(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利蘭 阿笠博士 灰原哀 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 鈴木園子 見山 嘉納 矢沼 尾藤 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 新一の家の近所に住む自称天才科学者 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友 蘭たちと同じホテルの客、事件の被害者 見山の大学の同級生 見山の恋人 見山のアルバイト仲間 |
高山みなみ 山口勝平 山崎和佳奈 緒方賢一 林原めぐみ 岩井由希子 高木渉 大谷育江 松井菜桜子 声の出演なし 矢尾一樹 声の出演なし 声の出演なし |
ガキじゃあるまいし、何でこんな暑い中昆虫採集をしなければならないのか…その日コナンは阿笠博士の引率で、灰原哀と少年探偵団の面々とともに昆虫採集も兼ねた夏山のキャンプを楽しみにやってきていました。
暑さでぐったりのコナンと、寝不足でどこか機嫌の悪そうな灰原哀を尻目に、カブトムシやクワガタをゲットせんと張り切る探偵団たち。しかし採集シーズンである6月過ぎからお盆までの時期は既に過ぎており、最近夜も涼しくなってきたために虫が好む樹液もあまり出てないことをコナンから聞かされると、探偵団たちは一様に落胆の色を隠せないでいたのです。
もっとも阿笠博士はそんな事態も想定して、ちゃんと前もって宝探しの謎解きを用意していたのでした。博士は懐に入っていた紙を取り出すと探偵団たちに前に広げてみせ、その紙に書かれている暗号を解読すれば、探偵団たちが喜ぶようなお宝が手に入ると探偵団たちに挑戦してきたのです。
”マルムシニテント”─博士が見せた紙にはすべてカタカナ、しかも縦書きでそのように書かれていました。マル虫? テント? 全然見当のつかない探偵団たちはコナンに知恵を借りようとしますが、もちろん探偵団たちに楽しんでもらうために作った暗号である以上、コナンの力を借りるのは禁止…
阿笠博士と暗号作成を手伝った灰原哀の考えではそうする予定のはずだったのですが……
ところが、阿笠博士から暗号の書かれた紙を見せられたコナンの表情がいつもと違ったのでした。何とあの暗号大好きでいつも簡単に解いてしまうコナンが、阿笠博士の作った暗号を解読することができなかったのです…!
そのことを知って得意満面の博士と、いつもはなかなか見られないコナンの困った顔を見て意地悪そうな笑みを湛える灰原哀。
コナンも何とか暗号を解読してやろうと必死に知恵を絞りますが、妙案の浮かんで来ないままマナーモードにしておいた携帯がブルブルと震え出し、コナンの推理はそこで一度中断を余儀なくされます。
すぐにコナンは携帯をチェックしますが、届いたのは何と蘭と海へ遊びに行っているはずの園子からのメール、しかも写真メールでした。一体何の用かとコナンがメールを開いてみると…
結局それは大した用事でもなく、携帯をしまうと再び推理に集中しようとするコナンでしたが、事件が絡まないせいかどうも気持ちが燃え上がってこず…夜が更けてテントの中に戻っても、まだ解読には至らないでいたのです。
とそこへまたしても携帯の着信音の音がして、画面を見ると今度は蘭からの電話が。慌ててキャンプから外に出て、蝶ネクタイ型変声機を使って新一の声で電話に出てみると…
お願い助けて!!─何と今度は先ほどとは違い、必死に助けを求める蘭からの電話でした。何でも園子が滞在するホテルの窓ガラスに暗号のような変な文字が書かれているのを見つけたため、そのことを伝えるために二人は警察に向かったらしいのですが、その帰り道にいきなり何者かが襲いかかってきて、園子のバッグを取って逃げたというのです。
しかもそれだけではありませんでした。何とその変な文字が窓ガラスに書かれていた部屋に泊まっていた見山という名前の大学生の男が何者かによって殺害されたというのです!
そして警察からその話を聞いた園子は、窓ガラスに口紅のような赤い字で横書きされていた文字─アルファベットの小文字で書かれた”teiu”という文字が、被害者が残したダイイングメッセージだと推理しているというのですが…
探偵団たちと夏山のキャンプに来て博士の作った暗号解読に苦戦するコナンと、別の場所で殺人事件に巻き込まれた蘭と園子。コナンは果たして博士の暗号を解読して”お宝”をゲットし、更に蘭たちの近くで発生した殺人事件をも無事解決することができるのでしょうか!?
今回の作品は暗号解読がメインですが、探偵団たちが向かった山と蘭と園子が向かった海の両方で謎解きが行なわれます。
そして海の事件もコナンが新一の声色で蘭と電話をしながら、情報を集めて推理を組み立てていき事件を解決していく訳ですが、現場に一歩も向かわずに話を聞いただけで推理するというのはまさしく安楽椅子探偵ですよね。
いつもと変わった形式のこの事件、しかも暗号はかなりよく考え抜かれたもので謎解きを存分に楽しむことができると思います。
今回はまず冒頭で探偵団たちが元気よく歌うシーンが追加されています「カブトムシ カブトを取ったら ただの虫」と五七五になっているのが結構笑えますが(笑)
あとは今回は原作に忠実で細かいセリフ回しの違いはあるものの大きな変更点はありませんでした。ただ一点、夜丸虫温泉に向かった後の哀の「無駄よ…」というセリフのすぐ後の博士のセリフが、原作では「まーったくな!!」なのですが、アニメでは博士お得意の(笑)おやじギャグに変更されています。どんな内容かはアニメを見てのお楽しみということで、ご自分で確認してみて下さい。
キャンプの前日にこの地域で開催されていた夏祭り。八百万の神々を模した山車が山奥にある神社の鳥居を出発点に町の中を練り歩き、カラフルな色に照らし出された山車のバックには花火も上がってとても絶景なのだとか。
コナンたちが向かった山の中にあった温泉。村によって古びた旅館を改造して作られたもののようで、銭湯として利用されていました。
今回の作品は本当に面白かったですね。私は暗号解読ものはあまり好きではないと事あるごとに申しておりますが、そんな私も拍手を送りたくなるような傑作だったと思います。
こういう単純なのに奥が深い暗号というのはリアリティーもあって素晴らしいと思います。真相を聞かされてただただ感心するばかりでした。
また今回は山に探偵団、海に蘭と園子と別々の場所に遊びに向かった訳ですが、どちらでも暗号解読の謎解きが用意されていて、しかも先に解いた山での暗号解読法が海で起きた殺人事件の解決にもつながっていくという、実に見事なストーリー展開だったと思います。
正直最初の暗号解読だけでも感心しきりだったのですが、それが更に海での事件にもリンクしているとは予想できなかったですね。
あと特に印象に残っている点といえば、園子の「っていうか殺人事件」のタイトルコールはアニメでしかできないもので可笑しかったことと、ラストのオチでコナンが悔しがるシーンもコミカルで楽しかったことでしょうか、全体的にとても楽しい雰囲気の作品だった気がします。
こういう考えに考え抜かれたプロットというのは美しいですね。久しぶりに良いものを見せて頂きました。