(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 千葉刑事 トメさん 渡辺友紀子(24) 西本誠(25) 青木翔太(27) 田中理沙子(22) 中村悠介(30) 坂本勇樹(38) |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 捜査一課刑事、目暮の部下 鑑識員 ヴォーカル ギター ベース キーボード ドラム、バンドのリーダー 音楽プロデューサー、トムスレコード所属 |
高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 高木渉 千葉一伸 中嶋聡彦 皆川純子 矢部雅史 大西健晴 中島沙樹 竹本英史 後藤哲夫 |
枝豆とソーセージの夕飯、最高!─その日の夜小五郎はロックバンドの演奏が響き渡る中、米花デパート9階の屋上ビアガーデンでビールを美味そうに飲みながら食事を楽しんでいました。コナンには何でも好きなものを食っていい、どーんと大船に乗った気でいろと上機嫌で蘭の小言にも服を買いたいというから半日つぶしてデパートでの買い物に付き合ってやったんだからビール一杯ぐらいでがたがた言うなと、その勢いは止まることを知りません。挙句の果ては酔った勢いで沖野ヨーコのムーンレディを演奏しろとバンドにリクエストする始末…。結局S&Gの名曲が演奏され小五郎のリクエストは却下されますが、そんな小五郎の醜態を見ていられなくなったコナンは小学生の絵の展示が壁一面に掲示されている8階のトイレに向かいます。
コナンがトイレから戻ってほどなく、演奏を終えたバンドメンバーの一人が小五郎に近づいてきます。ドラムを担当していた中村悠介で、先ほど小五郎が酔った勢いで沖野ヨーコの曲をリクエストしてきたのでもしやと思ったらしいのですが、彼はギターに眠りの小五郎のサインを求めてきます。すると小五郎は更に上機嫌になり、ビールを2杯頼みコナンにはつまみを買いに行かせたのでした。
一方蘭はコナンがつまみを買いに行っている間に前から探していたというCDを中村が持っていることを知り、彼と一緒に地下1階の楽屋に向かっている所でした。楽屋の前の通路には楽器がいくつも並べられていていかにもバンドのメンバーが滞在しているといった雰囲気で、中村が警備室で鍵を受け取り楽屋に入ると、並べられた楽器を熱心に眺めていたのです。
すると中から突然大きな叫び声とともにドシンという大きな物音が…。驚いた蘭が楽屋の中に入ってみると、部屋には腰を抜かした中村がいて、部屋の奥には毛布からはみ出るように人間の手が見えたのです。
毛布をめくったら友紀子が…死んでいるみたい…中村のその言葉に驚いた蘭は、中村に促されてただちに小五郎を呼びに行きます。
蘭に呼ばれて地下1階の楽屋に降りてきた小五郎が楽屋に入ると、毛布にくるまれた友紀子がうつ伏せの状態で倒れていました。友紀子は首を絞められていてすでに息はなく、首すじには手の跡がくっきりと残されていたのです。一方小五郎についてきたコナンは、被害者の肩のあたりに緑色の汚れが付着していることに気づき…。
ほどなく警察が呼ばれて目暮警部による捜査が開始されます。するとまず千葉刑事の聞き込みでその日警備員から楽屋の鍵を借りたのはバンドのメンバーだけだということが判明したのでした。一方楽屋の外で待っていた蘭は、最初に楽屋に来た時と何か違うことに違和感を感じ…。
それからバンドメンバーたちが集められ、屋上のビアガーデンで演奏が終了した8時半から遺体発見時刻の9時15分頃までの間の行動と被害者を最後に見たのはいつかについて目暮に尋ねられます。
まずドラムの中村はステージが終わるとデパートの人たちと楽器を片付けていて、20分ほどしてから小五郎たちのテーブルに行き、更に15分ほどしてから蘭と一緒に遺体の発見された地下1階の楽屋に向かった、そして被害者を最後に見たのはステージを降りて行く時だったと証言します。
続いてキーボードの田中理沙子はギターの西本誠とベースの青木翔太と一緒に3人でエレベーターで楽屋に降り、5分ぐらい経った8時40分にベースの青木と一緒に帰ったということ、最後に被害者を見たのはエレベーターの前で、先に行っててと言い残してどこかに行ってしまったと証言。そしてデパートを出てからはベースの青木が用事があるということだったので出口を出てすぐに別れたというのでした。
一方ギターの西本はキーボードの理沙子とベースの青木が帰ってから5分くらい経過した8時45分に警備員室に鍵を返しに向かったらしいのですが、一方ベースの青木は何と駐車場の車の中でしばらく被害者を待っていたというのです。
更にベースの青木はそれだけでなく8時55分に一人で鍵を借りていたことも判明したのです。待っていた被害者がなかなか来ないので楽屋に呼びに行ったものの、部屋の中には誰もおらず、少し待っても来なかったので鍵を返して帰った。ちょうどデパートの人が楽器を運んできた時だった、ベースの青木はそう証言したのでした。
いったいなぜベースの青木は被害者を待っていたのか…そう聞かれると、青木は自分と被害者の二人が新しいバンドに加入しメジャーデビューしないかと誘われていたことを告白。それはトムスレコードからの誘いで、その日はプロデューサーも来ていてステージを見守っていたというのです。
そこで今度はトムスレコードのプロデューサーの坂本勇樹が事情を聞かれます。すると坂本は8階の踊り場で被害者と会う約束をしていたが、今日の感想を話してすぐに別れたと主張。そして踊り場で会ったのは自分と一緒にいる所を他のメンバーに見られたくないと被害者が言ったからだと証言したのです。
被害者は鍵を持っていなかったため、開けたのは必然的に犯人…そしてその可能性があるのは、鍵を返す前のギターの西本か一度引き返してきたベースの青木か、あるいは昼間にずっと楽屋の鍵を預かっていて合鍵を作るチャンスがあったキーボードの理沙子…ギターの西本には被害者に密かに交際を迫られ断られた事実があり、キーボードの理沙子にはベースの青木と被害者が会っている事に嫉妬したという動機があるのですが……いったいバンドメンバーの中で被害者を殺害したのは誰なのでしょうか!?
