(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 トメさん 沖野ヨーコ 染井彰吾(35) 久住舞子(29) 中目頼策(52) 社員 管理人 店員 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 鑑識員 人気アイドル 番組制作会社《染井企画》 社長 番組制作会社《染井企画》 社員 東都TVプロデューサー 染井企画の社員 中目の住むマンションの管理人 染井企画近くのドラッグストアの店員 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 高木渉 中島聡彦 声の出演なし 中村大樹 大本眞基子 仲木隆司 坂東尚樹 田口昂 真山亜子 |
「毛利小五郎密着24時─月曜夜9時のゴールデンタイムに東都テレビがそのような特番を企画しているので、是非前向きに考えて欲しいと、その日毛利探偵事務所を訪れた番組制作会社社長の染井彰吾から依頼された小五郎。
警察に密着したものはよくあるが探偵はというと、顔を知られたり調査方法を知られると仕事に支障をきたすということで断られることが多いらしいのですが、その点小五郎は世間でも名の知れた名探偵ということもあり食指が動いたというのですが、24時間ずっと密着というのは小五郎には抵抗があるらしく色よい返事はできない様子でした。
ところが番組の企画書に書いてあるナレーションの名前を見た途端、小五郎の態度が急変し……
何とか小五郎からOKの返事をもらった染井は、すぐさまそのことを東都TVプロデューサーの中目頼策に報告。中目はナレーションの作戦が成功するとともに、視聴率の低迷で打ち切りになったドラマの穴埋めが見事に成功したことに満足な様子でいたのです。
ところがそれだけでは飽き足らず、中目は更に無理難題ともいえる要求を染井に突きつけてきたのです。キックバック……制作費を水増し請求して浮いた金をプロデューサーに渡すという何とも卑劣な行為でした。
そしてそれが嫌ならと中目が要求してきたのは何と…
中目のもう一つの要求というのは、染井の製作会社で設立当初から彼を支えている女性社員の久住舞子を自分のそばに秘書として置きたいという何とも下劣なものだったのです。
どうやら一度中目から仕事を干された染井企画に今回仕事が回ってきたのは、仕事ができ美人でスタイルもいいと絶賛する彼女が中目のお気に入りだからだったからでした。
そんな要求はとても受け容れることはできない染井でしたが、詳しい話は後日毛利探偵と一緒に自分の家に来た時にしようということで、その日の会話は打ち切られたのです。
そして打ち合わせの当日の夜─その日はあいにくの雨、しかも染井が約束の時間を30分過ぎても来ないため、小五郎の付き添いで蘭と一緒についてきたコナンは不愉快極まりない様子でした。
一方小五郎はというと、雨の中30分待たされたにもかかわらず、愛しの沖野ヨーコと会えるとあって終始上機嫌な様子でしたが、ようやく染井が到着してヨーコが急に都合が悪くなり来られなくなったと聞かされるとガッカリした様子で中目の住むマンションの20階に向かったのです。
ところが中目の部屋の前まで来て玄関のチャイムを鳴らしても、中からは何の返事もありませんでした。するとヨーコが来ないと知って不機嫌な小五郎は染井が遅れたためにどこかに出かけてしまったのではと、さっさと帰ろうとします。
するとそこで染井が妙なことを切り出したのです。何でも最近中目の様子がどうもおかしいらしく、その理由というのが少し前に話題になった東都TVでのヤラセ番組問題。 中目はそのヤラセ自体には関わっていないものの番組を立ち上げたのが彼だったらしく、責任を感じていたというのです。そしてお酒を飲むと「死にたい…」とよく漏らしていたといい……。
その話を聞いた小五郎はすぐにマンションの管理人に鍵を借りてくるように染井に指示。ほどなく小五郎の手で中目の部屋の玄関の鍵が開けられますが、扉には内側からチェーンロックが掛けられていたのです。
どうやら中目は中にはいるらしい…仕方がないと管理人にチェーンカッターでロックを切断してもらい、一行は中に入って中目を捜し始めたのです。
するとリビングの様子を見に行っていた染井が中目を発見したらしく、ほどなく大声で中目に呼びかける染井の声が……その声にコナンは蘭を玄関に見張り役として残し、すぐにリビングの方に向かいます。
するとリビングでは口から血を吐き床の上に仰向けに倒れている中目の姿が…そしてテーブルの上にはコーヒーカップが倒れて中身がテーブルの上に散乱し……
中目はコーヒーに混ぜられたと思われる青酸カリが原因で命を落としたようでしたが、現場の状況を見たコナンはすぐにそれが自殺ではなく殺人事件だと確信します。
ところが警察が到着し捜査が進められていく中、コナンは床についたコーヒーの染みの跡から今回の事件が不可能犯罪であることを知り…
私立探偵としての活躍を密着取材する東都TVの特番の企画を制作会社社長の染井から提案され、ついつい承諾してしまった小五郎。ところがその提案の舞台裏では、東都TVプロデューサー中目の下劣な欲望が蠢いていたのでした。
中目は自らのプロデューサーとしての地位を利用し、染井企画に制作費を水増ししてできた浮いた金を自分の所によこす所謂キックバックを要求。さらにそれが駄目なら染井が右腕と頼りにしている美人社員の久住舞子を自分の秘書にするようにと染井に迫っていたのです。
それから数日後、小五郎たちは染井と特番の打ち合わせをするため、雨が降りしきる中、プロデューサーの中目のマンションへと向かいます。ところが2003号室の彼の部屋のインターフォンを鳴らしても何の反応もなかったのです。
