(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 中村進(64) 扇千尋(35) 篠原真雄(25) 三島さつき(50) |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 競馬ファンの会社員 日本舞踊の師匠 フリーター 飲み処〈さつき〉の女将 |
高山みなみ 山崎和佳奈 小山力也 茶風林 高木渉 廣田行生 彩木香里 岡野浩介 真山亜子 |
最近小五郎がよく飲みに行くという小さな店が軒を連ねる杯戸町のガード下にあるゴールデン横丁。この日は土曜日でしたが一杯やろうという飲み客たちで大変賑わっていました。
そしてこの日小五郎が飲むこととなったのは昭和の香りのする小料理屋の飲み処〈さつき〉で、土曜は馬好きの常連がよく集まり、レースが終わったら直で来て勝ったの負けたのと騒ぐらしくこの日も東都ダービーの話で盛り上がります。小五郎も珍しくメインの11レースの3連単を大穴の1・2・3で当てたようで、万馬券を他の客たちに見せると羨ましがられたのでした。
それから調子に乗りみんなに一杯おごると言い出す小五郎。そんな感じで競馬好きの人たち同士が賑やかで楽しい雰囲気で飲んでいるのかと思いきや、客たちはそれぞれ悩みを抱えているらしく、加えて女将・三島さつきとの間にも何か不穏な空気が感じられたのです…。
その日は小五郎以外に3人の客が飲んでいました。退職間近の中村進、決して繁盛しているとはいえない日本舞踊教室の師匠・扇千尋、そして料亭の板前になりたくて上京してきたものの夢破れ女将の紹介で魚市場で働いているというフリーターの篠原真雄…みんな今回小五郎がこの店に入ってきたように女将にバケツの水をひっかけられたことがきっかけて店に出入りするようになったらしく、それは競馬帰りで気前よくなっている連中を店に呼び込む女将のいつもの常套手段だというのです。そんなことをしているといつかバチが当たると扇千尋は女将に警告しますが…
その後店の一番奥に座っていた扇千尋がトイレに行くと言い出し、席を立たないと通れないほどの激セマ店だったことから小五郎たち他の3人の客も席を立ちいったん店の外へと出ることになります。
そしてついでにと中村進はタバコを買いに横丁を右に曲がってタバコの自販機へ、篠原真雄はATMが閉まる前にとお金を下ろしに横丁を左に路地の方へ向かい、小五郎も二人がそれぞれ反対方向に歩いていく姿を見届けてからタバコを吸って一服をはじめたのでした。ほどなくして扇千尋も店を出て無言で路地の方へと歩いていき…
ちょうどその頃蘭とコナンも小五郎を探してゴールデン横丁を訪ねていて、タバコで一服中の小五郎を偶然発見。更に姿を消していた小五郎以外の3人の客たちも同じぐらいのタイミングで戻ってきて、全員でさつきに向かったのでした。
ところがガラス戸を開け店の中に入った一同は驚きます。何と店内では女将の三島さつきがカウンターに寄りかかるようにうつ伏せに倒れ身動き一つせずにいたのです。彼女の胸には包丁が突き立てられ、大量の血を流してすでに息絶えており……
すぐに警察が呼ばれて目暮警部の指揮の下に捜査が開始されます。入口のドアはくもりガラスで外から中の様子は見えないことから物盗りの線も考えにくく、当然のように小五郎以外の3人の飲み客たちに容疑がかかります。
まず最初に疑われたのは扇千尋でした。彼女は皆が外に出ていた5分間の間に店からなかなか出てこなかったのを小五郎が確認しており、更に日本舞踊の教室がつぶれそうになって女将に借金をしていたというのです。
ところが女将の手帳を警察が調べると中村進にも明確ともいえる動機があったことが分かります。彼は女将に弱みを握られて脅迫され、毎月10万円ずつ金を支払っていたことが分かり…
小さな店が軒を連ねるゴールデン横丁の小料理屋さつきに飲みに行った小五郎。その店は競馬好きが集まりその日の東都ダービーで万馬券を的中させた小五郎も満足そうに話に興じていました。
店には小五郎の外に3人の客がいますが、どこか女将とはギクシャクした関係が垣間見えます。そんな中で客の一人扇千尋がトイレに向かったのをきっかけに客4人全員が店の外へと出ますが、5分後に店へと戻った一同は胸を包丁で刺されカウンターの前にうつ伏せに倒れている女将の姿を発見し…
小さな店が軒を連ねる杯戸町のガード下にあるゴールデン横丁の一角にある小料理屋。
