名探偵コナン553「ザ・取調室」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
File553 ザ・取調室
英題
The Interrogation Room
放映日
2009/10/31
原題
TVオリジナル
ジャンル
本格
事件現場
米花4丁目 桜庭武彦宅
管轄
米花警察署(笠松刑事)
登場人物
江戸川コナン
毛利蘭
毛利小五郎
目暮警部
高木刑事
妃英理
富樫文孝(32)
袴田恒夫(34)
桜庭武彦(55)
笠松則男(52)
吉沢かね(75)
刑事
ニュースキャスター
本編の主人公、正体は工藤新一
本編のヒロイン、新一の幼なじみ
蘭の父親で私立探偵
警視庁捜査一課警部
巡査部長、目暮の部下
蘭の母親、腕利きの弁護士
元受刑者、小五郎が刑事時代に逮捕
元受刑者
保護司、事件の被害者で米花町4丁目在住
米花警察署捜査一課刑事
目撃者、事件現場の隣に在住
笠松刑事の部下
テレビのニュースキャスター
高山みなみ
山崎和佳奈
小山力也
茶風林
高木渉
声の出演なし
竹村拓
磯部弘
声の出演なし
水内清光
山口奈々
柳沢栄治
豊崎真千子
あらすじ
「ふん甘いな、人間そう簡単には変われないってことさ…」

 時間は午前11時50分、場所は米花警察署取調室─小五郎は机越しに富樫文孝という男と向き合っていました。何とか言えという小五郎に対し沈黙を守り続ける富樫。その取り調べの様子を外から心配そうに見守る目暮警部と高木刑事、それに蘭コナン…富樫はその日の午後4時に殺人容疑で検察庁に送検されることになっていました。

 遡ってその前日の午後のこと、富樫は武蔵野刑務所を仮出所する運びとなり、小五郎は蘭とコナンを連れてそれを出迎えたのでした。富樫は小五郎が刑事時代に逮捕した殺人犯だったこともあり特別な想いがあったのです。無事罪を償った富樫に小五郎は一席設けてやると彼を誘いますが、富樫はどこか慌てた様子でそれを断ると一緒に仮出所した袴田恒夫という男を追いかけていったのでした。

 そして事件は起こったのです。夜10時のこと、米花町4丁目に住む桜庭武彦という男性が自宅で殺害され、富樫は米花公園の前に返り血を浴びた上着を着て立っている所を警察に見つかり桜庭の殺害容疑で逮捕されたのでした。被害者は仮出所した袴田を担当する保護司だったのです。そして小五郎はそのニュースを次の日の朝早く歯を磨いている最中にテレビのニュースで知ることとなり、10時5分急いで米花警察署へ向かいました。

 その頃富樫は今回の事件を担当する米花警察署捜査一課の笠松則男刑事によって取り調べ中でしたが、完全黙秘を貫いていました。

 一方の小五郎は署内にいた目暮警部に次のように訴えたのです。自分が刑事時代に担当した富樫は、当時些細ないざこざから相手を死なせてしまい、弁護士は正当防衛を主張するものの法廷での態度が反抗的で前科もあったことから懲役13年の実刑判決となった。しかし元々は母親想いで根は優しい奴で、服役後はすっかり改心し模範囚になっている。それがまた殺人、しかも仮出所の夜に…とても信じられない……それが小五郎の率直な想いだったのです。

 しかしそんな小五郎に笠松刑事は甘い、人間はそんなに簡単に変われないと冷たく言い放ち、目暮警部に予定どおり送検手続きに入る事を告げます。ところが小五郎の真摯な想いを聞いた目暮は、何とかその思いを汲んで午後4時に送検することに決めそれまでは休憩するように笠松刑事に命じたのです。残された時間は限られていましたが、取調室に入った小五郎はさっそく自ら富樫の取り調べを開始します。

