(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 灰原哀 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 高木刑事 堀田刑事 木俣泉 二本松二郎 袋小路 職員 職員 主婦 大家 金融業者 |
本編の主人公、正体は工藤新一 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 巡査部長、目暮の部下 捜査一課刑事 パックリ亀の飼い主 パックリ亀”カメジロウ”の飼い主 窃盗事件の被害者 米花市役所 職員 米花市役所 職員 近所の主婦 二本松の住むアパート〈朝日コーポ〉の大家 借金の取立屋 |
高山みなみ 林原めぐみ 岩居由希子 高木渉 大谷育江 高木渉 小上裕通 金月真美 浪川大輔 木村雅史 太田真一郎 菅原淳一 堀越真己 林玉緒 私市淳 |
その日米花町では、帝丹小学校の校歌を口ずさみながら目的地を目指して町中を颯爽と走るコナンたち少年探偵団の姿がありました。
途中探偵団たちは昨日の深夜に袋小路という家で発生したという300万円の窃盗事件を捜査中の高木刑事と遭遇しますが、ただの窃盗事件では自分たちの出番はないとすぐに現場を後にし、「ある場所」を目指して再び駆け出していったのです。
そのコナンたちが目指していた「ある場所」というのは、園内に大きな池のある米花中央公園という公園で、その日は網を手に池の中で何かを探す市役所の職員と、それを興味深そうに観察するやじ馬でごった返していました。そして職員が探していた「何か」というのは…
その「何か」というのは、実は一匹のカメ。しかしただのカメではありませんでした。「パックリ亀」と呼ばれるそのカメは、元々は北アメリカからメキシコに分布し日本には生息しないカメでしたが、ペットとして飼っていたものの大きくなり過ぎたために持て余した飼い主が川や池に遺棄するといういわゆる”捨て亀事件”が後を絶たず、生態系への影響も懸念され社会問題化しているカメだったのです。
そしてそれだけではなくパックリ亀は性格も攻撃的で顎の力が強く、人の指ぐらいは簡単に噛みちぎってしまうため非常に危険な生物とされ、そこで通報を受けた市役所の職員が網を手に捕獲作戦に乗り出していたという訳だったのです。
一方少年探偵団の面々も米花中央公園に到着するとしばらくはやじ馬に混ざって市役所の職員たちの捕獲作戦を見守っていましたが、ぶっそうなカメを捨てるような飼い主を見過ごすことはできないと、独自の捜査を行うことでメンバーの意見が一致します。
しかし意見はまとまったものの、いざ捜査となるとやり方が分からず…途方に暮れる探偵団たちでしたが、そんな中コナンが偶然にも木の影に隠れて池の様子をうかがっている不審な女を発見。意外にもあっさりとパックリ亀の飼い主を突き止めることに成功したのでした。
その後少年探偵団たちがその木俣泉という女から事情を聴いてみると、彼女は最近になって恋人ができたこと、そしてその恋人というのが爬虫類が苦手だったため、途端にカメが邪魔になってしまったことを告白したのです…カメを捨てた飼い主も無事見つかり、事件はそれでめでたく解決と思われたのでしたが…
ところが突然そこへ一人の若い男が池に現われ、何と池に捨てられたパックリ亀の飼い主は自分であると名乗り出たのです…! 二本松と名乗るその男は、自分が三丁目のアパートに住んでいること、そしてパックリ亀は「カメジロウ」と名づけ自分が飼っていたものだが、昨日ちょっと目を離した隙に逃げられてしまったことを告白したのです。
一匹のカメに飼い主が二人…予想外の展開にコナンは俄然興味をかき立てられるのでしたが……
その日米花町では一つの騒ぎが起こっていました。攻撃的で人間の指をかみちぎるほどの顎を持つパックリ亀というカメが米花中央公園の池に捨てられていると通報があり、市役所の職員が捕獲作戦を実行していたのです。
探偵団たちもその様子を見に公演を訪れ無責任な飼い主に憤りますが、偶然にもその飼い主を捕まえることに成功します。
ところがそこに「自分が飼い主」だと主張する、第二の人物が登場し…その人物がカメを欲しがる理由とは一体何なのでしょうか?
