(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 灰原哀 佐藤刑事 高木刑事 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 三井圭一 松浦仙吉(52) 吉川稔(23) 志村 タクシー運転手 藤當先生 太郎 次郎 三郎 四郎 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 警部補、目暮の部下 巡査部長、目暮の部下 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通う小学生 松浦ハイツ大家、喫茶店オリーブ店主 松浦ハイツ住人、コンビニSunday Mart店員 松浦ハイツ近くに住む老人、事件の被害者 タクシードライバー、事件の目撃者 帝丹小学校教師、コナンの隣りのクラス担任 青虫4兄弟 青虫4兄弟 青虫4兄弟 青虫4兄弟 |
高山みなみ 声の出演なし 林原めぐみ 湯屋敦子 高木渉 岩居由希子 高木渉 大谷育江 野田順子 小島敏彦 細井治 声の出演なし 堀部隆一 半場友恵 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし |
新しいおともだちをみんなに紹介する─朝学校に向かう途中、探偵団たちは歩美のその言葉に誘われ、歩美の言う”ともだち”に会うためにちょっと寄り道。少し離れた所にある松浦ハイツというアパートまでやって来たのでした。
このアパートに住んでいる子なんだ、男の子か、それとも女の子か…?─誰もがそう思っている中、何と歩美が指し示したのは、アパートのすぐ横の庭先に青々と茂っていた一本のオリーブの木…
これが太郎、次が次郎、そして一番小さいのが三郎…─歩美によって次々と紹介されていくその新しい友達というのは、何とオリーブの木に葉に住みついた、3匹の大きくて立派な青虫たちだったのです!
青虫たちを見た探偵団たちの感想は様々でした。歩美は可愛いと言い、元太と光彦は気持ち悪がり、哀は小さな口で無心にオリーブの葉を食べている姿に感じ入っている様子…。
光彦の持っていた図鑑によれば、その青虫はシモフリスズメという蛾の幼虫で蝶ではありませんが、可愛い青虫には変わりがないということで、最終的には意見が一致したのでした。
そしてこの青虫、歩美は3日前に太郎を、一昨日に次郎を、そして昨日三郎と、この3日間、1日に1匹ずつ発見したというのです。となれば当然今日は4匹目を見つけるのでは…歩美の話を聞いた哀は、半ば冗談めいた調子でそう答えたのですが…
ところが冗談ではなく、本当に4匹目の青虫がコナンによって発見されたのです。そしてそれを目にした元太と光彦は、「青虫4兄弟だ」と嬉しそうな表情を見せたのですが、肝心の歩美はというとどうも浮かない表情…
歩美の話によると昨日三郎を発見した後、まだ青虫がいないかとよーく探してみたものの結局見つからなかったというのです。そして4匹目の青虫の大きさを考えると卵から孵ったばかりとは考えられず…
歩美が不注意で見落としただけとも考えられるとはいえ、もしそれが本当だとすると一日に一匹ずつ増える青虫というのはどこか謎めいたミステリーのようにも考えられるのでした。
そしてその話を裏付けるかのように、外出から戻って来たアパートの大家の松浦仙吉氏は、4日前の木曜日の夕方、つまり歩美が最初の太郎を見つける前日に水をやった時には、青虫など全然見つからなかったと不思議そうな表情で証言してくれたのです…
ところがそんなちょっとした謎も吹き飛んでしまうような、重大事件がアパートの近くの家で発生していたのです!
