(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 志水絹子(26) 田淵学(50) 伴野ロベール(21) 駒塚宏(50) 矢吹敦(28) きょうこ |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 劇団マネージャー 劇団美術監督 劇団員(王子役) 劇団員(王役) 劇団員(大臣役) 駒塚の娘 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 藩恵子 稲葉実 高橋広樹 石井敏郎 目黒光祐 声の出演なし |
「復讐の時は来たれり」…「もうすぐ幕が上がる」…「死を呼ぶ仮面劇の始まりだ!」
その日小五郎と蘭、それにコナンの三人は仮面劇という芝居を見に劇場を訪れていました。マスク、つまり仮面劇とはシェイクスピアの前の時代にイングランドで流行していた芝居のこと。そして今回上演されているのはジョン・ベンソンの「The Triumph of Folly(愚かさの勝利)」という題名だと劇団マネージャーの志水絹子から説明を受けます。
芝居の最終リハーサルを見ていた小五郎は決闘シーンの素晴らしい迫力ある演技にいたく感心しますが、これは本物のレイピア(片手剣)を借りて練習したからだと劇団美術監督の田淵学は得意気に話すのでした。
そんな中舞台では王子と大臣が争い決闘するシーンが演じられ、格闘の末に黒い衣装の大臣が白い衣装の王子のレイピアを弾き飛ばし、命乞いをする王子に止めを刺しますが、大臣の方も雷鳴に撃たれてベランダから奈落へと転落、代わって自らの策略で邪魔者の王子と大臣が死んで喜ぶ王が祝杯をあげるシーンとなりますが、王の酒には大臣によって毒が盛られており、間もなく苦しみながら倒れて息を引き取ります。無言劇のためそれらをセリフなしで演じ切るるのでした。
劇が終了すると小五郎は何とも血生臭いストーリーに衝撃を受けますが、志水絹子によるとこれは実はいわくつきの劇だというのです。何でも17世紀の初演以来、関わった人間が必ず誰か死ぬと言われているらしく……。
ほどなく舞台上では劇を演じ終えた三人の劇団員が仮面を取り、小五郎たちの前に素顔を見せます。王子役の伴野ロベールは素顔も王子様といった感じの美男子で劇団の看板役者、王役の駒塚宏は小五郎が学生の頃に彼が出演した映画をよく観ていたほどの有名な役者、そして大臣役は矢吹敦という劇団員が務めているのですが、何でも彼らの練習中に不審な事故が相次いで発生したため、今回小五郎に調査を依頼したのです。大船どころか豪華客船に乗ったつもりでいてくれと大見得を切る小五郎でしたが…。
芝居を見終わった小五郎は蘭とコナンを連れて劇場のあちらこちらを調べて回りますが、小五郎が調べた限りでは特に怪しいところはありませんでした。ところが調査が終わるといつの間にかコナンがいなくなっており…。
一方そのコナンはというと倉庫で一人様子をうかがっていました。するとほどなくして王役の駒塚宏が現れレイピアを本物にすり替えて王子役の伴野ロベールを事故死に見せかけて殺害しようとしている事が判明します。どうやら「きょうこ」という名前の彼の娘を弄んで捨てたことへの復讐のようでした。
ところがここで予期せぬ出来事が、戸棚の陰に隠れていたコナンのすぐ横にあったボールがコナンの体に当たってボールが転がり、慌ててボールを押さえようとしたコナンは駒塚に見つかってしまったのです!!
コナンはごまかしてその場を去ろうとしますが、話を聞かたからには帰す訳にはいかないと駒塚に捕らえられ、後ろ手に縛られ口をテープで塞がれた状態で、石の棺に閉じ込められてしまいます。
一方駒塚から狙われている王子役の伴野ロベールはというと、何と彼は彼で奈落に感電する仕掛けを作り大臣役の矢吹敦を感電死させようとしていました。ところが美術監督の田淵学の本物のレイピアがどこかにいってしまったという声を聞き、倉庫で駒塚がすり替えたレイピアを発見し危うく難を逃れます。
ところがここでロベールは思いもよらぬ言葉を口にします。何と感電死させるより確実だと言って、その罠をそのまま使い役を矢吹と役を交換することで彼を事故死に見せかけて殺害しようと考えたのです!!!
ロベールから役の交代を持ちかけられた矢吹は、芝居が無言劇であることや客から拍手喝采される姿を思い浮べてその申し出を承諾。ところがその矢吹はというと、彼は彼で王役の駒塚宏の殺害を計画しファンからの贈り物と偽って毒入りのワインを彼に手渡そうとていたのです!!
