名探偵コナン521「殺人犯、工藤新一」
名探偵コナン522「新一の正体に蘭の涙(前半)」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
File521 殺人犯、工藤新一
File522 新一の正体に蘭の涙(前半)
英題
Murderer, Kudou Shin'ichi
Shinichi's True Face and Ran's Tears
放映日
2009/1/19・1/26(「アニメ7」内放映1時間スペシャル)
原題
第62巻
File5「憎悪の村」
File6「失われた記憶」
File7「工藤新一の殺人」
File8「死羅神様」
File9「止まらぬ涙」
File10「正体」
ジャンル
本格
事件現場
東京都奥穂町東奥穂村 前村長・日原滝徳宅
管轄
東京警視庁
登場人物
江戸川コナン
工藤新一
毛利蘭
毛利小五郎
阿笠博士
目暮警部
灰原哀
服部平次
遠山和葉
屋田誠人(19)
屋田多麻子
城山数馬(46)
氷川萌生(19)
河内深里(36)
日原滝徳
日原鐘子
日原大樹(村人A)
警部
役場の人
中年の村人A
中年の村人B
村の若者A
村の若者B
死羅神様
沖矢昴
本編の主人公、正体は工藤新一
本編の主人公、高校生探偵
本編のヒロイン、新一の幼なじみ
蘭の父親で私立探偵
新一の家の近所に住む自称天才科学者
警視庁捜査一課警部
黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保
西の高校生探偵、新一のライヴァル
平次の幼なじみ
東奥穂村の住人、手紙の送り主、日原滝徳の養子
誠人の妹、9年前に湖で水死体で発見
警察官、東奥穂村交番勤務の巡査
誠人の同級生
新聞記者、東都新聞勤務
1年前に事件の犠牲になった被害者、元村長
1年前に事件の犠牲になった被害者、滝徳の妻
滝徳の息子
捜査を担当した警部、目暮警部と同期
東奥穂村役場 住民課職員
東奥穂村の村人
東奥穂村の村人
東奥穂村の村人
東奥穂村の村人
民話に登場する森の番人
工藤邸に居候する謎の大学院生
高山みなみ
山口勝平
山崎和佳奈
神谷明
緒方賢一
原作のみ登場
林原めぐみ
堀川りょう
宮村優子
水島大宙
声の出演はなし
五王四郎
荒木香恵
鵜飼るみ子
声の出演はなし
声の出演はなし
浦和めぐみ
秋元羊介
西川幾雄
川津泰彦
田口昂
三戸耕三
柳沢栄治
???
声の出演はなし
あらすじ
「新一…それが僕の名前ですか?」

 ─「またまた事件解決!! 高校生探偵 その名は工藤新一」

 その写真の載った新聞記事の上から憎々しげに刃物を突き立てる黒い影の姿─。いったい何者…!?

 その頃コナンは、小五郎と蘭、それに服部平次と遠山和葉と一緒にレンタカーでとある場所へ向かっていました。

 理由は平次の所に届いた一通の手紙…送り主は奥穂町の外れにある東奥穂村の屋田誠人という、1年前村で起きた殺人事件を新一が捜査した時に手伝ってくれたという村の青年でした。

 内容は新一が解いた事件の推理ミスを見つけたから会って話がしたいというもので、おそらくはコナンの姿になり連絡の取れない新一に業を煮やし、同じ高校生探偵として有名な平次に手紙を書いたと推測されたのです。

 その日風邪でひどい体調だったコナンは、阿笠博士からもらったカゼ薬で何とか体調を持ちこたえていましたがヒドイ声…。そんな中自分が手がけた事件の推理ミスを指摘され、気になりつつ懐にしまわれた自分宛の手紙を眺めていたのです。

 東奥穂村は東京都とはいえ緑がいっぱいでのどかな空気の田舎村といった風情でしたが、到着するなり東奥穂村役場の住民課で手紙の主・屋田誠人の所在を聞くと、半年前に捜索願が出され行方不明だという返事が。