その事件というのは強盗殺人事件で、松浦アパート近くに住む志村という一人暮らしの老人が殺害され、タンス預金していた数百万の現金も同時に失くなっているというのでした。
被害者の死亡推定時刻は昨夜の10時頃で、警察の捜査により間もなく同時刻に志村家の前を通りかかったというタクシー運転手がいたことが判明。そしてその運転手は何と犯人と目される男を目撃したというのです!そこで警察は運転手に事情を聞くことになったのですが…
その運転手の話によると、昨日の夜10時頃、確かに現場付近をタクシーで通りかかり、そこで男の影を見たというのでした。
それに加えてすぐそばには小さな少年もいたらしく、出会い頭にぶつかりでもしたのかその男の前で尻もちをついていたというのでした。
もっともタクシーからは遠かったこともあり、また少年の方にばかり気をとられて男の方についてはあまり注意して見ていなかったため、男の顔はよく覚えていない…タクシー運転手の話は、残念ながら結局そこまでで終わってしまいます。
死亡推定時刻とほぼ同時刻に事件現場にいた男…確証はないものの犯人である可能性は極めて高そうでした。
そこで警察はその犯人と目される男と接触したと思われる目撃者の少年、白い野球帽に寝巻きのような格好をしていたという少年の特定に全力を挙げることとなり、やがてその少年が探偵団たちの通う帝丹小学校の1年生で、現場近くに住む三井圭一という少年であることを突き止めます。
ところがいざ圭一少年に事情を聞いてみると…何と少年は全面的に否定。犯人を見るどころか、その晩には一切外にすら出ていないと証言したのです…。
今回の作品は少年探偵団ものとしては珍しいぐらいにしっかりとした本格謎解きミステリー。
一日一匹ずつ増えていく青虫の謎が、近所で発生した強盗殺人事件とどう関係していくのかを注意しながら推理していくと面白いと思います。
40代、50代で肩に痛みが発生すると決まって診断される名称で、老化による肩関節付近の炎症が原因で起こる痛みのことを指します。
日頃からあまり肩を使わない人に発生しやすく、夜や早朝に痛んで眠れないこともあるとか。今回の事件の冒頭も早朝だったので、松浦仙吉氏が肩を痛がったのは、自然なことであったともいえますね。
松浦ハイツの大家である松浦仙吉が米花駅前に開いた喫茶店。松浦はオリーブの木が大好きらしく、そのように名前をつけたとか。
小学校の近くにあるコンビニエンスストアで、どう見てもファミリー・マート(笑)。松浦ハイツの住人である吉川稔はここで働く従業員です。
そして灰原哀は学校の帰りに時々そのコンビニに立ち寄り、何とファッション雑誌を立ち読みしているのだとか
ちなみにこのコンビニエンスストアは343-344「コンビニの落とし穴」では事件の舞台にもなりましたよね。
今回の作品は30分作品としてはほとんど完璧に近い出来栄えの作品でしたね。脚本に関してはほとんど文句のつけようがないと思います。個人的にはこの年のアニメオリジナル作品中の最高傑作だと思っています。
探偵団たちが思わず聞き入ってしまうのも分かるような切れ味鋭いコナンの推理を聞くことができて最高の回でした。
一日に一匹ずつ増えていく青虫の謎とその理由、そしてそのことが殺人事件で少年が証言を全面否定する理由にもなっていて、それに関してもしっかりと伏線を張ってあります。
高木刑事が「昨夜も、その前の晩も、そのまた前の晩も外には出なかった」と言った所で青虫との関連を推理できた方は100満点でしょうね。
本来なら昨夜あったことだけ答えればいい所を、一昨日とさらにその前の晩のことまで証言してしまい、そこからコナンは一日一匹ずつ増えていく青虫との関連を思いつき、更に犯人の心理(この場合は青虫を他の家に捨てるという圭一君にとって悪い行為ですが)から殺人犯人との接触も否定しているということまで見抜いている訳です。そして最後に圭一君の家のオリーブのハサミで切られた枝という物的証拠からそれを確信して推理を披露する点まで、このあたりの構成はもう見事としか言いようがないですね。
犯人当てについては残念ながら明確なヒントは提示されていないのですが、コナンが犯人に目星をつけた部分については、かなり見事な推理でしたよね。コンビニから松浦ハイツまでの帰り道からは殺人現場は通りもしなけば見えもしないのに遅くまで仕事をしていたはずの男がなぜ事件のことを知っていたのかという理由から吉川稔を疑った推理には唸らされました。
その直前に高木刑事から地図を見せられているシーンでコナンはそれに気づいたのでしょうが、欲を言えばあの地図をちらっとでもいいから視聴者にコンビニまで見える大きさで見せくれれば、犯人当ての部分でもヒントを提示できて、本格ミステリとしては完璧だった気がします。帝丹小学校あたりから松浦ハイツまでの道のりをさりげなく見せるという形などでやれば不自然じゃないですしね。
