(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利蘭 毛利小五郎 阿笠博士 目暮警部 灰原哀 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 鈴木園子 妃英理 工藤優作 工藤有希子 小林澄子先生 元太の母 警備員 店主 新聞配達員 謎の男 黒羽快斗 黒羽盗一 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、小学一年生(10年前) 本編のヒロイン、小学一年生(10年前) 蘭の父親で目暮の部下の刑事(10年前) 新一の家の近所に住む自称天才科学者(10年前) 警視庁捜査一課警部補(10年前) 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友(10年前) 蘭の母親、新人弁護士(10年前) 新一の父親で世界的に有名な推理小説家(10年前) 新一の母親で元人気女優藤峰有希子(10年前) 帝丹小学校1年B組担任 元太の母 酒好きな警備員(10年前) ヘアーサロンの店主 ヘアーサロンに夕刊を届けにきた配達員 新一の弟を自称する謎の男 江古田高校2年B組、怪盗キッドの正体(10年前) 黒羽快斗の父親、初代怪盗キッド(10年前) |
高山みなみ 高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 緒方賢一 茶風林 林原めぐみ 岩居由希子 高木渉 大谷育江 声の出演なし 高島雅羅 田中秀幸 島本須美 加藤優子 声の出演なし 柳沢栄治 岩田安生 三戸耕三 池田秀一 山口勝平 池田秀一 |
その日帝丹小学校1年B組の5時限目はいつもどおり学級活動の時間でした。そして今回の学級活動の内容はというと、何と「読書会」…。図書室でみんなで静かに本に親しむ貴重な時間なのですが、コナンはというと…
図書室にあるミステリーは小学生の時に片っ端から読破してしまっているらしく、退屈の余り大きなあくびをしてしまう始末だったのです…。ここにはもう楽めるものなんか何もない…。コナンがそう言いかけたところで……
─本当にそうかい? この世はもっと深くて謎めいているのだよ…─
突然昔どこかで聞いたであろうセリフが、コナンの頭の中を過ぎったのです。
それからコナンがふと我に返ると、図書室の中では元太が本棚の上の方にある本を取ろうとしてバランスを崩し、椅子から転げ落ちている所でした。そしてそれを見かねた担任の小林先生が、元太の代わりに本を取ろうとしたのですが、その時本棚の中に何かが詰まっているのを発見したのです。そこで小林先生が棚の中に手を入れてみると…
棚の中から出てきたのは、何と牛革でできた薄手の財布だったのです。一体何が入っているのかと興味津々の探偵団たちでしたが……
中にはクシャクシャになった紙切れが一枚あるだけでしたが、なぜかコナンはその中身を見る前からそこに何が書いてあるかを知っていたのです。
─ありがとう… 1年A組 毛利蘭─
紙にはそう書かれていましたが、実はコナンがその内容を知っていたは、その牛革の財布が10年前自分がまだ帝丹小学校の生徒だった時に蘭とともに経験した、とある冒険の際に出会ったものだったからなのです。
それはとても奇妙で怪しげで…不思議な冒険……こうしてその時のことを思い出したコナンは、蘭から聞いた話だと断りを入れた上で、10年前の新一である自分と蘭の体験した不思議な出来事について、小林先生と灰原、それに探偵団の三人に語り始めたのです。
10年前…小学1年生だった新一は、とある満月の夜にこっそりと家を抜け出し帝丹小学校へ向かって歩みを進めていました。そしてその目的というのは、帝丹小学校で最近噂になっているという化け物の正体を突き止めること。蘭の親友の園子の話によると、その化け物は満月の夜に図書室に出現し、不気味な鳴き声と変な帽子を被っているのが大きな特徴だというのでした。
