(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利小五郎 目暮警部 佐藤刑事 高木刑事 千葉刑事 辻村監察医 木島実(30) 石川次郎(28) 中村洋子(25) 清水真孝(25) 梅田 貸衣装店店員 |
本編の主人公、正体は工藤新一 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 警部補、目暮の部下 巡査部長、目暮の部下 捜査一課刑事、目暮の部下 監察医 メイクアップアーチスト カメラマン ファッションモデル、石川の婚約者 フリーター ファッション雑誌女性編集長、事件の被害者 貸衣装店の店員 |
高山みなみ 神谷明 茶風林 高木渉 湯屋敦子 千葉一伸 鈴木琢磨 菊池正美 かわのをとや 引田有美 今村直樹 ??? 巻島直樹 |
巨大テーマパークのアニメランドの一日園長を務めることになった小五郎。しかしただやってもつまらないから…と、よせばいいのに捻りを効かせたサプライズを演出するため、貸衣装屋で衣装まで借りて参加することになります。
その衣装を使った演出、”本人曰く”観客にバカ受けしたというのですが…、更にはあまりの盛況ぶりに来年も再来年も未来永劫一日園長を頼まれてしまった…と、小五郎はいつになくご満悦の表情で、衣装を返しにやってきた貸衣装屋の店の主人に自慢げに語って聞かせるのでした。
すっかり有頂天になった小五郎は、その勢いを駆って更に自分の天才ぶりを発揮しようと貸衣装店からの帰り道にパチンコに興じますが…
しかしそうそうすべてのことが上手くいくはずもなく結果は散々…お供のコナンに意味不明な愚痴をこぼしながら、すっかり陽も暮れた暗い夜道を探偵事務所に向かってトボトボと歩いていたのです。
ところがその途中、二人は重大事件があった場合に点される、警察のパトカーのあの赤いランプが事態の深刻さを物語るようにチカチカと点滅する中、オレンジ色のコートにコートに合わせた色の帽子を身に着け、立派な口ひげを蓄えた恰幅の良い、いかにも警部然とした中年の男と、刑事としてはどことなく頼りなさげな表情をした、いかにも独身男性を思わせる手入れのあまり行き届いていないグレーのスーツを身にまとった痩身の若い刑事が、真剣な表情で何やら話し合っている現場にまたもや偶然出くわすこととなったのでした。
今回の事件も、予想どおり殺人事件─そこでまた警察の捜査に協力するため、小五郎は先ほどパトカーの前で熱心に話し込んでいた顔なじみの二人の刑事、目暮と高木に案内されて事件の現場に赴きます。ところがそこでは更なる偶然の再会が小五郎とコナンの二人を待ち受けていたのです。
なぜならその殺人事件の関係者というのが、4時半頃小五郎とコナンが貸衣装屋を訪れた際に偶然見かけた仮装をした男女三人組だったからでした…
関係者の話を総合すると、殺人事件の被害者は梅田という女性ファッション雑誌の敏腕編集長で、その日は彼女が編集長をつとめる雑誌のカメラマン石川次郎と同じく彼女の雑誌でファッションモデルをしている中村洋子の二人がめでたく婚約したことを祝うため、被害者の自宅マンションを会場に仮装パーティを催すことになっていたというのでした。
そしてそのパーティに招待された石川次郎と婚約者の中村洋子、それに雑誌でメイクアップアーチストをしている同僚の木島実の三人は、パーティの準備のために忙しそうにしていた梅田を部屋に一人残し、自分たちはパーティで使う衣装を借りるため、貸衣装屋を訪れ、そこで偶然小五郎たちに出会ったというのです。
警察の捜査の結果、死因は縄状のものを使って絞殺。そして4時半頃に例の貸衣装屋に三人が滞在していた際、中村洋子の携帯電話にメールとピエロの仮装に身を包んだ梅田の写真が送られてきて、その写真を小五郎も見ているということ。また遺体が発見されたのが5時ちょうどであり、通常殺害から2時間ぐらいで始まる死後硬直も警察が到着した時刻である5時半の段階では全然始まっていなかったことから、殺害時刻についても4時半から5時までの、約30分の間と推定されます。
