(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 灰原哀 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 妃英理 栗山緑 九条玲子(33) 小林澄子先生 植松竜司郎(59) 岩松俊夫(35) 原幸恵(66) 塚野享(46) 石垣忠 裁判長 裁判員 裁判員 裁判員 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 蘭の母親、腕利きの弁護士 妃弁護士の秘書 検察庁のエリート検事 帝丹小学校1年B組担任 帝丹小学校 校長 被告 被害者宅に通う家政婦 不動産会社専務、被害者の義弟 不動産会社社長、事件の被害者 裁判長 裁判員 裁判員 裁判員 |
高山みなみ 山崎和佳奈 小山力也 林原めぐみ 岩居由希子 高木渉 大谷育江 高島雅羅 百々麻子 松本梨香 加藤優子 清川元夢 梅津秀行 鈴木れい子 小川隆市 廣田行生 立川三貴 菅谷勇 柳沢栄治 久保田恵 |
せっかくの機会ですから、もし裁判員に選ばれたらお受けするつもりです─コナンたち少年探偵団が通う帝丹小学校1年B組担任の小林澄子先生のもとに裁判員候補者名簿への記載の通知が届き、小林は帝丹小学校校長の植松竜司郎と相談の結果もし選ばれればそれを受けることに決めます。
そしてその情報をどこから聞きつけたのか少年探偵団たちは校長室から出てくる小林を待ち構えていて、どんな事件の裁判なのか教えて欲しくてたまらない様子でいました。しかし裁判員には守秘義務があることから小林は逃げるように探偵団たちのもとを去りますが、果たして小林に本当に裁判員が務まるのか…灰原哀でなくても心配するところでした。
その頃東京拘置所では、蘭の母親の妃英理弁護士が今回の事件の被告人・岩松俊夫と面会している最中でした。いよいよ始まる裁判に向けて無罪で争う決心に変わりはないかを確認する妃でしたが…。
すると岩松は自分は本当にやっていないと主張…それならなぜ自供などしたのかという妃からの質問に対しては、警察でもやっていないと言ったものの逮捕された時に被害者の血が服についていたことや犯行現場に残っていた毛髪や足跡など証拠は揃っていると追及されつい供述書にサインしてしまったというのでした。
それから岩松は自分はただ盗みに入っただけで、その時アイツはもう死んでいやがったと主張しますが、妃は「アイツ」という岩松の言葉を見逃さず被害者と面識があったのかと岩松に尋ねます。すると岩松はそれを否定し、妃の自分は貴方の味方だから不利なことでも包み隠さず正直に話して欲しいという呼びかけにも、ただ自分はやっていないと主張するばかりで…
そしていよいよ第一回目の公判が東京地方裁判所でスタートします。妃と対峙することとなる検察側は、検察のマドンナと呼ばれるあの九条玲子検事が登場。そして渦中の小林先生はというと…無事裁判員に選ばれ、授業は自習にして応援に駆けつけた植松校長と社会見学のついでに激励に来たというコナンたち少年探偵団の励ましも受けて法廷へと向かいます。
他にも法廷には学校が試験休み中のため応援に来たという蘭と小五郎も姿を見せていて、妃弁護士と九条検事の対決を小林先生が裁くという何とも興味深い図式に好奇心を刺激されたコナンも二人について傍聴席から裁判を見学することになったのですが…。
開廷後被告人の岩松が前に出て、それから検察官による起訴状の朗読がはじまります。内容は次のようなものでした。
被告人岩松は盗みを働く目的で不動産会社社長・石垣忠宅の書斎の窓を破って侵入、室内を物色中に帰宅した石垣氏に発見され争いになり被害者を殺害(ただ犯行に使われた凶器は行方不明)。現場付近にて血痕の付着した衣服を着用していた被告人を発見。取調べの結果犯行を自供したもので、罪名および罰条は殺人罪(刑法199条)
九条検事の朗読が終わると裁判長が被告人岩松に罪状を認めるか尋ねますが、すると岩松は自分はやっていない、無実だとはっきり返答。弁護人の妃も殺人に関しては無罪を主張すると宣言し、裁判は続いて証拠調べへと進んでいったのです。
遺体の写真や被害者の殺害状況などを裁判員が確認した後、今度は証人調べに入り、まず第一発見者で被害者宅に5年ほど通っているという家政婦、原幸恵が証人席に立ちます。彼女の証言によると事件のあった日もいつものように2階の部屋を掃除していた所、下で何か物音がしたような気がしたものの気のせいと思い、掃除が済んでから1階に降りたといいます。すると書斎の窓が開いていて石垣忠が頭から血を流して死んでいた、そして被害者と犯人が争う場面や犯人の姿は見ていないということでした。
続いて被害者の亡くなった妻の弟で被害者の義弟にあたる塚野享が証言台に立ちます。塚野は被害者の会社で専務という立場にあり、事件の日は仕事の件で被害者宅を訪ねた所、家政婦の原の悲鳴が聞こえ現場に駆けつけると被害者が亡くなっているのを発見したというのでした。塚野は被害者は姉亡き後ただ一人の頼れる家族だった、その命を奪った犯人をどうか極刑にして欲しいと涙ながらに裁判員たちに訴えかけ…
その後裁判員たちは事件現場となった書斎の様子をモニターで確認しますが、そこで小林があることに気づき裁判長に指摘します。それは書斎の壁に掛けられた絵が逆さまに飾られているのではというものでした。
帝丹小学校の校長室にも同じ絵が飾られていたからでしたが、裁判員からは事件に関係ないのではという冷ややかな反応が…。しかしコナンは本当に絵が逆さまならそこには何か理由があるはずと考えているらしく……
被告人に不利な証拠が揃っていた割には、妃の弁護もあり五分五分といった感じで第一回の公判が終了。しかしこのまま尻尾を巻いて逃げるようなマドンナではないことは十分分かっている小五郎は、絵について真剣に考えるコナンを見て被害者宅を訪れることにしたのです。
すると被害者宅にはもう先客が来ていて、九条検事をはじめとする検察側が次回の公判に向けて再度検証を行っている所でした。問題の絵はまだ調べていませんでしたが、コナンの持ち主が上下を間違えて逆に飾る訳がない、だとしたら誰が絵を逆さまにしたのかという疑問にハッと気がついた九条は部下とともに絵を調べはじめます。すると…
額縁を外して裏返すと裏ぶたの端には血痕が付着していました。さらにその裏ぶたを外してみると、中には借用書や手形が隠されていて、何と被告人の岩松が被害者から300万円を借りた借用書も発見されたのです!