 そして用件を尋ねられた平次が「工藤新一」の名前を出すと、役場の中はざわめき、そばにいた少年からは「ウソツキの仲間」呼ばわりされてしまったのです。そして我々からは何も話すことはない、事件のことなら村の交番で聞いてくれと冷ややかな対応で…。

 一方コナンは二人きりで会いたいという屋田からの手紙の通り、以前彼と出会った山小屋へ向かいますが、入るなり外から施錠され閉じ込められてしまいます。そしてその瞬間、以前感じたことのあるあの激しい動悸が……。

 そう、博士からもらった薬というのは、灰原哀が作ったAPTX4869の解毒剤の試作品だったのです! 誰かの目の前で元の姿に戻ったらシャレにならない…慌てて脱出を試みるコナンでしたが……。

 その頃平次たちはまだ旅館に戻らないコナンを捜して東奥穂村の交番を後にして森の中を捜し回っていました。しばらくすると湖に素っ裸の高校生ぐらいの若い男が助け出されたと噂する村人たちの姿が…高校生と聞いて不思議がる平次たちが若い男のいる場所に行ってみると、そこにいたのは何と工藤新一だったのです。しかし新一はどうも記憶をなくしているらしく……

 奥穂旅館に記憶を失くした新一を連れてきた平次は、阿笠と灰原哀から電話で事情を聞き、解毒剤の効果がせいぜい24時間だと知り、すぐに新一を東京へ連れて帰ろうとします。

 ところが新一の解いた事件の現場に連れていけば何か思い出すかもと和葉に言われ、日原邸へと向かいますが、そこで東都新聞の記者河内深里ら事件関係者に出会ったのでした。

 1年前の惨劇…村の警官の話では、亡くなったのは当時村長をしていた日原滝徳とその妻鐘子。そして現場となった日原邸は部屋の中が荒らされ、妻は階段の途中で刺殺され、村長はベランダの下にある崖下で転落死していたといいます。凶器はなく、屋敷内にあった宝石や骨董品もなくなっていて、犯人のものと思われる血の靴跡も残っており、現場の状況からは強盗殺人とも思われたのでした。
 ところが新一の出した結論は…医者にガンを告知され自暴自棄になった村長が無理心中を図ったというものだったのです。

 しかし後日看護婦が口を滑らした話によれば、村長は良性のガンで手術すれば完治するものだったらしく、動機が崩れたこと、それに日原滝徳はとてもおおらかで村民からの人望も厚い20年のベテラン村長だったこともあり……愛されていた村長にい泥を塗った大悪人として、新一は村の人間から毛嫌いされていたのです。そしてそのような中で村人の間では真犯人として「死羅神様」の名前が…

 死羅神様─それはこの土地に伝わる民話で、森に棲む、森で会ったら目を見るな、逸らさなかったら祟られる……村長は村の再開発のため、森の中で大きな観光施設を建てようとしていたことから、その森の番人「死羅神様」の怒りに触れたのではないかというのでした。

 事件の大枠が見えてきた平次でしたが、新一の記憶は思い出せそうで思い出せない状態…ところがその姿を見た新聞記者の河内深里は、魂胆は分かっている、自分の目は欺けない、私にバレていないと思ったかと意味深な言葉を……そして観念して何もかも告白したくなったら、自分の泊まる湖東旅館へ来いと言い残して出て行ったのです。

 翌朝、平次が起きてみると布団はもぬけの殻。村人によると朝早く、日原村長の屋敷に入るのを見た人がいたようでした。

 まさか記憶が戻ったのか……そう思って平次が駆け足で日原邸に向かってみると…

今回の見どころ
1年前に殺人事件を解決した東奥穂村で、コナンは記憶を失くしたまま「工藤新一」に戻ってしまい…

 1年前に工藤新一が解いた東奥穂村で起きた殺人事件の推理ミスを見つけたから会って話がしたい…そのような手紙を受け取った服部平次は小五郎やコナンたちを引き連れて問題の東奥穂村へと出向きます。

