(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 千葉刑事 川中刑事 斉川村子(65) 島崎安信(50) 遠野舜一(26) 村田啓三(55) 配達人 寿司屋の店主 大蛇谷良 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 捜査一課刑事、目暮の部下 捜査一課刑事、目暮の部下 ミステリー作家、事件の被害者 迷宮出版・編集長 迷宮出版・斉川担当の編集者、第一発見者 パールマンション管理人、第一発見者 宅配便の配達員 〈宝寿し〉の店主 斉川の小説に登場する天才的犯罪者 |
高山みなみ 声の出演なし 神谷明 茶風林 高木渉 千葉一伸 声の出演なし 瀬畑奈津子 稲葉実 飛田展男 仲木隆司 小上裕通 水鳥鉄夫 ??? |
その日コナンと小五郎が米花町内の本屋で立ち読みしていると、目の前を目暮警部の乗ったパトカーがサイレンを鳴らして通り過ぎるのが見えたのでした。よっぽど暇らしいなと目暮には呆れられますが、二人はそのパトカーに無理矢理(?)同乗して、事件の起きたという米花市内のマンションへと向かいます。
今回目暮が担当することになった事件は殺人事件で、被害者は米花東町にあるパールマンションの6階に住む斉川村子という一人暮らしの65歳になる老女でした。ところが名前を聞いたコナンは驚きます。なぜなら斉川というのは推理小説家で、知る人ぞ知る往年のミステリーの名手だったからです。
斉川は後頭部をリビングの中に置いてあった置物のトロフィーで殴打されての即死で、遺体の状態から殺害されたのは昨晩の7時から9時頃と推定されたのですが、あのミステリーの名手を一体誰がどうしてと、コナンは訝ります。
それから目暮たちは遺体の第一発見者だという二人の男から事情を聴きます。一人目は遠野舜一といい、推理小説を専門に出版業を営む迷宮出版で被害者の斉川を担当する編集者でした。そして二人目は村田啓三といい、現場となったパールマンションの管理人だったのです。
遠野の話によると、彼は昨日も打ち合わせのため斉川の部屋を訪ねたらしく、その時に斉川から頼まれた資料を今朝届けることになっていたというのでした。
そこで時間どおり斉川の部屋を訪ねたものの、インターホンを鳴らしても返答がなく、ただならぬものを感じて管理人の村田を呼び鍵を開けてもらって室内に入ると、リビングで斉川が倒れていたのを発見したというのです。
そして遠野がただならぬものを感じたのには大きな理由があったのでした。それは何日か前に斉川宛に次のような一枚のハガキが届けられていたからなのです。
─「敬愛する斉川村子先生。私のコレクションに次はアナタの命を加えようと思う。近々頂きに参ります。 大蛇谷 良(おろちや りょう)」
それは殺人予告とも取れる文面でしたが、コナンにとっては内容よりも驚きだったのは差出人の名前でした。なぜなら”大蛇谷良”というのは、実は斉川村子の代表作に登場する天才的犯罪者の名前だったからなのです!
登場人物に作者が殺害されるなどということはあるはずもなく、犯人が捜査を撹乱するために小細工をしたのだと小五郎は主張しますが、コナンはそれだけが狙いでこんな手の込んだことをするだろうかと小五郎の説に疑問を感じていたのでした。
それから村田から部屋を一つ借りた目暮は、パールマンションに捜査拠点を置いて関係者の事情聴取を進めていきますが、まっ先に問題視されたのは斉川の部屋の玄関のドアに鍵がかけられていたことでした。
昨日被害者を殺害した犯人が逃走する時に事件の発覚を遅らせるためにかけたと考えられたのですが、斉川の部屋には入居する際に前もって渡されていたという2つの鍵がともに残されており、とすれば犯人は合鍵を使ったとしか考えられなかったからです。
そして予め鍵を用意できた人物というと非常に限定される訳なのですが、当然その中には第一発見者の二人も含まれていました。なぜなら遠野は斉川の編集者として何度も斉川の部屋に打ち合わせに来ていた以上隙を見て合鍵を作ることは容易だし、鍵を管理する立場にある管理人の村田の方は言うまでもないことでした。
では次に斉川を殺害する動機を持った人物は誰なのかということになったのですが、ここで興味深い事実が判明します。隣り近所への聴き込みを進めている川中刑事の調べで、何日か前に被害者と管理人の村田が激しく言い争っているのが目撃されたというのです…!!
