(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 高木刑事 佐藤刑事 妃英理 栗山緑 九条玲子 佐々木 竹内浩明 竹内麻里子 松川やすゆき 根津武 根津佳代子 谷島 裁判長 警察署係員 タクシー運転手 エスパのママ マンションの管理人 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 巡査部長、目暮の部下 警部補、目暮の部下 蘭の母親、腕利きの弁護士 妃弁護士の秘書 検察庁のエリート検事 九条の部下 ひき逃げ事件の被疑者 竹内建設社長、竹内浩明の妻 ひき逃げ事件の被害者 九条の元上司 根津武の妻、鳥取在住 竹内建設の社員、竹内麻里子の部下 事件の担当判事 警視庁鳥矢署警察官 事故を目撃したタクシー運転手 末広通りにあるスナックのママ 竹内浩明の住むマンションの管理人 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 声の出演なし 声の出演なし 高島雅羅 百々麻子 松本梨香 加瀬康之 小杉十郎太 玉川紗己子 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 三戸耕三 城山堅 遊佐浩二 蓮池龍三 弘中くみ子 田口昴 |
事件当日、仕事の帰りに末広通りの居酒屋”エスパ”で生ビールと日本酒1合を飲み8時頃に店を出たことについては間違いない……11時過ぎに鳥矢町の交差点で自転車で帰宅途中の被害者を車で跳ねたことも間違いない……その間は酔いを覚ましてから帰ろうと思い車の中で休んでいたら眠ってしまった、そしてそれを証明できる人間は特にいない……事故を起こした後に被害者を助けずに逃げたのは、気が動転していたから……
東京拘置所で被疑者・竹内浩明との接見を済ませた妃英理は、どこか浮かない表情で拘置所から出てきた所でした。
なぜなら竹内が勾留されてから既に10日…しかし被疑者は自首してきた上にひき逃げした事実を認めており、検察と争う余地もなく、あとは情状酌量を求めてどれだけ罪を軽くしてもらえるかだけが争点のはず。にも関わらず、なぜか事件を担当している九条玲子検事が、被疑者の釈放を認めないでいたからです。
九条検事といえば”検察庁のマドンナ”と呼ばれる検察庁きっての優秀な検察官であり、妃もその実力を高く評価している人物。それだけに釈然としない妃でしたが、たまたま拘置所を出た所で鉢合わせとなった彼女に真意を問い質しても、被疑者を釈放するかどうかの判断はこちらで決めると突っぱねられてしまったのです。あなたらしくない、と妃は首を傾げるばかりだったのですが…。
何だってオレがこんな事しなきゃなんねーんだ……それからほどなくして蘭から強い調子で頼まれた小五郎は、コナンも連れてレンタカーで警視庁鳥矢署へ向かうことになります。
どうやらそもそも今回のひき逃げ事件を妃に紹介したのは小五郎だったらしいのですが、小五郎は行きつけの飲み屋のママに良い弁護士を知らないかと聞かれたから妃の名前を出しただけ…にも関わらず事件について再度調査して欲しいと頼まれたため、不機嫌な様子でいたのでした。
そしてそばでその小五郎の愚痴を聞かされていたコナンも、同様に九条検事の狙いについて測りかねる様子でいたのですが…。
ところがいざ鳥矢署に到着して事故車両を検分し、続いて事故が起きた交差点で目撃者のタクシー運転手に話を聞いてみると、不審な点がいくつも浮かび上がってきたのです。問題の事故車両は座席が前にずらされていて竹内が運転するには非常に窮屈である…逃げていく時に顔の横あたりで何かがキラキラと光った……そして九条検事もそのあたりについてかなりしつこく問い質していたというのです。
小五郎との調査を終えるとコナンは蘭と妃法律事務所を訪れ、そこで妃との面会を終えて帰ろうとする竹内浩明の妻・麻里子と遭遇します。そして彼女の横顔でメガネがキラリと光るのを見たコナンは、本当に事件を起こしたのは麻里子で、竹内は妻をかばって自首したのではないかと疑い、妃にもそのことをそれとなく伝えたのです。
すると妃はひき逃げ事件は重罪…余程のことがない限りは身代りをするということはあり得ないとは思うものの、秘書の栗山にもう一度調査会社のスタッフを使って調査をやり直すように命じたのでした。
それから妃は昼休みをスポーツクラブで過ごす九条の元を訪れ、九条の狙いが竹内の妻・麻里子であることを指摘し、今すぐに竹内を釈放するように要求します。ところが妃の申し出に対し、九条は意外なほどあっさりと竹内を釈放することを承諾し……
竹内が釈放されると、妃は彼に正直に本当のことを話すように説得を試みます。しかし竹内は自分はちゃんと正直に話をしていると言って聞かず、麻里子の身代りになったのではという妃の指摘にも、自分がやったのだと言い、証拠があるならとっくに逮捕しているはずだとうそぶくのでした。
そしてそのまま久しぶりに美味い酒でも飲みに行くかと言って、妃の事務所を後にしてしまったのですが、竹内は九条検事のことをよく知っているのか、恐れているようには見えず…
その事が気になり毛利探偵事務所で過去の新聞を調べていくと、コナンは現在竹内の妻・麻里子が経営する竹内建設が5年前に会社ぐるみの手抜き工事疑惑で騒がれていたという事実を突き止めたのです。
何か今回の事件と関係があるのか…そう思ったその時でした、毛利探偵事務所の電話が鳴り、妃の秘書の栗山が事態の急変を知らせてきたのです。それは何と……
