(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 鈴木園子 伊東玉之助(17) 伊東めぐみ(7) 片岡れんげ(17) 坂東彦衛門(50) 市村菊乃(40) 尾上又六(35) 吾妻与一(28) 澤村勘太郎(23) 片岡半四郎(60) 大貫宗一(38) 秘書 語りの声 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友 玉之助一座 座長、御門役 玉之助の妹、幼少時代のかぐや姫役 玉之助一座 座員、かぐや姫役 玉之助一座 座員、竹取の翁役 玉之助一座 座員、竹取の翁の妻役 玉之助一座 座員 玉之助一座 座員 玉之助一座 座員 片岡コンツェルン会長、れんげの父親 半四郎の秘書 半四郎の秘書 「竹取物語」のナレーションの声 |
高山みなみ 声の出演なし 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 高木渉 岩居由希子 高木渉 大谷育江 松井菜桜子 保志総一朗 あきやまるな 高野直子 西村知道 深見梨加 飛田展男 岡野浩介 沼田裕介 徳丸完 家中宏 三戸耕三 松谷彼哉 |
あの旅芝居一座が、再び米花町に戻って来る…その日コナンと歩美、元太、光彦の少年探偵団の面々は、以前知り合いになった弱冠17歳の伊東玉之助が座長を務める旅芝居一座の特別公演に役者として出演することになり、米花シアターで芝居の稽古に打ち込んでいました。
一座の公演とは別の特別公演とはいえ、大勢の観客が見守る中での演技。探偵団たちも恥をかくことのないよう、稽古に一生懸命取り組んでいたのです。そしてそんな探偵団たちの姿勢にいたく感心する座長の玉之助でしたが、肝心の一座の公演の方はというと…座員たちは稽古はそっちのけで観客席に座っておしゃべりに精を出す始末。
しかし優柔不断でどこかお人好しな性格だったはずの玉之助もいつの間にか逞しく成長しており、厳しい言葉で座員たちを叱咤すると、座員たちもそれに促されて再び舞台上に上がり稽古を再開。ピリピリしたムードの中でもいい緊張感の中、一座の稽古は順調に進められていったのです。
ところがそんな一座の下に、予期せぬ訪問者が訪れます。いかにも高級そうな車を劇場の前に横付けし、いかにも秘書風の眼鏡の男を従えて劇場に現れたのは、片岡コンツェルンの創始者で現会長でもある片岡半四郎。その半四郎は場内に入るやいなや横にいた眼鏡の男、秘書の大貫宗一に何か一言囁くと、大貫は観客席から舞台上へと上がり、芝居の稽古に励んでいた玉之助一座の女性の一人に近づき、自分と一緒に帰るようにと促したのです。
大貫に帰るように促された座員は名前を片岡れんげといい、今回の芝居でヒロインのかぐや姫役を演じる予定になっていた女性でした。そのれんげを大貫は強引に引っ張り連れて行こうとしたために玉之助も最初は挑戦的な態度を取りますが、大貫が強引に連れて帰ろうとしたのにはちゃんとした理由があったからなのでした。
何とれんげは半四郎の娘で、半年前に家出をしたために半四郎は大貫を使いずっと探させていたというのです。そしてれんげがまだ17歳である以上、いくら芝居をしたいとしても身勝手な行動は当然許されず…玉之助もちゃんと親を説得し、了承を得てから戻ってくるようにと彼女を説得し、彼女を半四郎の元に帰してしまったのです。
しかし一座からすれば3日後に初日を控える中、かぐや役が突然いなくなれば他の役者たちの稽古にも支障を来たすことは必至…当然他の座員たちも動揺を隠せないでいたのですが、玉之助はれんげが初日までに戻ってくると信じているらしく、それまでのかぐやの代役として園子と稽古の見学に訪れていた蘭に白羽の矢を立て、急場を凌ぐことにしたのです。突然の指名に驚く蘭でしたが、断る訳にもいかず…
そしてその出来事があってから3日後…玉之助の願いも空しくついにれんげは戻ってくることはなく、一座は公演初日の朝を迎えていたのでした。あと開演まで3時間…団員たちの間にも再び動揺が広がりますが、れんげの帰りを信じていた玉之助は諦めきれずに彼女を迎えに行くことを決意し、蘭とコナンと伴ってタクシーでれんげがいるはずの片岡半四郎の屋敷へと向かいます。
ところがいざ半四郎の屋敷へ到着してみると…れんげの代わりにそこにいたのは、名探偵である小五郎と目暮をはじめとする警視庁捜査一課の刑事たちでした。何とれんげは昨夜買い物に行くと言って消息を絶ち、そのまま行方不明となっているというのです。しかも事態はそれだけに止まらず…
─身代金一億五千万円、今井エレクトロニクス、加藤ネットワーク、中尾メディアの三社で適宜分割すべし。午後二時までに全額を用意、秘書一人に持たせて吉岡一丁目の駐車場に運ばせよ。
コナンたちが到着するつい1時間ほど前、ネットを使って上記の文章とともに、口を布で塞がれ後ろ手に縛られた状態で暗い部屋に監禁されているれんげの姿を映した映像が、半四郎の下に配信されてきたのでした。
何と親に反発してれんげが家を出たことに端を発した今回の騒動は、いつの間にかれんげの誘拐事件へと発展していたのです…!
