(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 白鳥警部 千葉刑事 トメさん 女性鑑識員 比良坂零輝(28) 八川弘司(27) 歌倉晶子(22) 可児豊(24) 朴之木和雄(28) 和泉真帆(22) 三船龍一(27) 澤南一郎 雅原煌 警官 ゴメラ 仮面ヤイバー |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 警視庁捜査一課警部 捜査一課刑事、目暮の部下 鑑識員 鑑識員 「黒魔術の女」で有名なオカルト漫画家 日売テレビAD、会員番号00011 煌のファン、グラビアアイドルの卵、会員番号00053 煌のファンクラブ会長、フィギュアクリエイター 煌のファン、医者、会員番号00008 煌のファン、会員番号00120 コスプレショップの専属カメラマン 半月前に殺害された比良坂の担当編集者 事故死したアイドル女優 比良坂の部屋を警備していた警官 大怪獣 子供達に大人気の特撮ヒーロー |
高山みなみ 山崎和佳奈 小山力也 茶風林 高木渉 声の出演なし 千葉一伸 中嶋聡彦 半場友恵 真殿光昭 鈴木琢磨 沢口千恵 山崎たくみ 相沢正輝 千葉紗子 池田知聡 白鳥哲 折笠富美子 幸田昌明 声の出演なし 声の出演なし |
だからあそこは左だって言ったのに…満月の夜のとある日のこと、小五郎と蘭、それにコナンの三人はレンタカーで霧深い山道に迷い込み正しい道を探すのに苦労していました。
しかし小五郎の様子を見ているとこのままでは埒が明かない感じ…ところがそんな中ふと蘭が窓の外を見ると明かりのついた屋敷が建っているのが見えたのです。これ幸いと三人は助けを求めにその屋敷へと向かったのですが…
ところが屋敷に到着しエントランスのドアをノックすると中から現れたのはどこかの怪しげな宗教団体を彷彿とさせるような全身をマントで覆った不気味な一団…さすがに小五郎も蘭も驚き思わず後ずさりするような怪しげな空気でしたが、何とその中に小五郎たちが以前一緒に仕事をした日売テレビのAD・八川弘司の姿があり…。
その屋敷はオカルト漫画家の比良坂零輝(ひらさかれいき)のもので、彼は「黒魔術の女」の代表作で知られ蘭のクラスメートの女子がよく読んでいるほど名の知れた人物でした。その他にも八川を合わせると計7名の男女が屋敷に集まっていたのですが、彼らがこの日屋敷に集まった目的はというと…
何とそれは心霊や霊界と交信を行い死んだ人の霊を呼び出すという降霊会を開くこと。そして呼び出される人物というのが、彼らのアイドルだという雅原煌(みやはらきら)という女性の霊だというのです!
雅原煌は比良坂の代表作「黒魔術の女」の映画で主演を務めるはずでしたが、1年前に事故死…結局映画は制作中止となり、あの事故さえなければ今頃トップアイドルになっていたはずだと出席者の一人で煌のファンクラブ会長である可児豊(かにゆたか)は慨嘆します。
可児のほかにも八川、それにグラビアアイドルの卵だという歌倉晶子(うたくらしょうこ)、医師の朴之木和雄(ほおのぎかずお)、どこか気の弱そうな若い女性の和泉真帆(いずみまほ)と、コスプレショップの専属カメラマンだという三船龍一(みふねりゅういち)を除く4人はいずれもファンクラブの会員証を持つ筋金入りの煌のファン。
そのような人物を集めて降霊会を開くことになったのは最近ファンクラブの会員の間で妙な噂が広がっているからだというのですが、その噂というのが…
何と雅原煌から他のアイドルに乗り換えたファンがケガをしたり病気になったりして、ネットでは煌の呪いだと騒ぎになっているというのでした。
煌は魔女になって甦った─「黒魔術の女」の主人公と同じように事故で一度死んだものの魔女の力を手に入れて甦り、自分を事故に見せかけて殺した人物に復讐しようとしているのではないかというのです。
現に雅原煌は車を運転中に湖に転落して死んだと考えられているものの遺体は上がっておらず、更に半月ほど前には比良坂の担当編集者だという澤南一郎が何者かに殺害されるという事件まで発生。澤南は死ぬ間際に自らの血で「キラ」と書き残したというのです。
まさか本当に煌が漫画のように甦って事件を起こしているのではないか…そのことを降霊会を開いて煌に直接聞いてみようと彼らは考えているようなのです…。
それを聞いたコナンは即座にアホらしいと思いますが、その思いとは裏腹に瞑想の間ではじまった降霊会に小五郎・蘭とともになぜか参加することとなってしまいます。
闇に惑いし魂よ…我が呼びかけに答えたまえ!