一方新一の横には、新一が一人で行ってお化けに食べられたら嫌だと、子供心に心配してついてきた蘭の姿もありました。蘭は必死に新一を止めようとしたのですが、かえって新一の好奇心に火をつけるだけになってしまい…
学校に到着した新一と蘭は、新一が下校前に前もって開けておいた窓からすんなりと校舎の中に入ることができ、すぐさま問題の図書室へと向かいます。すると図書室の中には、噂に違わず怪しい人影が見え……
しかしすぐにその人影の正体が学校の警備員だと分かり、二人はホッと一安心。警備員がほろ酔い加減で図書室を去っていくと、二人はすぐに図書室の中へと入っていきます。
すると図書室の中では、噂どおりに帽子を被って窓からこちらを覗いている怪しい人影と笑い声のような奇妙な音がしたのですが……これらは新一の論理的推理によりいとも簡単にに正体が突き止められてしまったのでした。
お化けなんてタネを明かせばこんなもの…もうここには何もない…。コナンが蘭にそう話しかけ、図書室を出ようと扉に手をかけようとすると…
─本当にそうかい? 君は小説の冒頭の粗筋を読んだだけで…全てを見通した気になっているんじゃないのかね? この世はもっと深くて…謎めいているのだよ…─
誰もいないはずの図書室の中から突然そのような声が聞こえてきたのです。新一と蘭がその声に驚いて後ろを振り返ってみると、そこには図書室の本棚の上に腰をかけ、モーリス・ルブランの生み出したあの怪盗アルセーヌ・ルパンの活躍する推理小説『怪盗紳士』を広げている怪しい男の姿がありました。
ほどなく男は本を閉じると本棚の上から飛び降り、歩いて二人の元に近寄っていきます。そして新一が何者かと問い質すと、男は自分は「君の兄弟だよ…いや君の弟というべきか…」と謎めいた返事を返してきたのです。
男の怪しい返答を聞いた新一はすぐに蘭に先ほどの警備員を呼びに行くように促しますが、なぜか入口の扉は開かず、男が言うには扉には呪文がかかっており、自分の言うことしかきかないというのでした。
それから男は自分は新一と喧嘩しに来た訳ではない、挑戦しに来ただけだと切り出し、懐から取り出した例の”牛革の財布”を新一に向かって差し出したのです。
どうやら新一と宝探しの勝負がしたいらしく、もし新一が宝を見つけることができれば新一の勝ち、宝は新一に進呈され、男は自分の正体を明かす…しかし断ればこの暗い部屋に閉じ込められ、一生出ることはできないというのです…
何とも怪しげな男の挑戦でしたが、新一はたじろぐこともなく堂々とその挑戦を受けたのです。すると男は懐から取り出したナイフで財布を刺し、新一の方へ向けて投げつけ…
ナイフは瞬く間に新一と蘭の背後の壁に突き刺さりますが、二人がナイフの突き刺さった壁から視線を男の方へと戻すと、もうそこには男の姿は影も形もありませんでした…。そしてナイフが刺さった牛革の財布の中には、一枚の紙切れに書かれた奇妙な暗号が残されており……
今回は10年前、まだ小学1年生の新一と蘭の冒険ということもあって、出てくるキャラクターたちは皆若いですね。
新一と蘭は小学1年生ということで探偵団たちのような感じですが、新一はメガネを外した際のコナンとほとんど一緒ですね、まあ当たり前ですが(笑)
小五郎と妃英理もまだ同居していて仲の良い所を見せてくれています。小五郎はトレードマークの一つのチョビヒゲもなく目暮の部下の刑事として事件を追っていますし、英理はちょうどこの頃法廷デビューを果たしたらしくまだ初々しさが残る新米弁護士です。そして住んでいる場所も小五郎が私立探偵を開業する前なので現在の毛利探偵事務所ではなく、普通のマンションでしたね。
一方工藤家の方も3年前からロス暮らしが始まった訳ですから10年前はまだ優作・有希子夫妻も当然住んでいる訳で、今回もちゃんと姿を見せてくれています。優作先生は口ヒゲはありませんが、その推理力は今と変わらないですね。有希子さんの方は10年後とほとんど変わらない気がします。
そして最後に登場した阿笠博士ですが、これはすごい若々しかったですね。髪の毛も黒く今よりフサフサしています。ただ愛車の黄色いビートルは今と同じでしたし、アニメではナンバープレートも例の「新宿500 ひ ・1 64」でした。