しかも今回の誘拐事件で身代金の支払者に指定されている3社はいずれも片岡コンツェルンと取引のある会社で、しかも揃ってれんげに求婚しているというのですが、それではまるであの昔話そっくりで…
れんげを迎えに行くはずが、一転して誘拐事件に巻き込まれてしまったコナンと玉之助。果たして舞台の幕が開く前に事件を解決し、れんげを無事舞台上に送り届けることができるのでしょうか?
126-127「旅芝居一座殺人事件」でも登場した伊東玉之助一座が再び米花町にやってきて、また事件に巻き込まれます。
ちなみに前回登場したのは1998年で何と約7年ぶり…とはいえ時間的には1年以上進むことはない訳ですから、そんなに久しぶりではないのですが、玉之助はすっかり逞しくなっています。
日本最古の物語といわれる話。今回の作品で玉之助一座はこの物語を上演することになっていました。
この物語について詳しく知りたい方はフリー百科事典ウィキペディアのこちらのページを参照下さい。竹取物語のテキストを読んでみたい方はこちらをどうぞ。これを先に読んでおくと、今回の話はより楽しめることは間違いありません。
小五郎が竹取物語と間違えてしまったのがこの白雪姫でした。実際全然違う話ですし、こちらはグリム童話で日本の話ではないんですけどね(苦笑)
この話しについて詳しく知りたい方はフリー百科事典ウィキペディアのこちらのページを参照下さい(ただしネタバレがあるので注意)。また青空文庫のこちらのページではテキストで物語を読むことができます。
369「ツイてる男のサスペンス」でも登場したビールの銘柄。ところで小五郎、どう見ても真っ昼間から350ミリ缶を5本も空けてるのですが(苦笑)
誘拐事件の最中にちらっと登場したハンバーガーショップの名前。400「疑惑を持った蘭」でもちらっと名前が登場しました。
今回の作品はタイトルの通り玉之助一座の舞台公演と誘拐事件が同時進行して舞台が二転三転し、いやが上でもハラハラドキドキさせられるサスペンス仕立ての作品になっています。おそらくお子さんも含めて大多数の方はそれなりに楽しめる作品なのではないでしょうか。また98年からコナンを見ている方なら記憶にあるでしょう伊東玉之助、めぐみ兄妹が再登場してくれて、旧来のファンにとっては嬉しい作品ですね。
ただ個人的な感想を言わせて頂くと、かなり厳しい評価です。今回の作品は首を傾げるシーンというものが多く、肝心のストーリーにまったく入り込めませんでした。そもそも今回の事件の舞台設定に無理があり過ぎますし、端的に申し上げればリアリティーのない場面が多すぎましたね。にっこりピースの事件に引き続きまたしても、かなり辛辣に批評することになってしまいそうですので、了承の上で先にお進み下さい(不愉快な気持ちになられても責任は持てません)
まず第一に玉之助が、れんげが実家に連れ戻されたにも関わらず、座長として何の手も施さずにただ彼女の帰りを待っていた点。
これは座長としては失格でしょう。芝居ってそんな簡単にセリフを覚えられるものではないでしょうし、だからこそ日々稽古に励んでいるはず。そしてその日々の稽古の大事さは自分が一番よく分かっているはず。
にもかかわらずかぐや姫役の人間が直前にまったく稽古できない事態が生じれば蘭以外のきちんとした代役を立てるか、公演を中止する(3日前ならお客さんに失礼ということはないでしょう)など何らかの手を打つべきであり、ただ待っているだけではまともな芝居になどなるはずがないと思います。何よりもお金を支払って見に来るお客さんに対して失礼なのではないでしょうか?
