名探偵コナン570「立証確率ゼロの犯罪」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
File570 立証確率ゼロの犯罪
英題
The Crime That Has Zero Possibility of Being Proven
放映日
2010/3/27
原題
TVオリジナル
ジャンル
本格
事件現場
高畑響子の自宅 リビング
管轄
東京警視庁捜査一課(目暮警部)
登場人物
江戸川コナン
毛利蘭
毛利小五郎
目暮警部
高木刑事
千葉刑事
高畑響子(35)
副島栞
副島逸郎(27)
西谷直也(37)
本編の主人公、正体は工藤新一
本編のヒロイン、新一の幼なじみ
蘭の父親で私立探偵
警視庁捜査一課警部
巡査部長、目暮の部下
捜査一課刑事、目暮の部下
ショッピングモールで出会った女性
高畑響子の妹、半年前に病死
被害者、栞の夫で千葉刑事の大学時代の友人
空き巣常習犯
高山みなみ
山崎和佳奈
小山力也
茶風林
高木渉
千葉一伸
嶋村カオル
榎本温子
里見圭一郎
津久井教生
あらすじ
「ねえ…未必の故意って知ってる?」

 買い物のためショッピングモールの中を歩いていた小五郎と蘭、そしてコナンの三人は、カフェテラスを通りかかった時テーブルに座っている一人の美しい女性に目が行きます。なぜなら自分たちがここに来た時も座っているのを目にし、もう2時間以上経過していたからでした。

 気になって少し見ているとそこへテーブルの上に置かれた携帯電話がブルブルと音を立て、女性は電話に出ると立ち上がり、「何ですって?」と驚いた途端気を失って倒れてしまったのです。小五郎に介抱されて気がついたその女性は、電話が警察からのもので自宅で人が死んでいると知らせてきたと言い…。

 すぐに高畑響子の自宅に向かい、捜査を指揮する目暮警部と合流した小五郎たち。事件の被害者となったのは小五郎たちがショッピングモールで出会った高畑響子の妹・詩織の夫である副島逸郎で、意外なことに千葉刑事の大学の友人でした。リビングにあるシャンデリアの下敷きになってうつ伏せに倒れており、そばには散弾銃が転がっていました。

 死亡推定時刻は1時間ほど前で、現場の様子から捜査陣は高畑響子の留守中を狙って家に上がりこみ、酒の飲んで酔っ払って保管庫から猟銃を持ち出し、弾丸を込めてもてあそんでいるうちに暴発して落下してきたシャンデリアが頭を直撃したという不幸な事故と考えていたのでした。

 そしてそれを裏付けるかのように、高畑響子は副島逸郎がいつかこんな事をしでかすのではとずっと心配していたと言うのでした。何でも副島は新しい仕事を始めては失敗し、借金ばかり大きくして彼女の妹・栞に苦労ばかりかけているにも関わらず、自分は酒ばかり飲んで周りに迷惑をかけていたというのです。
 半年前に栞が亡くなってからは特にひどくなり、響子の紹介したフィットネスクラブのプールや射撃場にも酔って出入りしてクラブは強制退会、銃のライセンスも剥奪され響子の所有する銃を触りたがっていたというのですが…。

 ところが実は千葉刑事は副島から相談を受けていたらしく、酒はやめようとしていて銃にも二度と触らないと誓っていたというのでした。一方コナンも鍵がどこにも見当たらず、財布や携帯電話なども持っていないことなどから事故という説に疑問を持ち…。

 結局目暮はこれを事故と断定してあとは所轄に任せることにし、もっとよく調べるべきだという千葉刑事を一喝しますが、コナンはトラブルはプールや射撃場だけでなく他にもあったかもしれないと千葉刑事にそのあたりを詳しく調べてみるように説得し、一緒に捜査を始めたのです。

 すると1ヶ月前には飲酒運転…2ヶ月前には真冬の深夜に酔いつぶれて道端で寝ていた…など似たような事件や事故を合わせれば9件…副島の周辺には同様のトラブルが次々と見つかることとなり……

 それを知ったコナンは、ある行為が犯罪の被害を生むかもしれないと予測しながら、それでも構わないと考え、あえてその行為を行うことの心情─未必の故意を持って高畑響子が副島を亡きものにしようとしていたのではないかと推理したのです。

 酒グゼの悪い副島がそれによって命を落とすかもしれないと予測しつつあえて車を運転できる環境を作り、射撃やスイミングを勧め、留守にして酔わせ銃を持ち出させ…死ぬかもしれないし死なないかもしれない、その確率は100ではないがゼロでもない…。そこに賭けたのだとしたら…

今回の見どころ
死ぬ確率は100%ではないがゼロでもない…

 ショッピングモールで買い物をしていたコナンたちは、カフェテラスで電話をしている最中に突然倒れた高畑響子の自宅で彼女の妹の夫が落下してきたシャンデリアで頭を打ち亡くなっている事を知り現場に駆けつけます。

 現場には散弾銃が残され、目暮警部は酒グセの悪かった副島が響子の留守中に家に上がり込み、勝手に酒を飲み始め酔った勢いで猟銃を持ち出しもてあそんでいた最中に起きた不幸な事故だと断定しますが、被害者の大学時代からの友人だった千葉刑事は被害者が酒をやめたいと言っていたことや銃には二度と触らないと誓っていた事から、同じく事故説に疑問を抱くコナンと一緒に今一度その身辺を洗い直します。

