名探偵コナン575-576「黒きドレスのアリバイ」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
File575-576 黒きドレスのアリバイ
英題
The Alibi of the Black Dress
放映日
2010/5/29・6/5(前編・後編)
原題
第66巻
File11「ゴスロリ」
第67巻
File1「呪いのファッション!?」
File2「不確かでもろい物」
ジャンル
本格
事件現場
新宿の喫茶店「Star Moon Cafe」~原宿 代々木公園内の公衆トイレ
管轄
東京警視庁捜査一課(目暮警部)
登場人物
江戸川コナン
毛利蘭
毛利小五郎
目暮警部
高木刑事
灰原哀
鈴木園子
久瀬未紘(26)
庄堂唯佳(26)
店員
女子
外国人
外国人
ゴスロリ店員
門脇
本編の主人公、正体は工藤新一
本編のヒロイン、新一の幼なじみ
蘭の父親で私立探偵
警視庁捜査一課警部
巡査部長、目暮の部下
黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保
鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友
事件の被害者、杯戸町在住
OL、被害者の友人
喫茶店「Star Moon Cafe」の店員
代々木公園のトイレにいた女子
アイスクリーム強盗の男
アイスクリーム強盗の男
「Gothic & Lolita Sayaka」の店員
久瀬未紘の交際相手
高山みなみ
山崎和佳奈
小山力也
茶風林
高木渉
声の出演なし
松井菜桜子
白鳥由里
甲斐田裕子
百々麻子
加藤英美里
前島貴志
小田敏充
小松里歌
声の出演なし
あらすじ
「何なんだ? あの魔女みてーな不気味なカッコは…」

 DVDレコーダーで録り貯ためたドラマの整理に新装開店のパチンコ屋の玉の具合のチェックに競馬のGIレース…忙しい一日になんで小娘の買い物に付き合わなければいけないのか…

 その日小五郎は蘭と園子に付き合わされて新宿の喫茶店にいました。どうやら二人の目的は原宿で服を買うことらしく、高い服ではなく安くてカワイイ服しか買わないというのですが、小五郎が買う前に自分に見せるようにと言うと、二人の様子がどうもおかしかったのです。一体二人が買おうとしている服とは…!?

 そんなやり取りをしていると店に一人の若い女が現われます。黒っぽい服で小五郎いわく「魔女みたいな不気味な格好」…ところがそれを見た蘭と園子の反応は……

 その女性の格好は「ゴスロリ」…即ち「ゴシック・ロリータ」といって吸血鬼ドラキュラなどのゴシック小説や、それを元にした怪奇映画に出てきそうな黒っぽい服で、なおかつ女の子っぽくもあるファッションのことでした。「灰原哀が似合いそうな」、「かわいらしい」、「お人形さんが着ているみたいな」服だというのですが、それを聞いた小五郎はあんな「仮装行列みたいな格好」は絶対させないと一刀両断するのでした。

 ところがその声が聞こえたのか、先ほど見せに入ってきたゴスロリ風ファッションの女は小五郎をジロっと睨みつけるようにすると、そのまま外に出ていってしまいまったのです。

 もっともその女性は待ち合わせをしている友人がまだ来ていないため、店の外にあるトイレに行っただけらしく、それを店員から聞かされた小五郎はひと安心。それからしばらく飲み物を飲みつつくつろぐといよいよ街に繰り出して買い物を始めるという話になったのです。

 その一方先ほどのゴスロリの女はトイレに向かったまままだ戻ってきていないようで、そうこうしているうちに女と待ち合わせをしているというメガネをかけたOL風の女が店に入ってきます。メガネの女は連れがトイレから帰らないと聞くと席で待つことにしますが、席に着いて早々に持っていたメニューで水の入ったグラスを倒してしまい……

 そこまで見届け店を出た小五郎たちでしたが、街に繰り出してみて更にビックリ……原宿の町は誰も彼も先ほどのゴスロリの女のようないかれた格好の若者ばかりでした。それを見た小五郎は思わず眉をひそめますが、気がつくと蘭と園子は買い物をするとコナンに言い残していつの間にかどこかに消えてしまっており…

 二人が戻ってくると小五郎は荷物持ちをさせられてキレ気味…ところがそこを通りかかった外国人の男の持っていたアイスクリームで蘭と園子の背中はベトベトにされてしまい、急遽二人は近くの公園で買ったばかりの服に着替えることになったのです。

 代々木公園のトイレに向かった蘭と園子でしたが、何とトイレは二人と目的を同じくした若い女性たちであふれ返っていたのでした。ところがその女性たち、どうも様子がおかしいのです。

 「ちょっとアンタ! いい加減にしなさいよ!!」─そういってドアを叩く若い女性に蘭が理由をたずねると、トイレの中に入っていると思われる女性が30分以上も篭りっぱなしだというのです。