しかも染井の話によると最近中目はヤラセ番組の問題で悩んでいたらしく、気になった小五郎が管理人に鍵を開けさせて中に入ってみると、部屋のリビングで中目は仰向けに倒れて既に亡くなっていたのでした。
死因は青酸カリによる中毒死。一見すると自殺のように思えましたが、コナンは部屋の状況からこれがすぐに他殺だと見抜いたのですが…。 衝撃の真相が待ち構える密室ミステリー。
今回登場する東都テレビの中目頼策ですが、たぶんこの名前を聞いてピンと来る方はそういないと思いますが、実はこの前のTVオリジナル作品「砕けたホロスコープ」で人気占い師の紫條麗華に電話をかけてきたのが東都テレビの「なかめ」でした。
私自身最初は「中根(仲根)」だと思っていたのですが、2つの作品をつなげて見てみるとこの作品に登場する中目頼策と考えるのが自然ですし、よく聴いてみると確かに「なかめ」と言っています。こういうマニアしか気づかないような何気ない細かい演出が私好みでして、監督が於地氏に代わってからいい感じで作品作りが続いていますね。
まず前編については、冒頭毛利探偵事務所を訪れた染井彰吾と久住舞子の二人に出されたコーヒーが原作ではホットですが、アニメでは時期的なものも考えてだと思いますがアイスコーヒになっています。そしてこのあたりの人物描写がアニメではより丁寧に描かれていますね。
そして原作では名前しか登場しませんが重要な役割を果たす(笑)、沖野ヨーコですが、アニメでは麗しの沖野ヨーコ嬢の姿を見ることができます。
更に電話で中目から卑劣な要求が来た後、車の中や社内で思い悩む染井の姿が追加されている、中目のマンションの部屋が2003号室と部屋番号をアニメでは確認できる、警察の捜査が始まり死亡推定時刻の件の目暮警部のセリフがトメさんのセリフになっている他、小五郎や捜査陣のセリフの一部が話す人や内容も含めて変更されている、床にこぼれたコーヒーの染みの後の部分がカメラワークを使ってかなり丁寧に説明されている、そして最後に事件の要点や問題の所在についてコナンが分かり易く整理して前編が終了…などの変更点がありますが、大きな変更点はありません。
後編に関してはほぼ原作どおりで、それに加えセリフのないアニメオリジナルのシーンが何箇所か追加されています。特に事件解決後のシーンは心を動かされるものがありました(詳しくはネタバレ感想で)
今回企画されたテレビ番組の名前。警察に密着したものはよくありますが、私立探偵となると顔バレや調査方法などを知られると仕事上差し障りも多く、断られてばかりだったため、超有名で顔バレの心配のない小五郎に白羽の矢が立ったのでした。
小五郎の名探偵ぶりを存分にアピールするチャンスで、ナレーションが沖野ヨーコということもあり小五郎は大いに乗り気でしたが、実は視聴率の低迷で打ち切りになった月曜夜9時のドラマの穴埋めのために企画されたものでした。
今回の小五郎密着24時を企画したテレビ局。中目頼策はこのテレビ局のプロデューサーです。コナンではテレビ局というと日売テレビの方が圧倒的によく名前が登場します。
染井彰吾が社長を務めるTV番組の制作会社。東都テレビのプロデューサー中目の卑劣な嫌がらせにより仕事を干されていたようです。
涙なしには語れない、何とも物悲しい後味の残る今回の事件。自分はここまで追い詰められるような経験をしたことがないので滅多なことは言えませんが、業界から干されるというのは死活問題なのですからこれだけ思い悩んでやつれるのも当然だと思いますし、自分の大切な人がそんな状態なのを見るに見かねてというのは理解できなくはないだけに、何とも言いようがない気持ちにさせられました。
しかし今回の被害者ほど同情に値しない人間も珍しいですし、こうやって人の弱みにつけ込んで無理難題を要求してくる人間というのはクズですよね。とはいえ例えば某テレビ局のアナウンサーがセクハラ問題で降格処分、上司も処分されたとか、そういうニュースを現実に目の当たりにもしますので、こういう事というのはあながちフィクションの世界だけということもないのでしょうか。あまり深く関わらずTVの上だけで見ていた方が夢も壊されずに済むのかもしれないです。
ところで事件の内容についてはこれぐらいにしておいて、今回のお話をミステリとして分析してみると、これはなかなか意外な結末といいますか、最後でアッと驚かされました。
展開自体はあのまま染井彰吾が犯人でいわゆる倒叙もののミステリかなと思っていて見ていくと終盤でどうも真犯人が別にいるということで久住舞子が真犯人かなというのは予想できたのですが、あのコーヒーカップの倒れ方や染み、ケーキの件で被害者が誰かと会っていて2人分のケーキとコーヒーだった、そしてそれを後から来た染井社長が巧妙に隠滅したというのは目からウロコでしたね。ミステリーとしてはかなり楽しめた内容だったと思います。
それから今回もアニメならではの追加シーンが多数挿入されていて、アニメで見るとこれがかなり物語を盛り上げたり効果的な演出を醸し出しています。最後に染井社長が高木刑事に連れられてパトカーに乗り込むまでのシーンは個人的には最高にいい感じの演出だったと思います。ここ最近のアニメは事ある毎に言っていますが、いろいろと工夫されているのが私が見てもはっきり分かるぐらい、完成度が高いです。
今回の事件、確かに悲しい結末でしたが、事件捜査中は小五郎とコナン、そして目暮警部などのやり取りも抜群にユーモアで面白いものでしたし、トメさんも登場でいい味出していますし、ラストのケーキの件で小五郎が蘭とコナンから白い目で見られるシーンも爆笑ものでした。私も小五郎と同じような目に遭った経験ありますが、食べ物の恨みというのは恐ろしいんです(苦笑)