冒頭米花中央公園に向って走っていた少年探偵団たちが歌っていたのは、帝丹小学校の校歌です。
なおこの曲はCDアルバム「名探偵コナン・キャラクター・ソング集 帝丹小学校に全員集合!! 」の1曲目に収録されていますので、興味のある方は是非聴いてみて下さい。
今回米花中央公園で発見されたカメの名前。光彦が持っていた爬虫類図鑑には
甲長40cm
北アメリカ・中央アメリカ・南アメリカ北部に分布
はらの甲は十字形、頸は大きく尾は長い
目は頭部のま横ではなくななめ上についている
土手や水底がやわらなか(おそらく「やわらかな」の誤植)沼などを好む
とありました。そして私が調べた範囲ではこの名前で実際に呼ばれている亀は実在しないようですが、モデルになっていそうなカメならいました。大きさやその他の特徴から考えてもカミツキガメがモデルになっているのではないでしょうか
① カミツキガメ
甲長最大49cm
北アメリカ・中央アメリカ・南アメリカ北部に分布
腹甲は小さく十字形
泥や砂の柔らかい底質の流れの緩やかな河川や池沼に生息
雑食性で、非常に攻撃的な性格だと一般に言われている
現在は危険動物には指定されていない
飼い主による捨て亀事件が後を絶たず、生態系への影響が懸念され社会問題に
(参考 ウィキペディアのカミツキガメのページ)
② ワニガメ
甲長最大80cm、体重80kg
北アメリカ南部に分布
カミツキガメよりは性格はおとなしいが、大型のため怒らせるとこちらの方が危険
肉食で顎の力が非常に強い
怪獣ガメラのモデルとされる
危険動物に指定されていて、飼育には自治体の許可が必要
飼い主による捨て亀事件が後を絶たず、生態系への影響が懸念され社会問題に
(参考 ウィキペディアのワニガメのページ)
二本松が幼少の頃に飼っていたというカメで、こちらは実在のカメです。元々はアメリカやメキシコに生息するカメでしたが、1950年頃から海外にペットとして輸出されるようになり、やがて各地で定着・繁殖。
日本でも在来種を押しのけ、現在では都市部の河川では当たり前のように見られるようになったそうです。
もっと詳しく知りたい方はウィキペディアのこちらのページを参照下さい。
三丁目にあり、二本松はこのアパートの204号室に住んでいました。
二本松が”水槽”を買うために訪れた店の名前。
一匹のカメに飼い主が二人現れるという興味深い設定で始まった今回のお話ですが、まず今回の話は犯人当てを楽しむというよりは、どうして犯人がカメに執着するのかを考えさせる謎解きミステリです。
この点あちらこちらで犯人がバレバレだという指摘を目にしたのですが、それはちょっと見当違いな批判であり、ミステリというのは犯人当てだけが楽しみではないということは分かってもらいたい所です。
ただそうはいってもそのカメに執着する理由というのも数多くミステリを読みなれている人間からすると少しバレバレな感じが否定できませんでした。古今東西のミステリにも動物の体の中に何かが隠されているというトリックは山ほどありますからね。もう少し的を絞らせないような工夫があるとなお良かったかもしれません。
もっとも今回の作品はどちらかというと子供向けの作品であり、脚本を書いた方が意図してそうしたのかは別として、ジュヴナイルミステリとしては結構良い出来だったと思います。
捨て亀事件と昨夜の窃盗事件に上手くつながりを持たせて話が展開されていきますし、元太の推理シーンや二本松の言動に涙を流して感動する光彦の描写なども子供っぽさが良く出ていましたし、二本松の回想シーンで出てきた酔っ払いに「(高山)みなみちゃーん、(林原)めぐみちゃーん!」と言わせるファンサービスやラストのキック力増強シューズでの犯人確保のシーンもなかなかのものでした。
特に元太が推理を続けているのにそれをまったく無視してコナンと光彦と歩美が話し合うシーンはかなり笑えましたし、今回の作品の一番のツボだった気がします。
ちなみに元太の推理は「犯人がカメに顔を見られたからに違いない」と言った後は、コナンたちからずいぶん離れ池に向かって推理しているので、何をしゃべっているのか非常に聴き取りにくいのですが、
「けどパックリ亀は4匹もいた。目撃した亀はどれか分からねーから、全滅させるしかねーと。亀を全滅させた犯人だったがその後別の事件で警察に呼ばれ取り調べを受けることになる。するとそこに…」
と言っているように聞こえました。
それからペットを捨てる飼い主に対する警鐘と生態系の破壊への懸念というメッセージも無理なく盛り込まれていましたし、作画は文句のつけようがない完璧な出来栄えでしたし、作品の完成度としては十分合格点だったのではないかと思います。
あとは袋小路宅で300万円が盗まれた事件がはたして窃盗事件で済むのかについては少し疑問が残りましたが(犯人は袋小路氏を突き飛ばして逃げているので、事後強盗のような気がする)、個人的には結構楽しめた30分でした。