(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利蘭 毛利小五郎 阿笠博士 灰原哀 服部平次 遠山和葉 高木刑事 佐藤刑事 古城郡平(32) 溝端理子(25) 忠田篤男(34) 下鳥太志(48) 下鳥章 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 新一の家の近所に住む自称天才科学者 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 西の高校生探偵、新一のライヴァル 平次の幼なじみ 巡査部長、目暮の部下 警部補、目暮の部下 事件の被害者、走り屋レッドコメッツのリーダー 被害者の交際相手 走り屋ブラックスターズのリーダー 下鳥章の父親 元レッドコメッツメンバー |
高山みなみ 山口勝平 山崎和佳奈 神谷明 緒方賢一 林原めぐみ 堀川りょう 宮村優子 高木渉 湯屋敦子 声の出演なし 後藤邑子 斉藤次郎 藤城裕士 声の出演なし |
何とか蘭たちに新一からコナンに戻る場面を見せることなくトイレでの難局を乗り越えた新一は、米花町に戻るため小五郎の運転するレンタカーに乗り東奥穂村を後にします。
もう空が夕焼けで赤く染まっている高速道路を通行中、新一は蘭が自分に聞きたかった事について訊ねますが、話はなぜか変な方に逸れていき……
結局蘭が新一に本当に聞きたかった事を聞けずにいると、車窓の向こうに見慣れた顔が二つ姿を見せます。警視庁捜査一課の高木刑事と佐藤刑事で、二人は神奈川県警に用事があったらしく、それを済ませて東京に戻る途中のようでした。
二人の乗った車はほどなく先を急いでいると言い残して走り去っていったのですが、するとその直後でした。レンタカーを運転する小五郎は前方に妙な光景を目撃します。
それは一台の車で、何とガードレールに車体の右側をこすりつけるようにしながら走行していたのでした。運転手は居眠りでもしているのでは……このままでは大事故になる恐れもあったことから、小五郎はその車に近づいていきクラクションを鳴らし、窓を開けて大きな声で運転手に呼びかけたのです。
ところが窓越しに見えた問題の車の運転手は口からはヨダレを垂らしまばたき一つせず固まっていました。明らかに様子がおかしく小五郎は新一の指示で前方に車を移動して徐々に速度を落とすことで問題の車を止めにかかります。
思惑どおり車を停車させることに成功した小五郎たちは、足早にレンタカーを降りて問題の車に近づいていきます。すると運転手はもう息もしておらず、目蓋には溢血点が…そして襟元を調べてみると首の周りにはくっきりと索状痕が残されており……。
運転手が車の走行中に密室である車の中で首を絞められて殺された……一体どうやって!?
それから新一と平次の二人はすぐに1キロ先の料金所を封鎖するよう佐藤刑事に頼み、ほどなく先ほど蘭たちの前から去っていった佐藤・高木の両刑事が事件現場に姿を見せたのでした。
空はもうすっかり暗闇に包まれている中、佐藤と高木の両刑事は小五郎たちから事情を聴き始めますが、結構スピードが出ていた走行中の車の運転手が他に誰も乗っていないにもかかわらず絞殺されたという異常な事実を知らされると驚きを隠せないようでした。
一方新一と平次は容疑者を絞り込むと言い残して車の列の中に消えていったらしいのですが、100台近くある車から手がかりを見つけるのは容易ではないと佐藤刑事でなくとも思わざるを得ませんでした。
ところが…間もなく戻ってきた二人が示したのは「3台」という車の数字。目蓋の溢血点や首の索状痕から絞殺されたのが明白で、携帯電話の電源が切れていた事から電話で被害者に指示を与えるのも不可能となれば、前もって殺害を計画し同じ時刻にインターチェンジから高速道路に入り走行中に車に近づいて何かをしたと考えるのが自然。
そして被害者の乗り込んだ奥穂インターのETCが故障し、かつ被害者の通行券がパーキングで食事でもしていたのか小五郎たちのものより1時間早いものであったことから、犯人も被害者と同時刻の通行券を持っている車に絞られる─それが3台だというのです。
その的確かつ流れるような推理に驚きを隠せない佐藤刑事でしたが、さっそく二人の推理によって絞り込まれた3台の車の運転手から事情聴取を始めます。
まず1人目は溝端理子という若い女性で、彼女は被害者の交際相手らしくその日も二人でドライブをしていたというのでした。別々の車に乗っていたのは二人とも運転が好きだからで、被害者が仮眠を取るためパーキングに突然入り、自分もそれについていき被害者が起きるまでレストランで時間を潰していたのだと証言します。
続く2人目の金髪に口ヒゲの男は名前を忠田篤男といい、昼を食べ損ねていて小腹が空いたためパーキングに立ち寄り食事をしていた、最後に3人目の小太りでメガネの男は名前を下鳥太志といい、運転中に急に腹の調子が悪くなったため、パーキングのトイレに行ってからしばらく休んでいた。そして二人は被害者とは面識もなく偶然であり自分には関係ない─そう主張するのでしたが……。