 ところが手紙の送り主である屋田誠人は半年前から行方不明となっており、更に「工藤新一」の名前を出すと村人は一様に重苦しい態度に変わり、「ウソツキ」呼ばわりされる始末…

 いったい新一はこの村で何をしでかしたのか!?─一方風邪で最悪の体調の中で平次たちに同行してきたコナンは体調不良で先に旅館に戻ると偽り工藤新一宛で届けられた手紙に書いてあった山小屋へ向かったのですが、何者かによって外から鍵をかけられて中に閉じ込められてしまいます。

 ところがそんな中で以前にも経験した発作がコナンを襲います。それは江戸川コナンから工藤新一へと一時的に戻った時にいつも起きたあの……こんな所で元に戻ったらシャレにならないと察したコナンはどこでもボール射出ベルトで窓を破り外へと脱出を試みますが、バランスを崩してそのまま湖へと転落してしまいます。

 ほどなく湖からはコナンから戻った新一が発見されますが、何と記憶喪失状態。阿笠博士と灰原哀からの連絡を受けて事態を理解した平次はいったんは新一がコナンに戻ってしまう前に連れて帰ろうとしますが、記憶を取り戻させるには1年前の事件現場に連れていくのがいいのではという和葉の言葉に乗せられて捜査を開始したのです。

 そして1年前の惨劇の舞台となった日原邸では様々なことが分かり、何者かによる強盗殺人事件とも思われる現場の状況にもかかわらず新一が被害者の日原村長が末期のガンと誤解して妻と無理心中を図ったと結論づけた事を知ります。

 しかしガンは手術すれば治るものだったという看護婦の証言や村長が20年来のベテランで村人からの人望が厚いこともあり、新一は村長に泥塗った大悪人と思われていたのでした。

 そして現場に現れた東都新聞記者の河内深里は記憶喪失状態の新一に何やら意味深な言葉を投げかけ、すべてを白状するのなら自分の泊まる旅館へ来いと言い残して現場を立ち去ったのですが……

 日原村長夫妻は村人たち噂しているように森の再開発で地元に伝わる「死羅神様」の怒りに触れて殺害されたのか!? そして東奥穂村の住民の怒りを買う中で記憶を失った工藤新一の運命は!?

原作との相違点
殺人犯、工藤新一

 冒頭部分はほぼ原作と同じで、ひょっとしたら新一が来るかもと言った後に「アイツ、ごっつプライド高そうやしなぁ…」とコナンをからかうシーンがカットされているぐらいです。

 その後オープニングテーマが終わり、屋田誠人の紹介の部分で19歳と年齢がつけられている、和葉の交番へ行くというセリフが一つカットされている、コナンが山小屋に閉じ込められてから発作が起きるまでの間に少しセリフが追加されている以外はほぼ忠実です。

 CMを挟んで平次がコナンが先に電車に乗って一人で帰ったと苦しい言い訳をしている間の蘭と平次のやり取りが一つカットされている、小五郎の格好が原作では背広のみだが、アニメではコートも着ている、旅館に戻って平次と阿笠・灰原との電話の後の小五郎の新一の推理ミスを肴に一杯やろうと思っていたというセリフがカットされている。

 2度目のCMを挟んで日原邸での捜査と関係者のやり取りの部分は細かい言い回しなどに少し変化はあるもののほぼ原作どおりでした。

 3度目のCMの後は微妙にセリフがカットされている部分が多く、更に新聞記者河内深里が新一を挑発するシーンで彼女が周りの人間全てに嫌味を言う部分がカットされています。

 更に翌朝ついに新たな事件が発生して4度目のCM後はほぼ原作どおりでした。

新一の正体に蘭の涙

 まず冒頭のトロピカルランドの夢の部分が少し長めの脚色がされていて、夢から覚めた蘭が手当てされている事に気づいた際のセリフの一部がカットされています。

 それから平次が山小屋の破られた小窓を見てもう一度推理し直す部分も少しシーンが追加されていました。こちらは原作に比べてかなりヒントとしては分かりやすく脚色されています。