エゴーイゴーアザラーグ…イゴーエゴーザベラゴン……
暗闇に凍てつきし声を我に聞かせたまえ!
エゴーイゴーゲルドドス…イゴーエゴーガラディーラ…
雅原煌よ、我が呼びかけに答えたまえ!
瞑想の間にこだまする比良坂たち参加者の叫び声が本当に雅原煌に届いたのか、しばらくすると部屋の中の食器や家具がガタガタ揺れはじめ、誰かが呻くような声が聞こえてきます。そしてローソクの火が吹き飛んだかと思うと皿が床に落ちて割れ…更に煌のものと思われる声がテーブルの周囲に飾られた何枚もの彼女のポスター越しに聞こえてきたのです。
苦しい…悔しい…悔しい…苦しい…許さない…許さない…許さない…許さない…
この中に私を殺した者がいる…絶対に…絶対に許さない…
今宵私は甦る…この手で恨み、晴らすために…
それから最後にローソクの炎がすべて吹き飛び室内は真っ暗に…そこで降霊会は終了となりますが、蘭は怯えるもののコナンは本当に霊の仕業などとは思っておらず…
すぐに不可解な事象はコナンと小五郎の手により種明かしがなされ、そのすべてが比良坂と朴之木が仕組んだ余興だったことが判明します。ところが煌の声として流れた録音だけは二人が予定していたものとは違い、どうやら何者かがすり替えたことが判明し…
いったい誰が何の目的で録音をすり替えたのか…そして「この中に私を殺した者がいる」という部分が嫌でも出席者たちの心理を動揺させ…
その後小五郎たちは八川、三船龍一、和泉真帆らと食堂でビールを飲みながら雅原煌のことや半月前に殺害されたという比良坂の担当編集者の澤南について更に詳しく話を聞き、それから部屋に戻って眠りについていました。
ところがそこへ何者かが入口のドアをノックする音が…蘭とコナンがそれに気づきドアを開けるとドアの前に立っていたのは和泉真帆で、彼女の話によると歌倉晶子が部屋にいないというのでした。
小五郎たちが食堂にいた際に八川が電話をかけた時に具合が悪いと言っていたため、彼女は歌倉晶子の部屋を覗いてみたらしいのですが、その後もずっと戻ってこず携帯の電源も切られたままだというのです。
ところが彼女がそんな話をしはじめた時、携帯に奇妙なメールが届きます。送り主は他ならぬ歌倉晶子で「我、ここに復活す キラ」という文面でした。そしてそのメールは八川にも届いたらしくすぐに小五郎たちの部屋に駆けつけたのです。
その奇妙なメールが気になったコナンは小五郎を起こして八川らとともに歌倉晶子を探すことにし、昨晩降霊会の開かれた瞑想の間に向かったのですが…。
山奥で道に迷った小五郎たちはひょんな事からオカルト漫画家・比良坂零輝の屋敷を訪れることになります。屋敷では1年ほど前に車で湖に転落し事故死したというグラビアアイドル雅原煌に関係の深い人々が集まっていて、最近彼女の呪いと思われる不幸がファンの間で多発し、更に半月ほど前には比良坂の担当編集者が殺害されるという殺人事件も発生していることから煌に直接話を聞こうと降霊会を開こうとしている所でした。
降霊会自体は単なる余興でしたが、そこで流されるはずだった雅原煌の声の録音が何者かによってすり替えられ、「この中に私を殺した者がいる」と出席者たちを告発するとともに「今宵私は甦る…この手で恨み、晴らすために…」とまるで比良坂の代表作「黒魔術の女」の主人公のように雅原煌が魔女となって死の世界から甦り復讐を計画しているかのような内容となっており…。