ところが…3人の仮装パーティーの参加者たちは4時半に一緒に貸衣装屋を出て車で梅田のマンションに向けて出発し、5時ちょうどにマンションに到着。それから近くの駐車場に車を駐めた後、マンションに歩いて向かい、被害者の部屋のリビングに横たわっていた遺体を発見することになるのですが、その間ずっと一緒にいたということは、3人が共犯で全員で口裏を合わせでもしていない限りは疑いようのないはっきりとした事実だったのです…。
そのため容疑は夕方5時頃、ちょうど3人が車を降り歩いてマンションに向かう途中にマンションの入口から逃げるように走り去っていくのを目撃したという、黒革のジャンパーを身につけた若い男に向けられることになったのですが……
今回のお話は30分では珍しいガチガチの本格ミステリ。よく事件の背景を理解して見ないとちょっと難しい複雑な構造になっていますので、眠りの小五郎の名推理に入る前に、是非一度立ち止まってじっくり推理して欲しい作品です。
ところで今回は眠りの小五郎絡みでまた佐藤刑事が楽しませてくれましたね。
以前も240-241「新幹線護送事件」で左のような衝撃的なシーンを演出してくれた佐藤刑事ですが(笑)、今回もよーく見ると佐藤刑事が真剣に眠りの小五郎の名推理を期待するシーンは何ともいえない味わいのあるシーンです。
コナンでは刑事はもちろん、鑑識にもトメさんというレギュラー・キャラクターがアニメではいますが、監察医というのは今までいませんでした。
そんな中テロップのみでしたが、最近ちらほら登場するようになったメガネの若い監察医に今回”辻村”と名前が付けられていましたね。何か地味というかおとなしそうな感じですが(苦笑)、レアなキャラクター好きの管理人としてはこれからの活躍を注意して見守りたい所です。
巨大なテーマパークとして有名らしく、今回の話では小五郎がこのテーマパークの一日園長を務めた後、衣装を返しに貸衣装屋を訪れた際に出会った三人組との縁から事件捜査に乗り出すことになります。
ちなみにコナンの世界ではテーマパークといえばトロピカルランドがあまりにも有名ですが、その他にも”にちうりランド”というテーマパークが149「遊園地バンジー事件」の回に登場したことがあります。
木島と石川が待ち合わせをしていた場所。
2005年最後の放映となった今回の作品、誰が見ても謎解きをメインとした本格ミステリーだと思いますが、賛否両論分かれる内容だったと思います。
本格ミステリーとしてだけ評価するならば、最後の決定的証拠がピエロの衣装(ないし人形)が犯人の車のトランクから発見されるという部分さえなかったら、あるいはもっと別の証拠が用意されていたら、及第点以上、というより傑作の部類に入る出来栄えだったと思います。
30分ものとしてはじっくり見るとプロットも非常に綿密に練られていて、半煮えのシチューと突発的な地震によるガスの停止の二つの伏線が、遺体の死亡推定時刻を錯覚させる目的と実に上手くリンクしていて、それが写真メールに加えて犯人が用意した強固なアリバイ・トリックを崩すことになる辺りは、単純に推理だけを楽しむというのであればかなり楽しめた内容だったと思います。
それだけにあの車のトランクのピエロの衣装(ないし人形)が決定的証拠というのは…率直にいってそんなものを残しておくとは、大マヌケな犯人と言われても仕方がないですよね。
人形は既に処分されてしまったという上で、人形が遺体を冷たい所に置いておくために使われたという痕跡を犯人がミスでどこかに残してしまい、それが犯人でなければ残しえない証拠であるとか、あるいは犯人を特定する決定的な証拠になるとか、いくらでも簡単に考え付きそうなものだけに残念でならなかったです。
訪問者の皆さんへの5段階評価アンケートでもかなり厳しい評価でしたが、それは最後の決定的な証拠がお粗末過ぎたために悪い印象しか残らなかったからでしょう。
それはボクシングなどの採点でもラウンドの最後に積極的に攻撃していた方に良い印象が残るのと同じだと思います。最後の最後で詰めを誤ってしまった印象が拭いきれない、何とも勿体無い作品でした。