重大な事実の発見に九条は色めき立ちますが、コナンは絵を逆さにしたのが岩松なら借用書を持っていかないのは不自然な上、そもそも借用書が額縁の裏に隠してあることを犯人はどうやって知ったのかと不可解さを感じるのでした。
更にコナンは飾り棚の上に花瓶敷があるのに花瓶がなくなっている違和感を抱きます。そして花瓶の事を聞かれた家政婦の原の態度が普通ではないことにも気づき……
被告人が被害者を殺害する明確な動機を持っていたことが分かり弁護側が一気に形勢不利となる中、コナンは事件の真相を解く鍵が上下が逆さまになった絵となくなった花瓶の行方にあると睨んで…。
不動産会社社長殺人事件の裁判員にコナンたち帝丹小学校1年B組担任の小林澄子先生が選ばれ、その法廷で蘭の母親妃英理弁護士と検察のマドンナ九条玲子が対決することになり、傍聴席で小五郎、蘭と裁判を傍聴することとなったコナン。
裁判は被告人の岩松俊夫が殺人については無罪を主張してスタートし、被告人に不利な証拠が揃っている中で妃の的確な弁護もあって五分五分の展開で第一回の公判を終えることとなります。
裁判を傍聴していたコナンは、初めての裁判員で緊張する中で小林先生が指摘した犯行現場の被害者宅の書斎に掛かっていた上下逆さまになっていた絵に着目。第一回公判の後小五郎と被害者宅に調査に赴くと、絵の額縁の裏に被告人が被害者から借金をしていたことを示す借用書が。
その一方で現場の飾り棚の上にあったはずの花びんがなくなっていて、花びんのことを聞かれた家政婦の原の様子がどこかおかしいことに気づいたコナンは…
市民(衆議院議員選挙の有権者)から無作為に選ばれた裁判員が裁判官とともに裁判を行う制度で、2004年5月21日に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立したのを受けて2009年5月21日からスタートしました。
その目的は国民が司法に参加することによって、市民が持つ日常感覚や常識を裁判に反映するとともに、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図ることだとされています。
ちなみに国民が裁判に参加する制度は陪審員制度で有名なアメリカをはじめイギリスやフランス、ドイツ、イタリアなどでも制度として存在します。
帝丹小学校校長ですが、かなり久しぶりの登場となりましたね。ちなみにこの方の初登場は小林先生の初登場回でもある112「帝丹小7不思議事件」です。
後編で凶器のナイフが発見された公園プールのあった場所。
今回は2007年以来となる法廷の対決の4回目ということで、またこのシリーズが制作されて九条玲子検事の姿を見られたのはとても嬉しかったですね。
ちょうどこのキャラクターが初登場したのが2002年のことで、当サイトも2002年6月末にスタートしたことからこのキャラクターは当時結構入れ込んで紹介していました。そんな経緯もあるので法廷の対決シリーズはちょっと思い入れのある作品なんですね。
そして作品については今回もなかなかよく練られたプロットだったと思います。現場からなくなった花びんがどのような経緯でゴミ置き場に捨てられて家政婦が拾うこととなったのか、そしての花びんに決定的な証拠が隠されている所まで非常によく考えられていました。なるほどという感じで眠りの小五郎の推理を聞いていた方も多かったのではないかと思います。
ただ犯人当てについてはちょっと簡単だったので、もう少し容疑者がいて惑わすような要素もあっても良かった気もします。元々帝丹小学校の植松校長が犯人な訳ないですから(苦笑)、そうなると容疑者は家政婦と被害者の義弟の2人しか最初からいませんしね。その分驚きが少なかったので満点はちょっとつけづらいかなということで星4つとなりました。
裁判員制度については2009年に施行されてからだいぶ月日も経ち当時はいろいろと言われましたが、裁判のスピード自体かなり迅速になりましたし、10年20年裁判が当たり前だった昔に比べたら遺族や被告にとってもいいことなのではないかと個人的に思っています。もちろん無実の人間が有罪にされかかるという今回の作品のようなこともあり得るので怖いといえば怖いですが。
最後に今回久しぶりに帝丹小学校校長の植松竜司郎が登場していましたね。何か悟りを開いた仙人のような不思議な安心感を与えてくれる校長先生で個人的には好きなキャラクターです。