(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 松本警視 千葉刑事 庄堂胡桃(39) 保谷泰輔(40) 楠本隆平(42) 伴場創吾(41) 実況アナウンサー デビルタイフーン アイアンブレイド 仮面ヤイバー |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 警視庁捜査一課警視、目暮の上司 捜査一課刑事、目暮の部下 庄堂家当主、依頼人 執事 「ガリ」君を名乗る男、茶髪で背中に傷 「ガリ」君を名乗る男、色黒で胸元に傷 競馬の実況アナウンサー 2枠の馬 8枠の馬 子供たちに大人気の特撮ヒーロー |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 高木渉 加藤精三 千葉一伸 小林優子 井上倫宏 楠見尚己 伊井篤史 太田真一郎 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし |
どこかの名家のお嬢様が、気まぐれに買った宝クジで1億円当たった……その月依頼のない小五郎からすれば神様は恵まれない人間の味方とはとても思えないような話の当事者が、何と毛利探偵事務所に─
その名家のお嬢様は名前を庄堂胡桃といい、依頼の内容は人探しでした。何でも子供の頃旅先で交通事故に遭った時に大怪我をしてまで自分をかばってくれた「思い出の少年」を探し出し、お礼を言うのと同時に宝クジで当たった1億円をその「思い出の少年」に進呈するというのです。
小学校2年の時に両親と一緒に伊豆に旅行に行った時の出来事らしいのですが、何しろ30年も前のことであり、しかも当のお嬢様はその時の事故で目を負傷し、その傷が元で今は全盲になっていることもあり捜査は難航が予想されるようにも思われました。
しかしたった一つ大きな手がかりが一つあるというのです。それは大きな傷─Tシャツが真一文字に裂け、血が滲み出るほどの傷を「思い出の少年」はその事故で負ったというのでした。
そして問題の「思い出の少年」─クラスのみんなから「ガリ君」と呼ばれていたというその少年であると主張する人物は、何とすでに2人も名乗り出ているというのでした。茶髪の男性は背中に、色黒の男性は胸元にそれぞれ大きな傷跡があり、どちらが本物かを小五郎に見極めて欲しいというのです。
ひと通り庄堂胡桃から事情を聴いた小五郎は、それから2人の「ガリ君」候補が滞在しているという庄堂胡桃の屋敷に蘭とコナンとともに向かいます。庄堂邸は彼女の母親は早くに他界し、父親も3年前に病気でこの世を去り、現在は胡桃と執事の保谷泰輔、それに2人のメイドが住んでいるだけでした。この4人の住人に「ガリ君」の候補2人、それに小五郎たち3人を合わせて計9人。これがその日屋敷に滞在している人間の数のはずだったのですが…。
屋敷に到着した小五郎は、さっそく夕食をしながら「ガリ君」の候補─楠本隆平と伴場創吾の2人と顔を合わせ、その後別室で一人ずつ話を聞きます。ところが庄堂胡桃は当時の状況をテレビのインタビューで事細かに話していたため、2人の答えはまったく同じで何の手がかりも得られず…。
お手上げ状態の小五郎でしたが、コナンは別の事が気になっていました。屋敷にいるはずの9人以外の何者かが屋敷の周りをうろついている、しかも1人や2人ではないというのです。そこで小五郎を引き連れて屋敷の外に出てみると…
一方その頃警視庁の刑事たちは、とある事件の犯人を追いかけていました。それは15年も前に発生した時効寸前の事件でしたが、目暮警部の上司である松本警視の顔に傷をつけた因縁の連続殺人犯だったのです。その時松本警視は一人である埠頭に犯人を追い詰めたものの顔に刀傷を受け負傷、しかしその後斬りつけて来た犯人の刀を奪い取り犯人にも一太刀浴びせたというのです。
そしてその時犯人が受けた傷も真一文字……何と松本警視が追い続けている連続殺人犯の体にも、真一文字の大きな刀傷があるというのです…!!!
30年前に伊豆の海で自分を交通事故から命がけで守ってくれた「思い出の少年」を探して欲しい…手がかりはその事故で負ったという脇から脇にかけての真一文字の傷跡…。
庄堂家の当主である胡桃からそのような依頼を受けた小五郎は、彼女が偶然買った1億円の当選宝くじをその少年に差し上げるとマスコミを通じて発表したことから名乗り出てきた2人の男のどちらが彼女の言う「思い出の少年」なのかを調べるために胡桃の屋敷に蘭とコナンを連れて出かけます。
ところが小五郎たちが屋敷でもてなされていた時、警視庁の刑事たちもある事件の容疑者を追いかけていました。その事件とは目暮警部の上司である松本警視の顔に以前刀傷を負わせたという15年前の連続殺人犯。そしてその犯人にも松本警視が刀を奪い取り反撃した時にできた真一文字の刀傷があるらしく…。
思い出の少年「ガリ君」と時効目前の連続殺人犯が一緒の屋敷に…!? 果たしてコナンはこの両方の事件を見事に解決できるのでしょうか?
まず冒頭の競馬中継のシーンでは、小五郎に依頼がなかったのが「今月」から「先月」に変わっています。それ以外はわずかにセリフのカットや変更がありますが、ほぼ原作に忠実です。
後半に入るとまず冒頭の小五郎たち三人が連続殺人犯が屋敷の中にいるかもしれないという話をしている際に、思い出の少年が連続殺人犯かもしれないという内容の話を蘭とコナンがしますが、そこがカットされていて、更に連続殺人犯がいつも口ずさんでいたのが「曲」となっている所がアニメでは「口笛」と変わっています。
それ以外は細かいセリフの省略や変更はあるものの、基本的に原作にほぼ忠実な作りとなっていました。
まず冒頭蘭と小五郎がコナンを横目に傷跡についての話をしますが、その部分はカットが多くコンパクトにまとめられています。推理にはほとんど影響はないと思いますが、今回の前半で唯一の登場シーンだった高木刑事の原作での一コマがカットされてしまっています。
それから解決編直前に夜食を食べるシーンがありますが、その直前の部分が丸々1ページ分カットされています。
以降もややカットが多めですが、原作に忠実な構成で解決編まで進んでいきます。これは今回原作3話分をアニメで1話半に収めようとしたために、かなりカットが多くなったのだと思います。
ともに競争馬の名前。競馬好きの小五郎が大穴狙いで買った方は2枠のデビルタイフーンでした。
今回の作品はこの後まだ続編があるのですが、それは置いておいて事件として1つのため事件ファイルも1つとしてまとめてあります。ちなみに今回は傷跡シリーズとでも題したらいいのでしょうか、4話分のシリーズ構成ですが、話自体は1話半と2話半に分かれていて事件ファイルにまとめる側としてはちょっと混乱しました。
ストーリーについては実に微笑ましく、そして殺人事件も起きずしかも犯罪すら犯していない人に対して犯人のように推理を披露していくという、かなり変わった展開となっていました。しかしこういうのもあってもいいと思います。
謎解きについてはこれも普段に比べたら難易度はかなり低くヒントも分かり易かったと思います。私もショウガが結構な好物のせいかすぐに「ガリ」の意味については気づきましたが、逆に「ガリガリ」と「ガリ勉」をかけていたという方がむしろ深く考えなかったので盲点でした。
そして連続殺人犯の方はこの話では解決せずに次に持ち越しとなりますが、一体どんな展開になるのか楽しみですね。