それ以外にも携帯電話が大嫌いなはずの被害者が、なぜ携帯で写真メールを送りつけてきたこと(実際は犯人の偽装だった訳ですが)に対して誰も疑問に感じないのか…など、いくつか不満もあります。
ただこれからお話することは原作オリジナルを問わず最近のすべての作品に言えることなので、今回はこの年の最終作品ということもありますし、2005年度を振り返るという形でお話させて頂ければと思います。
率直に言って今回に限らず最近の作品はストーリー展開がスムーズではないですし、テンポも悪く間の取り方も今ひとつに感じる場合が非常に多いです。例えて言うならリズムの悪い音楽を聴いているようなもので、見ていても気持ちが今ひとつ乗ってこないんですね。
例えばクイズ・ミリオネアで、みのもんたの「正解」「残念」と言うまでのあの間合いですかね。ああやってジリジリさせておいて一気にドーンと開放するから、その時の感動も何倍にもなるのと同じことです。話にもっと抑揚を持たせないとリズムに乗れるものも乗れなくなってしまいます。
今回もせっかく容疑者と小五郎が貸衣装屋で前もって顔を合わせているのですから、事件現場で偶然再会した時にお互いもっと驚くような展開にしてもおかしくなかったですし、小五郎とコナンが目暮たちと出会うシーンにしてももっと驚くなり、目暮警部に都合良く殺人現場に居合わせることについて皮肉を言わせるなり、話を盛り上げるような要素を盛り込むことができたと思います。
他にも昔なら容疑者との再会のシーンで実は自分が名探偵の毛利小五郎だと明かして容疑者たちが驚くとか、あるいはそう言っても相手が知らずにコケたりとか(笑)、そういう楽しい要素がありました。
あるいは冒頭の部分だって美しい女性が近くにいればちょっかいを出して蘭やコナンに呆れられたりとか(笑)、辻村監察医が死後硬直について説明するシーンだって以前だったら絶対に小五郎も目暮も7歳児の子供にそんなことを説明するのを黙って見ているなんてことはせずに即ゲンコツでしたし、そんな中でコナンが苦労しながら証拠を集めていくのが見ていて楽しかったですし、「頑張れ!」と応援したくなったものです。
佐藤刑事にしても以前眠りの小五郎の頬を引っ張った前科がある(上記「見どころ」参照)のですから(笑)、ただじっと眺めているだけの佐藤刑事にコナンがその件についてツッコミを入れてみたりとか…そういうちょっとしたことだけでも話というものは中盤でぐっと盛り上がるんですよ。
私が言いたいのはそういう細かい部分にもっと気を配って盛り上がるような要素を盛り込んでいけば、自然とストーリー全体にリズムも厚みも出てくるのではないかということですね。
最近のオリジナルには脚本の方が以前のコナンを見て作品を研究していないのではと思えてしまうほど、今挙げたようなコナンキャラ各自が持つ盛り上がりの要素が以前に比べて極端に欠けているというか、せっかくの持ち味が殺されてしまっている気がして仕方がありません。
ただミステリとして謎解きの要素を含んだ作品を書くことができれば、それだけでコナンが面白くなる訳では決してないと私は思います。
それから物語の状況についても説明が足りない気がします。今回は最初に貸衣装屋から物語が始まるのですが、これについての状況説明が不十分なために、小五郎が一日園長を引き受けて、それを盛り上げるために貸衣装屋まで出向いて衣装を借り、それを店に返しにくる帰りであるという状況を理解するまで、大人の私でも随分時間がかかりました。
視聴者には数多くの小さなお子さんもいる訳ですし、もう少し分かり易く、テロップをつけるなりコナンにナレーションさせるなりして、小さいお子さんでもすぐ分かるような丁寧な作品づくりを心がけて欲しいものです。
これについてはこんな話をすると分かり易いかもしれません。先日任天堂が発売した携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」が最速で500万台を売り上げたというニュースを読みました。