服を買うため小五郎とコナンと三人で米花デパートを訪れた蘭は、買い物が終わると屋上のビアガーデンでおつまみを食べながら存分にビールを楽しんでいた小五郎に話しかけてきたバンドメンバーの中村悠介と知り合い、自分がずっと探していたCDを借りるために彼のバンドの楽屋のある地下1階へ降りていきます。
ところが警備室で鍵を受け取り楽屋の中にCDを探しに入った中村の悲鳴で中に入ると、部屋の中には女性と思われる手が毛布の端から見えているのを目撃。蘭に呼ばれて駆けつけた小五郎は、バンドのヴォーカルの渡辺友紀子が部屋の中でうつ伏せの状態で首を絞められて亡くなっているのを発見し警察に連絡したのです。
その日バンドの楽屋の鍵を警備室から借りたのはバンドメンバーだけだった事が分かり、メンバーたちは目暮から事情を詳しく聴かれます。一方蘭は自分が最初に来た時と楽屋前の様子が違っていることに妙な違和感を感じているらしいのですが、果たしてそれは一体!?
今回の事件が起きたデパート。コナンでは東都デパートや杯戸デパートなども登場していますが、米花デパートも何回か登場しています。242「元太少年の災難」、91「強盗犯人入院事件」などが有名です。
沖野ヨーコの曲の一つで、彼女のライブのラストは決まってこの曲なのだそうです。76「コナンvs怪盗キッド」で登場しました。
小五郎に沖野ヨーコのムーンレディをリクエストされたが結局演奏されたのは「S&Gの名曲」でした。私は音楽にはあまり詳しくないのですが、おそらく1960年に活躍したサイモン&ガーファンクルのことではないかと思われます。
今回はオーソドックスな本格ミステリーでしたね。30分作品としては上出来で標準作といった感じで結構楽しめたと思います。それに何といってもやっぱりトメさん。昨年あたりから一気に出番が増えましたが、久しぶりに声も聞けてコナンとのやり取りもあってファンとしては嬉しかったです。
まず冒頭の枝豆とソーセージの夕飯最高というのには激しく同意します(笑) しかし酔っ払いの描写が実に上手いというか、見ていて思わずビールが飲みたくなりますし、枝豆とソーセージが食べたくなりますね。事件前にこの小五郎の酔っ払いのやり取りを見ただけでも今回は大満足という所でした。
謎解きについては今回は犯人当てについてはほとんどの方が予想できたと思います。犯行現場が別にあって遺体がドラムケースに運ばれてきたという点や、最初に見たのが手だけでマネキンか何かだということもミステリ慣れしている方なら分かったのではないでしょうか。ここまでだとあまりにも簡単すぎて駄作なのですが、それに加えて犯行現場を暗示するクレヨンの伏線と、マネキンの手の隠し場所としてギターを用意していた所が実に良かったです。この2点だけでも謎解きミステリーとしては十分楽しめました。
それにマネキンの手を無理やりギターの中から出そうとして弦が傷んでしまったという部分がタイトルの「不協和音を奏でる手」で暗示されている訳ですが、このタイトルのつけ方が今回は実に見事だったと思います。
ただ今回の被害者はちょっと同情できない気がしましたね。まあバンドを離れるのは個人の自由ですし仕方ないですが、やはり言い方というかきちんとした話し合いをすればこんな事にはならなかったはずです。相手を思いやる気持ちを少しでも持てば「踏み台」などという発言は決して出てきませんから。犯罪自体は肯定しませんし犯人にも同情しませんが、被害者にも同情できない、そんな事件でした。