(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 高木刑事 広松広(28) 水原良二(33) 安永雪子(42) 大久保イワオ 桜田泰造 岩井 平野 鑑識A 救急隊員 |
本編の主人公、正体は工藤新一 巡査部長、目暮の部下 お笑いタレント、芸名にっこりピース 俳優、安永事務所所属 芸能プロダクション〈安永事務所〉社長 水原のマネージャー、事件の被害者 米花東署の刑事 米花東署の刑事、桜田の部下 米花東署の刑事、桜田の部下 鑑識員 救急隊員 |
高山みなみ 高木渉 山田義晴 小西克幸 原亜弥 声の出演なし 小山力也 ??? ??? 千葉一伸 高橋トオル |
ある日の早朝のこと、日課としているジョギングに汗を流していた売れないお笑いタレントの広松広は、自宅アパート付近の道を息を切らしながら走っている最中、駐車場前の路上に中年の男性がうつ伏せになって倒れている現場に遭遇します。
酔っ払ってそのまま寝てしまったのかと思い、男性のそばに近づいてみると…何とその男性は、頭から血を流して身動き一つしなかったのでした。突然のことに慌てた広松は、目の前にあった電話ボックスに駆け込んで救急車を呼ぼうとしたのですが…
ところがボックスから外に出て到着を待っていても肝心の救急車は一向に来る様子がなく…人の良い広松は消防署が駅前にあったことを思い出し、自分の足で走って救急車を呼びに行くことに決め、現場を離れて駅前の消防署へと駆け出していったのでした。
彼のその善意から出た行動が、その後一人の傲慢な刑事によって仇で返されることになるとも知らずに……
事件の初動捜査を担当したその傲慢な米花東署の刑事、桜田泰造の態度は、最初から挑発的なものでした。
大体一般市民が殺人事件の現場に遭遇するなど滅多にないことであり、人が倒れていたのを見ただけで死んでいるかどうかなど即座に分かるはずもない以上、普通はまず救急車を呼ぶ方が常識的にも関わらず、鈍器で後頭部を一撃されて既に亡くなっていることだけを後付けて判断し、救急車など呼びに行く必要はなかったのだと一方的に決め付けたのです。
そしてそれからはもう広松は完全に犯人扱い…警察手帳も見せず、自分から名乗ることもせずに一般市民の名前・住所・職業などの個人情報を聞こうとし、広松の名前が「広松広」と上から読んでも下から読んでも同じになることに気づいた桜田は、彼の名前を「ふざけた名前だ」と嘲笑する始末。
更にあろうことか、桜田は「第一発見者もふざけた奴なら、この仏も(被害者)もふざけている)」と、死者に対しても侮辱をするような言葉を吐き…その傲慢ぶりにはたまたま現場近くを通りかかり、捜査の様子を遠くから見守っていたコナンも呆れるばかりだったのでした。
被害者もふざけている─桜田がそう思ったのは、亡くなっていた被害者が、右手をじゃんけんのチョキと言ったらよいのか、それともVサインとでも言ったらよいのか…いわゆる”ピース”の形にし、ニッコリ笑った表情で事切れていたからだったのです。確かに妙といえば妙なポーズですが…そこには一体どんな意味が!?
それからほどなくして桜田が部下の刑事二人に聞き込みをするように指示を出した頃、本庁から高木刑事が現場に到着。そして高木刑事の姿を見たコナンは、チャンスだとばかりに高木のそばへと駆け寄り、ちゃっかりと捜査を開始します。
一方の高木刑事はというと、何と第一発見者の広松とは顔見知りだったらしく、広松が以前万引き犯の逮捕に協力してくれたこともあり、人柄の良い好青年であることを桜田に話したのです。ところが桜田の方はというと…
「第一発見者を疑え!」─桜田は広松が救急車を呼ぶために事件現場を離れたことを不自然な行動だ判断しているらしく、彼を疑っていることを隠そうともしないのです。しかもそれだけではなく、彼が事件現場を離れたのには、もっと別の大きな理由があると自信たっぷりに高木たちに語るのでした。いったい桜田が広松を疑う、その大きな理由とは何なのでしょうか…?
