(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 佐藤刑事 千葉刑事 梅津修(60) 梅津隆(25) 三上透(30) 荒木千佳(27) 管理人 |
本編の主人公、正体は工藤新一 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 警部補、目暮の部下 捜査一課刑事、目暮の部下 人気小説家 梅津の息子 梅津の秘書 梅津の弟子 梅津の住むマンションの管理人 |
高山みなみ 神谷明 茶風林 高木渉 湯屋敦子 千葉一伸 仲木隆司 真殿光昭 太田真一郎 石村知子 宮田浩徳 |
出て行け…お前の顔など二度と見たくない…その日小五郎はコナンを連れて人気作家の梅津修の住むマンションを訪問することになっていました。ところが到着するなり梅津と彼の息子の隆との壮絶な親子ゲンカを目の当たりにすることとなり…
普段はろくに仕事もせずフラフラして家にも寄り付かないのに、梅津が都内のマンションに新しく引っ越してきた途端に突然現われて、金をせびりに来たという息子の隆。
それを聞いた梅津が激怒し隆は外に叩き出されそうになりますが、それにも懲りることがなく、今度は自分が違法な薬をやっている所を見られて警察に言うとある人物から脅かされている、自分が警察に捕まれば梅津の人気作家としての名声にも傷がつく…だから金で解決しいて欲しいと、梅津に対し脅迫まがいなことまで言い出したのです。
挙げ句の果てには最近梅津が発表した「十三階段への道」という小説が梅津の弟子の荒木千佳による代作だと決めつけ、金をもらう代わりに息子として父親の行為を世間に暴露するために手記を書くと言い出し…
梅津も脅迫の件については隆が金をせびるための出任せだとして頑として突っぱねていましたが、さすがに自分の作品が代作と言われたことには我慢ができなかったらしく、ついには取っ組み合いのケンカが始まったのです…。小五郎もコナンもそれをただ見守るほかなく…
結局改めて話をするということになり、梅津の部屋を出て近くの喫茶店で待機することになった小五郎とコナンでしたが、しばらくして梅津の秘書三上透が現われ、梅津はひどく落ち込んでいる様子だと聞かされると、梅津のことが気がかりではあったもののそのままサイン本を手に事務所に帰ることになったのです。
ところがその帰り道、人気小説家の梅津に触発されて自分も何か書いてみようと近くの文具店で原稿用紙とペンを買い家路を急いでいる所に、その時間TV局で打ち合わせをしていたはずの三上が現われ慌てた様子で梅津のアパートの方へ走っていくのを目撃したのです。二人は何かあったのではと彼の後を追い、事情を聞いてみたのですが…
三上の話によると、小五郎たちと別れてしばらく経ってから梅津に電話をしたらしいのですが、部屋にいるはずの梅津が全然電話に出ず、ひどく落ち込んでいたことも気がかりだったため、様子を見に梅津のマンションへと引き返してきたというのです。そこで三上と一緒に小五郎たちもマンションを再び訪れることになったのですが…
しかし玄関のチャイムを何度鳴らしてもやはり中からはまったく反応はなく、結局小五郎たちはマンションの管理人を呼んで合鍵を使って中に入ることになります。
すると…部屋の中では梅津が神主が持つ櫟の木でできた笏(しゃく)を右手に握りしめた状態で、リビングの床の上にあお向けに倒れて息絶えていたのです…。
「もう作家生命は終わった すべてが空しい」─机の上のパソコンには遺書ともとれるそのようなメッセージが残されていました。そして入り口の扉はきちんと施錠され、窓も5階の高さを考えると何者かが侵入したとも思えず、事件は梅津の自殺として処理されることが濃厚に思われたのです。
ところが現場をよく調べてみると部屋のごみ箱の隅にはわずかに血痕が残されており、更に梅津の後頭部から何者かに殴打されたような傷も発見。そして3つあった部屋の合鍵もいつの間にか2つが消えており、事件は一気に他殺の様相を呈してきたのでした。
しかし不可解なのはそれだけではなかったのです。更に現場をよく調べてみると、パソコンに残された遺書らしきメッセージの他に机の上には一通の封筒が残されていました。そしてその中には週刊日売に掲載される予定だった「私の秘密」という梅津の書いたエッセイの原稿が…。
エッセイには「他人から見れば取るに足らない馬鹿馬鹿しい仕掛け…誰もが見ているのに誰も気づかない…私だけの楽しみをいつも作品の中に仕掛けてある…」というような内容の文章が書かれていたのですが…。
一体このエッセイが意味する所は何なのか、そして今回の梅津の変死事件と何か関係があるのでしょうか…?
人気作家の梅津修に触発されて自分も小説を書いてみようと思い立った小五郎。原稿用紙もペンも買いあとは小説を書くだけだったのですが…
そんな中で起きた梅津修の変死事件。そして梅津の持っていた櫟の木でできた笏(しゃく)と、現場に残された封筒に入れられていた梅津のエッセイの意味とは…!?