 もしかして心臓発作で中で倒れているのでは…心配になった蘭たちがトイレのドアをよじ登って中の様子を見てみると……

今回の見どころ
新宿の喫茶店で出会ったゴスロリの女性が原宿近くの公園のトイレで…

 蘭と園子の買い物に付き合わされる形で新宿の喫茶店にやってきた小五郎は、退廃的でダークな色彩にフリルのついた少女的趣味のファッションが組み合わさったいわゆる「ゴスロリ」の衣装に身を包んだ女性が店に入ってくるのを目の当たりにして目を丸くします。

 ほどなくしてゴスロリの女性は店の外にあるというトイレに向かい、その10分ほど後に店に入ってきたメガネのOL風の女性と入れ替わるようにして小五郎たちは店を出て原宿に向かったのでした。

 原宿についた蘭と園子はさっそく買い物を開始しお目当ての服を無事購入しますが、街を歩いていた外国人の男にアイスクリームを付けられてしまい、急遽購入した服に着替えるため代々木公園のトイレに向かいます。

 すると公園のトイレは買ったばかりの服にさっそく着替えようとする女性で混雑状態。ところがそのトイレの一つからなかなか人が出てこないとドアを叩く女性の姿が。そこでそれを見た園子が、トイレの扉の上によじ登って中を除いてみると…

原作との相違点
前編

 まず前半では小五郎が蘭たちにどんな服を買うのか聞いた時に原作では「フトモモ丸見えのチャイナドレス」だけですが、アニメではこれに「おへそ丸出しピチピチTシャツ」が追加されています。

 それから新宿の喫茶店にいた蘭と園子の飲む物飲んだしお店もバッチリチェックしたし街に繰り出すとするかという部分のセリフが、原作ではメガネのOL女が来る前なのですが、アニメではOL女が来てグラスを割ってしまった後店を出る寸前の所に位置が変わっています。

 そしてコナンがゴスロリについて小五郎に説明している際と、アイスクリーム強盗について蘭に説明している際に、二人がコナンの話を聞いた後に心の中で同じような感想を抱くシーンが追加されているのですが、これは見てのお楽しみということで。

 最後に被害者が入っていたトイレの水を溜めるタンクの上に原作では何もありませんが、アニメではトイレットペーパーが2つ乗っていました(笑) こういうのを探すのは間違い探しみたいで楽しいですね。

 後半については細かいセリフの追加や変更はあったもののほぼ原作どおりで、ラストにコナンによる事件を整理するカットが追加されています。

後編

 後編に関してはほぼ原作どおりで大きな変更や追加もありませんでしたが、ただ一つエンディング後の最後の最後にだけ原作にない追加のカットがあります。これはまあ見てのお楽しみということにしたいと思いますが、何かさりげなく挿入されていて妙に笑えました(笑)

豆知識
ゴシック・ロリータ(ゴスロリ)

 今回の被害者のファッション「ゴシック」ファッション。ただし元々は「ゴシック」と「ロリータ」は別々のファッションとして確立されたものなのだそうです。

 まず「ゴシック」ファッションとは、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」に代表されるような中世ヨーロッパの城や教会などの廃墟を舞台に繰り広げられる、ホラー色の強い怪奇小説や冒険小説(ゴシック小説)を名前の由来とする、死や悪魔を思い起こさせるようなダークな色合いと退廃的なデザインの服、それに白塗りメイクなどを施したファッションのことをいいます。

 「ロリータ」ファッションとは、純白やピンクの色合いに、ヨーロッパの貴族やお姫様のドレスを彷彿とさせるフリルやレースをあしらった少女趣味的なデザインのことをいいます。

 「ゴスロリ」はこの2つの要素を取り入れ、「ロリータ」のフリルやレースをあしらった少女趣味的なデザインに、「ゴシック」に見られるダークな色合いと退廃的なデザインを組み合わせたものをいいます。

 ちなみに蘭と園子が買った服は、コナンが想像していたとおり、「ゴスロリ」ではなく単なる「ロリータ」ファッションの服…のはずです。

TON-NO

 アニメのみ、蘭と園子が新宿の書店で購入し喫茶店でチェックしていたファッション誌。ノンノ(NON-NO)のもじりと思われます。

ウェルカムバーガー

 アニメのみ、小五郎たちが原宿に繰り出した際にチラッと見えました。マクドナルドのMを逆さにしたWのマークで最近ではすっかりお馴染みのハンバーガーショップです。

アイスクリーム強盗

 アイスクリームを服につけられたらそこを拭こうとして荷物から手を離してしまう。そして早口の外国語でまくし立てて気を引いている隙にもう一人の仲間が観光客の荷物を持ってトンズラするというやり口の犯罪のことで、海外で日本人観光客によく使われる手法とのこと。海外に行く際のみならず普段町を歩いている際にも自分の荷物には充分注意しましょう。

