(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 白鳥警部 佐藤刑事 宮本由美 諸口益貴(52) 出島覚治(34) 垂水亘(33) 穴吹晴栄(33) 秋場 鑑識 刑事 刑事 刑事 刑事 刑事 |
本編の主人公 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 警視庁捜査一課警部 警部補、目暮の部下 交通課の婦警、佐藤刑事の親友 ミステリー作家 ライター カメラマン 雑誌編集者、諸口の担当 元雑誌編集者、前の諸口の担当 警視庁捜査一課 鑑識員 警視庁捜査一課 刑事 警視庁捜査一課 刑事 警視庁捜査一課 刑事 警視庁捜査一課 刑事 警視庁捜査一課 刑事 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 高木渉 井上和彦 湯屋敦子 声の出演なし 徳丸完 木下浩之 西村朋紘 安藤麻吹 声の出演なし 蓮池龍三 柳沢栄治 諏訪道彦 長嶝高士 鳥海勝美 渋谷茂 |
その日の警視庁捜査一課はどこか落ち着かない雰囲気が漂っていました。多くの刑事たちが何やらザワつきながら、ある方向をジロジロと見ていたのです。そしてその刑事たちの視線の先にいたのは…
刑事たちの視線が自分に集まっていることに気づいた捜査一課のマドンナ的存在の佐藤美和子刑事は、自分の顔に何かついているのかと怪訝な表情を見せるますが、とそこに杯戸町の事件の被疑者の取調べを終えた高木ワタル刑事が姿を見せたのです。すると刑事たちの視線は一転、高木の方に集中し…。
その目つきはナイフの刃先のように鋭く、イライラしているのは明らか。ほどなく高木に対し露骨に不快の念と抗議の意志を表し始めたのです。
そういう事なら我々にも知らせて欲しかった…こちらにも心の準備というものがある…そういって刑事たちの輪の中にいた白鳥警部が指し示したのは…佐藤刑事の左手の薬指にキラリと光る指輪だったのです!!
左手の薬指にはめる指輪といえば、当然結婚指輪…そのため佐藤刑事との仲が噂されている高木が彼女に贈ったもの…刑事たちはそう思い込んで高木に食ってかかったのです。
ところがそう非難された高木の表情がどうも冴えないのでした。どうやら問題の指輪…高木もまったく与り知らぬものらしく、刑事たちのザワつきはその輪の中に高木刑事も加え、より一層大きなものとなってしまったのでした…
─その刑事たちの喧騒が始まる半日前のこと、探偵の毛利小五郎は娘の蘭と居候のコナンを引き連れて東京・奥多摩のとある邸宅にやって来ていました。
その屋敷の主は人気ミステリー作家として知られる諸口益貴で、小五郎は雑誌の企画で彼との対談を依頼され彼の別荘に招かれていたのです。
もっともメインである対談の本番は次の日の早朝に予定されており、その日は食事をしながら対談のリハーサルや打ち合わせをするのみ。とはいえすでに屋敷には諸口や小五郎たちの他にライターの出島覚治、カメラマンの垂水亘、雑誌編集者で諸口の担当の穴吹晴栄といった関係者たちも集合していて、いつでも対談を始められる体制は整えられていたのです。
諸口はデビュー以来作品数が既に100作を超える実力作家で、ミステリーマニアのコナンもよく知る存在だったのですが、コナンの予想していたのとはちょっと違う人物だったようでした。コナンは作品の中で細かい所にやたらと気を配っていることから、いつもイライラしている神経質な人物だと想像していたらしいのです。
ところがコナンの予想は間違ってはいませんでした。というのもその諸口が突然神経質な一面を見せ始めたのです。彼はメジャーを手に雑誌に掲載された自分の名前が他の作家の名前より1ミリ小さいと怒り出したかと思うと、編集者の穴吹に雑誌を投げつけ…。
「この役立たずが!」
そう穴吹を叱責した諸口は、それからまるで当てつけるかのように彼女の前に自分の担当者をしていた秋場という人物について語り始めたのでした。
諸口の言葉によれば、彼は資料写真探しからトリックに関する専門知識の調査と収集まで、何でも自分の望みを叶えてくれる、そして諸口のために骨身を惜しまず尽くしてくれた優秀な編集者だったようでした。しかし続く諸口の言葉で、その場の空気は凍りつきます…
「それこそ…命が尽きるまでね…」
何とその秋場という編集者はその年の春に既に亡くなっていたのでした。しかもそれは鍵を締め切った密室の中での事だったらしく、そのため自殺と断定されたらしいのです。ところが不謹慎にも諸口は、そんな彼の死を題材に小説を書こうとしていたらしく、それを穴吹に止められたというのでした…。
そんな態度に罰が当ったのか…それから食事を挟んで2時間の打ち合わせの後、結局その日はお開きとなったのですが、翌日…諸口はすでに帰らぬ人となって彼の自室で発見されたのです…!!!