さまざまな要素が絡み事件は二転三転していき、ラストには意外な驚きも待っているという、30分ものにしてはなかなか良く考えられた楽しい本格ミステリーです。
人気作家梅津修の発表した最新の小説。発売されるやいなや大人気を博し、梅津に日本文芸大賞をという声も上がっているのだとか。
梅津がよく噛んでいたガム。ガムは脳を活性化してボケ防止にも役立つと言われています。
また最近は何十粒もケースに入った大きなサイズのも出ていますが、今回梅津が持っていたのもそれでした。
工芸技法の一つで壺のような大きなものから今回のボタンやブローチなどの小さなものまで作られているのだとか。それにしても”牡丹のボタン”は寒かった気が(苦笑)
詳しくはフリー百科事典ウィキペディアのこちらのページを参照下さい。
人気小説家梅津修に会った小五郎がふと作家を志し、原稿用紙とペンを買った文房具店の名前。
被害者の梅津修が最新刊の「十三階段への道」の大ヒットを受けて、受賞者の候補に推薦された文学賞の名前。
アララギとも一位とも呼ばれる木の名前、神事にも用いることがあり、神主の笏(しゃく)にも使われるのだそうです。
詳しくはフリー百科事典ウィキペディアのこちらのページを参照下さい。
被害者の梅津修がエッセイを寄稿していた雑誌の名前。エッセイのタイトルは「私の秘密」でした。
今回は密室の謎と櫟(いちい)の木のダイイングメッセージに代作問題絡めて容疑者を二転三転させるということでなかなかよく考えられたプロットだったと思います。
じっくり考えていけば容疑者の中で密室を作る必然性があるのは三上だけということになるので犯人は簡単に分かる気がしますし、それ以前にあの”牡丹のボタン”は露骨なヒント過ぎますよね(苦笑)
少し整理させて頂くと、もともと三上は自殺に見せかけるはずでした。それが偶然にも隆と荒木千佳が鍵を持っていってしまったために自殺ではなく他殺と容易に考えられる事態になってしまい、そこから櫟の木のダイイングメッセージも絡んで隆と千佳が容疑をかけられることになった訳です。
この点これは三上が予想していたというよりは偶然そうなっただけで、三上は自殺に見せかける以外のこと以外は最初から考えていなかったはずです。それを小五郎の強引なダイイングメッセージの推理が余計に事件を複雑にしてしまったのですから、犯人にとてはさらに好都合でした。もちろん警察にとっては大迷惑でしたが(苦笑)
しかし結局はコナンに密室トリックを解かれてあえなく御用となった訳ですが、まずトリック自体はいたって基本的かつシンプルなもので、これについては特に言及することもないでしょう。私も小五郎が最初の時点で窓から外を見下ろした場面で、上から鍵を何らかの方法で戻したということはすぐに気がつくことができました。
そしてダイイングメッセージの方はというと、本当に強引というか無理がありありという感じですが(笑)、これは上記の通り隆と千佳に容疑を向けるために小五郎が強引に考え出したもので犯人の意図したものではないので、これをもって不自然という批判はおかしいです。逆に櫟(いちい)というものだけでよくこんなにいくつもダイイングメッセージを考え出したなということで関心してしまったぐらいです。特に「櫟」という字からラッキーを導き出した推理などは個人的には最高でした(笑)
ただ被害者の真のメッセージについて、即ち三上を示すダイイングメッセージを残そうとした点だけはちょっと心理的にいっておかしい気もします。部屋は被害者の自室で引っ越してきたばかりとはいえペンもあったはずですし、目の前にはパソコンもあった訳ですから、あんな回りくどいことをするなら直接三上と書いてもよさそうなものです。もちろん犯人によって隠滅される可能性を考えてそうしたとも考えられなくもないのですが、あれだけのことを考える時間があったのなら犯人が立ち去った後も被害者には時間はたっぷりあった気がします。
それから息子の隆が違法な薬で最後は警察に御用となったことで、父親の遺産やら著作権といったものを相続する不自然さを失くそうと配慮している点は分かるのですが、この犯罪で相続権を失うことはない気がします。明らかに相続権の欠格事由にはあたりませんし、排除もできるのかなあと。父親に対する著しい非行があって相続できないということなのでしょうか。
違法な薬ぐらいではひょっとしたら執行猶予に終わる可能性もあるだけに、もし遺産を相続できるとすると、何だか得したのは息子の隆だけということになって納得いかないですよね。そこがどうも引っかかっています。
もっとも全体的に見ると今回はよく考えてあることが一目見て分かる作品で、充分楽しむことができました。
そして最後のタイトルの「コナン変な子」も回文になっていたというのは(笑) 一本取られた感じで、そこにもトリックが隠されていたのかと感心してしまいましたね。
今回の話で重要なキーワードになったのがこの回文です。分かり易く言えば上から読んでも下から読んでも同じというものですね。新聞紙や「たけやぶやけた」などがお馴染みでしょうか。
そして「鶏と小鳥とワニ」、「神か?狼か?」、「蜜と罪」、「ママが私にしたワガママ」、「神の二つの目」、「僕の左手」、「ケダモノ」はすべて梅津修の部屋の本棚にあった小説の名前ですが、これらのうち「ワガママ…」までの作品がすべて回文になっています。
詳しくはフリー百科事典ウィキペディアのこちらのページを参照下さい。