ところが断酒中でアルコールの禁断症状に苦しむ駒塚はいったんはそのワインボトルを受け取ろうとしたものの、マネージャーの志水絹子の若い二人をリードしてやって欲しいという声に我に返り、矢吹の演技力のなさを痛烈に皮肉りつつワインの受け取りを拒否したのでした。
怒りを増長させた矢吹は、思いつく限りの駒塚を罵る言葉を吐きながら、倉庫に保管されている王役の駒塚が使うデキャンタに毒を入れるという強行策に打って出たのです…。
「復讐の時は来たれり」…「もうすぐ幕が上がる」…「死を呼ぶ仮面劇の始まりだ!」
劇に出演する3人の役者がそれぞれ演劇の最中に殺人を計画するという何とも異常な事態の中、石の棺の中に閉じ込められたコナンをよそに劇の本番がスタートし……。
17世紀の初演以来、関わった人間が必ず誰か死ぬと言われている曰く付きの仮面劇の練習中に不審な事故が相次いだことから、その調査も兼ねて劇に招待された小五郎。
小五郎が調査した限りでは不審な所はありませんでしたが、一緒についてきたコナンは倉庫を調べている最中、王役の駒塚宏がレイピアを本物とすり替える事で王子役の伴野ロベール殺害を計画している所を目撃してしまい、石の棺に閉じ込められてしまいます。
一方王子役の伴野ロベールも大臣役の矢吹敦の殺害を計画し、当初は奈落に感電死の仕掛けを作りますが、レイピアのすり替えに気づいた彼は逆にそれを利用して矢吹を殺害しようと考え、自分の役を矢吹と交代してもらうことにしたのでした。
そしてロベールから狙われている矢吹敦は王役の駒塚に演技力のことで馬鹿にされ、彼を殺害するために劇中で使われるデキャンタに毒を仕掛けたのです。
3人の役者がそれぞれに演劇の最中に殺人を企画するというとんでもない事態の中、幕は開き……劇は果たして無事にエンディングを迎えることができるのでしょうか。そして石の棺に閉じ込められたコナンの運命は!?
16世紀から17世紀にかけてのシェイクスピアの前の時代にイングランドで流行していた芝居のこと。
今回演じられていた劇の名前。ジョン・ベンソン作と作中では語られていましたが、調べてみたところ今回の劇を発見できませんでした。
ちなみに「平和の勝利(The Triumph of Peace)」という作品ならあり、またシェイクスピアと同時代、17世紀のイギリスの劇作家で詩人のベン・ジョンソンという人物が数多くの仮面劇を執筆しているそうですから、これらを参考にして作られた架空の劇なのかもしれません。
細く先端が鋭く尖った片手剣でフェンシングのように突き刺して相手を攻撃します。16~17世紀頃のヨーロッパで流行し、決闘の際の武器としても用いられたそうです。
今回はTVオリジナル作品で、何と3人がそれぞれトライアングル状に殺人を意図するというすさまじい展開でした。個人的にはかなり好評価です。
本当ならこのままいけば王子役が大臣に刺され、奈落の電流で大臣が感電死し、王役が毒杯を飲まされるという劇の展開そのままの所を、王子役がレイピアに気づき仮面劇で劇中顔が見えないことを利用して王子役と大臣役がすり替わることでその罠を逆手に取るという、もうひと捻り加えられている所がなかなか良かったです。
そしてコナンがそれらを事前に察知して、蝶ネクタイ型変声機で何とか事件を阻止しようと奮闘しつつも最後は3人にお灸を据えるというオチが今までになく新鮮でした。
残念なのはあまりにトリッキーすぎて一度観ただけでは話の筋が理解できなかったことです。まあ私の理解力が足りないせいではあるのですが、誰が見ても瞬時に理解できるような工夫があれば満点だったかなと思いますね(5点満点が結構いる中で、1点をつけた人も結構多かったのはそのせいではないかと)。
また駒塚に見つかった時の「こんにちは、さようなら」とか、事件解決後に3人にお灸を据えたコナンが「トイレに」と言い訳し今度は蘭からお灸を据えられるシーンも含め、今回はコナンのセリフ回しが妙に笑えました。それとラストの小五郎の仮面劇=盆踊りもかなりツボでしたし、何回見ても楽しめる練りに練ったいい脚本だったと思います。