 1度目のCMを挟んだ後はほぼ原作に忠実な構成で、2度目のCMを挟んだ解決編部分以降もほぼ原作どおりでしたが、一点だけ原作では今回の担当警部が目暮警部と同期で1年前の事件も目暮の紹介で捜査に加わったという記述があるのですが、アニメではそこが残念ながら丸々カットされてしまっています。そのためアニメでは目暮の登場はありません。

豆知識
東奥穂村

 東京都にある村の名前で今回の事件の舞台。奥穂町の外れにあり一応東京なのですが、緑がいっぱいでのどかな空気の田舎村といった風情という描写がなされています。

 ちなみに奥穂町といえば名探偵コナンでは何度も出てきている地名ですが、File472-473「工藤新一少年の冒険」で阿笠博士が奥穂郵便局の裏にある奥穂中学校を卒業しているという記述があったのはコナンファンなら知識として押さえておきたい所です。

 名前の由来はおそらくイギリスのオックスフォードでしょう、名門大学がある事でも有名ですよね。

東奥穂村役場

 東奥穂村に到着した小五郎たちが最初に向かったのは役場でした。

東奥穂村交番

 事件関係者の一人、城山数馬はここの駐在のようです。

奥穂旅館

 東奥穂村に滞在中の小五郎と蘭、それに平次と和葉が当初は2泊3日の予定で宿泊していた旅館。

東都新聞

 今回の事件関係者、河内深里は東都新聞の記者でした。東都新聞は私が調べた範囲では今回が初登場のようです。

湖東旅館

 河内深里が宿泊していた旅館。

NEXTコナンズヒント
File521 死羅神様の祟り
File522 車の窓
コント
File521
蘭「次回新一の記憶が」
和葉「そして事件の真相が」
コナン?「お見逃しな…ゴホ、ゴホ、ゴホ」

File522
蘭「コナン君は?」
和葉「そういうたら、工藤君と一緒におったで」
平次「えっ、それはないで…」
OP
Revive」(倉木麻衣)
ED
恋心 輝きながら」(Naifu)
監督
於地紘仁
構成
File521 影山楙倫
File522 松本佳久
絵コンテ
File521 影山楙倫
File522 松本佳久
演出
File521 戸澤稔
File522 山崎茂
作画監督
File521 増永麗、佐々木恵子
File522 斎藤新明、岩井伸之、山崎正和、山村俊了
ビデオ
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DVD
PART17-9PART17-10
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★★★★★

 服部平次が登場する回というのはコナン(新一)と推理合戦を広げるために完成度の高い本格推理となる作品が多いのですが、今回も実に意外かつ重厚な本格ミステリーでした。

 真相については最初はこの村でいったい何が起きているのかサッパリな感じで進んでいくのですが、段々と何かがおかしい事に気づいていき、解決編直前の蘭の涙で決定的となります。今回は新一がホンモノでないと気づければ後は流れるように事件の背景が分かっていくのではないかと思います。

 まあ声や服装については作中どおりでゴマかせるとして、顔も整形手術でそこまで完璧にゴマかせるのかなとは思いますが、とにかく与えられた手がかりでそれに気づくのが本格推理ですからね。

 それにしてもコナンが新一に戻る部分をこういう形で使って読者をダマすというのは今回は脱帽でした。私も何か今回の工藤新一が記憶喪失だとしても違和感のようなものがずっとあったのですが、最後の蘭の涙の部分でやっとそういうことだったのかと理解できましたが、気づいた時には思わず唸ってしまいました。

 ただ犯人が事件を起こした後どうするつもりだったのかはちょっと気になりました。あのままだと即逮捕・拘留されてしまい本物と入れ替わるチャンスはないですしね。ああやって事件を起こした上で、どこかで本物の新一と入れ替わるか、せめてどこかで自分が姿をくらまさないと計画の意味がない気もしました。

 とはいえ今回のような読者を上手くダマす事に主眼を置いた作品というのはミステリーでは一番読んでいて楽しいというか醍醐味ですね。楽しい時間を過ごせたと思います。

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