新一と蘭が帝丹小学校に潜入した際に遭遇した警備員ですが、このキャラクターを見てニヤリとした方は相当のコナン通といえるでしょう。なぜならかなり昔の話ですが112「帝丹小7不思議事件」でも登場しているからです。
この回は少年探偵団たちが帝丹小学校の七不思議を解く話で現代の話でしたが、この警備員、作中で語られている通り新一と蘭が小学校時代から学校に勤務していたそうで、それを受けて今回の登場となった訳です。今も10年前も飲んだくれていますが(苦笑)
ちなみに七不思議事件では今回の話でも登場している小林澄子先生が初登場した回でもあります。
今回元太の想像の世界で登場。普段も元太の会話の中で結構「かあちゃん」と名前は登場するのですが、その姿が見られることはほとんどありませんでした。記憶にある中で姿が見えたのは20「幽霊屋敷殺人事件」と189「命がけの復活 負傷した名探偵」の時ぐらいでしょうか。
冒頭コナンがあくびをするシーンの直前に退屈さを際立たせるために右足で左足をかくシーンが追加されています。それからその際に読んでいる本が、原作ではホームズ作品の「青い紅玉」とはっきり書いてあるのが、アニメでは「シャーロック・ホームズ全集」に変更されています。ちなみに「青い紅玉」はホームズ作品の中で管理人のベスト5に入るお気に入りの作品の一つです。
それから次のシーンで元太は小林先生に怒られるのですが、元太の着ている服が原作ではランニングシャツなのが、アニメでは半袖になっていますね。そして小林先生が本棚の奥に何かあるのに気づいて手を入れた時の光彦のセリフだけ「まさか…東京ですよ! ここは!」が「最近多いですよね、そういうの」になっています(元太のセリフも若干違う)。
更に本棚の奥に手を伸ばした小林先生が財布に手が触れて叫ぶのですが、それが原作では小さく「きゃっ」ですが、アニメでは蛇とトカゲの想像シーンが挟まった上で読書に集中する生徒たち全員が振り返るほどの大絶叫になっています(苦笑)
その後10年前のシーンになると、まず新一と蘭の二人が校門をよじ登るシーンがまず追加され、それから帝丹小学校に前もって開けておいた窓から潜入しようとした際に原作では特に何も使っていませんが、アニメではバケツを台代わりにしていました。
それ以外はほぼ原作に忠実に作られていて、また原作4話分のアニメ化ですが、ちょうど半分の2話を前編で消化しています。
冒頭はまた現代に戻り少年探偵団たちの推理から始まりますが、ここで元太が想像したバッティングセンターだけがカットされています。あとはアニメでは皆が想像したものにイメージイラストがつけられていて、より分かり易くなっています。
それから舞台が工藤邸に切り替わって有希子が役作りのために弟子入りしたマジシャンと会う約束があったのを忘れていた際に、原作では「暇なら優ちゃんも来る? 原稿が上がったことだし…」となっているのが、アニメでは「あれって今日だっけ」となっています。
更に「濁った声で」の部分の推理や最後の暗号の解読などかなり省略されてあっさりしている部分や、ゴールデンウィークで明日も休みなのが、振替休日で休みとなっている、区役所が市役所になっているなどの違いはありますが、全体としては原作に忠実に作られています。
冒頭図書室でコナンが読んでいた本はコナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズ作品でした。この点タイトルは原作では「青い紅玉」ですが、アニメでは全集になっていましたね。ちなみに「青い紅玉」は第1短編集で不朽の名作として名高い「シャーロック・ホームズの冒険」に収録されています。
一方舞台が10年前に変わり、新一と蘭が帝丹小学校に潜入して図書館で出会った謎の男が読んでいたのがモーリス・ルブラン原作の怪盗アルセーヌ・ルパンの活躍する第1短編集「怪盗紳士」でしたね。
