンを使ったトリックは面白かったですね。人間心理を巧く突いていますよね。あれなら素早く痕跡を消すことができていれば、警察が事故か自殺と思うのも当然かもしれません

 また今回は音楽が題材になっているということもあって、アニメで見るのもオススメできますね。アニメ自体の出来もこの3回分は作画も良かったと思いますし、原作がカットされたりしている部分もほとんどありません。

 原作の方は5話にわたって連載されたのですが、少しセリフが多いことと、一族の人間関係をきちんと整理して見ないと話がよく理解できないという部分があり、特に子供さんたちにとっては少し苦しいかもしれません(これが大人の私から見てもかなりややこしかったです)

 じっくりと人間関係を整理しながら読むタイプのミステリだと思います。かなり大人向けの作品でしょうね。

豆知識
音階 (音楽)

 音と高低の順に並べたものをいい、このうち1オクターブにある音の数が7つのものを七音音階と呼んでいます(アジアやアフリカなどでは1オクターブを5つに分ける五音音階というものもあるそうです)

 七音音階の表記の仕方は各国によってまちまちですが、イタリア式の「ドレミファソラシド」と英米の「CDEFGABC」が最も有名なのはご存知の通り

 日本では一応「ハニホヘトイロハ」ということになっていますが、これらは長調・短調を指す時ぐらいにしか使わず、ギターなどのコードは英米式にアルファベットを使いますし、普段の音階はイタリア式にドレミを使うことが多いですね。

 今回問題となったドイツ式というのは日本ではあまり馴染みがないかと思います。私も今回の話を読んで初めてこのことを知りました。

 なお音の階名表記については、ウィキペディアの音名・階名表記のページを参照下さい。

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