2002年に2回登場した九条玲子検事が再びコナンに帰ってきました。今回は妃が弁護を引き受けることになったひき逃げ事件の被疑者・竹内浩明が自首してきた上に犯行を全面的に認めているにもかかわらず、なぜか事件を担当する九条検事が釈放を認めないでいるという状況からスタートします。
九条検事の良きライバルであり、彼女の優秀さを知っている妃としてはその不可解な九条の行動に首を傾げますが、蘭に強く背中を押された小五郎が事件を再調査してみると、ひき逃げ事件は竹内の妻・麻里子の犯行であり、竹内は彼女の身代りに自首したのではないかという疑いが濃くなったのです。
そのことを九条検事に訴えると、彼女はあっさりと竹内の釈放を認めます。ところが釈放されたばかりのその竹内は、あろうことか九条検事の目の前で……
末広通りにある居酒屋。被告人の竹内浩明は事件のあった日この居酒屋で飲んでいました。
最初のひき逃げ事件が発生した交差点の名前。コナンでは米花町や杯戸町と並んでよく出てくる町の名前としてお馴染みです。
九条検事が5年ぶりに再登場ということで飛び上がるほど喜んだ今回の1時間SPでしたが、いざ見てみると九条検事の雰囲気が以前と全然違っていたのでかなり驚きました。5年といっても時系列的には1年も経っていないはずですし、女性の年齢出すのは失礼とは思うのですが、確か九条検事は33歳だったはず。それが20代前半ぐらいにしか見えない感じでしたからね。まあでも相変わらずお美しいのは変わらないですが。
まあそれは置いておいて肝心の事件の方ですが、トリック的なものを見るとまあ小道具を使ったよくあるものですし、プロットも決して捻りが効いているとまではいえずこちらもありがちというか…あまりにストレートで分かり易い展開だけに何で九条検事ほどの人がこんな子供だましのトリックに気付かないかなあという印象は否めませんでした。実際に竹内の妻と一緒に部屋に入ったことや、事件のショッキングな展開に動揺したという要素もあるのかもしれませんが、九条検事ほどのキレ者だけに簡単に犯人に騙されて利用されてしまう辺りが若干違和感が残りました。
それに視聴者からすると竹内の妻以外に容疑者も他にいない訳ですし、九条検事は騙せても視聴者をだませることはできなかったのではないでしょうか(苦笑) なおさら今回の事件難易度は低かった気がします。
もっともお話自体は陽性というか気持ちの良いラストでしたし、読書でいうと読後感というやつは悪くなかったと思いますし、いい話だったと思いますね。
ただ……やはりこれは指摘しておかなくてはいけないと思うのですが、私も法学部を卒業し、大学時代も含めて6年近く法律を勉強し一応法学検定の2級にも合格しているので、まったく法律について無知ではないので言わせて敢えてもらえるとするならば、正直この作品を見終わった第一印象というのは、「そんなのあり得ないだろ?」というものでした(苦笑)
どういうことかといいますと、法律で飯を食っている人間である以上は、やはり法的な手続きに則って、正しく人を裁くべきではないかと言わざるを得ないという事です。
今回のやり方は検察側・弁護側だけでなく、裁判官まで一緒になって法廷という舞台を利用して寄ってたかって竹内麻里子を袋叩きにしていますが、これはちょっとひど過ぎると思いました。何と言うかもう”公開処刑”という感じでしたね(苦笑)
特に妃弁護士は報酬をもらって被告人を弁護する立場です。にも関わらず味方のふりをして弁護を引き受けて被弁護人に不利益なことをしている。これははっきりいって詐欺じゃないでしょうか(苦笑) 騙し打ちというか背後から銃で撃っている感じで、これはいくら真実を明らかにするためとはいえ、明らかに権限の逸脱、弁護士としては信用問題にかかわる一番やってはいけないことではないでしょうか。
確かに計画的に殺人を犯しているのはこの時点で彼らが握っている証拠などから事実なのでしょうし、ひき逃げ事件の犯人でもありますし、5年前の竹内建設の一件もあるのかもしれないです。
しかしどんな人間も裁判を受ける権利が憲法上保障されている訳ですし、弁護人を選ぶ権利も憲法上の権利です。これは人間のすることですから100%絶対・完全・完璧というのはあり得ない訳で、歴史的にみても冤罪というのも何度もありましたし、そういったこともすべて考えた上で憲法が保障している権利のはずです。
また今回の事件は裁判所で有罪が確定するまではどんな人間にも一応無罪の推定が及ぶという刑事裁判の大原則にも反しています。その有罪か無罪かを判断するのが法廷という場であるはずです。
これらの被疑者・被告人の権利を完全に奪って、法廷を利用して、しかも衆人環視の中で人を裁くというのは、法律家がやっていいことではないと思います。しかも今回の場合明らかに殺人事件の物証は揃っていて(花壇のレンガと入れ替えたことを突き止めて鑑識に回している)、このひき逃げ事件が審理されている法廷でなければ真相が究明できないといった特別の事情もありません。裁判が開かれる前に殺人事件で捜査状を取って取り調べをすることも可能な事案です。
弁護士法第1条
「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」
憲法第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
裁判を受ける権利は、基本的人権を実現するために欠くことのできない、憲法37条で保障された権利です。
ということで、リアリティをより重んじているはずのコナンということを考えるとちょっと高い点はつけられないのですが、しかし話としては面白かったですし、九条検事復活というのが何よりうれしかったですね。また彼女の活躍を是非見たいものです。