ただこれについても犯人が左肩を右手で押えていたという点に関連して容疑を五十肩の松浦仙吉氏に向けるためのミスディレクションとして使われていますので、あながちこれだけで不十分とは言えず、意図が充分に分かるといいますか、よく考えて作られていることは十分理解できるということは補足しておきます。
そしてラストの圭一君の居場所を特定する所も、切られた白バラからお母さんのお墓に墓参りにいっていると推理していますが、これもきちんと事前にお母さんが好きだったとヒントが提示されていて、細かい所まできちんと丁寧に作られていることが分かります。
ここまででも良い出来栄えだったと思うのですが、それよりも私が一番関心したのは、圭一少年の少年としての心理が見事に描かれていたことです。
亡くなった母親の残した大事なオリーブの葉が青虫たちに食べられてしまうことを防ごうとする一方で、青虫を殺すのは可哀相…そこでいっぱい葉の茂っている松浦氏のオリーブの木に一匹ずつ、しかも夜あまり人気のない時刻にこっそり…なんて、小さい少年の思いつきそうなことですよね。
私も子供の頃はトカゲとか虫類はあまり好きではなかったのですが、自分の家の庭にいたのを、殺すのは忍びないので近所の公園まで持っていって放してやったりしたこともありましたし、何だか懐かしい気分にさせられました。それに今でも蛾とか蜘蛛などは家に迷い込んできても窓の外から逃げしてやったりもしますので、圭一君の気持ちというのは本当によく分かるんです。
そしてああいう時というのは直接触らずに、新聞紙とかティッシュペーパーに移して持っていくんです。今回は枝を切ってということですが、そういう子供の微妙な心理まできちんと描かれていたのが良かったですね。
他にも母親からもらった形見の白い帽子が、最後に圭一君の命を救ってくれたり、ラストで蛹になった青虫たちが春に成虫になっているであろうという点をコナンが新一に戻れれば…という気持ちになぞらえて新一をちらっと登場させてくれたりと、ファンの心理というものもよく理解した上で、一つ一つのシーンに意味があって本当に無駄のない作りでした。
この年のオリジナルは結構厳しい作品が多かった訳ですが、きちんとした作りの作品というのは見る人が見ればすぐ分かるものだと思います。今後もこういう素晴らしい作品が提供されるのを期待したいですね。
ただ冒頭で「完璧に近い」と申し上げたのは、欲を言えばもっと良くなると感じた部分もあったからです。
一つは前述の犯人当ての部分でコンビニから松浦ハイツ付近までの地図を提示して欲しかったという部分ですが、もう一点は脚本とは無関係な部分ですが、ラストのコナンがキック力増強シューズで犯人を倒すシーンですね。
ここは犯人を懲らしめるクライマックスの一番盛り上がるシーンなのですから、もっと迫力のある、スカッとするような派手な演出を期待したいです。
昔のコナンだったらこういう場面では必ず名探偵コナンのメインテーマが流れましたよね。あれ実はかなり好きなんです。ラストに事件解決した時にメインテーマが流れると、言葉で説明できない感動がこみ上げてきて、見て良かったという気持ちになるんですね。
劇場用映画でも冒頭で必ず名探偵コナンのメインテーマが流れる訳ですが、あれはいよいよ始まったという何とも言えない緊張感と気持ちの高まりを皆さん感じると思います。それぐらいメインテーマには気持ちを昂ぶらせる不思議な力がありますし、もっとアニメの作品中でもどんどん聴かせて欲しいと思っています。
それとボールを蹴るシーンですが、これも以前だったらコナンがボールを捕えた瞬間に一度止まって、しばらく溜めを作ってから「行っけー!」と叫んで一気にボールが飛んでいくという感じの非常に派手な演出でした。
もちろん現実にはそういうことは絶対あり得ないのは分かるのですが、あくまでマンガ・アニメの中なのですから、ああいう派手な演出はあっても別におかしくないですし、むしろより劇的な効果を生むと思います。
ただボールを普通に蹴って終わりならアニメでやらなくてもいいでしょうし、普通なものを普通に見せられて小さいお子さんが感動するとは私にはとても思えません。アニメでしかできない演出をもっと多用しても悪くはないというより、すべきだと私には思えますね。
今回の作品もこういった点がもっと良くなればただの”ミステリ”ではなく、最強の”ミステリ漫画”といえるものになっていたと思います。
最後に今回のあらすじの冒頭”ともだち”とありますが、「2○世紀少年」(浦沢直樹氏の漫画)とは何の関係もありませんので(笑)