板とトタンの継ぎ接ぎですきま風がスースー入る内装で、4席で満席らしくトイレに行くには他の客が一度立たないと通れないほどの狭い店のようですが、こういう飲み屋って「何とか横丁」という名前のつく飲み屋街には結構たくさんありますよね。
ちなみにお酒は本格焼酎梟、BLAIR ATHOLの他に上の段に高級な酒としてHomessyのXOとか、純米主のあさのが?とか、古酒清流とか、Mellowとかいう名前のお酒も置いてありました。調べてみた限り梟とBLAIR ATHOL(ブレアアソール)という名前は麦焼酎で本当にあり、他はヘネシーのXO(Extra Old)、朝乃舞、古酒渓流といった酒の名前は実在するらしいのですが、あまり詳しくないので本当にこれらの酒をもじっているのかどうかまでは自分には分かりません。
この日開催された競馬のレース。11レースがメインレースだったようで、万馬券が出る大穴のレースでした。他の客たちが軒並み外す中で小五郎は1・2・3で3連単で見事に的中したらしいのですが…。
日本舞踊の師匠・扇千尋は毎年ここのホテルで発表会をやっているそうです。
飲み処さつきの他にたくさんの店があるようで、飲み屋が多いですが本屋や文具店などもあり商店街の様相を呈しています。小五郎が目暮たちと見ていた地図に詳細が書かれていますが、上に表通り、下にメイン通りがあってさつきはこの2つの通りに挟まれるようにして横丁の真ん中あたりにあるようです。
ちなみに他に見られた店の名前については、小田クリニック、ヤマモトデンキ、遠藤理容店、スナックミオ、ホンダベーカリー、キムラ、クリーニング堀田、宮元文具店、カフェ中村、鈴木時計店、IWAMOTO BOOKS、佐々木不動産、鳥金、ゴールデン、クランクラン、ユフワン、味世、マミ、尼庵、ラーメン日吉、荻原手芸店、にくのおもや、グルメやまと、そしてさつきの前にはコーポキャロット。更に飲み処悟郎、パブリターナー、もつ煮ぎり、サッポロめいん、緑眼科、林酒店、カラオケワン、焼き鳥かろや、ミラノ王国、吉田屋、ギャラリー伊藤、パブモパル、今田書店、森田寝具店、喫茶ルーツ、杉本薬局、田村歯科…と周辺地図にはたくさんの名前が見えました。
この店の名前を考えるだけでもかなり大変ですよね(苦笑)
さつきの店の出入口には消防署による「火の用心」の張り紙が貼ってありました。
篠原真雄がお金を下ろしにいっていたATMはこの銀行のものでした。ATMは表通りの右端角にあり、明細によると当日は10月15日で2万円下ろし、残額が31,956円だったことも分かりますね(苦笑)
今回は30分ものの短編作品で内容としては正統派の本格ミステリーでした。皆さんの評価結構分かれているのですが、個人的にはかなり面白かったと思います。
高いウイスキーが棚の上に置いてある伏線も実に面白かったですし、トタンの隙間と和包丁の柄が取れることを上手く利用した巧妙なトリックでしたよね。
全体的には非常によくできていたと思うのですが、ただこのトリックって小五郎があの位置でタバコで一服していないとアリバイ作りの点で成立しない所が難点かと思います。
小五郎があの位置にいて容疑者たちが5分の間にどういう行動をしたかを確認できたのは偶然ですから、衝動的な犯行なら偶然小五郎があの位置にいたために密室ができてしまって…と非常にいいトリックになるのですが、明らかに計画的な犯行なので、そうなるとあの位置に誰かがいて自分たちの行動を監視しているという偶然に期待してトリックを仕掛けるというのは逆にあまりにもお粗末ですよね。
更に言うと回転椅子についても被害者は偶然当たって回転してカウンターに倒れたのであって、もしそれがなかったとしたら壁に向かって仰向けに倒れるか、壁にもたれかけるようにして倒れるかといった感じで、どちらにしても壁の隙間から何かで刺したというのが分かってしまう気がします。
計画的な犯行ならこの2点をもう少しプロットをしっかりしておけば完璧な密室トリックといえたかと思います。ウイスキーの伏線などはすごくよく考えられていたので、ちょっと勿体ないかなと思いました。ただ全般的には面白かったと思いますね。
そして今回は場末の飲み屋街が舞台ということで、自分はこういう雰囲気大好きなので作品中でこれを味わえたのが嬉しかったですね。何だか無性にお酒を飲みに行きたくなりました(苦笑)
更に今回は小五郎が捜査中に寝入ってしまって、眠りの小五郎中に突然起き出すというハプニングもあってこれもなかなか笑えたと思います。演出が非常に楽しい回でしたね。