ところが忠田も下鳥も実は被害者とは面識があることが溝端理子の証言で明らかにされます。被害者は名前を古城郡平といい、東京西部エリアを根城にしている走り屋レッドコメッツの元リーダーだったらしいのですが、忠田はそのレッドコメッツと張り合っていブラックスターズのリーダーでした。一方下鳥は息子の下鳥章がレッドコメッツのメンバーだったのですが、つい最近事故死していたというのです。
しかも二人は被害者の車に付きまとい、パッシングをしたりクラクションを鳴らしていたことも分かり……
東奥穂村の事件を無事解決し、コナンに戻る場面を見られるのもかろうじて回避できた新一を待っていたのはまたしても事件でした。
帰りの高速道路を走行中、目の前にガードレールに車体をこすりつけて走る不審な車を発見し、停車させてみると車の中で運転手の男が首を絞められた状態で座っていたのです。
しかし被害者以外車の中には誰もおらず、一体どうやって犯人は被害者の首を絞めたのか、誰が考えても疑問でした。
新一と平次はただちに佐藤刑事と高木刑事に料金所の封鎖を依頼し、100台近くの車の中から論理的推理によって3台に絞り出します。被害者は小五郎たちより1時間も前に乗車券を受け取っており、それと同時刻の券を所持し、なおかつ事件の時刻に被害者の車のそばを走っていた車の中に犯人がいると考えるのが妥当だからでした。
そして3台の車の運転手はいずれも被害者と何らかの関係がある人物で、犯行時刻に被害者の車のそばを走っていたことも分かります。
それから新一と平次は被害者の車を再調査し、決定的な証拠を見つけ事件の解決はもう間近でした。ところがその時、新一をまたしてもコナンに戻る時に起きるあの発作が襲い…。
まず冒頭新一がトイレから出てきた後、平次の「一体どないなってん…」のセリフの直前に平次、蘭、小五郎とお医者さんのセリフが若干追加されています。
それからレンタカーで帰るシーンに切り替わってからは新一と蘭に挟まれた和葉が困っているシーンの和葉の目が原作では点ですが、アニメでは普通で、その直後の小五郎のセリフが原作では「ぶっ殺す」がアニメでは「一本背負いだ」に変更されています。
それ以降はほぼ原作に忠実で、全体的に見ても大きな変更点はまったくなく原作どおりといっていい作りになっています。
まず冒頭の佐藤&高木刑事が小五郎たちに事情聴取を始めた直後の小五郎のセリフが若干カットされ、続けて佐藤刑事の「噂の高校生探偵そろい踏みってわけね…」というセリフがカットされ、これは後の「警察に泣きついてくる」云々というセリフをカットしそこで代わりに使われています。
そして続けて新一と平次が容疑者の車を3台に絞り込んだ推理を披露しますが、ここについてはかなり分かり易く要約されていて、かなりのセリフがカットされていました。
その後容疑者3人の事情聴取が始まりますが、このあたりも細かいセリフ回しの変更や若干のカットがなされています。またその一方で被害者の古城郡平には32歳という年齢がつけられていました。
その後の解決編も変更やカットが見られますが、全体的に見て今回の作品は時間の都合上かセリフを短縮する方向にあります。
それから一番大きな変更点というか注意点はラスト。原作の残り3ページ分が、次のお話524-525「憎しみの青い火花」の冒頭に持ち越しになっています。原作では両作品はまったくつながりのない話なのですが、時間の都合だったんでしょうかね。
国道交通省による交通システムでエレクトロニック・トール・コレクション・システム(Electronic Toll Collection System)の略。有料道路を利用する際に料金所で停止することなくノンストップで通過できるシステムで、無線通信を利用して自動で料金を支払うことができるため、運転手の手間を省けるだけでなく高速道路の渋滞の緩和にも役立ちます。
東奥穂村の工藤新一の殺人に続いて発生した高速道路を舞台にした殺人事件。今回も新一と平次が大活躍でしたが、それにしても2度も新一がコナンに戻る姿を見られる危機に直面するという今までにない展開となりそのあたりのサスペンスはとても見応えがありましたね。
推理とトリックの方も人間心理と咄嗟の行動を上手く利用した見事なものでした。犯人にとっては現場に名探偵が二人も居合わせたことが不幸だったとしかいいようがないと思います。
しかし前回と今回と、平次は新一を守るために大変な目に遭いました。いろいろと正体がバレないように蘭たちをごまかしたり、服を貸したり気を遣ったりで、本当にご苦労様といいたいですね。親友でありライバルである新一のためとはいえ、ここまでしてくれる人はそういないと思います。本当に平次というのはいい奴です。