(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 鈴木園子 伊東玉之助(17) 伊東めぐみ(7) 片岡れんげ(17) 羅臼辰彦(27) 軽部ロミ(22) 河竹乙弥(25) 鍋島勝男(40) スタッフ スタッフ 大西刑事 刑事 おばさん こんぴら座の怪人 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友 玉之助一座 座長、怪人役 玉之助の妹 子役 玉之助一座 女優 スポンサー、関西の羅臼コンツェルン当主 有名な舞台女優、歌姫役 男優、歌姫の恋人の侍役 大道具係 金丸座 スタッフ 金丸座 スタッフ 香川県警 刑事 香川県警 刑事 〈手打ちうどん宮武〉の女主人 謎の脅迫者 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 松井菜桜子 保志総一朗 あきやまるな 高野直子 速水奨 皆川純子 緑川光 大塚芳忠 菅原淳一 柳沢栄治 稲葉実 川中子雅人 岡本嘉子 ??? |
のんびりとした風景が流れる電車に揺られながら、蘭と園子、コナン、それに小五郎の4人がその日訪れたのは、讃岐うどんで有名な四国の香川県。
そして蘭たちを招待したのは、以前わずか1カ月ではあったものの蘭たちの通う帝丹高校に在籍していた若き舞台役者の伊東玉之助。彼が座長を務める玉之助一座が今回香川県の琴平町にある金丸座で舞台公演を催すことになり、東京にいた際にお世話になった蘭たちをわざわざ招待してくれたのでした。
琴電琴平駅で降りた一行は、「ビールが飲みたい」「喉をしめらせてから」としきりにこぼす小五郎を何とかたしなめてまずは評判のうどん屋へと足を運びます。
評判どおりの美味しいうどんを堪能すると、次は”こんぴらさん”の愛称で親しまれている金刀比羅宮へとお参りへ向かますが、名物の785段の石段のあまりの険しさに小五郎は参拝を断念。他の3人は何とか石段を登り切って無事参拝を果たし、下で地酒を楽しんでいた小五郎と合流していよいよ玉之助のいる金丸座へと向かうことになったのです。
金丸座というのは幕末近くの天保の時代に幕府の認可を受けて建築された現存する日本最古の芝居小屋で、毎年春に上演する四国こんぴら歌舞伎大芝居には、全国からたくさんの客が詰めかけるのだとか。ここで芝居ができるとなれば役者としてこれ以上幸せなことはないというぐらいの名誉な事だったのです。
玉之助と妹のめぐみ、それに一座の団員の一人である片岡れんげと再会を果たした蘭たちは、それからまだ開演準備中で慌ただしさが残る舞台小屋の中を見学。
エレベーターのように舞台へと上がっていく「セリ」や「廻り舞台」、地下の「奈落」やお客の前を通って舞台に向かう「花道」、花道の途中にある人が飛び出す仕掛けの「すっぽん」、更には花道の頭上にあり宙を舞う「かけすじ」や天井の「ブドウ棚」などの舞台装置の説明を受け、その多様な仕掛けに思わず興味をそそられます。
そして今回この金丸座で一座が演じるのは、あの有名な歌劇「オペラ座の怪人」を下敷きにした時代劇で、その名も「こんぴら座の怪人」。華やかな芝居小屋を舞台に、醜くおぞましい素顔を仮面で隠した謎の怪人と可憐な歌姫。そしてその恋人が繰り広げる愛と憎しみの恐怖劇だったのです。
ところが「二度あることは三度ある」のことわざ通り、玉之助一座は今回またしても厄介なトラブルを抱えていたのでした…。
それは一座のスポンサー役を買って出た羅臼辰彦…彼は関西で有名な羅臼コンツェルンの御曹司でつい最近当主である父親が亡くなったため若くして跡を継いだばかりなのですが、どうやら片岡れんげとは幼馴染みでしかもれんげに気があるらしく、玉之助がわざわざ頼み込んで歌姫役を引き受けてもらった有名な若手舞台女優の軽部ロミに代わって、れんげを歌姫役に起用すべきだと圧力をかけてきたのです。
しかもそれだけではありませんでした。同じようにしてれんげを歌姫役に起用しろと玉之助に脅迫文を送りつける”怪人”もいるらしいのです。一体それは何者なのでしょうか…?