そしてその日の深夜、ついに事件が発生…しかも二つ起きた殺人事件の被害者はともに密室状態の部屋の中で発見され…
今回小五郎たちのことを知っていたこの人物ですが、まだ最近のことなので覚えている方も多いかもしれませんが2010年秋のミステリーツアーである594-595「広島宮島七不思議ツアー」に登場しています。
オカルト漫画家の比良坂零輝の代表作にしてオカルト漫画の最高傑作といわれる作品。主人公の名前は偶然にも雅原煌と同じ煌といい魔女となって死の世界から甦った主人公が復讐するというストーリーなのだとか。
ちなみに雅原煌は比良坂の目に留まり、この作品の主演を務めることになっていました。
秋葉原にあるコスプレショップの名前。コスプレの衣装や小道具の販売やレンタルをやっている店で店内にコスプレをして写真を撮るコーナーがあり、三船龍一はこの店の専属カメラマンなのだそうです。
そして雅原煌はもともとコスプレ系のネットアイドルで、店のホームページやコスプレ系のサイトに載った写真が話題となりグラビアアイドルとしてデビュー、その後比良坂の目に留まり映画「黒魔術の女」の主演に抜擢されることになったのだとか。
降霊会が終わった後に小五郎たちが食堂で飲んでいたビール。409-410「同時進行舞台と誘拐」、369「ツイてる男のサスペンス」でも登場しました。
今回はTVオリジナルでは初の3話完結編でしたね。内容は不可能犯罪・密室殺人+オカルト怪奇趣味という不可能犯罪の巨匠で自分も大好きなジョン・ディクスン・カーを思わせる本格ミステリーの王道を行くような作品で個人的には大変楽しませて頂きました。
トリックは2つの密室ともにポスターが鍵を握り、それぞれ違った方法で密室を作り上げる訳ですが、紙の特性を上手く使ったもので感心しました。ポスターが比良坂の部屋に破り捨てられて残されたためこれがトリックの鍵を握ることは想像できましたが、こういう使い方だったとは盲点でしたね。
そして瞑想の間に関してはこのポスター以外に降霊会で用いた仕掛けまで巧みに使っており、降霊会の部分も伏線になっていて無駄にしてない所が素晴らしいです。犯人が瞑想の間をあえて密室にした理由というのも非常に説得力がありそこまでしっかりプロットが練られていることに感服しました。
何よりもこの怪しげな雰囲気がとても良かったですし、「エゴーイゴーアザラーグ…イゴーエゴーザベラゴン」というのが聞いていてクセになってしまいそうでした(笑) それ以外にもトメさんと水平線上の陰謀でも登場した女性鑑識員を登場させたり、ゴメラやヤイバーなどもチラッと登場させてくれたりミーハー蘭が久しぶりに見られたりと、そういう細かい部分も評価したいです。
ただ犯人当てについては正直コナンの最初期のTVオリジナル作品にこれとかなり似たものがあったので、第二の密室のラストで犯人の見当はついてしまっていました。まあそれでもハウダニットが今回の作品の一番の見せ場なので点数には影響なしです。ラストがかなり悲劇的で哀しい結末なのが辛いですが、それを補って余りある本格ミステリとしては非常に素晴らしい作品だと思います。