(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 海老原日出夫 野田正男(43) 島崎望(28) 小池達太郎(45) |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 理髪店「Bar ber えびはら」店主、事件の被害者 時計店 店主、ダーツ愛好会の仲間 リネンサービス会社勤務、ダーツ愛好会の仲間 薬剤師、ダーツ愛好会の仲間 |
高山みなみ 声の出演なし 山崎和佳奈 小山力也 茶風林 高木渉 岩居由希子 高木渉 大谷育江 花田光 後藤哲夫 三宅健太 菅家勇 |
その日小五郎は急なパーティーに呼ばれることにり、よそ行きのスーツとネクタイの準備を蘭に任せて理髪店に向かっていました。
ところがその日に限ってどの店も満員…それでも陽も暮れかけてきた頃に「OPEN」の看板を下ろそうとしている理髪店の前を偶然通りかかり、もう店じまいだという店主の言葉も聞かず半ば強引に押しかけて席に座ります。店には一人先客がいましたが、よく眠っているということで先にカットしてもらえる事になりようやくホッとした小五郎だったのですが……。
座席を倒し熱いタオルを顔にかけられた状態で少しの間待つこととなった小五郎は、これから出席するパーティーの料理に思いを馳せていましたが、しばらくすると何やら大きな音が聴こえ始めます。最近オープンしたスイミングスクールの送迎バスの音だと思って最初は我慢していましたが、徐々に音は大きくなり…
あまりの音のうるささにイライラしかけた時、突然何かの割れる音がして飛び起きた小五郎が後ろを振り返ってみると、店主の男性が仰向けに倒れていました。しかも胸にはダーツの矢が刺さり、男性は既に亡くなっていたのです。
それから小五郎は開いていた窓から店の外の様子をチェックします。店の前あたりには近所の主婦がスイミングスクールの送迎バスを降りてきた子供たちと楽しそうにおしゃべりをしていて、更になかなか帰ってこない小五郎を心配して探し回っていたコナンも姿を見せますが、怪しい人物は見ていませんでした。一方反対側の裏口もコナンがチェックしますが、こちらには隣の空き地で少年探偵団の3人が飛行機を手に楽しそうに話をしていて、やはり誰も外に出てこなかったと証言したのです。
その後警察が呼ばれて目暮警部による捜査が開始されると小五郎は耳で聞いていた一部始終を証言、続けて小五郎の隣にいた先客で時計店店主の野田正男も証言しますが、彼はぐっすり眠っていたので小五郎が来たこともまったく気づかなかったと証言します。
そして空いている店を探し回っていた小五郎は犯行の時刻を正確に把握していませんでしたが、110番通報があった時刻は午後6時36分と分かり、その5分ほど前の6時30分ぐらいに小五郎が来店し、更にその10分ほど前の6時20分に野田は来店したというのでした。その間に店を出入りした者は誰もおらず、小五郎はスイミングスクールの送迎バスの出す騒音に腹を据えかね一言言ってやろうと窓を開けた所を何者かに狙われたと推理。店の前の路地から2階にある理髪店の窓まではおよそ4mほどで、店に出入りしなくても犯行を行うことは充分可能だったのです。
一方倒れていた被害者にも妙な点が。まず一つ目はカツラで、被害者の海老原は髪もフサフサしておりカツラを被る理由があるとはとても思えませんでした。もう一点は着ていた服で、「DARTS HEARTS」というロゴが入った風変わりな青いトレーナーを着ていたのですが、これは近所のダーツバーの常連で結成したダーツ愛好会のものだというのです。ダーツバーの常連がダーツで殺害された─それを知った目暮たちは犯人もダーツ愛好会の常連かもしれないと考え、彼らを呼び出し話を聞くことにしたのです。
ダーツ愛好会の常連として呼び出されたのはリネンサービス会社に勤務する島崎望という男と近所で薬局を経営している薬剤師の小池達太郎の二人でした。そして二人は昨夜ダーツバーで被害者と口論になったらしいのですが、それは被害者が島崎が会社の金を横領していると言い出したため、島崎と掴み合いのケンカとなり、小池が止めに入ったというのです。
もっとも小池も小池で薬の横流しをして店の赤字の穴埋めをしていると被害者に言われて青い顔をしていたといい、2人はともに被害者を殺害する充分な動機を持っていたのです。さらに小五郎の横に座っていた野田もダーツバーの常連で時計店の運転資金を借金していたといい…。
急なパーティーに呼ばれることになり空いている理髪店を探し回っていた小五郎は、閉店間際の「Bar ber えびはら」という店に飛び込み、席を倒され顔に熱いタオルをかけられた状態で待っている途中、何かが割れる音を合図に店主の海老原が胸にダーツの矢を刺されて亡くなっているのを発見します。
店の前にはスイミングスクールの送迎バスと小五郎を探していたコナンがいて、裏口では隣の空き地で少年探偵団が話をしており外部から何者かが侵入した形跡はなく、開け放たれた窓に立っていた被害者を店の前の路地から狙い撃ちした可能性が濃厚でした。
そこで目暮警部たち捜査陣は被害者も参加していたというダーツ愛好会の関係者を集めて事情を聞くことにしたのですが、3人の容疑者はすべてに被害者とトラブルを抱えていたことが分かり…いったい誰がどうやって被害者を殺害したのでしょうか。
今回小五郎が飛び入りで入った理髪店。事件はこの店で起きました。
Bar ber えびはらの向かいにある印刷会社。
今回は30分ものの短編の本格謎解きミステリーでしたが、じつによく考えられたかなり完成度の高い作品だったのではないでしょうか。
まずカツラとマスクというと当然すり替わりを考えますから、そうくるとピンときましたね。小五郎が熱いタオルをかけられた時も乱暴で明らかに慣れていないようでしたし。
ただこれがもし計画的な犯行だとするとおバカな犯人だとツッコミを入れたくなるのですが、小五郎が無理矢理店に押し入ったために起きたことだと知って納得しました。裏口の空き地にいた探偵団といい、一本だけ窓のそばに落ちていたダーツの矢といい、動かされていた時計の謎といい、このあたりも上手い構成で本格謎解きミステリーとしてよくまとめられていたと思います。もっともそれ以前にもっと人気のない時刻を狙えばいいのに…とはどうしても思ってしまいすが。それと決定的な証拠がトレーナーを後ろ前逆に着ていたという点だけというのはちょっと弱い気もして、ここだけがちょっと残念でしたね。
そして小五郎の声についてはだいぶ慣れてきた方もいるのかなとは思いますが、私はもう別のキャラクターだと思うようにすることにしました。今回探偵団たちに事件現場から出て行けというシーンがありますが、何かあの声で怒鳴られると迫力ありすぎて怖いというか、ちょっと苦手ですね。普段話している声はとっても渋くていいんですけど、叫び声とおバカな役回りの部分については慣れるのに相当時間がかかりそうです。
それからもう一点特筆すべきは今回冒頭で蘭が新一にネクタイをつけさせるシーンがありましたが、ここは新蘭のファンにはたまりませんでしたね。アニメオリジナルはどちらかというと謎解き重視の作品が多いのですが、原作のイメージを壊さない程度でこういうのにもどんどんと挑戦していってもらえるとファンも喜ぶのではないでしょうか。