そして事件はついに起こったのでした。舞台稽古を再開しようと舞台の中央に立った歌姫役の軽部ロミの頭上に、大提灯がすさまじい勢いで倒れてきたのです。ロミはかろうじてかすり傷で済みますが、を支えていたロープには刃物で入れたような切れ目が見つかり…
これも「こんぴらの怪人」の仕業なのか? 関係者が恐怖でおののく中、その時コナンも早くから気付いていたある事に蘭が気づきます。要求、ヒロイン交代、幼馴染み、怪人…そして最初のヒロイン役の頭上に落ちてくるシャンデリア代わりの大提灯…
これらはすべて今回一座が演じることになっている芝居の下敷きになっている、あの「オペラ座の怪人」そっくりの状況だったのです…!
事態を重く見た小五郎は玉之助に詳しい事情説明を求めますが、すると玉之助はその怪人というのが「讃岐こんぴらの怪人」と名乗り、最初はただ金刀比羅宮にお参りに来る人々を怪しげな衣装で驚かしているだけだったのが、やがて玉之助に脅迫状を送り付けるようになったことを説明。そして怪人は前述の通り、軽部ロミに代わって片岡れんげを歌姫役に起用するようにと脅しをかけてきたのだというのです。
─「広い参加、得よ! 刺され、散華に!」
このような同じ文面の脅迫状を10通も送りつけてきた上に、今回の提灯の落下事件…単なる脅しではなかった以上、これだけで終わるとはとても思えず…
しかし玉之助は配役はそのままで芝居を続けることを決断し、不穏な空気が漂う中でプレミア公演の幕は切って落とされます。ところがやはり不安は的中…舞台上で玉之助をはじめとする役者たちの熱演が続く中、頭上のブドウ棚の隙間から「こんぴらの怪人」が不気味な恰好で姿を現わし…
伊東玉之助一座の讃岐公演に招待された蘭と園子、それに小五郎とコナン。最初は美味しいうどんを食べたり、石段を苦労して登ったり、あるいは地酒を楽しんだりと、それぞれが旅行気分を存分に満喫していたのですが…。
ところが会う度にいつも何かしらのトラブルを抱えている伊東玉之助は、今回またしても大きなトラブルに直面していることが判明。
今回は何でもあのオペラ座の怪人になぞらえた「こんぴらの怪人」により、歌姫役を交代するようにという脅迫を受けているというのでした。
やがて脅迫は現実のものとなり、シャンデリアに見立てた大提灯の落下により歌姫役として玉之助が招いた女優の軽部ロミが負傷。さらにプレミア公演でもオペラ座の怪人のストーリーに見立てた事件が発生し、さらにその次に待っていたのは何と……
現存する日本で最も古い芝居小屋を舞台に繰り広げられる「こんぴら座の怪人」と名探偵の戦いの結末はいかに…!?