そしてその要因について、任天堂の社長が「最近のゲームはあまりにも難しくなり過ぎて、ヘビーユーザー以外はついていけなくなっており、それ以外のユーザーのゲーム離れが進んでいる」こと、そしてそのような事態を打開するため、ニンテンドーDSの制作にあたっては「年齢や性別、ゲーム経験を問わず誰でも親しめるような分かり易いゲームを提供する」ことを一番のテーマとして取り組んできたと語っていらっしゃいました。
私自身も実はポリゴンや3Dというのがどうも苦手で、それらが主流になってからはゲームとは疎遠になり、最近にいたってはほとんどゲームはやらなくなっていた方だったので、この言葉には大いに共感したのですが、同時に最近のアニメにも同じことが言えるような気がしてなりませんでしたね。
そしてそのことは最近のコナンにもあてはまる気がしています。コアなファン以外はついていけないようなあまりに複雑な内容になっていないか…、細かい知識を詰め込みすぎて小さいお子さんが他のチャンネルに替えたくなるような、あるいはTVゲーム機のスイッチをONにしたくなるような内容になっていないか…、以前の作品と照らし合わせて今一度検討してみるのも一つの手ではないでしょうか
あとはこれが最近のコナンで最も不満に感じることなのですが、絵というか色の使い方ですかね…
私は今の水彩画(それとも青山先生の原画?)でも意識したかのような薄めの配色より、以前のアニメ独特のカラフルな色調の方が好きでしたね。
原作のカラー画はひとつの芸術品といってもいい素晴らしいものですが、そもそも青山先生以外に描ききれるものではなくアニメ作品で色調を真似しても良さは出ない気がします。
アニメにはあくまでアニメの良さがあると思いますし、例えば最近の映画のコナンなどはアニメ調の色使いですが、本当に色合いが綺麗でいい感じになっていると私は思います。
今度全員サービスのビデオのDVD版が発売されますが、見比べてみればその差は歴然ですが、4話目のキッドのクリスタル・マザーの話と5の小五郎のマル秘調査の話では色使いに決定的な差があります。
最近どうも視聴率が冴えない訳ですが、このように色使いが以前とガラリと変わってから視聴率が急落した印象がありますし、なぜそうなったのかは私は関係者ではないので存じませんが、正直このあたりの色使いを何とかして元に戻して欲しいと心底願っています。
アニメにおいて色というのは使い方によってキャラクターが生き生きと見えるか死んだように見えるかぐらいの決定的な差を生むものだと思います。今の色使いでは何だか白黒映像を見ているのに近く、どうにも生き生きとした印象が伝わっきません
デジタルに変わったためとも思いましたが、映画は以前と変わらないカラフルな配色ですしね…。デジタルだからできない訳でもなさそうですので…
いろいろと問題点もありますが、私がアニメに不満を感じ始めた時期と、視聴率の下落傾向が始まった時期は実はピッタリ一致しているため、最近の傾向はどうしてなのか分からないというより、落ちるべくして落ちたという印象の方が強いです。
そのため皆さんも同じように不満を持っているのでは…という思いから、あえて自分の考えていることをわざわざここに書いてみたという次第で、何かの参考にでもなれば幸いです。
逆に言うと、やるべきことをやってより一層クオリティの高い作品を作り続けていれば、自然と回復するであろうとも確信しています。
個人的には原作は以前とまったく変わらず楽しい作品が多いですし、だからこそアニメの方も、今回のピエロではありませんが、顔でも心でも笑えるようなそんな楽しい作品を期待しております。
最後にもう一点だけ、今回の千葉刑事は何だかすごく感じ悪かったですね…。人のことを初めから犯罪者と決めつけていましたし、容疑者を取調室に拘置して絞り上げるのが楽しみみたいな、非常に嫌な感じの刑事に見えました。
オリジナルですからまあ我慢できましたが、もう少しキャラクターのイメージというものを大切にしてもらいたいものです。