冒頭で元太が椅子の上に本を何冊か乗せてその上に立った際に一番上に置かれていた本の名前。アニメのみで一瞬なので画面を止めてみないと確認できません(笑) その後小林先生が手に取って本棚に戻そうとするのでそこで名前は確認できますが、元太が転んだ時に止めないで分かった方はよほど動体視力の良い方ですね。
ちなみにアニメだけですが、小林先生が本を戻そうとした際にその両脇にあった本はいずれも”金沢良平”という著者の本でした。
蘭が自宅に戻ると、母親の英理と父親の小五郎が登場しますが、小五郎は夜遅くから仕事に行くことになります。この当時はまだ小五郎は刑事で、目暮警部補の部下として活躍していました。その目暮から呼び出しがかかり、向かうことになったのが事件のあった杯戸港でしたね。そして何と─
鳥矢町にあった城の名前。現在その城はなく城跡が残るのみです。
阿笠博士の母校だそうですが、この名前が出てくるシーンはアニメではカットされてしまっています。ちゃんと場所には行っているんですけどね。
米花高校、米花大学はあるものの、米花中学は存在しないのだとか。
今回は10年前、新一と蘭がまだ小学1年生だった頃のお話ですが、物語は現代の帝丹小学校の図書室で1年B組の生徒たちが読書会を開いている所から始まり、ふとしたことから見つかった牛革の財布をきっかけに、コナンが10年前の物語を担任の小林先生と探偵団たちに話して聞かせるというシチュエーションで始まります。この辺りの物語構成が実に上手いなと思いましたね。
そして10年前の物語が始まると毛利&工藤夫妻や阿笠博士、更には目暮警部の若かりし頃の姿も見られるという何とも豪華な顔ぶれであり、最後には謎の男が怪盗キッドの父親である黒羽盗一氏であることも判明。加えて後の2代目怪盗キッドである黒羽快斗少年もちらっとですが登場します。
またその盗一氏と優作先生が実はライバル関係にあったこと、有希子が役作りのためにマジシャンである盗一氏に弟子入りしていたこと、更には怪盗キッドの名づけ親が実は優作先生だったことも判明するなど、重要な事実が次々と明らかになった話でもありました。
ミステリーとしては暗号解読がメインですが、それだけでなくスリルと冒険、更にはサスペンス的な要素も随所に見られ、かなり完成度の高いストーリーに仕上がっていたと思います。またアニメ化に際しての演出もとにかくテンポと間の取り方が今回は実に見事でした。
他方でメインの暗号というのは実によく考えられた素晴らしいものではあるのですが、これが簡単なようでとても難しいです。水戸黄門もそうですが、特に麻雀の暗号などは大人じゃなければとても分からないもので、ここに至って私もなぜこんな暗号を…と最初は疑問に思いました。
もちろんそれらを苦労しながら解いていく新一少年、蘭、阿笠博士の活躍を見ているだけでも十分楽しいのですが、最後になってなぜ今回の暗号が難しかったのかが明らかにされ、なるほどという事になります。実は優作先生に宛てた挑戦状だったんですよね。しかしながらこれらの暗号の大半を解いてしまった新一少年はさすがという所でしょうかね。
個人的にはおなじみのキャラクター達の10年前の若かりし姿が見られただけでも大満足というかファンとして嬉しい回でしたし、ミステリーとしての完成度やファンをニヤリとさせる要素も随所に加味され、皆さんの評価が高かったのも当然といえば当然でしょう。こういう作品をもっとたくさん見たいですし、次も10年前の冒険とは言いませんが、また過去の新一と蘭の話を見てみたいなと思いましたね。
ただ一点だけアニメ見て気になったのですが、最後の地図記号をコナンが手帳に書いていく際に学校の所で「米花中」と出てくるのですが、これはおかしいですよね。米花中は存在しないと博士は言っている訳ですし、コナンたちが「止まれ」の標識を見つけたのは阿笠博士の母校の奥穂中学の近くだったはずですから。
2番目の暗号解読でやってきた場所。鳥矢城跡のすぐそばにある水門の名前でした。
3番目の暗号解読でやってきた場所。この郵便局の裏には阿笠博士の母校である奥穂中学があるそうです。
暗号の最後で新一たちが夕日を見た場所。原作では区役所でアニメでは市役所になっています。