”こんぴらさん”で有名な香川県仲多度郡琴平町にあり、江戸時代末期の1835年に建築された日本最古の芝居小屋。国の重要文化財にも指定されていて、江戸時代のスタイルで歌舞伎を楽しめる唯一の劇場でもあります。
詳しくは金丸座の公式サイトを参照下さい。作中で紹介された歌舞伎の舞台の「花道」「すっぽん」「かけすじ」「廻り舞台」「セリ」「ブドウ棚」そして「奈落」などについても詳しく説明されています。
高松琴平電気鉄道琴平線の駅。詳しくはウィキペディアのこちらのページを参照のこと。
「ことひらぐう」と読む。香川県仲多度郡琴平町にある神社で、”こんぴらさん”の愛称で親しまれています。海の守り神として信仰され、境内には航海の安全を祈願して奉納されたたくさんの絵馬が見受けられます。
名物として知られる参道の石段は御本宮まで785段あり、さらに奥社までを数えると、合計1368段の石段が続いているのだとか。
小五郎たちも金丸座に向かう前にお参りに行きますが、登る前に地元の人から杖を渡され、小五郎は「年寄りじゃあるまいし」とバカにしていましたが、登ってみて結果は散々(笑)、早々にリタイアして地酒を堪能していましたね。そして園子も玉砕でした(苦笑)
詳しくは金刀比羅宮公式サイト、ならびにウィキペディアのこちらのページを参照下さい。
どちらも作中で金刀比羅宮の中に奉納されていた絵馬の中に名前がありました。海運業を営む会社のようです。
またミステリでは人気漫画「金田一少年の事件簿」では3度もこの作品が題材として使われているのは、ミステリファンならご存知の通り。
ちなみにガストン・ルルーといえば「オペラ座の怪人」が最も有名なのは異存はない所ですが、一方でミステリ作家としてもよく知られています。ジョゼフ・ルルタビーユの登場する長編「黄色い部屋の謎」は密室トリックの古典的傑作として、ミステリファンの間では基本書中の基本書として挙げられる作品です。
そしてルルタビーユはコナンの原作コミックスの巻末についている「青山剛昌の名探偵図鑑」でも42巻で紹介されています。
おすすめのうどん屋のはずでしたが…外観はいたって普通の民家。しかし肝心のうどんの方はこしがあってつるつるして評判どおりの美味しさで、小五郎が「讃岐うどん食べ歩きに挑戦!」しようとした程(すぐににビールが飲みたくて挫折・苦笑)
ちなみに天ぷらなどいろいろ好きな素材を自由にトッピングして楽しめるようですが、うどんとだしの両方を別々に熱いのと冷たいのを指定できるというのにはびっくりでした。
あつあつ(うどん熱、だし熱)、あつひや(うどん熱、だし冷)、ひやあつ(うどん冷、だし熱)、ひやひや(うどん冷、だし冷)の4種類。
羅臼辰彦が暗闇の中で木の板につまずいた際に、軽部ロミが「誰かスポンサー用の蓄光、貼ってあげて」と言っていましたが、これは夜光テープのことで、芝居では舞台が暗転した時に次の場所を役者が間違えないように貼っておくそうです。
まずはじめに、以下の感想では409-410「同時進行舞台と誘拐」の核心に触れる記述がありますので、それを承知の上でお読み下さい。また玉之助一座に関してはかなり批判的な記述になっていますので、それも承知の上でお読み下さい。
今回はTVオリジナルストーリーでしかも1時間スペシャル、そしてミステリーツアーを思わせるようなストーリー展開、更にはあの名作歌劇「オペラ座の怪人」を題材に、実在する日本最古の芝居小屋である金丸座を舞台に事件が起きるということで、舞台設定や物語のスケールの大きさは文句のつけようがありません。
冒頭の小五郎や蘭たちの讃岐うどんを堪能したり、こんぴらさんにお参りに行くために石段を登ったりする所は各キャラの個性もしっかり出ていましたし、全体的に人物描写はバッチリで雰囲気も良く出ていてこれらはすべて合格点を与えられると思います。
ただどうもミステリーとしての出来栄えを考えると、あまりにストレート過ぎるというか、ミステリを読み慣れている人間からするれば、犯人がバレバレだった気がしてなりません。よく捜査では第一発見者を疑えと言いますが、推理モノでは同じような感じで命を狙われて未遂に終わった場合はその人物が犯人であると疑えというのは定石みたいなものですから、もっといろいろな人物に疑いの目を向けられるような工夫が欲しかった気がします。