しかも部屋の鍵はすべて締められ、開いていたのはコナンのような子供がやっと通れるような換気窓一つのみという、密室状態の中で…。
この点この部屋には合鍵はなく、唯一の鍵は部屋の中で横たわっている諸口自身が手にしていたことから、益口の自殺かと最初コナンは考えたのですが、現場を一瞥するとすぐにある事に気づいたらしく……
一方蘭からの事件発生の連絡を受けた警視庁捜査一課の佐藤刑事は、高木を引き連れて不穏な空気の漂う警視庁を後にし、直ちに諸口の別荘へと向かいます。
しかし佐藤に従って現場に向かう高木の頭の中には、すでに彼女の左手の薬指にキラリと光る”指輪”いうとてつもない難事件が持ち上がっており……
前作486「右から左へ招き猫」が放映されてからしばらく秋の特番が続いたためお休みしていたコナンですが、この週から放送が再開。しかしここから年末にかけての放映はすべて1時間SPという、非常に変則的なスケジュールとなりました。
これはコナンの前にやっていた30分のアニメ番組の放送が視聴率的に振るわず急に打ち切り(深夜枠に移動)となったための措置で、かなり急な話だったらしく後釜の番組も決まっていなかったからのようです。
ちなみに本来2週かけて放送するはずだった作品が1時間SPとして放映されることになったため、その空いた部分は旧作の3部作(前・中・後編)ものを1時間に編集したものや、金田一少年の事件簿の放送などが放送されました。
今回の事件でコナンが佐藤刑事が以前小五郎にした仕打ち(苦笑)、について言及していましたが、この伏線となっている話というのが240-241「新幹線護送事件」です。そしてTVオリジナル作品でしたが、424「ピエロからの写真メール」という作品でも同じようなことがありました。
冒頭佐藤刑事をめぐって警視庁の刑事たちがざわつくシーンが大幅追加。原作では3ページほどの短いシーンですが、アニメでは時間にしておよそ8分ぐらいの長さになっています。
佐藤刑事がエレベータに乗って捜査一課の部屋に入って来るシーンや目暮警部が電話で話をしているシーン、高木刑事が部屋に入ってきてコーヒーを入れるシーン、佐藤刑事の左手薬指に光る指輪を見た高木刑事が悪い想像をして疑心暗鬼に陥るシーンなどは原作にはないものです。特に目暮警部は原作では出番がないだけにファンとしては嬉しい限りの登場シーンですね。
それから原作第1話のラストの佐藤刑事が高木刑事を連れて現場に向かおうとするシーンが、この冒頭のシーンの最後に移動していて、更にその直後にオープニングテーマが始まりますが、ここも1時間SPらしく佐藤&高木が佐藤の運転する車で道路を疾走していくシーンが、映画でも迷宮の十字路からすっかりお馴染みの3D立体映像も駆使して描かれていて、ファンには嬉しいボーナスカットになっています。またエンディングテーマも指輪と佐藤刑事の警察手帳を上手く使ったCGで作られていて、これだけでも今回は一見の価値があると思います。なかなかに凝った作りになっています。
それ以外はほぼ原作に忠実に作られていました。大きなカットもなく、最初にオリジナルシーンもたっぷりあったので、非常に充実したアニメ化だったのではないでしょうか。
今回小五郎が対談することになったミステリー作家諸口益貴との対談はこの雑誌の企画でした。ライターの出島が持っていた雑誌には次回予告としてその対談に触れられていますが、そのページの中には以前116-117「ミステリー作家失踪事件」で登場した新名香保里と彼女の描く探偵左文字の名前も登場しています。
そしてそれだけではなくその次回予告には様々な作家の名前が載っていますが、これらはすべて現在大活躍している実在の推理作家の名前をもじったものになっています。コアなミステリファンなら想像がつくと思いますが
青川一郎→赤川次郎(三兄弟探偵団→三姉妹探偵団)
外田隆夫→内田康夫(深見闇彦→浅見光彦)
西野圭六→東野圭吾
東町京一郎→西村京太郎
綾取返人→綾辻行人
寺部ゆきみ→宮部みゆき
今回の話は密室殺人の謎とすっかりお馴染みの本庁の刑事恋物語での佐藤刑事と高木刑事の恋の行方という2つの軸により展開されていきました。いきなり佐藤刑事の左手の薬指に指輪という衝撃の展開でしたが、佐藤刑事がこと恋愛に関しては結構天然な人であることを知っている多くのファンからすれば結末の魔除けというのはそんなに意外な展開でもなかったと思います。それにしてもこういう佐藤刑事を相手にしている高木刑事は結構大変でしょうね(苦笑)
一方密室トリックに関しては、ここから先紹介するリンク先は作品を全部読んでいるという自信のある人だけクリックしてもらえればと断りを入れた上で、密室状態の中に綱渡りで鍵を移動させるというのは、何となくキッドも登場したあの事件を思い出させるし(この時は移動したのは鍵ではなく死体でしたが)、ワカメのテープというのは灰原哀のあの事件を思い出させるし、指ぬきというのは思わずオリジナルのあの事件を思い出させるし、という感じで、新鮮な驚きはなかったですが、私みたいに隅から隅まで見ている人は例外でしょうから、大方の読者・視聴者は楽しめたはずです。
個人的には密室トリックの正解よりも、一番感心したのは、ハズレの推理ですね。輪ゴムを使ったのとメジャーを使ったので正解も含めて3通りを考えるというのはすごく大変なことだと思います。しかも正解以外はハズレの理由というのまで考えなくてはいけない訳ですから、このあたりはミステリとしては非常に完成度が高いと個人的には思いました。