そうこうしているうちに現場には事件の関係者も到着。被害者が安永雪子という女性が社長を務める安永事務所という芸能プロダクションで、俳優の水原良二のマネージャーをしている大久保という男性だと判明します。
更に関係者の証言からその大久保が、広松が被害者を発見した早朝5時のおよそ30分前の4時半頃まで、現場近くの水原のアパートで水原と彼の俳優としての今後の仕事の展開について話し合っていたことが関係者の証言で明らかにされたのです。
そしてこの水原の住むアパートには、何と第一発見者である広松も住んでいて、しかも水原の部屋とは隣り同士であるということが分かり…
正直何なんだこいつはと思ってしまうほどの傲慢な刑事です。一体どのように天誅が下されるのか、それが今回の見どころでしょうか(苦笑)
事件現場となった駐車場前から交差点を左折して駅前の消防署へ向かう途中にある橋の名前。この橋の川原付近で凶器の鉄パイプが発見されました
(注・「かみたかだ橋」は作中表記ありませんでした。管理人による当て字です)
米花3丁目にあるコンビニエンスストア。事件当時牛丼フェアをやっておりました。
初めにお断りしておきますが、以下かなり辛辣に批評しておりますので、それでも読んで頂ける方のみ先へお進み下さい(ただし不愉快になられても責任は持てませんのでご了承を)
率直に言ってこの作品は今まで見た400作を超える作品の中で一番不愉快でしたし、ミステリとしても見るべきものはほとんどなかったような気がします。そしてキャラクターもレギュラーはコナンと高木刑事しか登場しないので(こんなのも珍しい)、高木刑事ファンの方以外にとっては何の面白味もない厳しい30分だったかもしれないですね。
何よりも今回の桜田という刑事の傲慢さには言葉もありませんでした。”第一発見者が犯人”という先入観に対する戒めという意味の話なのでしょうけれども、その先入観以前にこの刑事は人間としてどうなのかなと思ってしまいます。
しかもあれだけ公然と人を侮辱する、人を見下すような言葉を投げつけ、人を犯人扱いしておいて、最後にギャフンと言わせられるのかと思えば、高木刑事に諭されて最後は「悪かった」の一言だけで済んでしまうのでは…何か消化不良ですよね。謝って許されるレベルを超えています、完全に名誉毀損罪が成立していますよ(苦笑)
どうせなら勧善懲悪の形にして、きっちりとやっつけて欲しかったです。そのほうが分かり易いですし、視聴者にとっては何かこうすっきりしない終わり方でした。
ミステリとしては、殺人の動機も、そこから犯罪に至って凶器を捨てる所まで犯罪の過程には違和感はありませんし、被害者が殴られたにも関わらず笑って犯人を励まそうとしていたという心理も理解できます。そして桜田という刑事は傲慢な態度ではありましたが、現場近くを捜査して凶器を発見したり、コンビニのビデオカメラを調べたりと、捜査自体はきちんとされています。
そこまではまあいいのですが、肝心のコナン&高木刑事の捜査というのが今回はお粗末そのものです。広松が犯行時刻に部屋にいなかったのにトイレを流す音が聞こえたような気がすると証言したことと、被害者のVサインと笑顔の二つだけで犯人を割り出しているのですが、こんなものは犯人を決定づける証拠とはとてもいえないでしょう。
なぜならトイレを流す音はひょっとしたら反対側の部屋や上ないし下の部屋からしたもので勘違いしていたといくらでも言い訳できますし、事実本当に勘違いしていたということも充分あり得ます。電車の中などで携帯の音がすると、どこから音がしているのか全然分からないということがよくあるかと思いますが、人間の聴覚なんてそれぐらいいい加減なものですからね。
そして被害者のVサインなどは…(苦笑)、それ以上にどうとでも解釈できる曖昧な状況証拠に過ぎないのは言うまでもないことでしょう。
作中では高木刑事が「動機にしろ凶器の処分にしろ、桜田刑事の思い込みだけじゃないか」と言っているのですが、そう言っている割には、肝心の自分もろくな証拠を提示できておらず全部推測だけで推理を組み立てているのですから、これでは高木刑事も相手のことをどうこう言う資格はありません。
結局犯人の自白に頼っている訳で、実際の事件ならそれで結果オーライなのかもしれませんが、ミステリーとしては不完全なまま終わっているという印象が否めないですね。
それから今回のキャラの組合せはいったい(苦笑)、最近高木刑事などの刑事が普通に推理して普通に事件を解決するいわゆる2サス(2時間もののサスペンスドラマ)のような、あるいは出来の悪い刑事ドラマのような事件がやたら目立つのですが、個人的にはコナンが主人公である以上、コナンがもっと捜査に推理に大活躍して、解決編でも(麻酔銃による眠りを介在させるとしても)コナンが見せ場を作る作品が見たいです。そうでなければ「名探偵コナン」という作品を見ている意味がないですし、脇役に過ぎない一刑事が主役を差し置いて普通に推理して普通に事件を解決しても、何の面白味もありません。
コナンが子供であるというハンデを乗り越えて大人に邪魔されながらも懸命に捜査し、何とか事件を解決にこぎつけるというのが、コナンにしかできない設定ですし、何よりもコナンにしかない最大の魅力だと私は思っています。
最後にこの作品の良かった点も挙げておきましょう。何といっても最後の「被害者が”にっこりピース”などという売れないタレントを知っている訳がないからあのダイイングメッセージが広松広を指すという解釈には無理がある」というオチですね。ここだけは上手いなと思いました。