同様の理由から、公演当日になってセリフを大幅に変更したり、カットしたり演出を変えたりして何とか取り繕おうとしていますが、これもでは今まで一生懸命やってきた稽古は何だったのか? とういことになってしまいます。
また蘭は楽しみにしているお客さんに対し申し訳ないと言っていましたが、私に言わせればこんなその場しのぎの出来損ないの芝居を見せる方がよっぽどお客さんに対して失礼な気がします。
しかももしれんげを救い出すことができていなかったら、どうなっていたのでしょうか? 言うまでもなく芝居はそこで止まってしまい現場は大混乱に陥っていたはずです。そういう最悪のことも考えて行動していない、というのはちょっと現実的な話ではあり得ないことのような気がします。
まあというよりも初めかられんげが戻ってくるという結論ありきで脚本が組み立てられているからそうせざるを得ない訳で、そこが設定に無理を感じる点なのです。
それから犯人についても、何故犯人は例の車での追跡劇よりも前に片岡れんげを始末しておかなかったのか? 何故あのような形で川に放置し、何時間か経過した後に水に溺れて死ぬような方法を用いたのか? その心理が理解できません。
そもそも作中でコナンが言っている通り、今回は狂言誘拐ではれんげと共犯だった訳ですから、身代金を取れたとしてもその先れんげを生かしておくことは絶対できなかったはず。
それならあの方法を用いたことで犯人にアリバイができるなどの特別な理由がない限りあの時点ですでに生かしておく必要はまったくなかった訳ですから、なぜあんな不完全で失敗する危険もあるような殺害方法(ひょっとしたら誰かに発見される可能性だってある)を選んだのかが理解できません。
これについても初めかられんげは救出されるという結論ありきで脚本が組み立てられているからそうせざるを得ない訳で、やはり設定に無理を感じます。
そして一番納得がいかなかったのが、犯人を目暮たちのもとで名指しした後にコナンは探偵団を引き連れてれんげ捜しに奔走する訳ですが、ここでなぜ警察にも協力を仰がなかったのか? ということです。
人の命がかかっているんです、探偵ごっこをやっている場合でもなければ、手柄を自分たちのものにするとかそういうことを考えるような場面でもないのです。一人でも多くの人間が協力して探すのが当然の場面ではないでしょうか?
にもかかわらずコナンが警察をまったく置き去りにしてまだ子供にすぎない探偵団たちと一緒になって探している姿には正直寒気すら感じました。
正直ここの所ずっと感じていることですが、殺人事件ないし人の命が関わるようなシーンでは、探偵団は活躍させないで欲しいです。これは登場させるなと言っているのではなく小学一年生に殺人現場で堂々と捜査活動をさせるなと言いたいのです。
以前はコナンですら現場にいると追い出されたものなのに、最近は探偵団すら平気で現場をうろちょろしていますが、何だかものすごく偉そうに見えます。これにはちょっと疑問を感じますね。小学一年生には小学一年生らしい行動を期待したい所です。
最後に今回狂言誘拐についてはれんげは共犯な訳ですが、警察権力をいたずらに浪費させた点何のお咎めもなしで済むのはおかしいですし、家出して半年も親に何の連絡もなく、あげくの果てに狂言誘拐をするような人間に待っている結末がこんなハッピーエンドというのは…何か大きな違和感を感じました。
現に片岡コンツェルンの取引先の一つはこれによって契約を解消されるという明確な財産的損害を受けている訳で、その責任は一体だれが取ってくれるのでしょうか?
そういうこと一つ一つを考えると何かこう素直に感動できない話でした。最初玉之助兄妹が再登場すると知った時はすごく嬉しかったのですが。