(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 千葉刑事 トメさん 紫條麗華(38) 葛城健輔(45) 田村雅生(32) 白石優華(26) 緑川くらら(28) 中目頼策(52) |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 捜査一課刑事、目暮の部下 鑑識員 占星術師 星空出版社長 編集者 麗華の姪で家政婦兼弟子 女優 東都TVプロデューサー |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 高木渉 千葉一伸 中嶋聡彦 笠原留美 花田光 後藤史彦 千葉紗子 桑島法子 声の出演なし |
探偵に必要なのは事件を客観的に捉えること、そして感情に流されず論理的に推理すること…ですかな。
しかし占星術をまったく信じない訳ではない…なぜなら事件解決には事件の本質を直感的に見抜く第六感ないし閃きも必要だから…
物好きな出版社が思いついた今人気絶頂の占星術師の紫條麗華と名探偵の毛利小五郎の対談という企画のため紫條麗華の屋敷に招かれた小五郎と蘭、それにコナンの三人。
私は生まれつき探偵の才に恵まれているのでしょうか、時々知らないうちに事件を解決していることもあるぐらいで…といつものバカ面で得意気に話す小五郎を呆れた視線で見つめるコナンがそこにはいました。
紫條麗華の屋敷はある資産家の別荘だったものを買い取ったものらしく、まさしく豪邸と呼ぶにふさわしい屋敷と豪華な庭を備えていました。そして屋敷には麗華の横顔に彼女の守護星座であるさそり座があしらってある、彼女が自らデザインして作らせたというステンドグラスが屋敷のいたる所で輝きを放っていたのです。
しかし豪華な屋敷を構える人気占星術師である一方、紫條麗華にはもう一つ裏の顔…血も涙もない恐喝屋としての側面があったのです。
小五郎との対談をちょうど終えた頃、有名女優の緑川くららが麗華の屋敷を訪れて話がしたいと申し出たのですが、どうやら彼女はその犠牲者の一人で、麗華からずっと恐喝され続けているようでした。
自分が知っている事をちょっと喋ったらあなたはおしまいよ…もういい加減にして欲しいというくららの言葉にも冷たくそう言い放つ麗華。
それでもこのままだともう首でもくくるしかないというくららの言葉に対し、麗華は自分から逃れたければ誰でもいいから金があって叩けばホコリの出る別の生贄を差し出すようにと迫り……
くららとの面会を終えると麗華は、次に小五郎の運命を占うからと1時間席を外すことを小五郎たちに告げ、小五郎たち三人や星空出版社長の葛城、編集者の田村、それに麗華の弟子の白石優華らの前から姿を消します。
麗華が向かったのは2階の自室でしたが、彼女が部屋の目の前までやってきた時そこで予期せぬ出来事が起きます。部屋の鍵を開けようとしたまさにその時、蘭が麗華の後を追ってきて、どうしても占って欲しいことがあると頼み込んだのでした。その真剣な眼差しに心を打たれたのか、麗華はできるだけ早く時間を作ると約束し、その印として蘭に自分が見につけていたキーホルダーを渡し、そのまま部屋の中に消えていったのです。
麗華が自室から戻ってくるまでの間、小五郎は麗華から振舞われたワインを堪能するなど終始リラックスムードでいましたが、コナンはというとこんなことなら探偵団たちとサッカーでもしていた方がよかったといかにも退屈そうな様子。そうこうしているうちに陽も傾き始め夕飯の時間となったため、麗華を呼びに蘭が麗華の自室へと向かいます。ところが何度ノックして呼びかけても返事がなく……
客を待たせるようなことはしない麗華だけに気になった一同は全員で麗華の自室に向かいますが、葛城が同じようにノックしてもまったくの無反応。入口のドアは内側から鍵がかかっていたため、そこで一同はベランダの方に周りこんで窓越しに部屋の中の様子を覗いてみることにしたのですが……
出版社の企画で今人気絶頂の占い師紫條麗華の屋敷に招かれた小五郎とそれについてきた蘭とコナンの三人。対談は小五郎の調子の良さも手伝って順調に進みますが、1時間席を外すと言い残して2階の自室へと消えた麗華が戻ってこず、ドア越しに呼びかけても返事がないため、小五郎たちはベランダから中の様子を伺います。
すると部屋の中には腹部を刺されて無残な姿で倒れている麗華の姿が…慌てて天窓を破って中に入りますが、彼女は既に亡くなっていたのでした。
現場は唯一の出入り口であるドアはから施錠され、窓も嵌め殺しのため現場は密室。いったい犯人はどうやって麗華を殺害した後、部屋から脱出したのでしょうか? そして無理を言って小五郎についてきたという蘭が麗華に占ってもらいたかった事とは?
瑠璃鶲と表記され、スズメ目ツグミ科に分類される小型の青い鳥。側面がオレンジ色の毛で覆われているのが特徴的です。
何と8月半ばにして2008年初のTVオリジナル作品となった今回の作品。まあこの年は最初から赤と黒のクラッシュのシリーズが5月まであったこともあり仕方ない部分はあるのですが、もう少しTVオリジナル作品も見たいというのが率直な気持ちですね。
そして問題の出来栄えですが、今回は正直唸ってしまうぐらい良質でしっかりとした本格ミステリーで、存分に楽しめたというのが、率直な所です。ここまで出来のいい30分ものの本格モノをコナンは最近あまり見ていないというぐらいの出来です。
密室もの、不可能犯罪でトリック的には眠りの小五郎(コナン)が言っている通りごく単純というかありがちに思えるトリックで、私も犯人が誰かも含めて天窓から鍵を落下させて現場に戻し、後で遺体発見時に自分でガラスを割って証拠隠滅を図るというのは正直分かりましたが、麗華が蘭にキーホルダーをあげたことがずっと気にはなっていたもののああいった形で犯人の決め手になるとは予想外でした。
たぶん何度も見返したり、途中で止めてじっくり推理したら分かったかもしれませんが、30分作品の時はそれをせずにリアルタイムで推理しようと心がけ見みていることもあって、最後にアッと言わされましたね。
よくミステリの感想で自分が気づけたらそれは駄作で、気づけなければ傑作という記事を目にするのですが、まあ確かに楽しみ方は人それぞれですからそういう考え方も否定はしませんが、私はそういう楽しみ方は勿体ないと思います。作り手側の意図というか、きちんとした推理で真相までたどり着けるように作者がどれだけ工夫し、構成を練っているか…その一連の構造を私は評価したいですね。
今回の作品はそのあたりがしっかりと作られているのが見ていてこちらに十分伝わってくるので、おそらくその点(犯人が迷わずに多くの鍵の中から入り口の鍵を選んだことと、その鍵のキーホルダーが直前に蘭にあげたことで別のものに変わっていた点)を気づけたとしても、今回は凄いなという印象には変わりはなかったと思います。それほど計算つくされて伏線もしっかり張られていた見事な本格推理だったと思います。
そしてトメさんも「カラオケボックスの死角」から間隔を置かずにこの年2度目の登場でしたし、小五郎や蘭のキャラクターが何だか活き活きとしていて、これが最近見たくてもなかなか見られなかった自分がオリジナルで見たかったコナンだと言ってもいいぐらいの楽しい30分でした。
ただ一点、なぜなのか分かりませんが、今回EDのテロップで脚本の方の名前の表記がありませんでした。これは頑張って仕事をされている方に対しちょっと失礼すぎるので、今後こういう事はないようにお願いしたいです。