 すると被害者の周辺ではここ半年の間に9件ものトラブルが発生していたことが分かり、コナンは響子が酒グゼの悪い副島がそれによって命を落とすかもしれないと予測しつつ命を落としかねないような環境を作っていたのではと推理するのでしたが…

映画「名探偵コナン 天空の難破船(ロストシップ)公開記念 スペシャルプレゼント

 番組内で表示されている電話番号に電話すると抽選で少年サンデーコミックスペシャル「名探偵コナンvs怪盗キッド」を20名様にプレゼントという企画をやっていました。

豆知識
警視庁米花警察米花西交番

 捜査中の千葉刑事とコナンが訪れました。

未必の故意

 ある行為が犯罪の被害を生むかもしれないと予測しながら、それでも構わないと考え、あえてその行為を行うことの心情。

 つまりナイフで人を刺すという行為をした人間が仮に明確に殺す意図がなかったとしても、ケガをするかもしれないし死ぬかもしれないが「死んでもいいや」と思って刺した場合には未必の故意として故意が認定されるというものです。

 刑法上の犯罪の成立要件についてはいろいろな諸説ありますが、[1]構成要件該当性 [2]違法性 [3]有責性が必要だと言われています。

 [2]違法性とは違法性が阻却される事由のないこと、例えば正当防衛状況にあったとか緊急避難行為にあたるとかそういう状況にあると違法性が阻却されて有罪にはなりません。[3]有責性というのは責任能力を有していることを意味し、未成年の場合や心神喪失状態や心神耗弱状態だった場合には無罪になったり罪が軽減されたりします。

 一方[1]構成要件該当性というのは実行行為→結果→実行行為と結果の因果関係→故意の条件すべてを満たしている事を意味します。結果が発生しなければ未遂となり未遂罪が規定されている犯罪は処罰されますが、ないものは無罪となります。

 そして故意とは罪を犯す意思という事で、これがないとそもそも犯罪が成立しません。例えばピストルを発射する行為は殺人罪の実行行為としては認められる行為でしょうが、人を狙って殺す意思がなく人気のない場所で練習しているつもりだけだったとしたらそれは殺人の故意がなく、仮にたまたま陰に隠れた所に人がいて偶然当たったとしても重過失致死ということになります。

 ただあまりに厳密に故意を規定してしまうとほとんどの場合犯罪の要件に該当しなくなるため、刑法上では「未必の故意」というものを定義してそれに該当すれば故意があったと認定して犯罪を成立させる場合があるのです。

 ただいろいろと条件や例外などありますし、学説もいろいろと対立しているのが刑法の世界のため、詳しく勉強したい方は法律の参考書などを読んで勉強するしかありません。

NEXTコナンズヒント
勾玉(放映分は直後に「奇抜な屋敷の大冒険」の再放映のため)
(本来のNEXTヒント)
コント
「立証確率ゼロの犯罪」放映分
元太「かに玉食いてーな」
コナン「食い物かよ」
元太「うな玉かな」

「奇抜な屋敷の大冒険(解決編)」放映分
「」
「」
「」
OP
As the Dew」(GARNET CROW)
ED
Hello Mr. my yesterday」(Hundred Percent Free)
監督
於地紘仁
脚本
宮下隼一
絵コンテ
大宙征基
演出
長岡義孝
作画監督
広中千恵美、平林孝
ビデオ
-
DVD
PART19-2
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★

 今回の作品はまたTVオリジナルの30分短編ものでしたが、結局何を伝えたいのか分からない、本格ミステリーとも呼べない、正直評価・コメントしたくないレベルの作品です。

 未必の故意云々ともっともらしい事を言っていますが、仮に未必の故意があったとしても、そもそもいくら酒グセが悪いからといって酒や料理を自分の家に残して銃の保管庫の鍵を疎かにして被害者を自宅に呼び出しただけでそれが殺人罪の実行行為とは言えるんでしょうかね。銃に暴発するように何か仕掛けでもしていたのなら別ですが、こんなのは完全に自己責任ですよ。酒にしたって無理矢理飲ませたのではなく、置いてあるのを被害者が勝手に飲んだだけです。暴発した銃弾が当たってシャンデリアが落下したのだって完全な偶然ですしね。
 酒に酔って運転するのだって事故責任、酒に酔って真冬の夜に外で寝ているのも完全に自己責任です。同義的責任はあるかもしれませんが、こんなので殺人罪などと言われたらたまらないです。

 それから被害者が立ち直ろうとしていたといいますが、結局誘惑に負けたのは被害者自身です。しかも9回やって9回とも誘惑に負けて、これで立ち直ろうとしていたと言えるんでしょうか。

 また妹も被害者を恨んでいたのではなく一緒に立ち直ろうとしていたといいますが、結果的には被害者のだらしなさのせいで苦しめられ病気になって死んだのは事実で、姉である高畑響子がそれを恨みに思っていても全然不思議ではないと思います。
 これがまだ妹が生きている段階だったら、妹の大切にしている被害者を死なせてしまって悔やむのも分かるのですが、何かそのあたり何もかもスッと入っていかない消化不良のストーリーでした。

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