(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 灰原哀 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 松中ユリコ 時計 伊勢川剛三 松中義人 |
本編の主人公、正体は工藤新一 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校の生徒、事件の依頼人 伊勢川剛三の秘書兼遺言執行人 ”荒ぶる牛”と恐れられた伝説の相場師 ユリコの父親 |
高山みなみ 林原めぐみ 岩居由希子 高木渉 大谷育江 ゆかな 檀臣幸 亀井三郎 檀臣幸 |
とある日の帝丹小学校─時刻は昼の2時を回り、元気に学校を後にしようとする生徒とそしてそれを迎えに来る親の姿…そんな当たり前の光景が校内で繰り広げられる中、コナンたちの所属する1年B組では実に意外な出来事が発生していました。何と少年探偵団の目の前に久々の依頼人が現れたのです…! しかもその依頼人というのがまた…
探偵団の目の前に現れたのは隣りのクラスに通う松中ユリコという名前の女子生徒で、元太と光彦が思わず鼻の下を伸ばし、張り切りたくなってしまうような可愛らしい女の子でした。しかしその表情はどこか陰があり、さながら笑顔を忘れてしまった美少女といった感じだったのです。
それもそのはず、彼女は父親を生まれてすぐに交通事故で、母親を昨年病気で亡くしており…しかも二人は結婚を反対されてしまったため家を出て遠くで結婚し、やがてユリコが生まれたらしく、そのためユリコは今はひとりぼっちの身であり、親戚といえる人間も全然知らないというのでした…。
そんなユリコが今回依頼してきた内容というのは次のようなものでした。つい最近のこと、ユリコの目の前に名字も名前もない、ただ”時計”と名乗るサングラスをした正体不明の男が現われ、ユリコの母親の祖父、つまりユリコの曾祖父にあたる人物に伊勢川剛三という男がいるのですが、ユリコがその伊勢川剛三の遺産を相続する権利を有していることを伝えにきたというのです。
伊勢川剛三というのはその勘働きと度胸の良さで戦後の株式相場を牛耳り、”荒ぶる牛”と恐れられ、巨万の富を築いた伝説の相場師でしたが、昨年の冬に病気で倒れてそのまま帰らぬ人となったのでした。
そして剛三は死の間際に一つの謎を残し、その謎を解いた者に彼の全財産を譲り渡すと遺言しこの世を去ったというのです。
ただしそこには条件がつけられていて、まず挑戦権は彼の息子や妻や孫たちに、相続権の高い順番に与えられるということ、そして挑戦権を与えられた者は剛三の秘書兼遺言執行人である”時計”から謎の提示を受けてから24時間以内にその謎を解かなければ、相続権も挑戦権も失ってしまうというのでした。
松中ユリコはそんな剛三の遺産の相続権を持つ17番目の挑戦者らしいのですが、もちろん挑戦するも棄権するも彼女の自由。しかしまだ幼いユリコがそんな謎を解けるはずもなく…
そこで彼女と同じ学校に通っている、これまでにいくつもの難事件を解決してきた少年探偵団の存在を知った”時計”に勧められるまま、助言を仰ぐためにユリコは探偵団たちの前に現れたという訳だったのです。
何とか剛三の残した謎というものを解いてユリコが笑顔で喜んでいる姿を見たい…少年探偵団の面々はユリコからの依頼をもちろん快諾し、ほどなく探偵団たちの前に姿を見せた”時計”の運転する車で、謎解きの舞台となる伊勢川剛三の建てた通称”天使の館”へと向かうことになったのでした。
天使の館というのは山の奥深く、森に囲まれた所に建てられた豪華な屋敷で、敷地内は大きく分けて5つのブロックに分けられていました。そして敷地の中央から正確に東西南北を指す方向には4体の天使の像が置かれ、その天使たちに見守られるようにして4つの建物が建てられていたのです。
このうち南の館は伊勢川剛三の住んでいた館であり、最期に息を引き取った場所。次に西の館は主に仕事場として使用され、北の館は子供たちと使用人によって共同で使用。
最後に東の館はというと…他の館がもう人がいないにも関わらず手入れが行き届いているのに対し、この館だけはまるで幽霊屋敷…それもそのはずで、伊勢川剛三の死後、彼の遺言で一切誰も近づけるなと言われているというのです。それを聞いたコナンたちは何かひっかかるものを感じたのですが…
そして東西南北に位置するその4つの館のちょうど中心に位置するのが、”荒ぶる牛の館”と呼ばれる建物。”荒ぶる牛”と恐れられた剛三にふさわしく、中には巨大な牛の像が置かれ荘厳な雰囲気を漂わせていたのでした。
この他にも敷地内には半分が牛で半分が人間という伝説の怪物というミノタウロスの像など、牛を象った像や装飾品が無数に散らばっていて、相場の世界ではシンボルであるという牛が、この館では守り神のように大切にされていることを窺わせたのです。
”時計”の案内で天使の館の内部を見て回った探偵団は、それから北の館に向かい遅い夕食を済ませますが、間もなく緊張の瞬間を迎えます。時計が9時の鐘を鳴らすと同時に、”時計”がついに剛三の残したという”謎”について語り始めたからでした。
─牛の角が消え、尾が頭となる時、天使が舞い降りて笛を吹く…その調べこそ我が宝なり…
ミノタウロスをはじめとして館の中に数多く散らばる”牛”の像と東西南北に建てられた4つの”天使”の像…一体どれのことを指しているか見当もつかない探偵団たちはいったん用意された部屋に引き返して知恵を絞ることにします。
なぜなら”天使の館”には剛三が残した財宝を守るために万全のセキュリティシステムが完備されていて、日没と同時に館内はライトの光で照らし出されて侵入者を監視する体制が整えられいる他、それ以外にももっと恐ろしい高圧電流などの仕掛けもあり、挑戦した者の中には大怪我をしたり行方不明になった者もいるらしく、くれぐれも慎重な行動をとるようにと”時計”から警告されていたからでした。
ところが何とかユリコにいい所を見せようと功に焦った探偵団たちは、トイレに行くと嘘をつき、コナンを置いて勝手に行動を開始してしまい……
今回は山奥の森に囲まれた天使の館で探偵団たちが暗号解読に挑戦していくお話ですが、冒険色も強くてハラハラドキドキすること請け合いです。
そしてラストに待っているのは意外性充分の結末と感動のエンディング。近年のTVオリジナル作品の中でもかなり傑作の部類に入るのではないでしょうか。そして元太からはお約束のあのセリフも(笑)
ギリシャ神話に登場する半分が人間という伝説の怪物。今回はこの神話にちなんだエピソードもありますが、作中できちんと説明されているので知らなくても困ることはないかと思います。
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