一方の遠野は動機については不明なものの、夕方から8時頃まで斉川の部屋を訪ねていると自ら証言しており、殺害時刻の夜7時から9時の間に現場を訪ねていたことが既に判明していました。
遠野は犯行時刻に現場を訪ねており、村田は被害者と言い争っていたのを目撃されている。そして二人ともに合鍵を作るチャンスを持っており…そこで小五郎は俄然この第一発見者の二人が容疑者としてクローズアップするのでしたが……
一方コナンはというと、斉川宅の台所を調べていた際に奇妙なものを発見します。それは寿司につけられるあの甘酸っぱいガリだったのですが、そのガリのおかげで斉川が昨晩寿司の出前を取っていたことが分かり…
新一も読んだことのある往年のミステリー作家の斉川村子が、自宅マンションのリビングで何者かに撲殺された無残な姿で発見された。
ただちに目暮警部の指揮の下に捜査が開始され、すると殺害時刻が昨晩の7時から9時であることが判明。そしてこの時間に第一発見者の一人である被害者担当の編集者の遠野舜一が部屋を訪れていたことも明らかにされた。
一方もう一人の第一発見者のマンションの管理人の村田啓三は数日前に被害者と言い争っている姿が目撃されており、現場の玄関のドアは施錠されていたのだが、このどちらにも合鍵を作る機会があったのである。
そこで警察はこの二人を中心に捜査を進め、殺害時刻と考えられる昨晩7時から9時頃までの時間の流れを検証していくことになるのだが…
6時半 遠野氏来訪・打合
7時半 寿司注文
8時 出前届く、遠野氏帰る
8時15分 遠野氏友人と合流、深夜まで駅前の店で友人と飲む
※村田はずっと一人で管理人室にいたと主張し、アリバイなし
コナンと小五郎が冒頭で読んでいた本と雑誌の名前。
司法解剖担当
今回は1話完結のTVオリジナルストーリーでしたが、全体としてはよくまとまっていましたし、推理も論理的で首尾一貫していて、見ていてストレスは感じませんでした。難易度もそれほど高くないので、与えられた手がかりをもとに推理をしていくという楽しさは味わえた方が多かったと思います。
ただ寿司のトリックに関しては、ちょっと分かり易過ぎた印象が個人的にはします。私も遠野のアリバイを目暮たちがチェックして寿司の出前と胃の中の残留物に寿司らしきものがあったことで即アリバイ成立だと言っている時点で、解決編で眠りの小五郎が言っていた通り「何で胃の中に残っていた寿司と思われる残留物が出前の寿司だときちんと調べもせずに言い切れるのか?」とツッコミをテレビの前で入れていましたし、実際同じようにツッコミを入れた方もミステリを読み慣れている方なら結構いたのではないかと思います。
そういう意味で警察の科学捜査の優秀さを考えたら、今回のトリックには現実性はあまりないでしょう。
しかしトリック以外にも湿っていたガリや寿司屋のイカとタコの入れ忘れから犯行が露見する辺りは見るものがありましたし、隠れた動機というのが冒頭の脅迫状と繋がっていたのは関心すると同時に心情的にも理解できましたし、今回の話に関してはよく考えて作り込んでいるのが印象として十分伝わってきましたので、不満もない訳ではないですが好意的に捉えています。
作画もこれだけ丁寧に作ってもらえると何度でも見たくなります。30分ものとしての完成度から見れば、合格点といえる内容ではなかったでしょうか。