 しかし…時刻が11時50分を過ぎても富樫は黙っていて一言もしゃべりませんでした。その様子を外から見守っていた蘭も進展しない取り調べに心配を隠せないでいましたが、コナンはそんな蘭を尻目に勝手に警察の資料をチェックしはじめます。しかしそれに気づいた蘭に止められ、仕方なくコナンはトイレに行き高木刑事に携帯で電話をかけ変声機で小五郎の声色を使って高木刑事に現場に行くように指示を出します。そして蘭を事務所に返るように仕向け、高木には小五郎が伝え忘れたことがあるからコナンと一緒に行けとダマし、まんまと事件現場に向かう事に成功したのでした。

 取調室で相変わらず小五郎の取り調べが続く中、午後1時5分事件現場に到着したコナンは早速捜査を始めます。まず気がついたのは血の跡が2つあることでした。そしてタンスの扉の鏡が割れて破片が床に散乱していて、そのタンスのすぐ下に凶器が転がっていたといいます。凶器の指紋は拭き取られていて、更にそれ以外の犯人が触ったと思われる所はすべて指紋が出ないだけでなく、被害者の生活指紋まですべて丁寧に拭き取られていました。

 ところが富樫が警察に捕まったのは夜の10時半で、犯行が目撃されたのが10時20分…被害者宅から米花公園までは走っても7、8分はかかり犯行後拭き取ったとすれば2、3分で作業を終えなくてはいけないのですが、それは作業量から見てとても無理な話でした。となれば犯行現場には富樫以外にもう一人いた可能性が高く……

 まだ犯行から1日も経っておらず、目撃者がいる可能性も高いと考えたコナンは、高木刑事と周辺の聞き込みを開始し、コンビニの防犯カメラにとんでもない記録が残っていることを知って……

今回の見どころ
小五郎が刑事時代に逮捕した男が仮出所直後にまた殺人を…

 小五郎が刑事時代に逮捕した富樫文孝という男の仮釈放を認めた翌日の朝、小五郎は朝のテレビニュースで富樫が米花4丁目に住む保護司の桜庭武彦という男性を自宅で殺害して逮捕されたことを知り、米花警察署へ駆けつけます。

 元々は母親想いで根は優しい奴で、服役後はすっかり改心し模範囚になっている、仮出所直後に再び殺人を犯すとは考えられない…そう考えた小五郎は目暮警部に懇願し、送検のタイムリミット午後4時までの間、自ら富樫を取り調べることになったのでした。

 ところが富樫は完全黙秘を貫き、心配になったコナンは巧みに高木刑事を操って事件現場で捜査を開始。その結果共犯の存在が浮かび上がったのです。果たして午後4時までに小五郎の事情聴取は功を奏するのでしょうか。

豆知識

 保護司とは犯罪や非行に走った人の更生を支援する国家公務員のこと。今回の事件の被害者桜庭はこの職業に就いていました。

RUNSUN

 コナンが捜査中に立ち寄ったコンビニその1。

Eco Mart

 コナンが捜査中に立ち寄ったコンビニその2。

NEXTコナンズヒント
手紙
コント
蘭「次回は城崎温泉!」
目暮「じゃあワシも温泉に」
コナン「警部はお留守番」
目暮「何ぃーっ!」
OP
MAGIC」(愛内里菜)
ED
」(BREAKERZ)
監督
於地紘仁
脚本
宮下隼一
絵コンテ
影山楙倫
演出
黒田晃一郎
作画監督
山本道隆、長谷川真史
ビデオ
-
DVD
PART18-5
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★

 今回は小五郎の声優交代が決まってから小五郎が初めて登場する回ということで、これについてはいろいろ思うこともありますが、とりあえずはその事は一切抜きで純粋に作品自体を見てみた感想ですが、正直見終わって虚脱感というか虚しさしか感じない内容でした。連行される時に暢気に小五郎と富樫が話をしていますが、殺人で服役して仮出所中にまた殺人を犯したとなればいくら被害者がひどい奴だとしてももう死刑ですよ。社会的・客観的に見たらどうしようもないクズ以外の何者でもないです。