 蘭と園子が服を着替えようと向かった公園。「々木公園」としか出ていませんが地理的関係からも間違いなくこの公園だと思います。東京の都心渋谷区内にある公園で、すぐ近くには明治神宮や国立競技場などもあります。都内で4番目の広さを誇り、東京オリンピックの選手村はここに作られました。園内にはサイクリングコースや噴水もあり、都内の人々の憩いの場所となっています。

吉川線

 首を絞められれば誰でも苦しくて首にかかっている縄や紐を手で外そうとする。

 そして首を絞められる苦しみに比べれば首にできる引っかき傷など大したことはないため、大抵の場合は力を入れてもがくので本人の爪跡が首に残ってしまう場合が多いそうです。

 そのためその引っかき傷は誰かに首を絞められた証拠であるという事に初めて着目したのが、大正時代に警視庁で鑑識課長だった吉川澄一(1885~1949)という人物だったため、警察用語でその傷のことを「吉川線」と呼ぶようになったのだとか。

 自分で首を吊った自殺体なのか、殺人による絞殺体なのかを見極めるのは非常に難しいのですが、この傷がある場合はほぼ間違いなく他殺と断定できるそうです。

Star Moon Cafe

 アニメのみ、小五郎たちが冒頭で滞在していた新宿の喫茶店の名前。原作では単に「Cafe」となっています。

Gothic & Lolita Sayaka

 被害者が事件の前日に服を買った店の名前。

杯戸パークタワー

 アニメのみ、被害者の住むマンションの名前で免許証の記載によると杯戸町3-1-6という住所です。ここの705号室に住んでいました。

NEXTコナンズヒント
File575
双子

File576
レモンティーの缶(放映分は直後に「6月の花嫁殺人事件」の再放映のため)
(本来のNEXTヒント)
コント
File575
蘭&園子「次回、ワタシたちのファッションに注目してね!」
元太「するする!」

File576
「黒きドレスのアリバイ(後編)」放映分
高木「レモンとかけまして知恵と説きます」
コナン「そのココロは?」
高木「どちらも絞るといいでしょう」

「6月の花嫁殺人事件」放映分
「」
OP
As the Dew」(GARNET CROW)
ED
Hello Mr. my yesterday」(Hundred Percent Free)
監督
於地紘仁
構成
影山楙倫
絵コンテ
影山楙倫
演出
File575 戸澤稔
File576 山崎茂
作画監督
File575 広中千恵美
File576 かわむらあきお
ビデオ
-
DVD
PART19-3
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★★★★

 今回の作品は「ゴシック・ロリータ」、いわゆる「ゴスロリ」の衣装に身をまとった女性が殺害され、容疑者と思われる女性に鉄壁のアリバイがあり、それを崩していくというアリバイ崩しの典型的ともいえる作品でした。結論からいうとまずまずよく出来ていたといってもいいと思います。

 ただ突き詰めていくとどう考えてもアリバイが鉄壁な分、喫茶店に現われたゴスロリが被害者ではなくて容疑者だったということにはどうしてもなり、そうなると自然と被害者が喫茶店に来たと唯一の証拠になるグラスもすり替えたものだということも想像がついてしまいます。

 あとは服をどうしたのかという所だけなのですが、ここに関してはちょっと盲点というか双子ファッションというのは知らなかったので、被害者に2着も買わせるように自然と仕向けることができたということは想像できませんでした。このあたりはこういったファッションの特性というものを上手く利用していてなかなか面白かったです。

 それにしても今回はガチガチの本格ミステリーでしたね。若者のファッションを扱っているのでもう少しライトなミステリーかと思っていましたが、充分に謎解きを堪能できました。皆さんの評価がいつもの原作に比べて低いのがなぜなのかとも思いますが、個人的にはこういう作品は好きですね。

 あとはアニメにだけ追加された事項として、コナンのゴスロリの薀蓄を聞いた小五郎がコナンがいつもどんなテレビ番組を見ているのか不思議に思う部分がありますが、更にその後アイスクリーム強盗の薀蓄を聞いた蘭も小五郎とまったく同じように不思議がる部分がかなりツボでした。こういったTVオリジナルの演出の追加はファンにとって原作と見比べられますし、楽しみが拡がって嬉しい限りです。

 そして園子のラストの友情は不確かでもろいからいいのだというセリフにはちょっと感動しましたね。確かに絶対壊れない訳ではないから大切にしようと思うはずですし、その自分の気持ちに相手が応えてくれたと分かるからこそより温かい気持ちになれるのだと思います。

 昨今壊れることを恐れて人間関係自体を結ぼうとせず引きこもりがちになる若者が多い世の中ですが、はじめから怖れていては確かに傷つけられることもないかもしれませんが、その代わり喜びを得ることもない、逃げてばかりでは何もはじまらないということをこの作品は訴えたいのかなと感じました。

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