ただでさえ玉之助とれんげは犯人のリストから外れているも同然の状態で、羅臼も途中から完全に容疑者リストから外される展開ですから、残るはロミと河竹の二者択一、それはどちらが犯人だったとしても驚きも何もないです。
それから個人的には玉之助一座はもういいかなと…実はこの作品のせいでしばらく(約半年)更新する意欲がなくなった程で、結果自分の思っているコナンという作品のイメージと、ここ最近のアニメオリジナルの作品を比較すると、あまりに距離が離れ過ぎている作品が多いことに真剣に考えさせられました。
もちろんそうではない作品も少しはありますが(良い作品は評価を見れば分かります)割合としては残念ながら圧倒的に少ない気がします…。
今回のこの作品などはまさしくイメージとはかけ離れた作品の典型的な例であり、こういう作品を見ると頭の中でクエスチョンマークが一杯になってしまいます。
今回特に気に入らなかったのは、何を隠そう伊東玉之助というキャラクター。狂言誘拐犯の片岡れんげは今更言うまでもありませんが、玉之助も芝居のことばかりで、あまりに強引で周りの気持ちを考えない行動が多すぎるような気がします。
というより今回は二度も軽部ロミが襲われた(実際は自作自演だった訳ですが、この時点ではそれは判っていない)のだから、芝居なんか即刻中止すべき。また玉之助は観客のためとかほざくが、怪人が観客に危害を及ぼす可能性だって否定しきれない訳であり、それを考えてもやはり芝居なんか即刻中止すべきだったと思えます。人の命と芝居とどっちが大切かなんて言うまでもないことでしょう。
加えてわざわざ自分で口説いて招待したロミに歌姫役をやってもらいたいからと羅臼からヒロイン交代を要求されてもあれだけ庇っていたのに、いざロミが怪人に喉をやられて(実際は自作自演だった訳ですが、この時点ではそれは判っていない)舞台に立てない状況になると、途端に手のひらを返したようにれんげに代わりをやれと言う。この変わり身の早さが非常に気に入らないし怒りを覚える。
一体歌姫ロミの存在は「こんぴら座の怪人」を演じるにあたって玉之助にとってどんな存在だったのでしょうか。結局「歌姫はロミがいなくても代役を立てれば充分だ」と、口では決して言わないものの彼の取った行動がそれをはっきりと示しているような気がしますが、皆さんはどう思われましたか? この点前回の「同時進行舞台と誘拐」の時もかなり強引に芝居を続けさせましたが、正直こういう自分勝手で自己中心的なキャラクター像にはもううんざりです。
そしてラストのロミが自殺しようとするのを止めるシーンも、正直???ですね。これはコナンファンなら誰でも知っている「推理で犯人を追いつめて自殺させる奴は殺人者と変わらない」という名探偵コナンのポリシーから来ているものだと思いますし、コナン(新一)はたった一つの事件(ファンならご存知の通り)以外は犯人に自殺されたことがないことを受けてのことだと思いますが、正直この自殺未遂のシーンがそのポリシーと合っていない気がします。
なぜなら結果的にはコナンは玉之助と一緒に水中に飛び込んだ犯人を助けることに成功はしていますが、これは結果論であって、もし別の方法を取っていたら、谷を隔てた先にいる犯人が自殺することを止められなかった可能性が極めて高いからです。
犯人が持っていたナイフで自分を刺すかもしれませんし、あるいはもし水中ではなく岩めがけて飛び降りていたらコナンに自殺を止められたかというと、甚だ疑問です。
つまり今回は「推理で犯人を追いつめてみすみす自殺させるような状況を作ってしまっている」ことになり、これが名探偵コナンのポリシーに反している気がするのですが、皆さんはどうお感じになられたでしょうか?
他にも前回はれんげ救出の際警察を無視して探偵団たちだけで捜索した事を痛烈に批判しましたが、今回もラストは警察の協力を得て犯人確保に向かうべき所を同じようにして警察は完全無視で犯人を追跡に行っていますし…
細かいことかもしれませんが、こういう所に作品としてのリアリティーを感じることが残念ながらできなかった。だから素直に受け入れられる作品ではなかった、それがこの作品の感想のすべてです。