 それに小五郎が富樫の無実を信じて取り調べいているのに結局殺人を犯していたってオチはあまりにも小五郎が可哀そうな気がします。正しかったのは人間はそんなに簡単に変われないと言った笠松刑事ということになりますよね。小五郎を通して視聴者が笠松という刑事にバカにされている気がして何だそれという感じです(苦笑) 現実社会ではそういう事もあるでしょうけど、物語として見た時にそんな作品読んだり見たりして楽しいと感じる人間なんているのでしょうかね。意外性を狙うあまり人の気持ちを置き去りにするような物語は、そんなものはエンターテイメントじゃないと思います。

 また論理的推理の点でもおかしい点がいくつかありました。代表的なのはコナンと高木刑事が指紋が丁寧に拭きとられていた事と目撃者の老婆の証言と富樫が米花公園前で逮捕された時刻から富樫に犯行後に指紋を丁寧に拭き取る時間がない、だから共犯がいてそいつが指紋を拭き取った。そう推理しているのですが、よくよく考えてみれば血だまりが2つある訳ですから、単独犯で一度殴り倒して息の根を止めたと思い指紋を拭いていたら被害者が息を吹き返し更に止めを刺した(こちらを老婆が目撃した)とも考えられなくはないので、あの時点で共犯しかあり得ないと考えるのは行き過ぎな気がします。結局結論としては富樫が指紋を拭いていますしね。

 それから視力には自信があると言っている目撃者の老婆が窓の向こうにいる犯人と窓の向こうの奥の方にあるタンスの鏡に映った犯人の姿を見て両者を混同するなんてことが遠近感の観点からいっても実際あり得るか実に疑問ですし、そもそも犯人がタンスの鏡に映った老婆を見て窓と勘違いするというのはいくら暗いといってもあり得ないでしょう。真っ暗なら鏡にも当然何も映らないですし、何か映るぐらいの明るさなら窓とタンスの鏡を勘違いするなんて余程のマヌケじゃないとあり得ないんじゃないでしょうか。都合のいい時だけ暗かったからといわれても困ります。

 まあそれは置いておいても、そもそも窓の向こうに隣の家の窓が見える位置にあるのに、カーテンを閉めたりもせずに堂々と殺人を犯すなと言いたいです。明らかに衝動的ではなく計画的な犯行ですから、普通犯行を犯す前に誰にも見られていないかどうか窓の外を一度は確認すると思うんですけどね。

 そして小五郎の声の交代についてですが、この是非についてはここで触れるのは控えさせて頂きますが、正直新しい声はカッコよすぎて、小五郎のドジでマヌケな探偵には合っていないというのが第一印象でした。一言で言うと「バカになり切れてない」という事です。

 小五郎にはハードボイルドで大人なカッコいい一面もありますが、ドジでマヌケで酒が好きでバカやってどこか憎めない一面もあり、そのギャップに魅力があるから愛されている訳でそこはまだまだ先代には遠く及ばないと思います。というよりも神谷小五郎があまりに神すぎたので、同じものを追いかけるのは多分無理でしょう。不慮の事故で亡くなり声優が交代した白鳥警部のように若干キャラクター性を変えていく以外にこの違和感を解消する方法はないと思いますが、「バカになり切れない」小五郎は私にとっては何の魅力も感じないキャラクターなので、これからは他のキャラクターと同レベルで応援していくことになるのかなと今では思っています。ただその考えを改めさせるぐらい魅力的な小五郎になるように演じてもらえれば、そのうちこの考えが変わるかもしれませんが、今の時点ではそれは無理ですね。

 監督交代があってからアニメはすごく雰囲気が良くなって作品を昔のように何度も見返すぐらい楽しくなっていた時に起きた突然の交代劇だっただけに、非常にショックが大きく失望しかけましたが、コナンには他にもいい所がいっぱいあると前向きに考えて作品を楽しむようにしていきたいと今は考えています。

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